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おはなし

1 :小鳥:04/05/16 17:04 ID:???
短くて長いおはなし 小鳥のみた夢のおはなし

2 :小鳥:04/05/16 17:13 ID:???
今、私は宇宙船へ乗っている。クラスの子供たちを連れて、火星まで野外授業をしにいく。
私も、子供たちもずっとこの日を楽しみにしていた。私は火星に行くのはこれで4回目になるが、
何度いっても面白い。中には「アタシ、パパに連れられて何回もいったことあるからキョウミナイの」
なんて言う子もいるが、その子だってクラスの友人たちと来たことは無いんだから、
楽しみを抑えきれないでいる。いつもはブスっとしているくせに、今日はやけに機嫌がよく、
クラス全員に月のお土産のお菓子を振舞ったりしている。

でも私はさっきからなんだか調子が悪い。船酔いでもしたのだろうか。頭が痛い。

3 :小鳥:04/05/16 17:20 ID:???
「大丈夫ですか?もうすぐご到着なされますよ、念のため、シートベルトをお締めになってくださいね」
機内嬢が声をかけてきた。教頭のアリーズ先生が子供たちに注意をうながしている。
もう着くのか・・・、あっという間だった気がする。フライトの途中で睡眠をとったからだろうか。
そういえば少し不思議な夢をみた気がする。もう覚えていないけれど。でも不思議な気持ちは
まだこの頭に残っている。

4 :小鳥:04/05/16 17:37 ID:???
子供たちがキャアキャア言う声が少し頭に響く。子供がうるさいのは当たり前だが、
今は頭痛がひどくて、なにかちょっとした事でも起これば、ヒスをおこしそうだ。
子供たちにあたるのは嫌いだ。怒鳴ることも嫌いだ。結局の事、疲れてしまうのは私だからだ。

「火星・イジス国へ到着いたしました。このたびは私どものシップをご利用頂きまことに・・・」
機長のアナウンスが聞こえてくる。子供たちは歓声をあげ、シートベルトと酸素キャップを
いそいそと外している。誰もが皆、一番最初に火星の地を踏みたいのだ。もう出口は
他の客や違うクラスの子達でギュウギュウになっている。

「急がなくてもちゃんとみんな同じ時間にホテルにつくからね。慌てないで。」
私は言う。

「でも!だってー!タイガーがもうこっち向いて手振ってるのが見えるんだよー!」
何度も火星に来ているというカナコは私の目を直視し、うらめしそうに言う。
タイガーとは彼のあだ名で、カナコのボーイフレンドだ。

5 :小鳥:04/05/16 17:55 ID:???
「あ、マリコ先生、ホテルはアタシ、タイガーと同じ部屋にしてくれる?
 じゃないとアタシ、パパに電話して先生辞めさせるからね」

カナコが言う。どうしたものかと私は戸惑う。カナコはクラス一番のワガママっ子だ。
富豪の娘だから仕方ないと言えばそうなのだが。

「わかった、じゃあ、教頭のアリーズ先生に相談してみるわね。」と私は言う。

「せんせい〜!『そうだん』じゃなくて、これ、「めいれい』だからね?わかってる?
 アタシ、タイガーと一緒じゃなきゃイヤなの」

「・・・わかったわ。そうするようにホテルの人に後でお願いするわね。それで大丈夫かしらカナコちゃん」

「いいわよ。それとベッドはツインじゃなくて、ダブルかキングにしてね。
 私ツインで離れ離れに寝るなんて絶対イヤだから」

・・・疲れる子だ。でも時々、彼女の発言や仕草に、教師の私でさえウットリとしてしまう事がある。
彼女は若くて、美しいものだけがもつ尊大なプライドをもっている。生まれた時から美しい子。
ごう慢な態度や言葉にさえも美しいものが漂う。まぁ、今はただのワガママな子供でしかないが。

6 :小鳥:04/05/16 18:26 ID:???
そんなことを考えたり、子供たちを出口へ進めているうちに、私たちは火星の地へ降りたった。
ホテルまで連れて行ってくれる、バスが待機している。バスと言っても、地球のバスとは少し違っていて、
地上から何センチか浮いているひし形をした車だ。昔、大学でどうして浮くのかとかそんな事を沢山習ったけど、
もう全部忘れてしまった。私は2年留年してやっとのこさ卒業した劣等性だった。教師になれたのが
今でも不思議でしょうがない。

バスがホテルに着くまでの短い間、私は地球での事を考えていた。
私は、課外授業に行くギリギリまで病院で母に付き添っていた。母は後天性の脳障害があって、
私が小学校を卒業する頃にはもう周囲とコミニケーションをとれなくなっていた。



7 :小鳥:04/05/16 20:21 ID:???
「タイガーーー!!!タイガー!会いたかったー!ハァハァ、いっぱい走ったから疲れちゃった」

「おう待ってたぜー。遅かったじゃん」

「そうなの、ごめんね。あのババアがウルサクって!」

「ババァ?だれそれ」

「マリコ先生だよ。うちの担任の。」

「ああ、マリコ先生。・・・オレ、別に好きだけどな。優しいし。
 見た目もアリーズよりはましだろ。」

「うーん、確かに顔は教頭よりマシだけど・・・。ねぇ知ってる?マリコ先生ねぇ
 すっごい寝言言うんだよ。夢の中でゲームしてたみたいで、クリアがどーとか言ってたし、
 アタシ、真後ろで寝てたんだけどウゼェェって思った〜。あと、頭痛かったみたいで、
 ずっとボンヤリしててアタシの話聞いてくれないしさぁ〜。ババァは火星に来るなって感じ。」

「ふーん・・・。あの人でもゲームするんだねぇ・・・・。うーん・・・。・・・・・・。」

「何ずっとババァの考えてんの?早く部屋いこーよ」

「ああ、うん」

8 :小鳥:04/05/16 20:31 ID:???
僕は一応、カナコと付き合っているという事になっているが、
実際のところ本当は、カナコが僕に一方的に惚れているというだけで、
僕はあまり彼女のことを好きと思ったことはない。

