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◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう20◇◆◇◆

1 :名無し草:04/03/30 20:23
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
 前スレ http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1077084801/l50

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、スレも華やぎます。

関連サイト、お約束詳細などは>>2-10の辺りにありますので、ご覧ください。
特に初心者さんは熟読のこと!


2 :名無し草:04/03/30 20:24
一等自営業阻止

3 :名無し草:04/03/30 20:24
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
 前スレ http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1077084801/l50

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、スレも華やぎます。

関連サイト、お約束詳細などは>>2-10の辺りにありますので、ご覧ください。
特に初心者さんは熟読のこと!


4 :名無し草:04/03/30 20:25
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)

<原作者及び出版元とは全く関係ありません>

・初めから判ってる場合は、初回UPの時に長編/短編の区分を書いてください。

・名前欄には「タイトル」「通しナンバー」「カップリング(ネタばれになる
 場合を除く)」をお願いします。

・性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記してください。

・連載ものの場合は、二回目以降、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」
 という形で前作へのリンクを貼ってください。

・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨明記を。

・作品UPする時は、直前に更新ボタンを押して、他の作品がUP中でないか
 確かめましょう。重なってしまった場合は、先の書き込みを優先で。

・作品の大量UPは大歓迎です!




5 :名無し草:04/03/30 20:25
自営業阻止

6 :名無し草:04/03/30 20:25
◆その他のお約束詳細

・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話であっても、
 それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。

・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加
 しやすいように、なるべく名無しで(作家であることが分からない
 ような書き方で)お願いします。

・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など
 自由にお使いください。

・950を踏んだ人は新スレを立ててください(450KBを越えた場合は
 早めにスレ立て準備をして、485KBくらいで新スレを)。
 他スレの迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。




7 :高句麗 ◆OIZKOUKURI :04/03/30 20:26

            ノ ‐─┬       /
          ,イ  囗. |      / _ 丿丿
            |    __|    ―ナ′
                     /  ‐' ̄
              ,‐       /
            ナ' ̄       /   、___
     /      ノ`‐、_
    / _ 丿丿  _メ       | _/
  ―ナ′     〈__         X / ̄\
   /  ‐' ̄               / V   /
   /       \   l       レ ' `‐ ノ
  /   、___  Χ ̄ ̄〉
             \ 丿       /
              \          / _
                    ―ナ′__
     | _/       ̄ ̄〉     /   ,
    X / ̄\       ノ     /  _|
   / V   /             /  く_/`ヽ
   レ ' `‐ ノ  ―――'フ
              / ̄      ┼┐┬┐
               |          〈 /  V
              `−      乂   人

            ┼‐      |  ―┼‐
            ┼‐       |    |
            {__)      |   _|
                      |  く_/`ヽ


8 :名無し草:04/03/30 20:26
◆初心者さんへ

○2ちゃんねるには独特のルール・用語がありますので、予習をお願いします。
 「2ちゃんねる用語解説」http://www.skipup.com/~niwatori/yougo/

○もっと詳しく知りたい時
 「2典Plus」http://www.media-k.co.jp/jiten/
 「2ちゃんねるガイド」http://www.2ch.net/guide/faq.html

○荒らし・煽りについて
・時々、荒らしや煽りが現れるかもしれませんが、レスせずスルーしてください。
 指差し確認(*)も無しでお願いします。
 *「△△はアオラーだからスルーしましょう」などの確認レスをつけること

・荒らし・アオラーは常に誰かの反応を待っています。反撃は最も喜びますので、
 やらないようにしてください。

・放置されると、煽りや自作自演であなたのレスを誘い出す可能性があります。
 乗せられてレスしたら、その時点であなたの負けです。くれぐれもご注意を。

・どうしてもスルーできそうにない時は、このスレでコソーリ呟きましょう。
 「■才殳げまιょぅ■タロ無し草@灘民【3】」(通称:ちゃぶ台スレ)
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1032266474/l50
 (注)有閑スレのことだとバレないように呟いてください
   このスレで他の人のレスに絡んだり、このスレのログを他スレに
   転載したりは、しないでください。

○誘い受けについて
・有閑スレでは、同情をひくことを期待しているように見えるレスの
 ことを誘い受けレスとして嫌う傾向にありますので、ご注意を。
 語源などの説明はこちら
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/172

9 :名無し草:04/03/30 20:26
◆「SSスレッドのガイドライン」の有閑スレバージョン

<作家さんと読者の良い関係を築く為の、読者サイドの鉄則>
・作家さんが現れたら、まずはとりあえず誉める。どこが良かったとかの
 感想も付け加えてみよう。
・上手くいけば作家さんは次回も気分良くウプ、住人も作品が読めて双方ハッピー。
・それを見て自分も、と思う新米作家さんが現れたら、スレ繁栄の良循環。
・投稿がしばらく途絶えた時は、妄想雑談などをして気長に保守。
・住民同士の争いは作家さんの意欲を減退させるので、マターリを大切に。

<これから作家(職人)になろうと思う人達へ>
・まずは過去ログをチェック、現行スレを一通り読んでおくのは基本中の基本。
・最低限、スレ冒頭の「作品UPについてのお約束詳細」は押さえておこう。
・下手に慣れ合いを求めず、ある程度のネタを用意してからウプしてみよう。
・感想レスが無いと継続意欲が沸かないかもしれないが、宣伝や構って臭を
 嫌う人も多いのであくまでも控え目に。
・作家なら作品で勝負。言い訳や言い逃れを書く暇があれば、自分の腕を磨こう。
・扇りはあまり気にしない。ただし自分の振る舞いに無頓着になるのは厳禁。
 レスする時は一語一句まで気を配ろう。
・あくまでも謙虚に。叩かれ難いし、叩かれた時の擁護も多くなる。
・煽られても、興奮してレスしたり自演したりwする前に、お茶でも飲んで頭を
 冷やしてスレを読み返してみよう。
 扇りだと思っていたのが、実は粗く書かれた感想だったりするかもしれない。
・そして自分の過ちだと思ったら、素直に謝ろう。それで何を損する事がある?
 目指すのは神職人・神スレであって、議論厨・糞スレでは無いのだろう?


10 :名無し草:04/03/30 20:38
テンプレは以上です。
前スレが急に落ちそうになって慌てて作業したため不備があったらゴメンョ

新スレなのでsageチェックよろしくね!

11 :名無し草:04/03/30 20:56
>1
乙ですー。

12 :名無し草:04/03/30 21:39
>1
おつかれさまでした。

それにしても怒涛の埋め立て?だったねw
急にスレが進んでてビックリしたyo!

13 :名無し草:04/03/30 21:41
ほんと何だったんだろう。
それにしても本スレも20まで来たか、感慨深いなあ。
記念○○とかしないの?w

14 :名無し草:04/03/30 22:57
忘れ物発見。>>2に入る筈のやつね。


◎関連スレ「まゆこ」
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 本スレのお約束やスレの今後について話し合うスレです。
 次スレのテンプレ相談などはこちらで。

◎関連サイト「有閑倶楽部 妄想同好会」
 http://freehost.kakiko.com/loveyuukan
 ここで出た話をネタ別にまとめてくださっているところです。
 古いスレのログも置いてあります。

◎関連BBS「妄想同好会BBS」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 「有閑倶楽部 妄想同好会」の専用BBSです。
 本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレなどがあります。

◎関連絵板「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 「有閑倶楽部 妄想同好会」の専用絵板です。
 イラストなどがUPできます。

◎関連スレ「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 「有閑倶楽部 妄想同好会」内にあるアンケートスレです。
 ゲストブック代わりにドゾー。

15 :名無し草:04/03/30 23:10
>1&14
スレ立てありがd。

このスレでも、マターリ楽しめますように。

16 :名無し草:04/03/30 23:25
スレたて乙です。もう20か…
マターリできますように。

17 :名無し草:04/03/31 00:22
>1
おつかれさまです。
新スレで、うpラッシュが再来するでしょうか。ドキドキ。楽しみです。

18 :名無し草:04/03/31 01:38
>17
うpラッシュか、、、前スレのラストでコピペ厨が出たせいで
今夜はみんな様子見してるんだろうな。ガッカリだよ。
私が作家だとしてもコピペの嵐の中では
自分の作品も盗作コピペと思われそうだから、うpしないもんな。

19 ::04/03/31 07:57
>14
ありがとー。自分で自分の慌てっぷりがオカシイ。

まだ作品うpないんだね。作家サン達お待ちしてますぞ!

20 :名無し草:04/03/31 08:08
正直、ちょっと様子見してますた。
落ち着いたらまたすぐに、作品うpさせてくださいませ。

兎にも角にも>1さん お疲れ様&スレ立てありがとうでした。

21 :名無し草:04/03/31 10:53
>20
作家さんですね、さてさてどのお話でしょう。
今、けっこう連載がたくさんありますよね、最初のうpはどれだろう・・・
と予想するだけでも楽しい。今夜あたり読めるのかな?
お待ちしてます!

22 :桜 〜美童〜   :04/03/31 16:09
スレ立てお疲れさまです。-
短編をうpさせていただきます。
3レスおじゃまいたします。
美×悠(美×見知らぬ青年?)・・・・・・です。


23 :桜 〜美童〜 (1)   :04/03/31 16:10
16歳の春の日。
地に落ちる淡雪のように、僕は偽りの恋を終えた。


春の陽射しが暖かい、道沿いの桜並木。
大学生の彼女からのリクエストで、あふれんばかりのバラの花束を抱えて
僕は待ち合わせ場所へと、歩いていた。

6人が一緒にいるようになって、丸一年。
当たり前のように、魅録の隣で笑う悠理を見るようになっても
ようやく心は痛まなくなっていた。
勝てない勝負は、しない。


数メートル前を、スーツ姿の青年が歩いている。
1mは越すだろうと思える、大きな荷物を抱えていた。
フラフラしながら歩いていたから 危なっかしかったが
案の定、青年は2、3歩も歩かないうちに荷物とともに転んだ。


24 :桜 〜美童〜 (2)   :04/03/31 16:11
「大丈夫ですか」
僕は駆け寄った。
「すみません・・・・・・いてて」
手を貸すと、青年は放り出された荷物に目を向ける。
「あぁ、ぬいぐるみが」
大きな荷物の正体は、巨大なクマのぬいぐるみ。
「・・・・・・プレゼントですか?」
袋から飛び出たクマのほこりを払いながら、僕はたずねた。
「ええ、いい歳をした女性になんですが・・・・・・」
「女性はいくつになっても、かわいい物が好きですからね」
照れ笑いする青年に、僕は微笑んだ。

青年は、白い花が咲いている枝を一本持っていた。
丸みをおびた花びらの形は、桜の花によく似ている。
「キレイですね・・・・・・何の花ですか?」
青年は、枝を差しだす。
「白い、桜の花です」
白い桜――。
意外だった。
桜の花びらは、全てピンク色。
そう思っていたから。




25 :桜 〜美童〜 (3)   :04/03/31 16:12
「片想いなんです」
「――え?」
「ぬいぐるみを、あげる人に」
青年は、頭上を仰いだ。
桜の木々が、春を告げる風に吹かれながら、さざなみを繰り返す。
「想いが通じ合っていなくても、その人の笑顔が見たい。
ただ、それだけなんです」
雪のように白い桜の花びらが、くるくるとらせんを描く。
「それが、他の誰かのための、笑顔でも」


「これ、どうぞ」
僕は、持っていたバラの花束を差し出した。
「プレゼントと一緒に、彼女に」
「でも――」
戸惑っている青年に、僕は少し寂しげに微笑んだ。
「もう、いりませんから」



26 :桜 〜美童〜 (4)   :04/03/31 16:12
青年は、お礼を言って桜並木に消えていった。
僕は振り向いて、元来た道を歩きだした。
一面に広がる、揺れ動く桜の木々に心を見透かされているようで
たまらなくなって、走りだした。

『笑顔が見たい。
ただ、それだけなんです』

走っても走っても、桜は僕を追ってくる。

『それが、他の誰かのための、笑顔でも』

白い桜。
届かない、想い。

涙が、頬をつたった。


27 :桜 〜美童〜    :04/03/31 16:14
3レスではなく、4レスになりました。


以上です。
ありがとうございました。


28 :名無し草:04/03/31 17:24
>桜 〜美童〜
桜シリーズ、どのお話も切ないですねえ(涙)
魅録→野梨子、美童→悠理ときたら清四郎→可憐ですね。
次も楽しみにしています!

29 :名無し草:04/03/31 20:09
>桜
やった!急いで帰宅した甲斐ありw
乙女な美童がちょっと意外でしたが、すごく切ないです。
清四郎はどんな想いを抱えているのだろうか、と期待させられちゃいますね。

ちょうど桜も満開で、すばらしいタイミング。
作者様、楽しみにしております〜


30 :名無し草:04/03/31 20:55
スレ立てお疲れ様です。
「横恋慕」を続けさせていただきます。
魅×悠×清の三角関係で、暗めの展開ですので、苦手な方はスルーして下さいませ。
前スレ>723の続き。5レスいただきます。


31 :横恋慕(22) :04/03/31 20:56
「おいおい剣菱、そんな頭で大学に進学してやっていけるのか?心配だな」
同情するような教師の声に、クラスメイト達がくすくす笑った。
そんなの慣れっこのはずなのに、今日はぐっさりと胸に突き刺さる。

授業が終わっても、あたいは教科書を握りつぶしたままじっと俯いていた。

仕方ないじゃん。どーせあたいはアホなんだから。
どーせ、どんなに頑張ったって、バカにされるんだから。認めてなんかもらえないんだから。
いいんだ、裏口入学って言われたって。大学には一応行けるんだから。
泣いたりなんかするもんか。絶対に、するもんか。

パフッと頭を押さえられ、あごを上げて後ろを見る。
「何だよ悠理、あんなの気にすんなよ。お前らしくねーぞ」
あたいの頭をぽんぽんやってから、魅録は隣の席に座って背もたれに肘をかけた。
さっきあたいを笑い者にした奴らは、もうとっくに帰ってしまったみたいだ。
「・・・別に」
目を落とすと、頬杖をついて窓の外を見る。


ここから眺める景色が好きだった。
広い校庭の向こうには、懐かしい中等部の校舎。あたいとずっと一緒に育った桜の木。
みんな、みんな、大好きだった。

あと何日、ここに座っていられるんだっけ?


32 :横恋慕(23):04/03/31 20:57
「なあ、魅録・・・」
そのままの格好で名前を呼ぶと、ん?という優しい声で応じてくれる。
「・・・・・・お前さ、なんであたいなんかと・・・つき合おうなんて・・・」
途中で涙が出そうになって、うまく喋れない。
肩ごしに、ふっと笑う気配を感じた。
「さあ、なんでだろうな」
「金持ちだからか?それともさ、気ィ使わなくていいから、一緒にいてラクなのか?」
椅子を引く音がして、魅録は今度はあたいの机の正面に立った。
小さなため息と沈黙に、あたいはちょっとだけ身をすくめた。

「・・・俺を清四郎と一緒にすんなよな」
涙が出てないことを確かめてから目を上げると、少しだけ不機嫌そうな顔の魅録がいる。
「俺は、悠理自身が好きなんだ。お前の元気なとことか、素直なとことか・・・とにかく全部だよ」
まっすぐにあたいの目を見ながら、そう言って照れくさそうに微笑んだ。

いつもぶっきらぼうな喋り方だけど、魅録は欲しい言葉をちゃんと与えてくれる。
あたいの気持ちを、魅録はいつもあったかくしてくれる。包んでくれる。
それなのに・・・あたいはどうして、まだこんなに悲しいんだろう。
ありがと、って言う途中で震え出した唇を、噛みしめて机に突っ伏した。
もう、どうしたらいいのかわかんない。

「・・・気分直しにバイク飛ばすか?」
あたいを気遣う声に、黙ってただ首を振る。

それでも動かない影に向かい、手をちょっと上げてバイバイする。
魅録はもう一度あたいの頭を撫で、そのまま帰って行った。



33 :横恋慕(24) :04/03/31 20:58
ふと身を起こすと、いつの間にか教室中がオレンジ色に染まっていた。
ピンポン玉みたいな太陽が、体育館の屋根に半分沈みかけている。
ああ、もう帰んなきゃ、だな・・・。ペチペチと両手でほっぺたを叩き、気合いを入れようとした。

不意に誰かの気配を感じて、手を止める。
ドクン、と身体の中で音がした。
絡み付くような視線が、あたいの背中に注がれていた。
・・・いつから、見てた?・・・あたいが気付くのを・・・待ってた・・・?