友人としてでは、彼女の趣味についてなんて興味ないし、楽しくなさそうだから、友達にはならない。
恋人としてでは、まぁ、別にそこまで苦にならないし、彼女の母親がつくる、ケーキは大好きだから
付き合っているというわけ。それに、僕は女の子とキスするのが大好きなのだ。
女の子の唇はやわらかくって、時々すっぱいニオイとかお菓子の味がして、面白い。
いつかカナコのママともキスできたらいいのに、と思う。頬にじゃなくて、口に。

カナコは時々ヒステリックになる事以外では、一応僕が困るような事は言わないように
気をつけてるみたいなので、今のところあまり気にならない。

それに彼女からは彼女の母親がプレゼントした、母親と同じコロンの良いニオイがする。

9 :小鳥:04/05/16 20:37 ID:???
「・・・タイガー?何考えてるの?テレビつまんない?チャンネルかえる?消す?」

「あ、ごめん。ううん消さなくていいよ。
 カナコと(本当は母親と)キスする事考えてた。」

僕達はベッドに寝転びながら隣どうしでテレビを見ていたのだった。

「うっわ。昼からエッチィ。でもアタシもタイガーとキスするの好きだよ」

カナコはとても可愛い顔をしてこっちを向いて笑った。

「じゃあ、キスする?」

「うん、するする☆ それ以上はダメだよ」

・・・・・・またチンコ立つ年じゃねえっての。

10 :小鳥:04/05/16 20:53 ID:???
またチンコ・・×
まだチンコ・・○

11 :小鳥:04/05/16 21:01 ID:???
小鳥の独り言:

今、ちょっと男友達二人とメッセで話していたんですが、彼らはもう小学校2年とか3年とかで
チンチン立っちゃってたみたいです!ガーンガーン。
皆そうなのかしら・・・。小6くらいからだと思ってたよ。。
女の子のほうがオナニーするの遅いし!!ガーンガーン

まぁ、火星に宇宙船でいける頃の人類は発育が遅いって事で。。。ね。
きっと性欲も減退して、少子化にもなってるだろうし!!多分!

で、タイガーとかカナコちゃんは一応小3〜小5の設定。

12 :小鳥:04/05/16 21:04 ID:???
小鳥の独り言:

今、もう一人に聞いてみたら「幼稚園から」って言うヤツが!!!!

ガーンガーンガーン

13 :小鳥:04/05/16 21:11 ID:???
小鳥の独り言:

きわめつけに、「小4くらいからセックスとかできるヤツもいるしな」

イヤダアアアアア。

でも、少年に夢を抱くのを辞められる良い機会と思えばいいかも。

14 :小鳥:04/05/16 21:35 ID:???

・・・と、まぁ、僕は小鳥と名乗る、ある女からチンコ立たせろ!とどこからか頭に指示を出されて、
仕方なくチンコを立たせてみた・・・。

案の定、カナコが怒った。そして
「しばらくの間、この辺の寺院ででも寝起きしてなさいよ、バカ!」
と叫び、電気アンマを僕にくらわせた。
けれど、力の無い彼女の蹴りは意外と気持ちよかったりもした。

小鳥という女が頭の上でニヤリと笑っている。『不思議の国のアリス』に出てくるチェシャ猫みたいだ。
少し気味が悪い・・・。と、いうような事を考えていたら、僕達は課外授業に行きそびれて、
お腹も空いたし、仕方なく、夕食はルームサービスで火星風インドカレーを食べることにした。

夜がやってきて、マリコ先生が見回りに来た。ちょっとした小言を言われて、
先生は違う部屋へと移っていった。

15 :小鳥:04/05/18 23:50 ID:???
「ふぅ・・・。あの二人にはもうちょっとしっかり叱っておくべきだったかしら・・・」
「でも、二人が両親に電話して、私の立場が危うくなるのもイヤだしなぁー・・・」
「うちの家庭も財産持ちだったら、私の将来も変わってたのかなぁ・・・」

私はそんな事を思いながら、生徒たちの部屋を見まわって行った。
これが終わればやっと眠れる。長い一日だった気がする。
頭痛はフライト中よりはだいぶ良くなったけど、まだ、なんだかモヤモヤしている。
早くシャワーを浴びて、すっきりして眠りたい。明日も朝から忙しいんだから。

16 :小鳥:04/05/19 00:39 ID:???
・・・眠れない。どうしたって言うんだろう。
体は死にそうなくらいに疲れてるのに、目が冴えてしまって、寝付けない。

そういえば、ここのホテルには、露天風呂があるとアリーズ先生が言っていた。
どういう成分のお湯なのかはわからないけど、一度、体をあたためて、のんびり浸かっていれば
そのうち眠気がくるかもしれない。気分転換に入ってこようか・・・。

露天風呂に行くには確かエレベーターに乗って14回まで上がって、
そこから、階段を少しのぼって踊り場からの通路を右にまっすぐ行けばよかったはずだ。
行ってみよう。

17 :小鳥:04/05/19 05:48 ID:???
階段をあがり、踊り場へ出ると、そこには女の子がいた。
見たことのない少女。うちの生徒ではなさそうだ。他の客の娘かなにかだろうか。

「マリコさん」

え、どうして私の名前を知ってるの?
と聞き返したかったが言葉が出てこなかった。それにもしかしたら、宇宙船に乗っている間、
私が生徒達からマリコ先生と呼ばれているのを聞いていたのかもしれない。

「マリコさん、本当はここに来ちゃいけなかったんだよ。でも・・・来ちゃったんならしょうがないね・・・。
 お願いがあるの。どうかゲームをクリアしてね。皆、新しい人が入ってくるのをずっと待ってたんだよ」

ゲーム?クリア?新しい人?私は混乱した。
彼女はまるで誰か、私ではなく他の人物に喋りかけているかのようだった。

少女は哀しげな顔をしてうつむいた。哀しげな顔ではあったが、でも、どこか妖艶でいて、
そして、口角は上がっていて、そっと微笑んでいるようにも見えた。

突然、私は頭が痛くなりだし、立っていられなくなり、私は少女の肩を借り、しゃがみこんでしまった。

「マリコさんと私、会う時が必ず来るの。もしかしたらその時は、こんな風に優しくはできないかもしれない。
 ごめんね。でも、そういう風にプログラミングされてしまってるの・・・。」

朦朧とした意識の中で私は少女が呟く声を聞いていた。頭が痛い。
いったいこの子は何のことを話しているんだろう・・・。頭痛がひどくて上手く考えられない・・・。

18 :小鳥:04/05/19 06:29 ID:???
・・・・・・・・
ホテルの朝の会議室ではアリーズ教頭が叫んでいた・・・。

「ちょっと!マリコさんは?もう30分も遅刻してるわよ。朝のミーティングに出ないなんて!」

「いえ、あの・・・。従業員に頼んで部屋をあけてもらったんですが、
 マリコ先生、いなかったんです・・・。ホテルの上から下まで探したんですが・・・。」

「まぁ。なんですって!・・・あの子、我が校に来てどのくらい経つのでしたかしら?
 もうすぐ1年よね?教師としての自覚が無いんじゃないかしら。」

「そ、そうですねぇ・・・。でも彼女は無断欠勤や遅刻も今までしたことが無かったですし・・・」

「そんな事は関係ないのよ!今回は火星に住む人達との交流をつくろう、という課外授業でしょう?
 とってもコストが掛かる授業なのに・・・。はぁ。」

「じゃ、じゃあ。もう一度、彼女の部屋を見てきますね。」

・・・アリーズ教頭は普段は温厚だが、火星の空気は体にどうもあわないらしく、ホテルに着いた昨日から、
ちょくちょくヒスを起こしていた。他の教師等はそういう時のアリーズ教頭をとても恐ろしがっていた。
いつ、そのイライラが自分等にあてられるか全く予測もつかないからだ。

19 :小鳥:04/05/19 10:45 ID:???
………
「ん、うぅ・・・」
私はあたりを見回してみた。私のホテルでの部屋だ。いつの間にか眠っていたらしい。
でも、どうやって、踊り場からここまで戻ってきたのだろう・・・。

「あら、おはようございます。ご気分はいかがですか?」

??。気付くと目の前にメイドがいた。一昔前のメイドのような服を着ている。
ネームプレートもしていない。このホテルの従業員では無いのかもしれない。

「これ、差し上げますわ。良い香りでしょう?」

彼女は私に百合の花を差し出した。真っ白で大きな花をつけた百合。
言われるままに、匂いを嗅いでみた。本当だ。とても優しく甘い香り。

「マリコさん、もうゲームは始まっているんですよ。これから沢山の人たちに会うことになります。」

ゲーム?また昨日の晩の少女みたいな事を言う・・・。ゲームとはいったい何の事だろう。

「えっと、あの、女の子は?昨日階段の踊り場で会ったんだけど・・・髪が長くて、ほっそりとした
 12,3歳くらいの女の子。その子ともいつかまた会うの・・・?」

メイドは少しビックリした顔をしたが、すぐにそれまで浮かべていた笑みを取り戻した。

「あの子にもう御会いになられてたんですね。彼女とはきっとまた何度も会う事でしょう。
 でも、姿形を変えて現れるかもしれないので・・・。気をつけてくださいね。
 彼女はこの世界のあらゆる混沌を寄せ集めてできた、魂を持った人形のようなものです・・・。」

そうメイドは言い残し。部屋をあとにした。私は何が何だか全くわからないまま
しばらくの間、ベッドの上で物思いにふけっていた。

20 :小鳥:04/05/19 22:32 ID:???
「・・・そうだ、朝のミーティングに出なくちゃ。」私はハッとして、ベッドから起き上がった。
時計はまだ朝の6時を指している。大丈夫。遅刻しない。良かった・・・。

服を着替えているとドアチャイムの音が聞こえてきた。誰だろう?
生徒か教師だろうか。インターホンを手に取り、「はい」と私は答えみると、
「お着替えはもうお済になりましたか?新しいドレスを持ってきたんですが・・・」
と見知らぬ男が答えた。ドレス?何のことだろう・・・。私は少し警戒して
「ごめんなさい。着替えは持ってますので・・・。お引取り下さい。」
と彼を拒んでみた。そうすると彼は、
「そうですか。では、荷物はドアのすぐ横に置いておきますので、私が居なくなった事を
 確認してから、どうぞ、ご覧になってください。私の名前はバルトルと言います。
 何かご用があれば、いつでも私を呼んで下さい。私はあなたのゲームの中での
 エクスポジターです。今後、あなたが私を必要とするならば、何度も会うことになるでしょう。
 では失礼します。」

バルトル・・・・。変な名前。エクスポジター?説明者という事だろうか。
ゲームの説明者。またゲームの話だ。もしかしたら私はまだ夢を見続けているのだろうか?
そんなことはないはずだ。だって、意識はハッキリしているし、視界だってぼやけてもいない。

「・・・あ」
私は、彼が言っていたドレスの事を思い出し、ドアを開け、廊下に出た。
ドアの横には可愛くラッピングされた、トートバッグくらいの大きさの箱が置いてあった。

21 :小鳥:04/05/20 23:41 ID:???
「かわいい箱・・・。」
私はそのラッピングされた箱をゆっくりほどいていった。中から出てきたものは、
シルク生地でできたエメラルドグリーン色のイブニングドレスだった。綺麗だ。
それに、カードが一枚。

<マリコ君へ。頭痛は治ったかい?君がここへ来てくれるなんて嬉しいよ。
  ドレスは今晩の夕食会に着ておいで。楽しみにしているよ。
                                       ゲームマスター>

ゲームマスター・・・。ゲームの創始者。
あの踊り場で会った不思議な少女や、メイドやバルトルという男も
ゲームという言葉を何度となく言っていた。いったいどういうゲームなのだろうか。
どうして皆、私の名前を知っているの?どうして頭痛の事まで知っているの・・・。
もうゲームはすでに始まっているの?でも、私は何も変わっていない。
これから朝のミーティングへ出ていつも通り、連絡事項の言い渡しと、
今日の授業の過程を聞くだけだ。