後ろのドアの方から、ゆっくりと靴音が近付いてくる。
コツン、コツン、とゆるやかなリズムを刻む。その度に、胸がきしんだ。

ぎゅっと目を閉じた時、頭の上にぬくもりを感じた。
何も言わず、そいつはくしゃくしゃとあたいの髪を撫でる。
あたいはこの手をよく知ってる。この癖は、魅録なんかじゃないことを知ってる。
心臓が縮こまって、上手に息ができなかった。

「何を・・・そんなに落ち込んでるんです」
囁くような柔らかい声が降り注ぐ。
体が痺れそうになって、やっと開けた目をもう一度瞑って大きく息を吸う。
落ち込んでなんかない、って怒鳴ってやりたいのに、声になりやしない。
体中が心臓になったみたいだ。震えが伝わって、机がカタカタと音を立てている。
早くその手を離せってば。あたいは動物でもガキでもないんだからな。
「・・・何か用かよ」
やっとの思いで絞り出す。精一杯、不機嫌な声を。

すっと重みが消えた。そいつは隣の机に浅く腰掛けたみたいだ。


34 :横恋慕(25) :04/03/31 21:00
「ちょっと言いたい事がありまして、ね」
硬い声だ。さっきとはずいぶん違う。
「魅録が一人で帰ったようなので・・・もしかして、まだいるのかと思って・・・」
言いにくいことなんだろうか。珍しく、言葉が途切れた。
視界の端で、落ちつかなげに膝に手をやったりしている。そうやって、ちょっと高い所から
しばらくあたいを見下ろしてる。

あたいだって落ち着かない。
顔を前に向けたまま、こいつが何をしに来たのか、ずっと考えてた。
「・・・昨日は言いそびれてしまったんですが、例の報告書の件で・・・その・・・・・・」
わざとらしく咳払いなんかして、どういうつもりだよ。

嫌な予感がした。
言いたい事って、きっとあたいが聞きたくないことだ。
鼻の奥の方がツンとしてきて、何度も瞬きをして必死で堪えた。
また胸が苦しくなってきて、じっと俯いて身を硬くする。
「悠理・・・」
あたいの名を呼んでから、ふうーっと長く息を吐いた。
「話を聞く時くらい、こっちを向いたらどうなんだ」
咳払いの次はため息か。何でお前はいつもそんなに偉そうなんだよ。

ああ、そっか・・・わかったぞ。


35 :横恋慕(26):04/03/31 21:02
「・・・また説教かよ」
「え?」
この男にしては珍しい、間抜けな声が聞こえた。
「字が汚いとか、文が変だとか、いい加減にワープロくらい使えるようになれとか、そういう・・・」
「悠理、そうじゃありませんよ・・・」
また、声のトーンが変わった。
嗜めるような口調にカッとなる。

「・・・あれでも精一杯頑張ったんだ。約束だって守ろうと思ったんだ!努力したってダメなもんは
ダメなんだって、お前だって知ってるくせにさ、そうやっていっつもネチネチ説教ばっかだ!」

授業中にあたいを振り返って笑った奴らの顔を思い出す。
こんな問題ができないのか?中学生レベルだぞ、と呆れた教師を思い出す。

感情がどんどん昂ってきて、あたいは慌てて立ち上がった。
逃げ出す理由なんて訊かれても困る。ただ、こいつの前で泣くのは嫌だった。
「待て、悠理。早合点するな・・・」
ガタッと音がした。そいつも立ち上がったらしかった。
「わかったよ!もうわかったから言わなくていいよ、じゃあな!」

鞄を取ろうとした腕を、ものすごい力で掴まれた。
「このバカ!最後まで話を・・・」
「あたいに触るな!!」

叫んだ拍子に振り返ってしまったあたいの前に、夕陽に照らされた清四郎が立っていた。


36 :名無し草:04/03/31 21:06

すみません、[続く]を忘れました。

37 :名無し草:04/03/31 21:11
>横恋慕
うまく言えませんが面白くなってきました。
作者さん、続き早く読みたいのでよろしくお願いしますねw

38 :<暴走愛>:04/03/31 22:55
スレ立てお疲れ様です。
暴走愛うpします。清×野です。

39 :<暴走愛>第2章(124):04/03/31 22:56
>>前スレ739

闇が消えかかっていた。
林立するビルの狭間で陽が目を覚ましたのだろう。
数時間前にタクシーを飛ばしてきた道を、再びタクシーに乗って
清四郎は戻っていた。

柔らかな秋の陽の光を浴びて、ゆるゆるとビルの群れが起き上がってくる。
大通りはまだ車も少なく、人影もほとんど見えない。
清四郎は窓ガラスに映るか映らないかの己の姿をじっと眺めた。
ふと可憐の後ろ姿が脳裏に浮かび上がってくる。
名前を呼ばれ彼女は清四郎の腕をすりぬけていった。振り返りもせずに。
伸ばした背が彼を拒絶しているようでもあり。

 未練がましいな。
ガラスに映る自分に苦笑する。だがすぐに笑みは消えた。
胸が焼け焦げていく。
末端からじりじりと黒煙を上げて焼かれていく。
声を上げたくなる程熱く、心を焼いた煙が息を詰まらせる。
清四郎は腕を組むと痛みの根源に想いを寄せた。

家の近くで車を降り、少し歩くことにした。冷気が彼をかすめ、身を震わせる。
足元を舞う落ち葉に目をやりながら可憐の母のことを思う。
少し時間が経ったら又様子を聞きに電話してみようか。
そんなことを考え考え歩いていた清四郎は、家が見えるところまで来た時、足を止めた。
ジョギング姿の中年男が走って白鹿家の門前を通り過ぎる。
メガネをかけた男は息を切らしながら、清四郎の脇を走り抜けていった。
その男の後姿を見送るように、こちらに向かって立つ人物がある。

野梨子だった。

40 :<暴走愛>第2章(125):04/03/31 22:58
表情が蒼ざめて見えるのは朝の弱々しい光のせいだろうか。
和服姿に毛糸のショールを掛けた野梨子はわずかに笑んだ。
「お帰りなさい、清四郎。どこへいらしてたんですの?」

彼女の姿を見た時、明らかに顔色が変わったであろう自分を清四郎は恥じた。
可憐の母のことを説明しようとし躊躇する。
何から説明すればよいのかわからなかった。
そんな彼の様子を見て、野梨子が先に口を開いた。

「ゆうべ清四郎に電話をかけたんですのよ。ずっとお話中でつながらなかったんですけど。
馬鹿ですわね、それからさも無いことが気にかかって眠れなくなってしまって」
恨みがましくもなく、皮肉でもなく、ただ淡々と話す野梨子の姿に胸が詰まった。
清四郎が躊躇いながら口を開こうとするのを野梨子は遮る。

「いま、貴方が話そうとすることは本当のことですの? それとも嘘ですの?
どちらにしろ私にはわかりませんわ。私が選ぶのはただ、貴方を信じるか、信じないかだけ」
清四郎は肩で息をついた。言葉もない。
野梨子は独り言のようにつぶやいた。

「信じたらいいんでしょうか、信じないのがおかしいんでしょうか。
―――教えてくださいな、清四郎」

黙する清四郎に哀しい微笑みを向ける。
「答えてはくださいませんのね……」

ゆらりと彼に背を向けると、野梨子は門の中に消えた。
立ち尽くす清四郎を嘲笑うように爽やかな陽光が彼を照らし始めた。


続く



41 :名無し草:04/03/31 23:14
野梨子ぉ...

42 :名無し草:04/03/31 23:19
野梨子が可哀相すぎだよぉ...

43 :名無し草:04/03/31 23:42
>暴走愛
野梨子、もうやめとけ。そんな男。
これ以上泣くのは見たくないじょ。



44 :名無し草:04/03/31 23:49
>暴走愛

野梨子は確かにとても可哀相なんだけど、
清四郎も自分をコントロールできないところまで
きてるのかなと思う今日この頃。

45 :名無し草:04/04/01 00:07
>横恋慕
ああ、興奮しないでちゃんと話を聞けよ!悠理っ。

>暴走愛
内容もさることながら、描写が相変わらず素晴らしいですね。
記憶が曖昧になってきたので、嵐さんのとこで復習してきました。
ママのお店を守るために、可憐は清四郎を裏切って豊作さんに走るのかな…。
う〜、早く第一章につながって欲しい!

46 :名無し草:04/04/01 04:43
野梨子がいちいち鼻につく
ああ、作者タンの思う壺だ(w

47 :名無し草:04/04/01 10:26
>暴走愛
あぁ野梨子ぉ…
トリハダたちました。

48 :名無し草:04/04/01 11:10
>46
そう?のりこって前から(原作から)こんな性格だよ

49 :名無し草:04/04/01 12:03
暴走愛、うpありがとうございます。
本当に相変わらず素晴らしい描写。野梨子が立って待っている
ところなんて清四郎と一緒に読んでいる私の顔色まで変わって
しまいましたw
責めない野梨子の静かな怒りや悲しみが怖えぇ・・・。


50 :名無し草:04/04/01 16:22
>48
確かに!(w

51 :名無し草:04/04/01 21:22
今日はうpないのかなー。待ってますよん、作者さんたち!

52 :名無し草:04/04/01 21:29
48
え?野梨子はプライドが高いから、原作キャラだったら
こんなバカ男っぷりを発揮している清四郎なんてすぐに
捨ててしまいそうだけどな。
この野梨子は二人の恋愛を盛り上がらせるアホなピエロですな・・・
昼ドラ系って、アホなキャラがいないと成り立たないとは思うけどね。


53 :名無し草:04/04/01 23:20
>52
嫌味っぽいというところのみね。
アホって言い方ちょっと嫌だな

54 :名無し草:04/04/01 23:26
アホといえば、今日はエイプリルフールですね。
倶楽部内でだましあい〜なんてことはしないだろうか。

55 :名無し草:04/04/01 23:33
>53
んでもまあ、原作の野梨子はもっと潔いというのは分かる。
彼女の怖さっていうのは、こういうところに出るもんじゃないだろうなぁ。
可憐スキーは私としては、友達裏切って自分の悲劇に酔いまくりな
可憐は違うよーと思っちゃうし。
でも、ドロドロ昼ドラっていう名目だからねー。w

>54
エイプリルフールもうちょっとで終わっちゃうよ!
恋愛とかじゃなく、完全コメディで笑えるネタも見てみたい。

56 :名無し草:04/04/01 23:38
漏れもスカッとした笑える話も読みたいな〜。
エイプリルフールは今からはきつそうなので(w、それじゃなくてもいいから。
騙し合いだったら、是非とも清四郎を5人で騙してもらいたいYO

57 :名無し草:04/04/02 00:26
>54
触発されて、超短編小説(小ネタかな?)を速攻で妄想しました!
春休みですが、舞台は生徒会室です。
(ありがちなオチ&日付け変わっちゃったけど許して…)


58 :四月一日(1):04/04/02 00:27
いつもいつも清四郎に騙されてばかりの悠理は、悔しくて仕方がない。
今日こそリベンジしてやる…なんて思い立ったのがエイプリルフール。……バカにつける薬はない。
渋る魅録をどうにか抱き込んで、無理矢理芝居を打つことにした。

「なあ、清四郎…」
いきなりの魅録の声に、新聞から顔を上げる清四郎。
その腕に嬉しそうにしがみついている悠理を見て、眉を上げる。
「実は、俺達つき合うことになったんだ」
悠理はその後に続く「えっ??」という反応を期待して、緩みそうな頬を必死で引き締めていた。
だが、「あら…」と少し驚く野梨子の手を、なぜか彼はそっと握る。
「それはめでたいですな。僕達もですよ」
あんぐりと口を開け、顔を見合わせる魅録と悠理。
そこへガチャリとドアが開き、美童と可憐がいちゃつきながら入ってくるではないか。
「あ?あれ?何やってんの…?」
情けない声を出した悠理を、いきなり美童が抱き締めた。
「聞いてよ、悠理!僕達にベイビーが出来たんだ!」

「やだ〜恥ずかしいわ〜〜」可憐はしなを作っている。
「まあ、おめでとう可憐。お式はいつですの?」野梨子は可憐の手を取る。
「早い方がいいわ。ウェストシェイプしたドレスを着たいもの」と可憐。
「じゃあ、いっそ僕達も一緒にどうです?野梨子」嬉しそうに微笑む清四郎。

ぽかーんと口を開けていた悠理の瞳に涙が浮かぶ。
「なんで?いつの間に…?」

その瞬間、4人は一斉に吹き出した。



59 :四月一日(2):04/04/02 00:28
「きゃっはははは」「バカだよな〜、悠理って」「うふふ、お、おかしいったらありませんわ」
「くっくっく、僕らを騙そうなんて…相変わらず無謀ですねえ、この人は」
「…あーあ、俺まで一緒にターゲットにされちまった…」
すべてを理解し、苦笑する魅録の前で、悠理は清四郎と野梨子を交互に指さす。
「お前ら…つき合って…?」
「嘘に決まってるでしょう」「ねえ」あうんの呼吸で頷き合う幼なじみ達。
今度はドアの方を向き、悠理はさっき自分に抱きついた男をまじまじと見つめる。
「僕ら、子供が出来るようなことはしてないよな?」「あったりまえじゃないのよ!?」
こちらも息がぴったりだ。

わなわなと震え出した悠理を、清四郎はちょっと手招きした。
耳元に口を寄せ、彼は囁いた。
一回瞬きをした後、悠理の顔が火を噴いた。
「う…嘘っ!?」
「嘘です」
「へ??ほんとに?」
「本当ですよ」
「え?」
「やっぱり嘘です」
言いながら、清四郎は楽しそうに笑い出す。
「悠理の都合のいい方に解釈してくれて構いませんよ」

狐につままれたような残りの4人に構わず、彼はくっくと笑いながら出て行った。
「清四郎、何て?」可憐はくいくいと悠理の袖口を引っ張る。
でも、ドアを見つめながら、悠理はただボーッとしていた。
嘘とほんとのどっちが都合がいいか、考えるので精一杯だったから。

だって清四郎が言ったんだ。『僕が好きなのは悠理だけですよ』って。


+終わり+

60 :名無し草:04/04/02 00:41
>四月一日
んまぁ!清四郎ったらなんて罪作りな!w
こういう余裕たっぷりの清四郎って、らしくて大好き。
悠理って色気なくて妄想しづらいキャラだけど、
清四郎にいじられてる姿は、なんつーか、おばかで可愛いよなぁ。

リクに答えたさっそくの作品をありがとうでした。

61 :名無し草:04/04/02 00:49
うきゃー、>59萌えます。
たぶん恋したら一番綺麗になるのが悠理だと思うんだよなぁ。
乙女ちゃんになる悠理に期待モエ

62 :名無し草:04/04/02 12:33
>四月一日
イイ!!余裕たっぷりの清四郎、私も大好き。

63 :名無し草:04/04/02 15:11
清悠好きの人はよくポコポコと話を思いつけるなあ。
創作意欲がわくカポーなのか?
ある意味頭が下がり松。  
他のカポーもカモーンといってみるテストww

64 :名無し草:04/04/02 15:36
でも1番多いのはやはり清×野だよね。
やはり幼馴染カポー最強。
最近は清×可ものもよくupされてるし
男ではやっぱり清四郎のキャラに創作意欲がわくのかな?