でも・・・。なになんだか本当にわけがわからないけども・・・。このドレスは本当に綺麗。
ちょっとだけ袖を通してみようか。まだ時間もあることだし。。

22 :小鳥:04/05/21 16:46 ID:???
マリコはドレスを身に着けた途端、別人のように輝いてみえた。

首につけたグリーンダイヤモンドとピンクゴールドのセッティングに思わず息を呑むような
チョーカーは、マリコの淡い少し緑がかった茶色い瞳と相まって、
ロマンティックな輝きを発散している。

「すごい・・・これ、100カラット以上はあるんじゃないかしら・・・」

マリコの頬は紅潮し、さっきまでの生気の無い顔から一変し、健康的な美しさを取り戻した。

ドレスの肩のストラップは細く、周りに小さなブルーグリーンのビーズがあしらってある。
背面が大きくあいており、ドレープの効いたトレーン(長い裾)を少し引きずりながらも
マリコは楽しげに微笑んでいる。胸の横に小さな透明感の妖精とフェザーのブローチが
エメラルドグリーンのドレスにとてもよく合っていた。

マリコは時間を忘れ、鏡の前に何十分も立っていた。
ミーティングの事、ゲーム事、さまざまなおかしな現象の事も、
その時のマリコの頭には全く無かった。それだけそのドレスは彼女を魅了した。
彼女一人だけのためにつくられたオートクチュールのような見事なドレスだった。

23 :小鳥:04/05/22 17:53 ID:???
ちょうどマリコがドレスを着て、鏡の前に楽しげに立っている頃、
アリーズ教頭のとばっちりをあびて泣く泣くマリコを探す加藤教員が
ホテルの従業員を連れてマリコの部屋の前までやってきていた。

ドアのベルを押すが、返事は無い。
仕方なく、前回と同じように従業員にドアを開けてもらい中に入る。

「マリコ先生〜!マリコ先生〜?」

くまなく部屋を探してみたが、マリコはどこにも居なかった。
加藤教員はトイレやバスルームはもちろん、洋服棚や、冷蔵庫の中まで探したが、
マリコがどこかを使った形跡さえ見受けられなかった。
髪の毛一本さえ落ちていないのだった。

「はぁ・・・。マリコ先生・・・いったいどこにいっちまったんだろう・・・。
 ま、まさか・・・自殺?いやいや、そんなはずはない。火星に来るのをあれだけ
 楽しみにしていたんだから・・・。この時代にストライキっていうのも有り得ないし・・・」

加藤教員はガックリと肩を落として、ホテルの従業員に頭を下げ、部屋を出て行った。
従業員は気の毒そうな顔で加藤教員の後姿を見送った。

24 :小鳥:04/05/24 12:48 ID:???
「あら、とってもよくお似合いですわ、マリコさん」

その突然の声に、私はビクっ肩を震わせ、怖々と後ろを振り向くと
そこには今朝会ったメイドの姿があった。

ちょっと・・・どうして、勝手に入ってこれたのよ・・・・
そう黙りながら思っていると、彼女はそれを察したかのように、

「まぁ、驚かせてしまってごめんなさい。この部屋は、ゲーム中の
 ある特定の人物たちには自由に出入りする事ができるんですの。
 例えば、私とか、バルトルさん。あ、バルトルさんにはもうお会いになられました?
 あら、そう、インターフォン越しにしか見ていないのね。残念ね、バルトルさんって
 本当に、いい男なのよ。私たちメイドは皆彼に憧れてるの。ふふふふふ・・・。
 ああ、そうそう、それからゲームマスターも当然この部屋へお入りになられますわ。」

・・・。私がうつむいてじっと黙っていると、彼女はまた喋り始めた。

「でも、本当にそのドレスよく似合ってますわねぇ・・・。うっとりしちゃいます。」

そう言われた所で私はやっと、「ありがとう」と少し皮肉を混じりに口にした。

「ええ、ええ。だってそのドレスはゲームマスター御自身が
 あなたの事を想って、デザインし、職人につくらせたドレスなんですもの。
 似合わない事なんてあるわけないわ。本当に羨ましいかぎり。ふふふふ。」

よく喋る女だな、と私は思った。今朝、私がベッドの上にいた時には、こんなには喋らなかったのに。
もしかしたら、別人なのだろうか。双子だとか、たまたま似ているとか・・・。
そんな事を考えていると、私はハッとし、
つい小一時間前に会ったばかりのメイドの顔をもうロクに覚えてない事に気付いた。

25 :小鳥:04/05/24 23:51 ID:???
小鳥の独り言:

なんか・・・そろそろ飽きてきてしまった・・・。
まだ4分の1も進んでないのに・・・。
そんなわけでここをもし読んでおられるお方がいらしたら、
感想とか書いてくれると嬉しいのれす(。ω。;)
なんか、励みになるかなぁ〜って思って。
文章の間違いの指摘でも、つまらんとか、おもしろいとかの感想でも
なんでもいいれす。

感想はこっちに書いてくれると嬉しいですわん

http://life5.2ch.net/test/read.cgi/yume/1075054326/
私の自己スレです。

26 :小鳥:04/05/25 04:23 ID:dF8U6MvD
「あら、そろそろお時間ですわね。髪の毛をアップにしましょうね。
 そのほうが顔もドレスも映えることですし。」

お時間?私はハッとして、時計を見た。8時少し前だ。いけない、ミーティングに遅刻しちゃう。
「ごめんなさい、私、朝のミーティングに出なくちゃいけないの。
 悪いけども、出ていってくれるかしら」

するとメイドは、
「まぁ。ミーティングってなんの事ですの?それに今は朝じゃなくて
 夜の7時でしてよ?これから夕食会があるんですから、用意しないといけないんですわ。」

夜の7時?・・・え?だって、私、さっき起きたばかりだし、それに、窓の外も明るいし・・・。
私は困惑した。メイドは私がパニックになっているのに気付き、

「大丈夫ですよ、落ち着いて。マリコさんは今、ゲームの最中だから、夜と朝が逆になってしまって
 いるんですの。それに、火星はいつも明るいんですわ。マリコさんも何度も来てるから
 知っているでしょう?とりあえず、今は夕食会に出る事だけに専念しましょうね。」

・・・そうだった。火星は24時間明るいんだった。でも、ゲーム中だから昼夜が逆転するって
いったいどういうわけ?朝のミーティングは?私はそれだけ寝続けていたのだろうか・・・。

「さっ。お仕度しましょう。お腹も空いてるでしょう?私、髪の毛のセット得意なんですの。
 マリコさんの髪は柔らかくって、痛んでないし、とっても綺麗ですわ。ダークブラウンの
 素敵な髪の毛ね。私、綺麗な髪をさわれるのって、とっても幸せな事ですの。」

確かに私は空腹だった。メイドは私の髪をブラシで軽くといて、テキパキと髪をアップにしていく。
それにしても、本当によく喋る女だ・・・。私があれこれ考える暇を与えてくれない。
私はフゥーッとため息を一つ洩らし、もう、どうにでもなればいい、と投げやりな気持ちで
鏡の前の自分を見つめた。

27 :小鳥:04/05/25 11:45 ID:???
「はいっ!できたわ。どうかしら?」とメイドは言う。

本人が言っていた通り、中々上手に私の髪はセットされていた。
首につけた、チョーカーが映えてよくみえる。薄く化粧をされた顔も悪くない。
私は素直に嬉しく思い、「ありがとう」と一言だけ口にした。

「ふふふ、こちらこそ、綺麗な髪の毛をさわらせてもらって光栄です。ありがとう」

その後、バルトルが部屋にやってきて、「ああ、随分と美しくなられましたね。綺麗ですよ。
ドレス、とってもお似合いです。」と感想を述べ、私は彼に連れられて、
38階の会議室があるであろう場所へと通された。

部屋の名前は「百合の間」。ふーん、なんだかこのホテルが付けそうに無い名前だな、
と私は思いつつも、その部屋へゆっくりと入っていった。

28 :小鳥:04/05/27 10:02 ID:???
部屋の廊下を通り、二つ目の扉をバルトルが開け、私は扉の向こう側に見える景色に驚いた。
一面が雪なのだ。まるで昔の京都の庭園のような場所の端に小さい丸テーブルが置かれてあり、
そこにうっすら、降り積もってゆく雪を透して人影が見えた。あれがゲームマスターだろうか。

バルトルに支えてもらいながらも、雪が覆っていない敷石をちょこちょこと渡り、
端のテーブルまで辿り着いた。ブロンドに近い、少し緑がかった髪の色の男が座って
私達を待っていました、と言わんばかりにこっちを向き、笑顔をみせた。

「やぁ」と男は手を振り、私が彼に近づくと、私の手を軽く取り、手の表面にそっとキスをしてきた。
私は少し恥ずかしげに思いながらも、「ありがとう。はじめまして」、と膝を曲げお辞儀をした。

「君に会うのを楽しみてたんだ。僕はゲームマスター。ニコラって呼んでくれていいよ。」

「そうですか。私はマリコと言います。ニコラさん、あの、私・・・」
ゲームを終わらせたいと言おうとすると彼は、

「やだなぁ、ニコラ『さん』なんて、それだったらゲームマスターって呼ばれたほうがいいよ、
 というかニコラって呼んでくれよ。僕の本名だしさ。」
と、私の話を途中でさえぎってしまった。

「じゃあ。ニコラ。私、あの、ゲームを」

「あっ、食事の準備ができたみたいだよ、バルトルが呼んでる。さぁ、いこうよ」
そう言って彼は私の手を握り、奥の座敷へと連れて行った。

29 :小鳥:04/05/27 10:51 ID:???
座敷の隣の部屋は明治の西洋館のようなアンティーク調の造りになっていて、私は少しホッとした。
座敷に座るような形になってしまったら、せっかくのドレスがしわくちゃになって
台無しになるだろうと考えていたからだ。

「はやくはやく。マリコの席はここだよ」、ニコラが私を呼ぶ。

部屋には沢山の百合の花が活けてある。白いものから、少しピンクがかった百合など
様々な種類と数の百合が見える。皿が置かれているテーブルの真ん中にも
百合と他の花々が丁寧にアレンジメントされていて、思わず息を呑むほど美しい。
プレートに書かれてあった「百合の間」というのはきっとここの事なんだろう、と納得した。

私が席に着くと、さっそくまたニコラが喋りはじめた。
「紹介するよ、彼はハンゾウ。僕の料理をいつも作ってくれる人なんだ。
 ハンゾウの料理は格別なんだよ。ほら、いい匂いがするだろう?」

確かにいい匂いが漂っていた。それに私は空腹だったから、なんだかその匂いが
特別な匂いにさえ感じられた。

30 :小鳥:04/05/27 10:52 ID:???
「本日のメインはハンゾウ特製の果実酒で煮た、七面鳥とソーセージです。それと穴子のパテ。
 季節の野菜と木の実のサラダ。ドレッシングは三種類ありますのでお好きなものを
 どうぞ。パンはガーリックがペーストされていますが、このガーリック、食べ終わったら
 口の中で匂いが消えるんです。ですから食事のあと、キスされても問題ありませんよ。
 デザートはまだ、お楽しみで。では、ごゆっくりお楽しみ下さいませ。」

そう言ってハンゾウは奥のほうへと引っ込んでいった。
ボーイ達が料理やワインを持ってくる。

「じゃあ、とりあえず乾杯しよう。」とニコラが言う。
「何に乾杯するのかしら?」
「んーー。じゃ、マリコと僕が出会った記念に」
「それと、ゲームの中に閉じ込められた私の記念にも」

私はその時、どこかでカンカンに怒っているであろうアリーズ教頭の事や生徒達の事も
完全に忘れてしまっていて、出てくる料理とワインとニコラとの会話をただ、ひたすら楽しんでいた。

31 :小鳥:04/05/27 11:10 ID:???
ワインを2本もあけて、食事も終わりに近くなった時、ハンゾウが
デザートを持ってきた。

「このケーキはニコラ様がお気に入りのプディングケーキです。
 マリコ様もきっとお気に召すと思いますよ」
とクリームがたっぷり塗られた上に真っ赤なチェリーがハート型に可愛く並べてあった。