個人的には美童に萌えているのですが・・・
美童モノは少なくて淋しいのだ。しょぼん
でもこのあいだの「美童と野獣」は萌えたよ。

65 :名無し草:04/04/02 18:49
>64
うーんと、私、清×野スキーだけど、好きなカプがなかなかうpされなくても、
そういう刺のある発言はここでは我慢した方がいんでない?
それこそ多いんだからそのうちうpされるだろうし、時期的に
清×野ばかりだった時期もあるし。
脊髄反射レスは止めて茶でも飲んで落ち着いてね。
もし清×野スキーを装った煽りだったら、私アホみたいなレスだけど。

大好きなカプだからこそ穏やかにやっていきたい私。

66 :名無し草:04/04/02 19:27
美童はねぇ〜原作で結構恋愛エピソードでてるから
おなかいっぱいっていうか、創作意欲があんまりわかないかも。
同じ理由で可憐もイマイチ意欲がわかないなぁ。

なんて、有閑ssを書いたことない私が言っても説得力ないけどw

67 :名無し草:04/04/02 19:36
>65
は? ・・・私64ですがちょっとビックリ。
私は清×野スキーじゃありませんけど・・・
単純にやっぱり清×野が多いよねぇという感想を書いただけなんですが
刺のある発言でしたか?
まったく全然悪意のあの字もなかったのにちょっとショック。
気を悪くさせてすみません。

よろしかったら今後の参考の為にどのへんが刺だったのか教えてください。
以降、その点に気をつけて書き込みたいと思いますので。

68 :名無し草:04/04/02 19:56
>>67
私は棘なんか感じなかったよ。
65読んで「へ?」と思ったくらいだし。
そんなに気にせずスルーした方がいいと思われ。

69 :名無し草:04/04/02 20:17
>67(64)
清×野は、前に誉め殺しみたいな粘着荒らしが沸いたから、
それ以来、ちょっと神経過敏になってる人がいるんだと思う。
私も64のレスに棘なんて感じなかった。

ただ一般に、二次創作の場合はカップリングの話で揉めやすい。
だから、カップリング同士を比べ合うこと(どっちのウプが多いとか
描かれ方の比較など)は、書かない方が無難だとは思うよ。
(個人的に「無難」と思っている、というだけで、「書くな」という意味
にはあらず)

70 :名無し草:04/04/02 20:25
ちょとこの流れに乗っかって。
幼馴染カポーは確かに量が一番多いから(妄想サイト参照
清×悠ならではの魅力も楽しく読んでます。作者さんたちありがとう。

71 :名無し草:04/04/02 21:21
私も70さんに賛成。それぞれに魅力があると思う。
話が面白ければ、どのカプでも、カプなしでもいいな…。
苦手だと思ったら読まないようにしてるし。

だから、どなたかお話カモ〜ン!
 と、こっそりリクかけてみる。

72 :サヨナラの代わりに (51):04/04/02 23:18
前スレ749の続きです。
>http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/long/l-50-4.html

私は魅録を中に招き入れ、ダイニングテーブルの椅子に座ってもらった。
戸棚から煎茶の缶を取り出し、急須にお茶の葉を3匙ほど入れ、ポットからお湯を注ぐ。
湯飲みと茶托をふたつずつ、別の戸棚から取り出してテーブルの上に置く。
お茶を蒸らすほんの僅かな間魅録をチラリと見てみると、手持ち無沙汰な様子でドアの方を
見ていた。
灰皿がない。
慌てて私は、水切り篭の中に残っていた小鉢をひとつ、魅録の前に差し出した。
「魅録、これでよかったら」
「悪いな……」
私の声に魅録はこちらに顔を向け、ポケットから煙草を取り出して火を点けた。

73 :サヨナラの代わりに (52):04/04/02 23:21
野梨子が、急須から交互にお茶を注いでいる。
俺は、逸る心を抑えるべく煙草を咥える。
時計の秒針の音が室内にやけに響き、俺はどうにも居心地が悪かった。
「この間、私、お見合いをしましたの……」
野梨子が唐突に話し始めたのは、お茶を注ぎ終わって椅子に腰掛けた時だった。
「それまではずっと断っていたんですけど、叔母さまに押し切られてしまって」
野梨子は両手で湯飲みを持ち、その視線は透明な緑色の上を彷徨っている。
「お相手の殿方も一度離婚してらっしゃる方で、多分、それもあって叔母さまはいつになく
 強引に話を進めてしまわれましたの……」
俺はここであえてそのことを知っているとも、ましてやその相手を知っているとも言い出せず、
出されたお茶に口をつけた。
お茶は、野梨子のことだからいいところのものを常備しているのだろう、さして味わいが
わかると言えない俺でもおいしいと思える。
俺は湯飲みを茶托に置いてから、野梨子を改めて見てみた。
その顔は俯き加減のまま両手は湯飲みから離れ、テーブルの上に置かれている。
「でも」
野梨子は一旦言葉を切り、溜息をついた。
恐らく、喉元まで言葉は出ているのだろうけど、言おうか言うまいか迷っているみたいだ。
目を逸らせた方がいいのかもしれないが、俺は次に出てくるであろう言葉がひどく気になって、
逆に野梨子を見つめてしまう。
野梨子はもう一度溜息をついてから、静かに顔を上げて言った。
「お断りしましたの。……私、ひとりで暮らし始めてから、自分ひとりで歩いていると
 勘違いしてました……。本当は、近くにいるひとにこんなに……」
野梨子の言葉がかすれがちになる。
見開いた大きな瞳から、ひとすじ、ふたすじと涙が伝い落ちている。
俺は椅子から立ち上がって野梨子の側に行き、野梨子は椅子に座ったまま俺を見上げる。
俺は右手を野梨子の左頬に伸ばし、涙を拭った。
「野梨子、もういいから……」
俺は野梨子の肩をかき抱き、漆黒の髪を優しく撫ぜ続けた。

74 :サヨナラの代わりに (53):04/04/02 23:21
俺に、迷いはなかった。
月明かりが僅かに差し込む暗闇で、俺は野梨子の唇を奪った。
素早く口腔内に入り込み、舌を絡め取る。
野梨子の腕が俺の首にまわされる。
息をするのが、少し苦しい。
だが、曖昧な関係に終止符を打つには、それ以外何も思いつかなかった。

【続く】

75 :名無し草:04/04/02 23:25
>サヨナラ
リアルで遭遇!
今回もいいところで【続く】
 
作家さんのイケズ〜(w


76 :名無し草:04/04/02 23:41
>サヨナラ
うぉぉ〜〜やったぞ魅録!とうとう!
作者さまの控えめな描写が、妄想をかき立てまする。
もう、走り出した二人を止めるものなどないはず。
(>75 ほんとは私も、もうちょっと読みたいけどw)

77 :名無し草:04/04/02 23:46
サヨナライケズ〜

78 :名無し草:04/04/03 00:56
>サヨナラ
自分の弱い部分もさらけ出せる相手っていいよね。
続き楽しみ!今日は安心して、眠れる…zzz

79 :名無し草:04/04/03 01:33
>78 私は今日も眠れないよ。
暗闇に二人きり。いきなり情熱的なキス。
その後が気になるよ〜

カップル話でいえば、私には魅×野が一番。
不良とお嬢様、萌え〜
野梨子との恋愛で、魅録ってかっこよさが際立つ気がする。
悲恋やせつない話が多いですけどね。

80 :横恋慕(27) 魅×悠×清:04/04/03 01:34
>35の続き

掴まれた腕が痛い。だけど、胸の方がもっと痛い。突き刺すような視線が、痛い。
「痛い・・・離せよ!」
ふりほどけるわけがないから、力任せに拳で手の甲を叩いた。
だけど、びくともしない。まるでロボットみたいな馬鹿力であたいをつかまえてる。
悔しい、悔しい、悔しい。
いっつもあたいをバカにして、意地悪ばっかりしやがって。
こんな乱暴なこと、野梨子には絶対しないくせに。可憐にだってしないくせに。

「離せってば!あたい、もう行かなきゃ・・・・・・そうだ・・・み、魅録が待ってんだ!」
魅録の名を出した途端、ぐっと力が入ってあたいは思わず悲鳴を上げた。
一瞬引き寄せかけてためらい、清四郎はあたいを放り出すようにして右手を離した。そのまま
その手で口元を覆い、深くて長いため息をつく。

「僕の話なんか、聞いてる暇はないってことか・・・」
やっと開いた口から出てきたのは、さっきまでよりずっと、冷たくて低い声だった。

清四郎はあたいから顔を逸らし、クッと喉を鳴らした。
そうして、一つ離れた机に凭れかかりながら、口の端だけで笑った。
「・・・で、今日も泊まるんですか?」
何もかも知ってる、って口調だった。疑問形だけど、質問なんかじゃない。
可憐だ。あいつ、面白がって言いふらしやがって!
体から血の気が引いていく。凍り付いてしまいそうだ。


81 :横恋慕(28) :04/04/03 01:35
「お、お前に関係ないだろ!?」
「・・・ええ、関係ありませんね」
やっとの思いで言い返したあたいをろくに見もせず、さらりとそう言って清四郎は窓の外へ視線を
投げた。彫刻みたいな硬い横顔が、夕陽を受けて朱に染まっている。
それが眩しくて、あたいは手をかざして光を遮る。
何を考えてるのか少しも読めないその顔を、あたいは息を詰めてじっと見つめた。
それだけ、か?言いたいのは。関係ないって、ほんとにそれだけなのかよ?

清四郎はすぅっと目を細め、それから、外を見つめたまま口を開いた
「しかし、魅録も物好きですな。よりによってこんな女を選ぶなんて・・・」

あたいは耳を疑った。
こいつ今、何て言った?
「そんな女と・・・結婚しようとまでしたのは・・・誰なんだよ」
声が震えて、言葉にならない。
まさか・・・あの時のことを、まさか忘れたわけじゃないだろうな。
「・・・お前だって、指輪まで・・・・・・」
震えてるのは声だけじゃなかった。膝がガクガクして、立っているのがやっとだ。

弾かれたように清四郎が立ち上がり、その瞳が、何かを探るようにまた細められた。
踏み出そうとする気配を感じてあたいは後退る。自分のバカさを呪いながら。
何言ってんだよ、あたい。なんであんな話を持ち出したり・・・。
「まさか、まだ・・・持って・・・?」
清四郎の黒い瞳が、揺れた。


82 :横恋慕(29) :04/04/03 01:36
あたいはその声から逃れようと、黙って頭を横に振った。
「・・・答えろ、悠理!」
長い腕が目の前にのびてきて、あたいの体からは力が抜けていく。
頷いてしまえ、と頭ん中で声がする。つかまってしまえ、とそいつは囁く。だけどあたいは
首を振った。ただひたすらに首を振った。

答えろ、って何なんだよ。命令すれば、いつだってあたいが言う事きくと思ってんのか?
バカにすんのもいい加減にしろよ。あたいにだってプライドってもんがあるんだ。
お前の思い通りになんか、死んでもなってやるもんか!

近付いてくる男の瞳に、あたいが映っていた。吸い込まれそうな気がして急に怖くなった。
腕を振り回し、頬に触れようとした指をやみくもに振り払う。
「とっくに捨てたに決まってんだろ!」
瞳の中の自分に向かって、めいっぱい叫んだ。
「大体、あ・・・あんなちっこい指輪で、あたいがお前になびくとでも思ったのかよ!!笑わせんな!」

差し伸べられていたはずの掌が、空をつかんで拳へと変わった。
そうして、あたいを睨みつけていた瞳をすっと伏せ、清四郎はいきなり笑い出した。

「なるほど・・・言う事だけはいっぱしだな。自分を・・・そんなに高い女だと信じてるのか?」
清四郎はちょっとあごを上げて、あたいを見下すような目を向けた。
口元は笑顔のように歪んでいたけど、その瞳は少しも笑っていなかった。
「冗談じゃない、自惚れるな」

立ち尽くすあたいの前で、清四郎はまた笑った。鼻先で、あたいを笑った。
「お前なんか、所詮剣菱のおまけだ。魅録だってきっと・・・」


83 :横恋慕(30) :04/04/03 01:38
乾いた音が教室に響いて、暴言男の身体が小さく揺れた。

うそ・・・
勝手に動いた右の手が、じんじんと疼く。
あたい・・・ひっぱたいた・・・?

斜め下を向いたまま、清四郎は無表情に舌の先で口の中を探る。それから、唇の端に滲んだ
血を親指で拭い、それに視線を落としながら、また、ふっと笑った。
「・・・平手打ち、か」

うそだろ・・・あたい何やって・・・・・・

「女の真似はよせ。似合わないぞ」
吐き捨てるように言い、清四郎は去って行った。一度も、振り返りはしなかった。


あたいはまた一人ぼっちになって、薄暗くなり始めた窓の外へ目を向けた。
ここから眺める景色が、大好きだったから。


だけど、涙でもう何も見えやしない。


[続く]


84 :名無し草:04/04/03 02:18
>>78

だからさぁ・・・そう言うこと言うから棘があるんだって。
うpしにくくなるじゃん。私的には粘着な清×野派より
野梨子マンセーな、魅×野派の方がよっぽど嫌なんだけど。
きつかったらごめん。

85 :名無し草:04/04/03 02:20
>横恋慕
寝る前に来てみたら、リアルで読めて嬉しかったので、感想を。
連載再開&連続うp、ありがとうございます>作者さま

三人三様の心の動きと、丁寧でリアルな描写に、ドキドキしながら読んでます。
悠理と清四郎のやり取りと、気持ちのぶつかりあいが、痛くて切ない。
前回の、魅録の言葉(気持ち)も、胸にじんときました。
これからどうなっていくのか……続きを心待ちにしています。

86 :名無し草:04/04/03 02:26
>84
78のどこが棘だか知らんが、sageろ。

87 :84:04/04/03 02:28
sage忘れてスマソ。それと>>79の方でした。
こちらもスマソ。

88 :名無し草:04/04/03 02:49
>84
とりあえず何派がこうだ、っていう言い方は止めた方がいいかと。
どのカプ好きにも色々な人がいて、目立つ何人かが全てじゃないんだからさ。
(逆に言うとどのカップリング好きにもおかしな人はいるわけだけどw)
特に好きな人の多いカップリングは目立っちゃうとは思うが、基本的には大多数が
大人しく読んでる人だと思うよ。

えらそうにスマソ

89 :名無し草:04/04/03 06:15
>横恋慕
楽しみに読んでます。今回はやり切れない展開だぁ。
意地張ってしまう悠理の気持ち分かるんだけど、
素直じゃない悠理は可愛くないぞーと思ってみたり。
しかしここまで余裕のない清四郎も滅多に見れないですね。

90 :名無し草:04/04/03 12:10
>>88
そだね。
私はここにお邪魔するようになってから、
それまでは食指がさほど動かなかったカプにも
新鮮な魅力を感じるようになった。
有り難いと思っているよ。

91 :名無し草:04/04/03 15:31
>横恋慕
今回初めて読んで興味を持ち、今嵐さまのところで
読んできました。それぞれの想いが絡み合って切ない!
続きを楽しみにしています。

92 :名無し草:04/04/03 16:18
>90
ホントにそうだね。
甚だガイシュツだけど美童の格好よさに気付かせてもらったのが一番の収穫。

>84
79にも棘は感じられないなー。
「私には魅×野が一番。」ってとこ?
好きなカプ話がツボにはまった喜びと興奮の声でしょ、79は。
みんなで仲良く妄想するスレなんだから、
と自分もなるべく偏向レスは避けるよう心掛けてはいるけどさ、
あんまり萌えた時にはついつい興奮のままに書き込んじゃうことだってある。
だから84みたいなこと言われると逆に感想しにくくなっちゃうよ。
ま、マターリ楽しみましょうや。

93 :名無し草:04/04/03 17:03
>84
79ですが、いったいどこが棘なんだか???
これくらいの内容で非難されるなんて言葉狩りですか?
「きつかったらごめん」なんて書いているけど
それ以前に、わけがわからないですよ。

94 :名無し草:04/04/03 17:11
つか、スルーしたほうがいいとオモワレ

95 :名無し草:04/04/03 17:18
せっかく連載も短編も花盛りなのに
作家さんたちが様子見に入ってそうな雰囲気ですね…。
マターリ希望。
どんな話でも小ネタでもいいからとにかく読みたいでつ。

96 :名無し草:04/04/03 17:54
>94
君はsageた方がいいと思われ

>84
>88も言ってるけど、このカプ好きはこうっていうレッテル貼りは良くないよ。
ちょっと前に出てた清×野スキーだって、多くがおとなしく楽しんでる人だろうし、
魅×野スキーだって皆が野梨子マンセーって訳でもないだろうに。

ちなみに漏れもここで美童の良さに気がついた一人です。
美童メインの話ももっと読みたいぞー。

97 :名無し草:04/04/03 18:24
うむ。個人的に、一番意外だったけど一番(・∀・)イイ!!と思ったのは美×悠かな。
今はかなりお気に入り。

98 :名無し草:04/04/03 18:40
美には野を推してる漏れ。軽蔑してる男の部類だったはずなのに
美童なりの良さに目覚め視野が広がる野梨子ってのもいいかなぁと。

99 :名無し草:04/04/03 18:51
皆、色々新たな分野を開拓してるんだねw
漏れも美×悠は、ここに来て目覚めたかも。
ほのぼのしててかわいいし、美童に女らしさを開発されていく悠理というのにもモエ。

100 :名無し草:04/04/03 18:55
すごい、美童大人気だ〜。
私は美×野も好きだし、意外な線で美×悠も面白い。
でもほんとに、自分では想像したこともないカプの話が読めるのもこのスレの魅力の一つだと思う。
これからも人気の組み合わせも、意外なカプも、ずっと楽しみにしてます。
モル×清も自分では絶対出て来ないけど爆笑だったし、杏樹とか豊作さんが絡むのも好きw
脇キャラだけで構成する軽いエピソード、とかも個人的にはアリかな?

101 :名無し草:04/04/03 19:03
>脇キャラだけで構成する軽いエピソード
それも面白そう。
ヴィヨンパパネタもかなり意外だったけど、結構好きでした。

102 :名無し草:04/04/03 19:10
司ちゃんと誉ちゃんと千福はまだ焼き芋売ってるのかなあ。
あと、元南中の番長って、結局清四郎の子分にはしてもらえなかったのかなあ。
ついでに、白波くんは野梨子に振られたあと、彼女できたのかなあ。
大学生になってるはずだよねえ。
いくらでも思い出してしまうあたしって、有閑ヲタク…?

103 :名無し草:04/04/03 19:12
私も、ここに来ていろんなカプのよさに目覚めた。
そんで、あるカプのよさに目覚めるごとにそれまで見逃してた話を
嵐さんとこに行って読んできてという感じ。
ほんと、このスレ好きだわ。

104 :名無し草:04/04/03 19:17
白波君が…思い出せない……。
本編読み返してきます。

105 :名無し草:04/04/03 19:23
実は野×悠もこのスレで目覚めました。
こればっかりは本気で考えつかなかったけど、読んでみたら面白かった。

106 :名無し草:04/04/03 19:31
>>105
その場合、魅→野×悠←清(魅と清は逆転有)なんてなるとほくほくしてしまう。グヒ

107 :名無し草:04/04/03 19:37
漏れはその逆転バージョンが結構好きかもw
清×野、魅×悠で付き合ってて、実は裏で野×悠がっていう話が過去何度かあったけど、
それが好きだったんだ〜。
振り返ると、本当に色々なカップリングがあるんだね。
まだ見ぬカップリングも見てみたい。

108 :名無し草:04/04/03 19:44
清四郎×野梨子ママなんてのも見てみたい。
母娘で恋のライバルって、わりとあるし。

109 :名無し草:04/04/03 19:45
まだ見ぬカップリング・・・

五代×悠理


スマソ。逝ってくる。

110 :名無し草:04/04/03 19:49
>>109
うわー、五代命掛け(笑 百合子さんにバレたらどうなるか。

杏樹総受けなんかもいいな。男三人は蚊帳の外で美童はぶーたれんの。

111 :名無し草:04/04/03 19:51
つまり、どんなカップリングでもカプ無しでも
色とりどりあって輝きも千差万別なのがこのスレの良いところってことで(・∀・)イイ!!でつかー?

という訳で・・・作家さん方花見の準備ができましたよー。
また百花繚乱の花盛りにしてくださいましー。首を洗ってお待ちしておりやす!

112 :名無し草:04/04/03 19:53
>108,109
年の差カップル、読みたい!!(でも五代には豊作が…)
野梨子にアタックしているうちに、ママに目移りしちゃって振られる美童とかも?
清四郎と魅録と夫の挟間で揺れる白鹿流家元(可憐ママもアリかな)
…ああ、昼ドラっぽいかも。

113 :111:04/04/03 19:54
おっと。レス前に更新し忘れスマソ。
ネタ話もひきつづきドゾー。

114 :名無し草:04/04/03 19:59
五代×悠理…結構面白そうかもw
年の差カップルといえば、美童×真澄ちゃんなんかもいいなぁ。

>112
野梨子ママは結構そそられるものがあるよね。
清四郎vs魅録vs清州さんってなんだかすごいけど見てみたいような。
大人の余裕で清州さんがやはり上手かな。

115 :名無し草:04/04/03 20:04
五代と悠理ならむしろ
悠理×五代かもと言ってみるテスト。

「嬢ちゃま!五代は、五代は嬢ちゃまを孫同様にかわいく思っております、
しかし・・・!」
「あたいは五代が好きなんだ!年の差なんて関係ないだろ!!」
悠理襲いかかる。

みたいなw

116 :名無し草:04/04/03 20:12
>115
爆笑。それイイ!

117 :可×清 可憐さんにはかなわない:04/04/03 20:19
カプ話の間に割り込んですみません。
「可憐さんにはかなわない」うpします。


118 :可×清 可憐さんにはかなわない(115):04/04/03 20:20
>>http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/long/l-39-5.html

金髪がさらりと揺れた。
潤んだ瞳の美童が清四郎に優しく囁きかける。

「『私のこと好きってホント?』」
「……」
「はい、清四郎の番だよ。何してんだよ、早く言って!」
「き、君の瞳はスウェーデンの夜空よりビューティフォー。イリュージョンな瞳の中に満天の星空が
アイ・キャン・シー。……って、言えませんよ、こんなセリフ!」

しどろもどろでセリフを言った後、唐辛子よりも赤い清四郎がノートを美童に投げつけた。
「ぶぅっ。くくくくくぅぅ〜〜」
必死で笑いを堪えていた魅録がたまらず噴出し、真っ赤になってベッドにつっぷす。
清四郎は殺意のこもった目で魅録を睨んだ。
「笑わないでください! 真剣なんですから、僕は!」
彼の腕の下から「可憐役」美童も体を起こして抗議する。
「そうだよ! 清四郎の未来がかかってるんだ、魅録はあっち行っててよ」
「いや、悪かったって。あやまるから、まじ見せて、ほんとに。腹痛ぇ〜」
謝りながらも、涙を流してのたうち回る魅録を清四郎は百万遍殺したい気持ちでいっぱいだ。
無視して鬼コーチ美童は先を続ける。

「じゃあ、可憐のセリフから行くよ。清四郎も真剣にやってね!
『あなたの背中から光が射してまぶしいわ』……次っ!」
「ふむ、それは後光が射してるってことですか?」
「あのねぇ……次っ!」
「わかりましたよ……『いいんですか、可憐・マイ・ラブ。貴女を今夜一晩僕のものにしても?』」
「そこでターンする!」
魅録が悶絶してベッドから転げ落ちた。
清四郎の中で魅録を殺す回数を示すカウンターが音を立てて跳ね上がる。
そんな二人には構わず美童が色っぽく金髪をかき上げた。

119 :可×清 可憐さんにはかなわない(116):04/04/03 20:21
「『いいわよ、清四郎。貴君なら……。さぁ、私を、好・き・に・し・て〜ぇん』」
しなを作り流し目を送ってくる美童を危うく、清四郎は絞め殺しそうになる。
だが、しかし今は贅沢を言ってはいられない。
可憐との来るべき『本番』に備え、恥をかかないよう手順を練習しておかなければ……。
何しろ未経験である。初めてなんである。

「つ、次、なんでしたっけ?」
美童がしなを作ったまま目配せする。
「まずライトを消すんだよ」
「わかりました、照明を落とすんですね」
そこで悶死していたはずの魅録が待ったをかけた。
「なんで電気を消すんだ?」
清四郎がうなずいて魅録の言葉を繰り返す。
「そうですよ、なんで消すんですか?」

ふーっとため息をつくと、美童は小馬鹿にしたように大きく首を振った。
「全くこれだからマル未は困るね……。いい、乙女の気持ちになって考えるんだ。
こう胸の前に手を当てて、」
しぶしぶ清四郎は同じく胸に交差させた両手を当てた。
「……はい、『乙女の気持、ち』」
神妙に美童が唱え、「ち」で小首をかしげた。
「『おとめのきも、ち』」
いやいや清四郎も小首をかしげる。魅録は二つ折りになっていた。
片目を開けて美童が小首をかしげた清四郎を窺う。
「……なった? 乙女の気持ちに」
清四郎は正直に答えた。
「……なりません」
小馬鹿にしたように美童が言った。
「そうだろうね、マル未は仕方ないか」
暴れる清四郎を魅録が羽交い絞めにした。
「まぁ、待て待て、落ち着け清四郎。美童、いいから説明してやれよ」

120 :可×清 可憐さんにはかなわない(117):04/04/03 20:21
もったいぶってベッドに腰掛けた美童は説明する。
「だからぁ、の……じゃない、可憐は清四郎とベッドに入るのは初めてだろ?」
「僕だって初めてですよ……痛っ」
言い返す清四郎の額を美童はデコピンした。
清四郎は魅録に捕まっているので怖いもの無しなのであろうか。
後で何倍いや二乗、三乗して仕返ししてやる……と清四郎は胸に暗い炎を燃やした。
「そんなことはわかってるの。だから、こうやって手取り足取り説明してるんでしょ。
あのさぁ、清四郎は可憐に他の男と比べられて『わあ、ヘタクソ!』て思われて平気なの?」

平気なわけはない。
ぐっと詰まる清四郎の肩を、煙草をくわえた魅録が優しく叩いた。
「大丈夫だって。あいつもたぶん初めてだし、初体験同士がんばればいいのさ」
「なんだ、そうですか。安心しました……って、ええっ!?」
思わず清四郎は魅録を振り返る。
「なんで魅録がそんなこと知ってんのさー!」
美童の声をよそに、清四郎は両手で魅録の襟首を掴むと引き寄せた。
爪先でかろうじて床と接している魅録は苦しがって暴れ、その口から煙草が落ちた。
あわてて美童が火のついた煙草を拾う。
清四郎は魅録の顔をまじまじと見つめると、ごくりと喉を鳴らした。
「い、今の……本当ですか? だって魅録は……?」
「ま、まじ……てか、苦しい。お、俺、可憐とはしてないし……」
「そんなの! 僕だって可憐としてないよ!」
間の抜けた美童の声を無視して、清四郎は魅録の襟を放した。
魅録はようやく息をついて顔をしかめる。
「まぁ、あいつが他の誰かとしてれば別だけど、身持ちの固い奴だしな。それは無いと思うぜ」

清四郎は呆然と呟く。
「そ、そんな、そんな……」
微笑んで、魅録は清四郎を覗き込んだ。
「うん? 感激したか?」

121 :名無し草:04/04/03 20:22
悠理は自分より強い男が好きだけど、五代が意外にも
最強だったらオモシロイ。
清四郎と野梨子ママいいね。あんな若い美人で夫は留守がち。
清四郎に思いを寄せる野梨子がその関係を知って愕然とする
シーンとかオイシソウ。潔癖症野梨子はどうなるの〜
美童と魅録ママも同様にいいかも。恋愛のプロどうし、両者拮抗の
高レベルなバトルが繰り広げられそうだ〜。でも時宗ちゃんが
絡むとギャグになってしまうな。

122 :可×清 可憐さんにはかなわない(118):04/04/03 20:22
ふいに清四郎は窓辺に走っていき、音を立てて窓ガラスに両手をついた。
「なんてことだ。可憐の初めての男が僕なんて……!責任重大です」
「えっ……??」
背中に闘魂の炎を燃やした清四郎は振り返ると、恐れをなして後ずさる美童と魅録に歩み寄った。
「美童! そして魅録!」
「な、何?」「何だ、何だ」
二人の前に生徒会長・菊正宗清四郎は膝をついた。
「美童、そして魅録。いや師匠と呼ばせてください。師匠! そして師匠! 僕を特訓してください!」

頭を下げる清四郎に魅録と美童は顔を見合わせた。
清四郎の顔は真剣そのものだ。
「どうか、二人の力で僕をスーパー・ミラクル・セックス・マシーンに変身させてください!
お願いします、僕と可憐の素晴らしい朝のために!」

(スーパー・ミラクル・セックス・マシーンって、どんな絶倫男なんだよ……)
引きつった魅録が口を開く前に、感激した面持ちの美童が清四郎の手を取った。
「そう言ってくるのを待ってたんだよ、清四郎! やろう、二人の朝のために」
「お願いします。美童、いや、師匠!」
「がんばれば、きっとなれるよ、ミラクル・スーパー・セックスマシーンに……」
「なれますか、美童、いや、師匠! スーパー・ミラクル・セックスマシーンに!」
二人は手を取り合い見つめ合った。
「清四郎……」
「美童、いや、師匠……」
次の瞬間、二人は上着を持って出口に向おうとした魅録に叫ぶ。
「「魅録!」」
「何、逃げてるんですか」「そうだよ、清四郎が可愛くないの?」
つめよる二人に魅録は額に汗をかきながら後ずさった。
「いや、俺……あまりそっちには自信ないし……うわぁ、やめろ、助けて!×××」

グランマニエ邸の一角に今、地獄が展開されようとしていた。
その頃、別の一角では可憐、野梨子、そして悠理が別の地獄を展開していた……。


123 :名無し草:04/04/03 20:23
あら〜、わりこみすんません

124 :可×清 可憐さんにはかなわない:04/04/03 20:23
以上です。続きます。

125 :名無し草:04/04/03 20:34
ああ〜笑った〜。
君の瞳はスウェーデン〜とか、可憐・マイ・ラブとか、
美童も真面目なのかからかってるのかわからないね。
女性陣の地獄も楽しみ。

126 :名無し草:04/04/03 20:48
>可憐さん
も〜アホばっかりだな!おいw
(↑愛をこめての発言なので棘があるとか言わないでね)

笑い死ぬかと思ったよ。

127 :名無し草:04/04/03 20:54
>可憐さん
個人的に「ふむ、それは後光が射してるってことですか?」 っていう清四郎がツボ。
美童に恥ずかしい台詞を言わされるのも、想像したら笑いました。
女性陣の地獄、かなり楽しみです。

>121
五代最強っていう言葉に亀仙人を何故か思い出してしまった。(他の漫画ネタでスマソ)
美童×魅録ママも面白そうだ。
お互いにかけひきがすごそう。時宗ちゃんが絡んだコメディなのも見てみたいw

128 :名無し草:04/04/03 21:14
>可憐さんにはかなわない
126タン同様、笑いすぎて死にそうー。
ツボにはまるところが大杉。
女性陣の地獄も早く読みたい♪

129 :名無し草:04/04/03 21:15
>可憐さん
「なんで電気を消すんだ?」と魅録が言うってことは
彼は明るいまましてるってことなのか?キニナル・・・


130 :名無し草:04/04/03 22:11
>可憐さん

ワロタw
ちゃんと読んだことなかったんだけど、後でまとめて読んできます!
>121さんの「五代最強」が途中で入ったのもウケタ・・・スマソ

131 :名無し草:04/04/03 22:18
>>「どうか、二人の力で僕をスーパー・ミラクル・セックス・マシーンに変身させてください!

同居人の側で読んでいたから笑いを堪えていたが
ここで大爆笑した。変人と思われたらどうしてくれる。
可憐さん、いつも笑わせてくれるから好きだー。

132 :名無し草:04/04/04 20:43
>可憐さん〜
あまりのアホな展開に、魅録顔負けの悶絶をさせていただきました。
女子は…え〜、まさかあの可憐さんに、悠理がアドバイス!?
は、早く読みたい……!!!

今日はひっそりしてますね。
何か作品投下されないかなーーー


133 :名無し草:04/04/05 11:46
作家さん達、待ってますよぉ。
よろしく〜

134 :名無し草:04/04/05 16:24
では小ネタを。と言うか、パクリなんですが。
前にどなたかが書かれた、小ネタの我らがヒーロー、菊正宗清四郎、マン。
http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/short/s16-753.html
可憐編を考えてみました。
もし前の作者タソが続編考えてらした場合は脳内あぼーんでお願いします。

135 :我らがヒーロー、菊正宗清四郎、マン。〜可憐編:04/04/05 16:25
普段はガリ勉の生徒会長。が、しかし、その実体は……

良い子の味方、
 菊   正   宗   清   四   郎   、   マ   ン   !

助けを求める声を聞きつけては変身して飛んでいく。
今日の助けを求める人は黄桜可憐さん(18)。
「どうしたんですか!」
「あ、菊正宗清四郎、マン! あたしは玉の輿に乗りたいだけなのに男運が悪すぎるのよお。何とかして!」
「どうして、もっと近くに目を向けないんですか……?」
「え……?」
清四郎マン、可憐を抱き寄せる。

「清四郎、マン……。清四郎、マンがあたしを玉の輿にのせてくれる?」
「もちろんです。あっ、胸のランプが! 」
「え? 何?」
「すみませんね、こちらには3分しかいられないんですよ」
「え? え?」
そう言い残し、菊正宗清四郎、マンは大空へ向かって飛んでいった。
「ふむっ!!」

可憐の絶叫が響きわたる。
「アンタが一番タチ悪いじゃないのよ〜〜〜!!」

おわり

136 :名無し草:04/04/05 18:25
>>135
初めて読んだ。ワロタ。
前作も読んだけど、私も「、マン」が気になるw
なんかおかしくて私は好きなんだけどね。「、マン」。

137 :136:04/04/05 18:26
>前作も読んだけど
正しくは「その後前作も読んだけど」でした。連続スマソ。

138 :前の作者:04/04/05 18:34
>清四郎、マン
わー!
びっくりした。あんな昔の小ネタを発掘してくださるなんて感謝感激っす。
「清四郎、マン」の「、」は「菊正宗清四郎」まで一息に読んで
つけたしのように「マン」と読むとよろしいかとw

面白かったっすー。他の人バージョンもよろ(他力本願)。


139 :名無し草:04/04/05 19:20
>可憐さん
大爆笑!
・電気を消す
・「の……
あ〜、どうなるか楽しみw
>清四郎、マン
からっと笑った!おもろい。

140 :横恋慕(31) 魅×悠×清:04/04/05 20:48
>83の続き

ドアが開き、長身の男が顔を覗かせた。
「・・・清四郎、来てないのか?」
がっかりしたように、美童は後ろ手にそのドアを閉める。
彼の第一声は昼休みと同じであった。
「ええ、先に帰ってくれと言われましたわ。答辞の原稿を先生と詰めるのですって」
片付けの手を止め、野梨子は立ち上がる。
今週に入ってから、彼は忙しさを理由に殆ど部室に寄り付かなくなっていた。だが、そのことに
疑問を持つ者は、美童の他にはいないようだった。

3月に入り、慣れ親しんだ生徒会室との別れが近付いていた。理事長のはからいで、特別に
卒業の日までは使用を許可されてはいるのだが、そろそろ私物は引き上げなければ、と、
可憐と野梨子は自主的に作業を始めていたようだ。