「とっても美味しそう。でも、ごめんなさい。もうお腹いっぱいなの。
 お料理とっても美味しかったです、ありがとう。」そう私が言うとハンゾウは、
「そうですか、でも一口だけでもいかがですか?このケーキちょっとした仕掛けが
 ほどこされているんです。マリコ様、ケーキをちょっとカットしてみて下さい」

「ええ、でも、その前に私、みんなに言いたい事があるの」

「なんだい?」とニコラが訊ね、
「なんでございましょう」とハンゾウが首をひねり、
「なにかしらね」とメイドとボーイがヒソヒソ呟きあった。

「あのね、私ついさっき思ったんだけど、私の前に座っているニコラは・・・」

32 :小鳥:04/05/27 11:24 ID:???
「僕が?」
「ニコラ様が?」
「ニコラさんがどうしたのかしら」

私はナイフを握っていたその手に少し力を入れ、やや勇気を搾り出して言ってみた。

「あの、バルトルさんじゃないかしら・・・。間違っていたらごめんなさい。」

一瞬だけ、皆の顔がピタッと止まり、そしてまた、ゆるやかに次々と喋りはじめた。

「僕がバルトル?」
「ニコラ様がバルトル君だって?」
「まぁ、バルトルさんですって?」

「ええ、あの、声が同じような気がして。それでこのニコラは本物のニコラじゃないと思うの」

今度は、一瞬と言わず皆の顔がだんだんと歪みはじめた。

「なんだって」
「マリコ様?」
「嘘、バルトルさんが?」

「そこにいるニコラは、きっと、バルトルさんがどこかでニコラと入れ違って変装したか
 それか、バルトルさんの双子か何かじゃないかしら・・・」

そこまで私が喋り続けると、ハンゾウは
「わかりました。その可能性も無いとは言えませんからね。マリコ様、
 どうぞ、ケーキをカットして下さいまし。ゆっくりゆっくりとお願いします。」

33 :小鳥:04/05/27 11:49 ID:???
私がケーキをカットし、二つに割ると、中に空洞があり、そこから
小さな指輪が一つと、くるくるっと丸められたカードが一つ出てきた。

カードを留めてあるリボンを外し、紙を広げると、前にドレスを受け取った際、
一緒に付いてきたカードと同じ筆跡で、メッセージが書かれていた。


< マリコ君へ。
  料理は楽しめたかい?今日は君に会えなくてとても残念なんだ。
  ちょっと外せない用事ができてしまったんだ。代わりにバルトルを僕に見立ててみたよ。
  指輪は僕からのプレゼント。くすり指に合うと思うよ。
  バルトルのトークと指輪、両方気に入ってくれると嬉しいな。          ニコラ  >


「わぁっ・・・」と私の後ろからカードを覗いていたメイド達が声をあげた。

どうやら、バルトルが変装している事を知っていたのは、バルトル自身とハンゾウ、
そしてゲームマスターのニコラだけだったらしい。

「よくわかりましたね。びっくりさせようと思っていたのに」、仮面を脱いだバルトルが言う。

「ええ、確信は無かったんだけど。でも、バルトルさんの声って私の父のに少し似ているの。
 それで印象が強かったんだと思います。」

「ハッハッハ、参りましたね、僕のドッキリケーキ大作戦が台無しですよ」、などとハンゾウが
笑いながらボーイ達と喋っている。ハンゾウは意外とオヤジ臭いんだな、と思いながら
私はキラキラ光る不思議な色のオパールとムーンストーンをあしらった指輪をくすり指に
はめてみた。・・・ぴったりだ。

34 :小鳥:04/05/27 13:15 ID:???
「まぁ綺麗。羨ましいな。あのね、マリコさんって望めばゲームマスターから何でも貰えるのよ。
 何かお願い事してみたら?その指輪、ゲームマスターとの指輪と回線が繋がってるのよ。」

「回線?」私はメイドに聞き返した。

「ええ、なんて言えばいいのかしら、んー、ほら、パソコンの無線LANみたいなものよ。
 指輪と指輪はいつも交互に送受信を繰り返してるの。ゲームマスターの他にも
 その指輪を持っている人は何人かいるから、その人達からの交信があるかもしれないわ。」

へぇ・・・。だんだんゲームっぽい話になってきたな。そう私は思い、指輪を見つめた。

「誰かと交信したい時はどうすればいいの?」と疑問だった事を聞いてみた。

「えーと、どうするんでしたっけ、あ、バルトルさんも指輪持ってるのよ、バルトルさん、
 バルトルさん、説明してあげてください。」

するとバルトルは、指輪の表面を軽く擦り、「マリコさん」と小声で私の名を呼んだ。

すると今度は私の指輪のオパールの部分が光だし、『バルトルからの交信アリ』と
小さな文字が浮かび上がってきた。なるほど・・・

「送信する時は、ムーンストーンを擦り、受信する時はオパールの部分が光るのね」

「はい。何か用があるときはいつでも呼んでください。」
そうバルトルはニッコリと笑みを浮かべながら私に言った。

35 :小鳥:04/05/27 13:45 ID:???
バルトルとマリコたちが指輪の機能で色々と楽しんでいる頃

マリコの生徒、タイガーやカナコ達は「星立・イジスパーク」で火星に生えている木々や
火星に住む、マーズ・カルマ・ヨギン(無私の奉仕を業とするヨガ行者)達がジャナーナ・ヨガ
(火星的哲学知識によって得る鍛錬)を極めようとする動きをスケッチさせられていた。