美童は何かを思案するように、携帯のストラップに指を入れてくるくる回す。
「何よ、清四郎に用でもあるの?」
きょとんとした可憐に向かい、美童は営業用のスマイルを見せる。
「ん?うん・・・ちょっと聞きたいことがあるんだけど、全然つかまらなくてさ」
清四郎に避けられているらしい事を、彼は知っていた。
携帯に何度着信を残しても、無視を決め込まれている。
だが、また家にまで押し掛けるほど、おせっかいにもなれないでいた。
「悠理達は?」
また質問をした美童の前に、まだですわ、と言いながら野梨子がコーヒーを差し出した。

その時、悠理の交際相手が一人でやって来た。

141 :名無し草:04/04/05 20:48
リクエスト良いですか。思わぬ伏兵の続き楽しみにしていまーす。

142 :横恋慕(32):04/04/05 20:49
鼻歌まじりで現れた魅録は、美童の隣に腰掛けた。
野梨子からコーヒーカップを受け取り、サンキュ、と小さく手を上げる。
「・・・なあ、悠理は?」
問いかける金髪の友人に、彼はあっさりと答えた。
「ん、今夜は飲みに行くから、一旦帰って着替えてくるってよ」
「・・・うまくいってるのか?」
「ああ。おかげさまでな」
何をヤボなことを聞くんだ、こいつは?という表情で魅録は言った。
「そう・・・なら、いいんだけど・・・」
小さなため息に気付かれないよう、美童は片付けを再開した女友達の方へ目を移す。
だが、上機嫌に見える隣の男にもう一度視線を戻すと、意を決して切り出した。
「最近、元気なかっただろ、悠理。理由を・・・知ってる?」

両手に紅茶の缶を持った可憐が振り返った。
「やだ、美童ったら。あの子のどこが元気ないって言うのよ!?今日の昼だって、お弁当5個平らげた
後に歌舞伎揚げを開けようととして、野梨子に取り上げられて大騒ぎしてたじゃない」
闖入者に適当な相槌を返し、美童はまた悠理の恋人を見つめる。
彼は一瞬考えた後に、こう返事をした。
「・・・先週さ、吉野にちょっとバカにされたんだよ。あとで抗議しといてやったけどな。だいぶ落ち
込んじまったみたいで・・・そう言やぁ、週末もどこに誘っても行こうとしなかったな」
吉野というのは英文法担当の教諭だ。3−Bの授業があるのは確か金曜の6限。
「そっか、なるほど」
さっと頭の中で照合し、美童は小さく頷いた。
「お前って、ほんと女のことになると鋭いよなあ・・・」
「ええ。私も全然気付きませんでしたけど」
不思議そうな表情を見せる友人達に、そうかな?と美童は微笑する。
お前らが鈍すぎるんだ、とは、利口な彼は言わなかった。


143 :横恋慕(33):04/04/05 20:50
携帯が鳴ると同時に美童は立ち上がり、窓辺へと足を向ける。
アロ〜、と甘ったるい声で応じる彼を呆れ顔で見上げながら、女達がテーブルについた。
「きっとまたデートの約束ですわね」
「デートと言えば・・・」
可憐がテーブルの上に身を乗り出す。
「ねぇ魅録、悠理には今日渡すの?」
魅録は慌てて回りを見渡した。
電話を握ったまま、美童がちらりと振り返る。
「お、おい・・・まだ内緒の約束だぜ、可憐・・・」
「まあ、何をですの?」
そんな二人を前にして、野梨子は大きな瞳をますます丸くした。
可憐は羨ましそうな表情を浮かべ、両手で頬を包むように頬杖をついた。
「指輪に決まってるじゃな〜い。で、あんたは清四郎とはどうなのよ?」
矛先がいきなり自分の方へ向いたので、野梨子は赤面した。
「か、可憐!?何を言い出すんですの」

魅録はじっと目を細めてそんな彼女を凝視する。
「・・・あいつ、今年はチョコの受け取りを拒否したって言ってたな。つき合ってんのか?」
「そーそ、白鹿さんとつき合ってるからだ、って専らの噂よ。白状しちゃいなさい」
だが、野梨子はあっさりと否定した。
「そういう噂があるのは知ってますけれど、私は関係ありませんわよ」
「な〜んだ、つまんないわね。だけど清四郎ったら一体どういうつもりで断ったのかしらねぇ」
可憐の声がぼんやりと響き、魅録の胸がざわつき始める。
あの日、暗い瞳で自分達の姿を見送っていた清四郎のことを思い出したのだ。
「私には、『どうせ捨ててしまうのに、受け取るのは失礼だから』って言い訳してましたわ。でも・・・」


144 :横恋慕(34):04/04/05 20:51
一旦言葉を区切った野梨子に、魅録は息を飲んだ。
「本当はお返しが面倒なだけだと思いますわ。これまでだって、毎年にこやかに受け取りながら、
あとでうんざりした顔をしてましたもの。悪しき風習だ、って」
「ひどぉい、あの冷血情緒障害男〜」
「相変わらず、女性にはあまり興味がないみたいですわよ」
「やだ、それじゃあんたと同じじゃない」
きゃっきゃと戯れている女達の前で、魅録は安堵の息を吐いた。
だよな・・・あいつが特定の女に固執するなんて、想像する方がおかしいんだ。まして悠理のこと
なんか、いつだって女どころか人間以下の扱いなんだからな。
何も心配することなんかねーよな、と。

ようやく電話を切った美童が、口笛を吹きながら椅子を引く。
「あーあ、清四郎の対極に位置する男がここにいたわ・・・」
パタパタと手を振りながらの可憐の声に、野梨子はくすっと笑う。
「またデートですの?」
「うん、ミモザちゃんとね」
その名前に聞き覚えのあった三人は顔を見合わせた。つい最近、美童がデートしていた女だ。
ホワイトデーまで日替わりだと言っていたはずなのに。しかも、こんなに浮かれている様子から
推察すると、ひょっとすると本命なのかもしれない。
「いい女なのか?」
魅録がツッコミを入れると、彼は相好を崩しながら冷めたコーヒーに口をつける。
「もっちろん。スパニッシュとフレンチのハーフで、プロポーションも抜群。しかも僕にベタ惚れ」
いそいそと立ち上がり、美童は上着を取った。
ちらりと時計を見て、魅録もその後を追うように席を立つ。
じゃ、と二人の男が消えた部室で、可憐は野梨子の顔を見て苦笑した。
「あたしたちも、片付けなんかしてる場合じゃないんじゃない・・・?」と。


145 :横恋慕(35):04/04/05 20:51
「ずいぶん熱心じゃねーか。とうとう本命現る、って感じなのか?」
「そう・・・だね。そうかも」
久しぶりに並んで歩きながら、俺が問いかけると、美童は曖昧な微笑みと共に質問を投げてくる。
「・・・悠理に指輪渡すの?」
通話中でもちゃっかり聞いてるところが、こいつらしいな。
ああ、そのつもりだ、と答える俺の胸をまた不安がよぎる。

可憐に相談すると、意外なことにシルバーリングを奨められた。
いくら俺でも、もう少し高価なものくらい買えるのに、だ。
だが可憐は、わかってないわねえ、という表情で言った。「婚約指輪じゃないんだから、毎日つけ
られるカジュアルなものがいいわよ。ああいう子の場合は特にね」と。
婚約指輪と聞いて、初めて気がついた。元婚約者の清四郎が悠理に指輪を贈ったのかどうか、
訊ねてみたこともなかったことに。
表情が曇ったのに気付いたのか、可憐はポンと俺の背中を叩いた。
「そんなもの貰ってないって言ってたわよ、悠理」
だが・・・そつのない清四郎が、そんな大事なことを忘れるだろうか。
それとも、本当に剣菱のことで頭が一杯で、悠理のことはなおざりにしていたのだろうか。
つき合い始めてすぐ、婚約中のことが気になり出して「清四郎とは何もなかったのか?」と、冗談
めかして口にした俺を小さく睨み、「当たり前だろ!あいつは指一本だってあたいに触らなかった」
悠理はそう言い切った。「あいつは剣菱の名前と結婚したかっただけなんだ」そう、呟いた。
確かに、そういう経緯だった。
婿入りするのに、指輪を贈る必要はないと判断したのかもしれない。
いや、きっとそうだったのだろう。


146 :横恋慕(36):04/04/05 20:53
あいつとは違うタイプの、プレイボーイの友人のことがふと気にかかった。
女の扱いは超一流だと豪語するこの男は、本命の女性にどう接しているんだろうな。
「・・・美童はプレゼントするのか?その、指輪とかを・・・ミモザちゃんによ」
「そりゃまずいよ。人妻だもん」
あっけなくそう答えた美童に、俺は足を止めた。
「えっ!?お、お前、不倫してんのかよ・・・」
「ま、そういうことになるのかな」
悪びれもせず、彼はにこにこと笑ってみせる。
「そりゃよくないぜ、やめとけよ・・・」
非難するように眉を顰めちまった俺を、美童はまっすぐに見返した。
「なんで?」
「なんでって、常識で考えろよな・・・」
すっと美童の表情が変わったのに気付き、背筋を冷たいものが走る。
俺の忠告が気に触ったんだろうか。
「・・・好きになるのに順番なんか関係ないよ。もっと本気になったら、奪い取っちゃうかも」
言葉を失くしている俺に片目を瞑り、美童はさっさと迎えの車に乗り込んだ。


[続く]


147 :名無し草:04/04/05 21:01
>横恋慕
おっとっと…これは意外な展開になってきましたね。
魅録と悠理の仲に清四郎が横恋慕、人妻に美童が横恋慕。
「好きになるのに順番なんか…」の美童のセリフを後で清四郎が実践して
しまうのでしょうか。うーん、続きが気になります。

148 :名無し草:04/04/05 21:13
>横恋慕
連載楽しみにしてました!最初から全部通して読んでみたんだけど、
悠理は自分の清四郎への恋心に気づいてるのかなぁ?前回の事件は転機になりそな予感。
最初に魅録の手を取ってしまったことが間違いかもしれないけど、それは仕方ないような気もするし・・・。
ともかく今回は、本人無自覚で空回りしてる魅録が切なかったです。美童が一歩上の視点にいるのも面白い。

149 :可×清 可憐さんにはかなわない:04/04/05 21:54
「可憐さんにはかなわない」うpします。

150 :可×清 可憐さんにはかなわない(119):04/04/05 21:55
>>122

「いい加減機嫌直しなさいよお、悠理。結局魅録は悠理を選んだんじゃないのよぉ。
何が不満なのよ、一体。あたしなんか、思いっきり清四郎に振られたんだからね」

こちらは女性陣の部屋。
サーモンピンクのベッドカバーをかけたクィーンサイズのベッドが2台と
ドレッサーが置かれた部屋で、まだドレスを着たままの可憐がいらいらしながら怒鳴った。

メイドからティーセットを受け取った野梨子はカップをミニテーブルに並べながら、
ちらと悠理の様子を窺った。
彼女が隠れているはずのカーテンはさっきからピクリともしない。
「悠理、紅茶が来ましたわよ。クッキーもありますわよ、お腹減りません?」
野梨子はクッキーの入った菓子皿を持ちカーテンに向って呼びかけた。
すると猿のように素早い影がぴゅっとカーテンから飛び出して野梨子の腕から皿を
奪い取ると、再びカーテンの奥へ消えた。
厚手の布地の向こうからクッキーを咀嚼する音だけが聞こえる。

可憐は野梨子と顔を見合わせるとため息をついた。
「ねぇ、悠理。なぜそんなに魅録に突っかかるの?アイツはほんとにあんたの事好きなのよ?」
ややあってカーテンの奥から悠理の淋しそうな声が聞こえた。
「あいつは……あたしの事なんか好きじゃねぇもん。あいつは可憐の事が好きなんだもん」

驚いた顔で野梨子が可憐の顔を見たのであわてて手を振る。
「ばっかねぇ!! そんなことあるわけないでしょ!」
可憐のあわてっぷりに野梨子は弱みを握ったとばかりに意地悪く微笑む。
「火の無いところに煙は立ちませんわ。悠理、どういうわけで魅録が可憐のことを好きって思ったんですの?」
カーテンの向こうからぼそぼそと悠理が喋る。
「……あいつ、この間大阪に遊びに行った時、551の蓬莱買ってきてくれなかったんだ」
「……それで?」

151 :可×清 可憐さんにはかなわない(120):04/04/05 21:55
「北海道行った時もタラバガニっつったのに、マリモ買ってきやがった……」
「……」
「可憐にはジャガイモ買ってきただろ、一箱」
ひょっこりとカーテンから首を出した悠理に可憐は遠い目をした。

「……そうね、3キロもするジャガイモ、魅録ったら学校に持ってきてくれるんだもん。
懐かしい。あれ……けっこう有難迷惑だったなぁ、うん」
「やっぱり可憐の方が好きなんだ……」

どうも悠理は食べ物をあげることが最大の愛情表現と思っているらしい。
そこへ野梨子がしゃしゃり出た。
「悠理、ジャガイモでしたら可憐だけじゃなくて、私もいただきましたのよ。
それに美童も清四郎も皆、魅録からおみやげに3キロのジャガイモいただきましたわ。
可憐だけじゃありません。皆、迷惑がってましたのよ!」
悠理は少し考えていたが、やがてふっと辛そうな笑みを漏らした。
「それだけじゃないんだ……あいつ、あたしとつきあったのには理由があるんだよ」

 理由? 
可憐と野梨子は顔を見合わせる。
ひょっとして、いつぞやの清四郎のように剣菱をこの手で動かしてみたいという壮大な理由だろうか。
まさか魅録に限って……。可憐と野梨子が見つめる中、悠理は重い口を開いた。

「悲しいから言いたくなかったんだけど、あいつ、……」
洟をすする悠理の肩に手を置き、優しく二人が励ました。
「悠理、しっかり」「そうですわ、しっかり、悠理」
「ぐすっ、あいつ……魅録の奴、あたしの……あたしの……」
「うん……」
野梨子が瞳を潤ませたその瞬間、やおら立ち上がると悠理は吠えた。

「魅録はあたしの、この体が目当てだったんだっっ!」


152 :可×清 可憐さんにはかなわない(121):04/04/05 21:56
「ああっ」
突如、襲ってきた激しい横揺れに可憐と野梨子はよろめいた。
そんな二人には構わず悠理は叫ぶ。
「あいつはあたしのダイナマイトボディーに目がくらんで、あたしの体を好きにしたくて、
愛してもいないのに、あたしをーーっ!」

青ざめた顔で野梨子が可憐に手をさしだした。
「か、可憐、つかまってもかまいません? どうしたことか立っていられませんわ」
気分が悪そうに可憐はうなずいた。
「い、いいわよ、野梨子。その代わり、しっかりあたしを捕まえててね。どういうわけだか、
急に眩暈が津波のようにやってきたわ」

悠理はカーテンの中で顔を覆い、しくしくと泣いている。
恐る恐る可憐と野梨子は歩み寄る。
「ね、悠理? お姉さんに聞かせてくれない? どうして魅録が悠理の体目当てなんて
とんだ勘違いをしちゃったのかなー?」
「そうですわ! 悠理のぺたんこの体が目当てなんて、そんな恐ろしいこと、一体何がどうなって
思いついたんですの?」
悠理はふーっとため息をついた。
「だって、あいつが言ったんだもん。『あたしのどこが好きなんだ?』って聞いたら、
笑って『カラダ』って……。ショックだった……」

ネタが古い。
たしかそれはエステのCMで、カップルの女が「あたしのどこが好き?」と彼氏に聞いたら
スレンダーだが、これといってメリハリの無い体型の彼女に彼は、「カラダ」とぼそっと
言うのである。でも、それで彼女は(手入れしてたかいがあるわ)とちょっと嬉しそう、
という微笑ましいものだ。しかし、一体あれが放映されたのは何年前なんだ。
確か「私、脱いでもすごいんです」と同じ時期ではなかったか。
かつて付き合ったこともある男のセンスの無さを、可憐は呪った。
「あはは……は。でもそれって悠理への褒め言葉なんじゃないのぉ?」


153 :可×清 可憐さんにはかなわない(122):04/04/05 21:56
元ネタのCMを知らないらしい野梨子がカッカしながら悠理の肩を抱いた。
「魅録ったらひどいですわ、カラダが好きだなんて最低っですわ!そんな魅録にだまされて、
花の操を捧げてしまったんですね、辛かったでしょう、悠理」
「えっ、いや辛くはないよ。まあ、辛いっていうより、けっこう……「いい」かなぁ……?」
「え? 「いい」って?」

悠理は頬を赤らめ小声で呟いた。
「……エッチが」
ポッと頬を染める悠理の側を黙って野梨子は離れた。
可憐は悠理の言葉にごくんと唾を飲み、こそっと悠理に耳打ちする。

「……そんなに、「いい」の?」
「ん、まぁな。なんだよ、改まって聞かれると恥ずかしいぞ」
「ねねね、教えて。何がいいの?」
「なんだよ、どアップで迫るなよ、可憐。何がいいって、そりゃあ……ナニだよ」
「あっ、たんま。野梨子は聞かなくていいからね。大人の話だから!」

気がつくと野梨子がメモ帳を開き、悠理の言葉にうなずいていた。
可憐の驚愕した表情に気がつくと、ほんのり顔を赤らめて目を伏せた。
「あの……少し勉強したんですの、私も。だから、少しならわかりますわ。
ナニって殿方の……」
「わーわーわーっ!! 言っちゃだめーーーっっ。野梨子はそんな言葉言っちゃ駄目なのぉ!」
髪を逆立てて可憐は、絶叫した。




154 :可×清 可憐さんにはかなわない:04/04/05 21:57
以上です。続きます。

155 :名無し草:04/04/05 22:20
>可憐さん

わーい女の子編だ!
清四郎と同じ行動をしてる野梨子にワロタ!
やっぱり幼馴染み、考えることは一緒?

156 :名無し草:04/04/05 22:23
野梨子!!!あ・・・・あんたまで!w

157 :名無し草:04/04/05 22:25
ネタの古さに笑った(爆)

158 :名無し草:04/04/05 22:28
>可憐さん
続けてうpが。うれしいなぁ。
>どうしたことか立っていられませんわ
>どういうわけだか、急に眩暈が津波のようにやってきたわ
ワロタw可憐さん大好きです。
続きを楽しみに待っています。

159 :名無し草:04/04/05 22:37
>花の操を捧げてしまったんですね
>少し勉強したんですの、私も
ああ〜、まじめな野梨子のズレっぷりがおかしい〜
続きが早く読みたいよ

160 :名無し草:04/04/05 23:24
>可憐さん
やっぱ、泣き笑いなしには読めんわ!w

>悠理は頬を赤らめ小声で呟いた。
>「……エッチが」
そして、ここの悠理がかわいくて萌えw

161 :名無し草:04/04/06 00:03
桜が散ってしまふ…
>桜〜清四郎〜
お待ちしてます。

>思わぬ伏兵
も気になってます。よろしくです。

162 :名無し草:04/04/06 22:11
私は檻が読みたいです。

163 :名無し草:04/04/06 23:31
檻、私も読みたい。
それからディープリバー、ずっとお待ちしてますので作家さんよろしく〜

164 :名無し草:04/04/07 01:26
Deep River・・・私もずっと待ってる・・・。

165 :名無し草:04/04/07 10:11
Deep River読むたびに泣きそうになるんだよね。
早く読みたいなぁ。

166 :名無し草:04/04/07 14:06
白鹿野梨子の貞操を狙え!も待ってます・・・

167 :名無し草:04/04/07 18:21
可憐さんのネタがわからない・・・
このスレの人って高齢の人多いのか?
どうだろ?30才位が平均年齢なのかなw

168 :名無し草:04/04/07 18:40
>167
私もわからないです…

169 :名無し草:04/04/07 19:18
>>167-168
ちなみにキミラはいくつくらいで?

170 :名無し草:04/04/07 19:45
自分23だけど元ネタ分かった。あれいつ位のCMだっけな。

171 :名無し草:04/04/07 19:54
りぼんに連載してた頃からの読者なら下は>170くらいがギリなんじゃない?
リアルタイムでりぼん読んでた人達は上は30くらいだろうし

うちは自分と姉妹と一緒に母親も読んでたから「読んだ事ある」人なら40〜50もいそうだな

172 :名無し草:04/04/07 20:11
落ちついた雰囲気の、大人向けのレストランがあった。
客はほとんどが常連で、シェフの出す料理が口に合わなくとも
その場で批判をするような客などいなかった。
口々にシェフの料理を誉め、店は常に良い雰囲気に保たれていた。

ところが、春休みだからなのか、雑誌で紹介でもされたのか、
急に客層に若い年齢層が目立つようになった。グループでやってきては、
「やだー、この味付け、高齢者むけ?」
「私、この組み合わせが大好き!他の組み合わせの食材なんて食べられない!」
口々に騒ぐ。
店の急な雰囲気の変化に、以前の常連はとまどい、やがて店を離れていった。
数人いたシェフたちすら、自分の料理にケチをつける客に嫌気がさし、
ひとり、またひとりと店を辞めていった。


「高齢者」の私から見ると、今のスレはこんな風に見えるw
年齢話はやめましょうや。
ここに限らずどのスレでも、荒れるもとだしね。
マターリ萌え話ができればそれで良いじゃない。

173 :名無し草:04/04/07 20:16
>170
7〜8年前?
今25の自分が高校生くらいだった頃に流れてたと思う>CM

174 :170:04/04/07 20:29
>>171
うん、りぼんで偶にポツポツ載ってた頃だと思う。池に沈んだ少女の幽霊話がミニ別冊だったんだ。十年前かな?
あのCMも話題作だったよね。綺麗なお姉さんは好きですか、とか、ファンデーションは使ってません、並に。

175 :名無し草:04/04/07 20:45
>>170
たぶん95年。

176 :名無し草:04/04/07 21:52
>172
こういう話題と年齢話は別に悪い事じゃないと思うよ?
懐かしいなって話だし、殺伐ともしてないし
あなたのいう高齢が悪いとも思わないし、かといって高校生くらいの若いファンが悪いとも思わない
雑談も含めてマッタリすればいいじゃない 楽しくポジティブ!

それと、組み合わせと食材の話には禿ドウ 言い得て妙w

>170=174
私もその別冊をギリギリ覚えてるくらいのちょっと歳上です
それでもそのCMを覚えていない私はダメだろうかw
ファンデーションと綺麗なお姉さんは覚えてるが

177 :名無し草:04/04/07 22:00
自分語りはそろそろ終わりにしない?
ネタが投下しにくいよ。

178 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/07 23:17
>>http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/long/l-06-1-3.htmlの続きです
映画が終わってもまだ起きない魅録を野梨子はそっと見つめていた。
(疲れているのにあまり好みでもない映画に一緒に来てくださって・・・)
しばらく待っていると、魅録は目を覚ました。
「ごめんよ、爆睡だったよなあ、俺」
「映画の感想をレポート用紙に書いて提出してくださいな」
鈴を転がすような声で悪戯っぽく笑う野梨子。魅録はほっとする。
(今日来てほんと良かったな…。学校では何かと不安気だったけど。
こんな笑顔をいつも見せてくれれば…)

坂を下ると、野梨子が近づいたこともない、渋谷でも場末の界隈に出た。 
お世辞にも綺麗とはいえない雑居ビルに目的の居酒屋はあった。
既に仲間たちは盛り上がっているらしい。野梨子は少し緊張してしまう。
「おーい、魅録、こっち。もしかして、彼女?」
「すっげえ美人じゃないか〜。どうやって落としたんだよ!」
「しかも本物のお嬢様だよな。悠理とも友達なんだろ」
野梨子は魅録の仲間からの言葉に野梨子は頬を染める。
魅録が大切な友人に自分を紹介してれるのは、真面目な気持ちの証明だ。
魅録の誠意に応えたい。魅録にふさわしい恋人と思われたい。
仲間たちから野梨子に矢継ぎ早に質問が浴びせられる。そして・・・
「野梨子ちゃんは趣味は何?」
「茶道とか踊りとか読書とか…」
「風流だなあ。魅録とは全然違うよなあ」
悪意無い一言だが、今の野梨子には微かに痛かった。
魅録はどうってことない、とタバコをふかす。

中途半端ですがどなたか続きお願いします

179 :名無し草:04/04/08 00:32
「横恋慕」を続けます。魅×悠×清の三角関係です。
苦手な方はスルーして下さるようお願いします。
>146の続きです。


180 :横恋慕(37) 魅×悠×清:04/04/08 00:32
出てくれない確率の方が高いと考えつつ、そのボタンを押して耳に当てる。
ただ無気力に過ごした土曜日。
西の空が赤く染まった頃、やっと僕は悠理に電話をかけた。
我ながらしつこいな、と呆れながらも、あと一回、もう一回だけ、と17回目を数えた。

チッと小さな音が聞こえた後、無音が続く。
「・・・僕です。少しだけ話を聞いて下さい」
切らないでくれ、と念じながら、そう切り出した。
じっと息をひそめている気配と、かすかな風の音が伝わってくる。
魅録と二人、どこかへ出かけているのだろうか。

「この間は、すみませんでした。簡単に赦してもらえるとは思っていませんが、とにかく謝ります。
・・・ひどいことを言ってしまって、本当に悪かった」
返事はなかったが、切られないだけマシだ。
夕陽の中で歪んでいく悠理の顔が焼き付いて、ずっと離れてくれなかった。
だが、どうすればいいのか、何を言えばいいのか判らないまま、徒に時間ばかりが過ぎてしまった。

「報告書のことで、その・・・誤字が一つもなかったので、褒めようと思っただけなんです。それが、
あなたが僕の話をまともに聞いてくれないので、つい感情的になってしまって・・・」
『何だよそれ・・・』
呟きが聞こえた。言い訳を口にした僕に戸惑っているような声だった。
「・・・やっと喋ってくれましたね。声が聞けてよかった」
『・・・・・・』
「美童から聞きました。ナーバスになっていた所に、僕が追い討ちをかけてしまったんですね。
あなたがあんなにムキになった理由が・・・やっと判りましたよ」

もういいとか、わかったよとか、そんな言葉を期待したつもりもないのに。何か言って欲しい、と
どこかで望んでしまう。どんな言葉でもいいから、もっと声を聞きたかった。

181 :横恋慕(38):04/04/08 00:34
「・・・・・・指輪、見ましたよ。魅録から貰ったんですね」
嫌みに聞こえないよう最大限努力したはずの僕に、ささくれ立った声が戻ってきた。

『お前に関係ないだろ』

茜色に染まった雲に、惨めな記憶がフラッシュバックした。
拒絶されたことに苛立って魅録の名前まで持ち出してしまった、卑劣で愚かな自分。そして、
引き絞るような悠理の叫び声が、凍り付いた瞳が蘇る。
あんな自分は嫌だ。あんな不穏な感情を持つのは嫌だ。大切な人を傷つけるのはもう、嫌だ。
同じ誤ちをくり返さぬよう、目を閉じて深呼吸をした。

「・・・関係ありますよ。友人・・・なんですから」

電話口から、警戒しているのが伝わってくる。
まだ、僕の出方を窺っているようだ。
「おめでとう。僕なんかのとは違って、愛情のこもった指輪でしょう?魅録は、誰よりもあなたを
大切に想っていますから・・・」
『だから・・・?』
「きっと幸せに・・・・・いや、二人で幸せになって下さい」

『・・・言う・・・事は・・・それだけ?』
ややあって、悠理は問うた。
「ええ。・・・いや、悠理」
切るぞ、という意味なのだろう。そう思うと同時に、咄嗟に呼び止めていた。
不用意にその名を口にした瞬間、心臓が止まるような気がした。


182 :横恋慕(39):04/04/08 00:35
『な・・・に?』
震える声が聞こえる。
電話を引き延ばしたいと願っただけの僕には、もう告げるべき言葉などないのに。
『何だよ・・・?』
何でもない、と言ってしまえばいいのか?もう一度、済まなかった、と告げた方がマシだろうか。
だが、悠理は執拗に問いかける。
『言いたい事があんなら、言えよ・・・なあ。・・・・・・言ってよ・・・』

「悠理・・・」
やっとの思いで、もう一度呼びかけた。
一週間の間、間断なく自問し続けたことをどうにか言葉にできたら、と思った。
「あなたと・・・もう一度最初から、対等な友人としての関係を築き直したい。努力しますから、
だから、僕を嫌いにならないで下さい。また以前のように笑顔を・・・見せてくれませんか?」
懇願するような口調になっている自分を、滑稽だとさえ感じる。
いつまで待っても肯定の返事はなかった。それでも、はっきりと拒否されるよりはいい。
「・・・邪魔してすみませんでしたね。それじゃ・・・」
携帯を耳から離した瞬間、待って、と言われた気がした。
だが、そっと戻しても風のざわめきしか聞こえてこない。
もう一度名を呼ぼうか躊躇う間に、電話は切れた。

おそらくは、僕の願望が作り出した幻聴だ。
じゃあ、とでも言ったのを聞き違えたのかもしれない。
不意に嗚咽が込み上げそうになり、右手で口を覆い、大きく息を吸って堪える。

これで、いいんだ。
屈託なくじゃれ合っていた頃の僕達に、きっとまた戻れる。だから、これでいいんだ。

届くはずのないことを知りながら、僕はいつまでもその人の名を呼び続けた。


183 :横恋慕(40):04/04/08 00:40
あの日、帰宅がずいぶん遅くなってしまった僕を、仁王立ちした姉貴が待っていた。
「なんで携帯の電源切りっぱなしなのよ!?持ってる意味がないじゃないの、バカ!」
何度か電話があった後、美童が訪ねて来てその場でメモを書いたと言う。
美童は門の外から四つに折り畳んだ紙切れを差し出し、「戻ったら、すぐ読ませて下さい」とだけ
言ってさっさと帰ったらしい。車に彼女を待たせているから、とウインクを残して。

部屋に入り、その紙を開こうとして苦笑した。
ホテルの領収書の裏を使うとは・・・まあ、あいつらしいが。
  Call me, A.S.A.P
急いだせいか英語で大きく走り書きし、ご丁寧にも二重下線が引いてあった。

できるだけ早く、か。
只事ではないと感じながらも、僕はつい悠理にこの慣用句を教えてやった時のことを思い出す。
possibleという単語を一向に覚えられない悠理に、映画のタイトルまで持ち出して説明した。
「え?ミッションインポシブルってスパイ大作戦って意味じゃないのっ!?」
目眩がしたな、あのバカさ加減には。
首根っこを掴んで窓から放り出しそうになったが、かばう魅録の背に隠れて僕に舌を出した後、
悠理は逃走した。思わず追いかけてしまい、二人揃って廊下で教師に叱られたっけ。
思い出し笑いをしたいところだったが、上手な笑い方をどうしても思い出せなかった。

日付けが変わった頃、漸く携帯の電源を入れると、同じ男からのメッセージが三件入っていた。
一件目は、電話をくれというそっけないもので、二件目は、悠理が教師の軽口に落ち込んでいた
ことを知らせるものだ。あの日、僕と彼女が諍いを起こしたことなど知るはずもないのに、だ。
それを聞いたのは悠理からではないこともつけ加えてあった。
三件目の彼はひどく不機嫌だった。
もう僕には電話しなくていいから、と呟くような声で言った後、しばらく沈黙が続いた。
『……詳しくは知らないけど、とにかく悠理に謝れよ。…手遅れになるぞ』

親友の忠告を蔑ろにしようと思ったわけではない。
だが結局、僕がその日悠理に電話をすることはなかった。

184 :横恋慕(41) :04/04/08 00:41
翌朝、彼が焦っていた理由が判明した。僕の顔を見るなり、野梨子が楽しげに言ったのだ。
「昨日、魅録が悠理に指輪を渡すと言ってましたわよ」
胸を抉られた。それなのに、ほう、そうですか、と僕はにこやかに応じる。
「悠理が指輪をしてくるかどうか、可憐と賭けましたの。可憐は絶対してくると言うのですけど、
私はしてこないと思いますわ。だって、からかわれるのを嫌がりますでしょ、悠理って」
清四郎は?と無邪気に問いかける幼なじみに、「じゃあ、可憐の方に一票」と笑う。

彼らの教室前を通りかかると、予想通り人だかりが出来ていた。
卒業後に結婚を控えている女生徒も少なくないため、指輪の着用を禁じる校則は聖プレジデント
学園には存在しない。だが、悠理が指輪をして登校したとすれば、前代未聞の大事件だ。
「剣菱さん、それ・・・ゆっ、ゆっ、ゆっっ、指輪!?」
「ああ、魅録からもらったんだよ。かわいーだろ」
輪の中心にいた悠理が誇らしげにそう言うと、女生徒達の黄色い悲鳴が上がる。
悠理のファンか、魅録のファンかは定かではないが。
その時、照れくさそうに笑いながら頭を掻く悠理の薬指に、きらりと光るものを見た。
僕達に気づくと、悠理は野梨子に向かって「おはよ」とぎこちなく笑い、教室に姿を消した。

ほんの一瞬だったが、確かに悠理の笑顔を見た。ずいぶん久しぶりに見た気がした。
それだけで充分だった。魅録に愛されて、彼女は幸せなのだ。僕が贈ったダイヤなどより、石も
ついていないあの指輪の方が、悠理にはかけがえのない大切な宝物なのだ。
僕にはもう、出る幕はない。
願わくば、その笑顔が自分に向けられるものであって欲しかったけれど。