「ねぇ、タイガー。」、タイガーの隣に座って行者をスケッチしていたカナコが喋りだした。

「いい加減、こんなの書いててつまらなくない?アタシ、ジャジャーナだか
 ジャージャナだか知らないけど、どうでもいいんだよね。はっきり言って退屈なんだけど・・・」

「ジャジャーナでもジャージャナでもなくて、ジャナーナだよ、カナコ。」、タイガーが言う。

「オレはこういうの好きだけどな。だってあの人達は、ヨーガを極める事によって
 何か神様とか見えちゃったり、神様とオハナシできたりするんだろ?
 いいじゃん。そういうの。オレもたまに死んだ婆ちゃんと話したい時とかあるしさ。
 マスターすればなんか裏技とか使って、自分だけの空間とか作れちゃったりもできるって
 聞くしさ。カナコはあの人達じゃなくて、花とかスケッチすればいいじゃん。
 カナコは可愛いから、お花とかよく似合うよ。ほら、あの紫の花とかさ。」

と、タイガーはカナコのご機嫌を伺うよう慎重に言葉を選び、最後に少し彼女を褒めておいた。
カナコは時々意味も無く突発的にヒステリーを起こす事があるからだ。

「花ね。わかった。描いてみるね。終わったら見せ合いっ子しようね。」
「うん、今日はアリーズが相当機嫌悪いらしいから、サボんないほうがいいよ。」

「だね。マリコババァはどこいったんだろ。まぁいないほうが静かでいいんだけど・・・」
「だからさぁ、ババァって言うのやめよーよ。まだあの人23とか24だろ?」

タイガーが荒めな口調でカナコを叱るとカナコはシュン・・・と犬のようにすねてしまい、
タイガーに背を向けて、花をスケッチし始めた。
やれやれ・・・とタイガーは思ったが、当然、口には出さずにいた。

36 :小鳥:04/05/27 15:02 ID:???
部屋に戻ったマリコは指輪をみつめ、地球での大学時代の頃の自分を思い返していた。

・・・ツカサという一つ年下の男と私は当時付き合っていた。
小さい頃からずっとバスケをしていて、鍛えぬいた美しい体を持っていた。
優しく、人当たりのいい明るい性格の彼は皆から「ツカジー」とあだ名で呼ばれていて、
私も時々冗談でツカジーツカジーなどと呼んだ事があった。
屈託のない笑顔を私によく見せてくれていた。

でもある時彼はオカシクなってしまった。何かきっと原因があったのだろう。
でも私は最後まで彼が正常なんだと、今は少し、混乱しているだけなんだと、思い込もうとしていた。

私達は彼が「僕はもう正常では無い」、と私に告げた時から
なんだかよそよそしくなってしまい。大切な会話を避けて通った。
「感情で話す事は大事だ。」
「でも感情を話す事はもっと大事だ」と彼は言った。
私にはどちらも同じ意味にしか取れなかった。

でも、今はなんとなく彼の言いたかった事がわかる気がする。
感情で話すこと、感情を話すこと、多分ちょっとだけの違い、でも大きな違いが
彼にとってはあったのかもしれない。

私はきっと、いつも感情で話していて、
彼はもっと、私に感情を話して欲しかったのではないか、と今は考える。

そして私達はよく喧嘩をした。

37 :小鳥:04/05/27 15:20 ID:???
いつだか忘れてしまったが、ある日ツカサは私にこう言った。

僕はね、詩人になりたかっただけなんだ。
賞なんていらない。欲しくないんだ。受け取りにはいけないんだ。
パーティになんて出る意味がないんだ。必要性がわからないんだ。
君はいつもパーティを主催しているね。沢山のパーティにも出席しているね。
そう、静けさを紛らわす為に。

僕はただ、色んな事を書きたかっただけだ。
例えば、そう、一瞬で過ぎ去ってしまう事をね。
そう、今の君の腕の中のその花の様子だとか
枝とか茎とか匂いとか。その花の気持ちとか、君の気持ちとか
それから感触。花びら。散ってゆく気持ち。
君や僕の考える全ての感情。その感情の積み重ねの歴史。
自分が誰だったのかってね、書きたかったんだ。
君が誰だったのかってね、好きだからね、残したかっただけなんだ。
世界中のものが全て混在しているんだよ
そう、まさに今の僕の頭の中みたいに。
でも、こうして君に喋っている間も僕は今の気持ちを書き留めたいと思う。
・・・違う、違うよ。触れ合って、抱き合って、君とキスして他愛もないお喋りは好きなんだよ
でも、違うんだ。何かが違うんだ。僕は失敗したんだと思う。何かに。
失敗したんだよ。くだらない自惚れ、愚かさや計算に。
どんな風にはじまっても、終結は結局のところ淋しいものでしかないんだ。

君は怒るかな・・?(もしあなたが私を一人でパーテイにいかせたら?)
違う、もし僕が死んだらだ。(・・・・・・)

僕は君の欲望を満たすために今生きているんだ。
(・・・そうね) (お互いそうなのかもしれないわよ) (皆きっとそうなのよ)
 (ねぇ、わかってよ)
愛してるよ。 (私だって愛しているわ。。)

38 :小鳥:04/05/27 15:33 ID:???
私はどうしてこんなにまで彼が言っていた事を鮮明に思いだせるのだろう・・・。
昔はこんな風に考える事は無かった。どうしてだろう。
このゲームの中の空間が、私の脳のどこかを弄くりでもしたのだろうか。

私はツカサの事を思い出していたら次第に涙が溢れてきた。

彼が居なくなってしまう、前日、彼は私にこう言った。

「僕がいなくなったら、君は今度は自分の事を考えなくちゃいけなくなるんだ」

そうだ。その通りだった。それからの私は、彼の居ない生活を
どう生きていいのかわからず、しばらくの間ずっと一人、闇の中を彷徨っていた。
依存というものは怖い、と心底思ったのだった。