あいつを泣かせることしかできない僕と、笑顔にさせてやれる魅録。
どちらが傍にいればいいかなんて、火を見るより明らかだ。

諦めようと決めたのは、その瞬間だった。


185 :横恋慕(42) :04/04/08 00:42
「悠理?」
慌てて振り返ると、髪を拭きながら魅録がバルコニーに出てくるところだった。
部屋の明かりのせいでよく見えないけど、笑ってるみたいだ。
別に隠すことでもないのに、あたいはなぜか手すりに肘をつき、携帯を握りしめる。
いつの間にか、真っ赤だった太陽は海の向こう側に消えていた。
「海見てたのかよ。だけど、んなカッコで海風に吹かれたら風邪ひくぜ?」
ゆっくりと近付いた影が両腕であたいを包み込み、肩越しに囁く。
魅録の体温は心地いい。ざわざわしてる胸の中まで、あったかくしてくれる。
黙ったまま、暗くなっていく海を二人で眺めた。

その時、魅録の腕にほんの少し力がこもった。
ちらっと横目で見上げると、鋭い視線があたいの手の中に注がれている。
「・・・電話してたのか?」
言い訳なんか必要ない。ああ、ちょっと清四郎から、って言えばいいんだ。
「ああ、ちょっとな・・・・・ダチから・・・」
「・・・男か?」
声色が変わった。
魅録はいつだってストレートにものを言う。だから、何を考えてるのかすぐわかる。
ほんとに嫉妬しちゃってるんだ、って思ったらくすぐったい気分になる。
あたいにちょっかい出す男なんか、そうそういるわけないのにさ。
「・・・妬いてんの?」
あたいはからかうように笑った。
「ああ、そうだよ。誰なんだ?」
「・・・ただのダチだよ。指輪もらったって言ったら、おめでとう、幸せに、だって」
そっか、と言う魅録の口元がやっとゆるんだ。

対等な友人だとあいつは言った。今、言ったことは全部ほんとだ。
だから、あたいは嘘なんかついてない。それなのに・・・この後ろめたさは何なんだろう。
なんで、あたいは淋しいんだろう。


186 :横恋慕(43) :04/04/08 00:42
肩にのっていた魅録の頭が動き始め、首筋を唇の感触が這う。
思わず身を竦めたあたいの手から、携帯が滑り落ちた。音も立てずに砂浜に落ちて行った。
残ったのは、指輪だけ。
でも、いいんだ。だって、あいつはもう電話してこない。

あいつはもう、あたいのことを『お前』とは呼ばないんだろう。
よかったじゃんか。これで野梨子や可憐と同格だ。
きっと、もう二度と命令されることはない。頭を撫でられることもない。
だから、あたいは、もう・・・

「そんなに硬くなんなよ、怖いのか?」
自分だって緊張してるくせに、そう言って笑う魅録と向き合い、小さく頭を横に振った。

海に行こうと言ったのはあたい。どっか泊まっちゃおうって言ったのもあたい。
俺、まだ焦ってないぜ?って言ってくれる魅録に、いいんだって言ったのもあたい。
もうこれ以上、大好きな魅録を不安にさせたくなかったから。
魅録の優しい腕を手放したら、もう立っていられないような気がしたから。

「大丈夫だから、ほら・・・目ぇ閉じろよ」
甘い声に促されるまま目を閉じた瞬間、やわらかいものがそっと唇に触れた。
愛してる、という声が続く。
薄目を開けて確かめると、そこにあったのは照れ笑いする魅録の顔。
いつもの激しいキスとは違う、触れ合うだけの優しいキスに、胸がまたざわついた。
なぜか脳裏に浮かんだのは黒髪の男。触れた事なんか、一度だってないはずなのに。

理由を考えようとし始めた、足りない脳みそを拒絶する。
目の前の男の首に腕を回して引き寄せ、自分から舌を絡ませた。

どこかで、悠理、と呼ぶ声が聞こえた気がした。


187 :名無し草:04/04/08 00:43
「横恋慕」続きます。


188 :名無し草:04/04/08 08:21
>横恋慕
>残ったのは、指輪だけ。
>でも、いいんだ。だって、あいつはもう電話してこない。

ここが悲しくってbut萌えました!
悠理はついに魅録と結ばれてしまうけど、ここからどう展開していくんでしょう。
気になります。続きよろしくお願いします。

189 :名無し草:04/04/08 11:33
>横恋慕
登場人物の心の動きが手に取るようにわかります。
清四郎が可哀相だー。
でも、悠理が清四郎の方にいけば今度は魅録が・・・
あー困る。私が困っても仕方ないけどw
続き楽しみにしてます。

190 :名無し草:04/04/08 12:12
横恋慕、自分の気持ちにずっと正直な魅録に比べて、
気持ちを誤魔化してる悠理にもやもやしちゃう。
清四郎が自分なりに決着付けようとしてるように、
悠理にも己と向き合って欲しいです。
ともあれハマってます。続きをどうぞ宜しくです。

191 :名無し草:04/04/08 19:40
>横恋慕
私もハマってます。読み始めると止まらない。
悠理に魅力を感じます。続きがたのしみ!

192 :名無し草:04/04/08 20:32
有閑倶楽部全員の好物を考えてみました。
悠理→なんでも食べるが「中華」(九江のイメージが強いから)。
清四郎→「精進料理」などのイメージがあるが、逆に「ハンバーグ」とかのお子ちゃま料理が好きだったらオモシロイw
野梨子→ほうれん草のゴマ和えや菜の花のお吸い物など、和食。
魅録→男らしく焼肉。野外でバーベキューはお手の物。
可憐→♂
美童→♀

ちょっとコジツケぽいですねw
魅録にもっとぴったりな料理がありそうですが、どなたか…w

193 :桜 〜清四郎〜:04/04/08 22:46
短編をうpさせていただきます。
3レスおじゃまいたします。
清×可です。


194 :桜 〜清四郎〜 ():04/04/08 22:47
16歳の春の日。
闇に映える夜桜のような恋心を、僕は永遠に封印した。


「夜桜って、キレイね」
高校生活も2年目を迎えた、4月の帰り道。
生徒会の活動で遅くなった可憐を送る途中、僕たちは桜の木が連なっている道を歩いていた。

「残念でしたね」
数歩前を楽しそうにくるくる回りながら歩く可憐に、僕は話しかけた。
「何が?」
「花見。美童が来れなくて」
「ああ・・・・・・うん、そうね」
灯りもない暗闇に、桜の花の白さだけが浮かび上がる。
ゆるやかに舞い落ちる花びらは
柔らかな可憐の髪にからみつき。ふわふわと揺れていた。


195 :桜 〜清四郎〜 (2):04/04/08 22:47
「言わないんですか?」
吹き抜ける風からは、ほのかに桜の匂いがする。
「想いを告げるだけが、恋じゃないから」
ふわり、と可憐がこっちを向いた。
「・・・・・・らしくない?」
微笑んだその顔から、涙が零れ落ちそうだった。
「いいえ」
僕はただ、微笑み返すことしかできなかった。


196 :桜 〜清四郎〜 (3):04/04/08 22:48
「送ってくれて、ありがとう」
「じゃあ、また明日」
僕は家路へと、歩き出した。

「清四郎」
振り向くと、可憐が僕を見つめていた。
「あたし達みんな、ずっと友達よね」
僕は軽く手を振って、笑った。


夜桜が、憐れむように僕を包む。

伝わらない、可憐の想い。
伝えない、僕の想い。

「ずっと、友達です」
僕のつぶやきに応えるように
月に照らされた桜が、ざわめいた。


197 :桜 〜清四郎〜 :04/04/08 22:49
ナンバリングの1が抜けました

桜シリーズ、これで終了させていただきます。
コメントを書いていただいた皆様
言葉の間違いを訂正してくださった皆様
(ありがとうございます、勉強になりました)
深く感謝いたします。


198 :名無し草:04/04/09 00:47
>桜
お待ちしてました。
そっか…やっぱり清四郎は可憐だったか…

この後、どんな歳月が6人を変えて行ったのか気になりますね。
終了と言わず、気が向いたらまた続きを、と願っております。

199 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/09 15:53
>178の続きです。
一通り野梨子と話した後は、仲間同士のいつもの話になっていった。
普段は気を使ってくれる魅録だが、一人が新車を購入したらしく、
よほど盛り上がっているのか、夢中で話に興じている。
男にとって新車購入というのは、たとえそれが友人のものであった
としても話の尽きないビッグイベントなのだ。
野梨子には話の内容は微塵も分からない。いつぞや、魅録と悠理が
マフラーについて喋っている時「寒くなりましたものね。私も暖か
いマフラーが欲しいですわ」と話題に加わろうとしたら、大笑いさ
れた。可憐ですら分かっていたようだ。自分はその分野に関しては
無知に等しいのだ。
無口で陰気な女と思われたくないが、的外れなことを言って愚かな
女と笑われるのはもっと怖い。黙って座っているだけの重苦しい時
間がのろのろと過ぎていく。
(なぜ私ここにいるのかしら。こんな時、清四郎がいて下さったら…)
清四郎は、野梨子が入れない話が続いていたらそっと分からないこ
とを教えたり、さりげなく話題が変わるように誘導したりしてくれ
ていたのだ。まさに、物理的な意味だけでなく、そういった意味に
おいても清四郎は野梨子を守っていたのである。が、それは野梨子
にとって空気のようなものであり、意識されることは無かった。
(私ったらなぜ清四郎のことなんか…。魅録の側にいるというのに)
野梨子は軽く頭を振って心に浮かんだ清四郎の姿を打ち消した。
そのとき―
「あ、魅録じゃない?久しぶり」
バイク仲間だろうか。一人の女性が現れた。自分より少し年上であろう。
きれいで大人っぽい人だと、野梨子は思った。
気軽に魅録の肩に触れたその手が気になった。

続きお願いま〜す。


200 :名無し草:04/04/09 19:08
>桜
待ってました!!
>16歳の春の日。
>闇に映える夜桜のような恋心を、僕は永遠に封印した。
ここだけで鳥肌が立ってしまう。たった3、4レスの中に
これだけ恋する切なさやもどかしさを込めた作者さま、
尊敬です。また読みたいです。

>ホロ苦
う〜ん、うまい!
野梨子に「清四郎がいたら」と思わせちゃうのに感心。

201 :名無し草:04/04/11 00:33
静かでつね・・・

202 :名無し草:04/04/11 01:08
>>192
なんとなく思いついたハンバーグが好きな清四郎。

<聖プレジデント学生食堂にて>

「あー、なんか足りなかったなあ…」
ふと見ると目の前の皿に茶色の物体が一切れぽつんと残っているではないか。
当の男はゆっくりとお茶を啜っている。
「せーしーろー。食わないんだったらあたいにくれ」
言葉と同時に悠理は箸を伸ばした。
と、湯呑みを持っていたはずの清四郎の手はフォークをつかみ、
「いじきたないことをするんじゃありません」ハンバーグを突き刺した。
「なんだよー、ケチ。…あっ Σ(゚д゚lll)」
悠理の目の前でそれは清四郎の口へと消えていく。
(もしかして、コイツ…)
(…小さい頃からそうでしたけど)
(好きなものを最後まで取っておくなんて…)
(どちらにしろ、ふたりとも子どもだよね)

203 :名無し草:04/04/11 16:49
>192に関連してなぜかマザコン談義…
初期の「清四郎ちゃ〜ん」のイメージで、彼はマザコン設定なのかなと思わされた割に、
原作ではそういうエピソードって特にないんですよね。
ママが編み物をする場面があるから、手編みのセーターなど着てたとは思われますが。
意外と魅録の方が隠れマザコンで、幼い頃に一度だけ千秋さんが作ってくれた
ハンバーグ(オムライス可)の味が忘れられない、っていう感じがする。
ついでに母親が留守がちな反動で、家庭的な女性に憧れていそうなイメージ。
>202
大人げない清四郎大好き!!…ですが、個人的にはここはひとつ、
「いじきたないですねぇ」
とか言いながら悠理の鼻先にフォークを差し出していただき、
彼女が嬉しそうに口を開けた瞬間、にやりと笑いながら自分の口に入れて欲しかったw

お子ちゃま度120%の清四郎(に呆れる4人とマジ切れする悠理)に萌え〜

204 :名無し草:04/04/11 17:26
>203ママが編み物をする場面があるから、手編みのセーターなど着てた
なるほど〜
なんか清四郎のセーターの柄がオジサン臭いと思って読んでた。
>母親が留守がちな反動で、家庭的な女性に憧れていそうなイメージ
禿同。家事や育児をしっかりやる家庭的な主婦になってくれる人を
お嫁さんに選びそうだ。

205 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/11 19:34
>>199さんの続き。

「おう、久しぶり」
魅録が笑顔で応えると、女性は当然のように魅録の隣に座った。
「何だか可愛い子がいるじゃない。紹介してよ」
茶色に染めた長い髪をかきあげながら微笑みかけられて、野梨子は
思わずうつむいてしまった。
「ああ。こいつは───」
魅録の彼女だよ、と別のところから声がした。
「へえ。同じ学校の子?」
「まあな」
「でも全然魅録とタイプが違うのね。悠理とも違って、本物の
 聖プレジデントのお嬢様って感じ」
悪気はないのだろう。
けれどそれは、野梨子が今一番言われたくないことだった。

「そうだ。この前話してた宿舎のことだけど…」
「うん?」
女性が話し始めると魅録は身をのりだした。
彼女が笑うたび魅録も笑い、彼女が真面目な顔になると魅録も
真剣に相づちを打つ。
野梨子は内容もわからないままに曖昧な笑顔を浮かべ続けた。

(魅録は私の誘った映画に付き合ってくださったんですもの。
 私だって──)
そう思っても、居心地の悪さはどうしようもなかった。

どなたか続きお願いします〜。

206 :名無し草:04/04/11 22:37
>ホロ苦
野梨子のつらさ、分かります。かわいそう・・・
自分だけ話の内容がわからないときってツライですよね。
ましてや、女の人が相手だともっと劣等感感じますね。
やっぱり野梨子には清四郎が必要なのかも・・・?

207 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/12 03:09
>205さんの続きです。

アルコールがまわってきたせいもあるのか、ますます場は盛り上がってきた。
楽しげな雰囲気をこわしたくはないのだが、ただ微笑んでいるばかりでは
そのうち変だと思われるだろう。
野梨子は呑んでいれば少しは目立たないかもしれないと、ジョッキに口をつけた。
しかし元々ビールはそれほど好きではない。ただ魅録の友人たちにあわせただけなのだ。
口の中にビールの苦味が広がっていくにつれ、なおさら心が重苦しくなってしまう。
そのうちに魅録と彼女の話に耳を傾けていると、
伊豆だの宿の予約だのという単語が彼女の口から飛び出してきた。
どうやらバイク仲間数人でツーリングに行く計画を立てているようだ。
(この方も一緒に行くんですわ)
野梨子はハッとした。
もちろんふたりだけで行くわけでもない。だけど――。
第一印象でもきれいな人だと思ったが、先ほどから見ていると、彼女は
ふとした仕草が同性である自分からしても女っぽく魅力的だった。
その上、隣の魅録はイキイキとしている。
自分と一緒にいて、これほど楽しそうな顔をしたことはあっただろうか。
泣きたいような気分になり、野梨子はぐっとビールをのみほした。
「――あれ、野梨子ちゃんって案外、お酒強いんだ」
友人のひとりが笑いかけてきた。
「ここの店、地酒が充実しててさ。どれか試してみる?」
「……ええ、なにかおすすめはあります?」
野梨子は慌てて笑顔を作り、手渡されたメニューに目を落とした。

どなたか続きお願いします。

208 :名無し草:04/04/12 10:15
>ホロ苦
おぉ!イイ感じに進んでいますねぇー
ホロ苦なぁ。

209 :ホロ苦い青春編 魅×野 :04/04/12 21:07
207の続きです。
「おい、野梨子。やめろよ」
魅録が少し険しい顔をしてメニューを野梨子から取り上げる。
「魅録ったら厳しいのね。自分は中学生の頃から飲んでたくせにね」
「あんたが無理矢理飲ませたからだろ」
その女性は笑いながら店員に慣れた様子で適当な酒を注文した。
(この女の人は魅録が中学生のときから仲がよかったんですわね・・・)
心にかかった黒い雲を振り払うように運ばれてきた酒をぐっと飲みほす。
思いのほか口当たりは軽く飲みやすい。彼女が野梨子のことを考えて選んで
くれたのだろう。酒に通じ、かつ気配りのできる、いわゆるいい女といった
ところか。野梨子は劣等感を打ち消すため一気に二杯目も空けた。
「野梨子ちゃん、けっこういけるじゃん」「はい、次もどうぞ」
しかし、さすがに体が熱くなり頭がぼうっとしてきた。席を立つと足元が
ふらついたが回りに気付かれるほどではなく、なんとか一人で歩けた。
一歩一歩確認しながら野梨子は化粧室に向かった。
一人きりになって初めて緊張が解けるのが分かる。鏡の中の自分は
顔が真っ赤で目が潤んでいる。気持ち悪いのはアルコールのせいなのか、
それとも心を占めるどろどろとした感情のせいなのか分からない。
しばらく一人、壁にもたれて心と体を静めていた。
その時、薄い壁の向こうの廊下から、仲間の男二人の声が聞こえてきた。
「なんかやばくないっすかあ?元カノと新カノが一緒なんて」
「おれもマリさんが来たとき驚いたぜ。でもま、あの二人が付き合ってた
のは昔の話だろ。魅録も普通と変わんないし、第一、野梨子ちゃんは何も
知らないんだから、おまえも席に戻ったら普段通りにしておけよ」