でも、どうにか私は今、生きて、ここにいる。呼吸をしている。
自分の事も考えられる。
でも、涙が止まらない。

どうしよう、助けて欲しい。ツカサがここに居たら・・・
私は何気なしに、気付いたら指輪を擦っていた。

私が泣いているせいだろうか。指輪がとても輝いて、光を放っているように見える・・・。
ああ、泣いているせいではない、本当に光っているのだ。

『少女からの交信アリ』・・・文字が浮かびあがっている。
私はオパールをそっと触り、少女からのメッセージを待った。

39 :小鳥:04/05/27 15:44 ID:???
「どうして泣いてるの?」

少女が私の前に現れ、そう言った。

「どうしてだろう。哀しいからかしら。」

「じゃあ、どうして哀しいの?」

私は返事に困る。どうしてなのだろうか。。

「自分で自分の事がわからないという自覚があるからかもしれない。」
そう私は答えた。

「そう?そんな風には見えないけど。」
少女は喋り続ける。

「ねぇ、私、病気なの。あなたがさっき思っていたツカサさんという人と多分同じ病気よ。
 だから、今こうして、あなたとコンタクトが取れたんだと思うの。
 私ってね、病気を治したいのか、それとも病気のままでいたいのか、わからないの。
 病気のままの可哀相な自分が居心地がいいのかもしれない。
 でも、居心地が悪い部分だって多いのよ?だからね、あのね、とりあえず
 少しの時間、私とお話してくれる?お願いなの。」

「もちろんよ。」と私は言う。だって、これは私が望んだ事でもあるんだから。
少女はツカサと同じ病気だと言う。ツカサの事も少女の事も、少しでもわかれば
今よりは少しは楽になるだろうか・・・

40 :小鳥:04/05/27 16:00 ID:???
「私ね、今、住みたくもない場所に住んでいるの。
 なのにね、私がそこを出たいと言うと皆、恩知らずめ、って私を怒鳴るのよ。
 むしろ私は、私の時間を返してよ!って思うのよね。絶望の中で叫んでいるの。」

少女は話を続ける。

「どうしてこんな事になったんだろう、って毎日毎日思ってるわ。
 でもね、周りの人にそれを聞くと、君には前歴があるから、って言われるだけで
 そこでお終いになっちゃうの。ん、前歴って?ああ、私の前歴。彼らが言っている
 私の前歴は多分、三度の自殺未遂の事だと思うわ。いつも、誰かが邪魔するの。
 私を死なせてくれないの。ツカサさんも同じ事言ってなかった?」

ああ・・・確かにツカサも誰かがいつも邪魔をする、と言っていた・・・
私はまた少女の話に耳を傾ける。

「もうね、私、そろそろ、私のオウチに戻ってもいい時期なはずなの。
 でもね、それを言うと、皆は、それは君の病の声だ、君の声じゃないって言うのよ?
 信じられる?私の声に決まってるじゃない。そもそも病の声っていうのは何なわけ?
 私、あの場所で暮らし続ける事と、死とを選ぶとしたら、間違いなく死を選ぶわ。」

でも、誰かが邪魔するのよね。そう私はポツリと呟いた。

「そうなの、邪魔するのよ、私には前歴があるからって、幻聴や幻覚があったから駄目だって。
 でも、私、私なりに自分のことキチンと考えているのよ。そう、一人で戦ってもいるの。
 深い深い、真っ暗な川の底で闇の中、光を求めて戦っているのよ。」

少女は感情が昂ぶり、目頭と鼻が次第に赤くなっていった。

41 :小鳥:04/05/27 16:22 ID:???
ツカサは私を失う恐怖と戦っている、と言っていたわ。
そう私が言うと、少女はそれに反応してきた。

「そうね、誰もが何かを失う怖さと戦っているわ。それは私もよ。
 怖がる権利は私にだってあるわ。全ての人間にあるはずよ。
 なのにアイツ等ったらちっともその事をわかってくれやしないの。
 どんなに惨めで最悪の状態の患者でも
 『処 方 箋』に関する決断は本人次第じゃなくって?
 個々の人間性が決めることだと私は思うの。
 私は、あそこの息が詰まるような無感覚さより、
 オウチに帰りたいの。オウチやその周辺の街の激しく行き交う人々や
 鳥や、猫や犬や機会の音が聞きたいの。それが私の決断なのよ?
 でも、誰もわかってくれやしない。。。私、もうどうしたらいいかわからないのよ」

そうね、、もしかしたら響きあう街のほうが
静けさしかないその場所よりかは毎日何かしら新鮮味があるかもしれないわね・・

「新鮮味・・・。ああ!私今とんでもない事を思い浮かべちゃったわ!
 何の事だかわかる?それは私がオウチに帰っても、段々と新鮮味を感じなくなって
 今と同じ状態に陥ってしまう事。ああああああああああああ!!!ねぇ、私、オカシイ?
 私、オカシイの?ねぇ、客観的に見てマリコはどう思うの?」

私はツカサがいつだか言っていた台詞を口にした。

「あなたの今までの生きてきた道、それからこれからの未来を直視してみたら?
 本当にあなたは深い川の暗闇の中で光を探していたの?
 ただ、深い川底を光の上から覗いてるだけではなかったの?
 生きるという事を直視して、それが何だか解る為に常に直視して。
 そして最後に理解してあげて、愛してあげて、そして、いつかは解き放ってあげて・・・」

42 :小鳥:04/05/27 16:32 ID:???
そこまで私が喋り終わると、少女は泣き崩れてペタンと地面に座りこんでしまった。

「大丈夫、あなたはオカシクなんてないわ。
 自信を無くさないで。自身を無くさないで。
 どちらも無くすと大変なことになるわきっと。あなたはオカシクない。
 ただ、少し、混乱しているのよきっと。あなたの声はあなた自身の声よ。
 他人の声なんかじゃない。今は、したくない事はしなくていい。
 したい事だけをすればいいのよきっと・・」

私がそう、彼女の頭を撫でながら語りかけていると
彼女はカクンカクンと首を落とし、私の膝の上でいつしか眠りについてしまった。
そして少女は段々と姿形、色が薄くなっていき、透明になり、
最後は一粒の涙でできたであろう結晶を残し、消えていってしまった。

でも、私は忘れない。彼女が消えゆく寸前、

「でも、それでも、好きなことをしていても、時間には直面しなくてはいけないんだわ・・・」
と、ソッと泣きながら呟いていた事を。

そう、時間は常にやってくる。今も、このまた今も、永遠に。
私は彼女が残した涙の結晶をそっと枕の下に隠し、誰にも彼女の哀しみが
見つからないようにと強く願った。

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