どなたか続きお願いします。
女の人の名前、マリさんにしちゃいました。いちおう、ブラッディ・マリー
というカクテルの名前からということでお許しを。

210 :名無し草:04/04/12 21:43
>ホロ苦
元カノ、キター━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
野梨子はかわいそうなんだけど、ちょっと面白い展開ですね。
そして中学生の時に、年上の彼女にいろんなことを教えてもらったかもしれない魅録…
楽しい想像がふくらみますw

211 :名無し草:04/04/12 21:59
>ホロ苦
元カノかあー!
かなり野梨子にかわいそうな展開だ。
でも野梨子ってこういう展開の方が萌えるのは何故。

212 :名無し草:04/04/12 22:33
>ホロ苦
意外なライバル登場ですね〜。ドキドキ
これにまた清四郎も絡んで、ゴチャゴチャしてほしいぞw

213 :名無し草:04/04/12 22:41
>210
>そして中学生の時に、年上の彼女にいろんなことを教えてもらったかもしれない魅録…
こ、これを是非是非きぼん!(*´Д`)ハァハァ

214 :名無し草:04/04/12 23:25
…毎晩正座して「横恋慕」の御降臨、待ってまつ…(*´∀`)

215 :ホロ苦い青春編 魅×野 :04/04/13 01:26
>>209さんの続きいきます。

あの女性と魅録が昔お付き合いしていた───?
アルコールのせいだけでなく野梨子の鼓動が早まった。
急に頬が熱くなって立っていられない。
(──私ったらお酒まで選んでもらって、馬鹿みたい)
野梨子はしゃがみこんで、こみ上げた涙をこらえた。

「あ、野梨子ちゃん」
平静を装って化粧室のドアを開けると、魅録の友人たちが廊下で
煙草を吸っていた。
「具合悪そうだね。無理に酒飲ませちまってごめんな」
「そんな……。でも少し飲みすぎたしまったみたい。今日はこれで
 失礼します」
壁に寄りかかった野梨子は弱々しく微笑んだ。
「じゃあ俺、魅録呼んでくるわ」
「いえ、魅録の邪魔をしたくありませんの。先に帰ったとだけお伝え
 くださいな」
野梨子は必死でいいつのった。
そして二人がわかったと答えると、一礼して店から飛び出した。

その後、どうやって家に帰ったのかはよく覚えていない。
気が付くと白鹿邸の前から走り去るタクシーを見送っていた。
(………私、みじめですわね)
野梨子は、酔いのさめない足でよろよろと門に近づいた。

どなたか続きよろしくです。

216 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 01:29
すみません、本文11行目の訂正お願いします。

× 飲みすぎたしまったみたい
○ 飲みすぎてしまったみたい

217 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 11:47
>>215さんのつづき
少し気持ちを落ち着けようと、朦朧としてきている頭で思った。
壁にもたれて、深呼吸する。
すると、あちらの方から人影が見えた。──清四郎だ。
どうして彼が今帰ってくるのか。(月刊誌を買いに行っていたんですわね)
今日は清四郎の愛読書の発売日。
そんな事間で把握している自分に、野梨子は思わずひとり笑ってしまった。
もちろん清四郎は野梨子の知らない世界を沢山知ってはいるけれど、その
いくつかを覗かせてくれる。絶対に、野梨子に孤独を感じさせるような人ではない。
わかっていたのに。
魅録の世界。野梨子の世界。
そんなものに負けたりしないと、ただ、好きなら平気だと、そう思っていたけれど。
アルコールの回った身体の鼓動の早さに不安が追い討ちをかける。

「…野梨子?どうか、したんですか」一番自然に、自分の耳になじむ声。そう思った。
「──っ」何も言えなくなって、清四郎の胸に飛び込む。
「野梨子?…酔ってますね」「私……」彼の顔を見上げた。
「魅録といると、哀しくなって、気持ちが急く(せく)んですの。魅録のこと、
…想っているけれど」好きだけれど。心が持ちそうにない。そう思った。
清四郎は、何も言えない。ただ野梨子を傷つけたらしい魅録に、野梨子にこんな表情を
させる事の出来る魅録に腹が立った。
「清四郎とは、いつまでもいつまでも一緒にいられますわ。不安もなく」
魅録といると気持ちが急くのは、彼に恋をしているから。
僕といると落ち着くのは、僕に恋をしていないから。

誰か別の人にだったら、こんな簡単な事教えてやるだろう。
けれど。野梨子には、出来ない。
すべり落ちた雑誌が、道路で音を立てた。
「!?」彼は野梨子を抱きしめた。酔っている彼女相手に汚いとわかっていても、
そうせずにいられなかった。きつく、きつく抱きしめた。「……」「……」
何も言わずに、──言えずに二人はそうしていた。
しばらくして、静寂を切り裂く声がした。「…に、やってんだよ」

218 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 11:48
どなたか続きお願いします。

219 :名無し草:04/04/13 12:49
>ホロ苦
ホロ苦やなぁ・・・と思ってたら、すごいシーンに突入かも?
スピーディーな展開がいい感じ!次から次にいいシーンが来るのも
リレーの良さですね。
>210のキターにワロタ。私もマリさんにもっとからんでほしい。
中学生の魅録と高校生のいい女。どんな付き合いだったんだろ。キニナル・・・

220 :名無し草:04/04/13 15:08
>217
もしかしてこれは、清四郎VS魅録? ドキドキ・・・
あ、でも217の最後の口調なら、意表を突いて悠理という手もあるかも。
彼女もこういう口の利き方するから。
219さんの言う通り、リレーの良さがうまく活かされてると思う。
作者さんたち乙です。続きが楽しみ〜

221 :名無し草:04/04/13 19:36
>220
そっか、悠理という手もあるね。頭いい〜。しかもその展開もいい〜。
悠理は魅録の元カノのこと知ってるのかな。

222 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 21:42
ちょっと時間が戻るのですが、
>>209さんの後の魅録サイドで1レス書かせてください。

223 :名無し草:04/04/13 21:43
>220さん
ほんと、頭いいw
有閑メンバーはみんな違う言葉遣いだからすぐ
わかるけれど、魅録・悠理は実は似てるんだよねー。

224 :名無し草:04/04/13 21:44
>ほろにが
すごい勢いでリレー進んでますね〜、嬉しい!

他の作家さまは新年度でお忙しいのでしょうか。
連載、単発なんでもいいので、ご降臨お待ちしてます!!

225 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 21:45
野梨子が席を立った後、仲間たちも外の空気を吸ってくるなどと言って次々に席を離れ、
テーブルには魅録と彼女のふたりだけが残された。気を使わせちまったかな、と少しだけ思う。
以前この女性とつきあっていたことを仲間たちは知っている。
だが所詮、昔のことだし、さっぱりとした気性の彼女とは今もいい友達だ。
だから皆に心配されるようなことはないのだが。
「魅録の彼女ね、ちょっと意外だった」
「俺みたいな不良には似合わないって? あいつらにも散々言われたけど」
「うーん、そうじゃないんだけど、見るからに魅録と共通点がなさそうじゃない。
まあ正反対のタイプってことで余計に惹かれるのかもしれないけど」
「そうかな。ほら俺、一応、生徒会やってるだろ。あいつもそうなんだ。
ああ見えて結構、無茶やってるんだぜ。一緒にダブった仲だしな」
「そうなの? じゃあ、そんなに心配することないんだ」「え……?」
「ほらあの子、にこにこ笑ってるだけで全然しゃべらないから気になってたの」
そういえば話していたのは、内輪の、野梨子の入れないような話ばかりだ。
(オレ、何やってんだよ)今さらながら魅録は後悔した。
「もしかして気づいてなかったの? ダメじゃない」
手厳しい彼女の言葉にさらに追い討ちをかけられる。
「なにかに夢中になるとすぐ周りが見えなくなるんだから。なおってないのね」
「……そっちもキツイとこ変わらないよなあ。今の彼氏はなんにも言わないのかよ」
「うるさいわね。……悪いけど、今言ってくれるような人はいないの」
どうやらまずいことに触れてしまったらしい。
「――ゴメン」
「やだ。謝らないでよ。それに文句言ったけど、魅録のそういう一生懸命になるとこって
ホントは嫌いじゃないし、変わってないのも……なんでかな?ちょっと嬉しい気がする」
酒のせいかもしれないが、彼女の頬がうっすらと染まっている。魅録は少し胸がざわめいたが、
がやがやと仲間たちが戻ってくる声が聞こえ、そこで会話は途切れてしまった。

226 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/04/13 21:46
「あー、そうそう魅録。野梨子ちゃんだけど、飲みすぎたから先に帰るって」
「ひとりで帰ったのか?」
「魅録を呼ぶって言ったんだけど邪魔したくないって言うからさぁ」
魅録は慌てて立ち上がると、店を飛び出した。
ビルの階段の踊り場から外を見下ろす。しかし、すでに野梨子の姿はなかった。

すみません。2レスになってしまいました。
続きお願いします。

227 :名無し草:04/04/13 21:51
>ホロ苦
マリさん、いい人じゃん!
とてもあのメアリーから名前をとってると思えないくらいw

228 :名無し草:04/04/13 22:04
「横恋慕」を続けます。
当初の予定よりも話が膨らんでしまったので、もうしばらく連載を続けさせていただきます。
今回は魅×悠のベッドシーンのみで、2レスいただきます。苦手な方はスルーして下さいませ。
>186の続きです。


229 :横恋慕(44) 魅×悠×清:04/04/13 22:04
明かりを落とそうとすると、なぜか悠理は嫌がった。
「やだ。電気、つけといてよ」
「・・・普通逆だろーが。ったく、変わった女だよなぁ・・・」
苦笑しながらサイドランプへのばした手を戻すと、安堵した表情の悠理が俺の頭へと両手を
のばしてきた。その指で愛おしむように髪を撫で、それから頬を、唇をなぞる。
そうしながらも、茶色い瞳はまだどこか不安げに揺れていた。
「悠理・・・?」
口付けると一瞬は瞑るものの、またぱっちりと目を開けて俺を凝視する。
初めてでナーバスになってるのはわかるけど、一体どうしたって言うんだよ。
「どうしたんだよ・・・そんなに睨み付けんなって、やりにくいじゃねーか」
額を軽く指で弾くと、強ばっていた悠理の表情がほどけた。
「ごめん。ただ、さ・・・」
言いながら、はにかむように悠理はすっと睫毛を伏せた。
「魅録を・・・魅録を見てたいんだ。ちゃんと・・・見てたいんだ・・・」
上目遣いの悠理が俺を見る。
火照り始めていた俺の体が、一気に熱を帯びた。

見つめ合ったままバスローブを脱ぎ捨てる。
「じゃあ、見てろ。いいか、最後まで目ぇ閉じんじゃねーぞ」
頷いた悠理にキスをしながら押し倒し、首筋に、胸元に、唇を落としていった。


230 :横恋慕(45) :04/04/13 22:05
少し強引に押し入っていくと、悠理は顔を歪ませた。
「い・・・痛い・・・魅録っ・・・・・・」
ゆっくり、と自分に言い聞かせてはいたが、そうそう辛抱できるもんじゃない。
「悪い・・・ちょっと我慢してくれ!」
ひとつになった瞬間、きつく閉じられた瞳から涙が溢れるのが見えた。
それでもなお、悠理は必死で薄目を開けようとする。
「みろ・・・く・・・・・・っ・・・!」
動き始めた俺の下で、悠理は唇を強く噛んだ。

焦点の合わない瞳が、ぼんやりと俺を見返す。
ゆらゆらと揺れながら、悠理の表情が次第にゆるんでいく。
「悠理・・・悠理・・・すげーよ、お前、最高・・・」
顔の横に両手をつき、俺は呟きながら頭を左右に振った。
すぐにイッちまいそうで、必死で自分の体を制御しようとする。
「あ・・・ん・・・・・・みろ・・・く・・・」
だが、愛しい女の呼び声が、ますます俺を昂らせていく。

もうダメだ、と言いそうになった時だった。
悠理の唇から喘ぎ声でも俺の名でもない言葉が洩れた。

早めかけた動きを、俺は一瞬止めた。
「あ・・・?何を・・・しろって・・・・・・?」
はっと目を開けた悠理は大きく息を吸い、俺の背中を引き寄せるように両腕に力を込めた。
「・・・な・・・んでもない・・・」
もう一度なんでもない、と首を振り、それから俺の耳元で甘く囁いた。
まるで情事に慣れた女のように、悠理は低く囁いた。
「もっと、魅録・・・もっと・・・・・・」
ねだられるまま、遠のく意識の中で俺は悠理を抱き続けた。


[続く]


231 :名無し草:04/04/13 22:15
>ホロ苦
マリに胸がざわめく魅録もいいですねぇ。
魅録が追いかけて行きそうな雰囲気になってきたし、
>217の言葉は魅録か悠理か?
魅録→清四郎とバトル or 清四郎に叱られる魅録
悠理→話がさらに悪化
どっちも捨て難い。
悠理の直後に魅録登場もいいし、その他の展開もあるかも。
なんだかワクワクしてきました。

>横恋慕
「魅録を見てたい」の意味が違うんでしょうかね。
これは切ない。

232 :名無し草:04/04/13 22:33
>ホロ苦
魅録が浮気?現場ハケーンだと思ってたけど、悠理でも面白そうですね。
悠理だと事態が悪化してまたこじれるかな?
リレーらしい展開でイイ!!

>横恋慕
こっちも切ない。
悠理もだけど、魅録も切ないよなあ。
誰よりも傍にいる瞬間なのに、気持ちは離れてるんだな…
悠理が自分の気持ちを自覚したとき、どうなるのか激しく気になる。

233 :名無し草:04/04/13 22:33
>ホロ苦
すっごくおもしろいです〜!!
>217の言葉、魅録バージョンと悠理バージョン両方読みた〜い!!
実際両バージョンで進めたら話が混乱しちゃうから無理だろうけど。
どちらにせよ楽しみにしています!
作家さんたち頑張って!

>横恋慕
いやん、どうしよう〜
こちらもとても面白いです。
正直、この話が始まった当初はこんなに面白くなるとは思っていませんでした。
も〜嬉しい誤算です。
これからも頑張って書き続けてくださいね!

234 :サヨナラの代わりに (54):04/04/13 22:54
>74の続きです。

「野梨子さん、どういうことですか! せっかくのお話を、会ったその場で断ってしまう
 なんて」
叔母は、一分の隙もない見事な着物の着こなしに似合わぬ大声で私に叫んだ。
実家の奥の座敷で、私と叔母が向かい合って座っている。
母さまは、私の右側に座っている。
私は、遅かれ早かれ叔母がお見合いのことで乗り込んでくるだろうとわかっていた。
今日まで、茶会の準備を口実に叔母からのそれとはなしのサインをかわしてきたけど。
「ですから、これからは、お見合いはしたくありませんの」
私は叔母の目を真っ直ぐに見据えて、一言一言をはっきりと発音した。
ここで下を向きたくなかったし、語尾が曖昧になるような話し方もしたくなかった。
いつになく強気な私の様子に、叔母は少しずつ動揺し始める。
「でもね、野梨子さん、あなたがあのまま清四郎さんと一緒なら、何も私だってお見合いを
 勧めたりなんかしませんよ。でも……」
口ごもる叔母に、挑むような視線を投げかける。
叔母は、白鹿流の体面を守るのに必死なのだ。
だから、私が離婚した時は『女の幸せは結婚なのに』と嘆き、家を出てひとり暮らしを
始めた時は『ちゃんとした家があるのにとんでもない』と大騒ぎした。
でも。
私は、自分の気持ちに正直でありたい。
私の生き方が白鹿流を継ぐに相応しくないと言うなら、叔母さまに譲ってしまえばいい。
ひとりの門弟に戻って茶道を続けていくのも、またひとつの生き方かもしれない。
「叔母さま、私、今、お慕いしてる殿方がおりますの。その方のことが心にあるのに、
 他の殿方とお見合いするなんて考えられません」
私は膝の上に置いた両手にぎゅっと力を入れ、もう一度背筋を伸ばして顎を引いて言った。

235 :サヨナラの代わりに (55):04/04/13 22:55
「野梨子さん……」
それまで一言も口を挟まなかった母さまが、急に顔色を変えて私の顔を覗き込んだ。
母さまが驚くのも無理もない。
清四郎との時でさえ、こんなにも自分の気持ちをはっきりと言葉にしたことはなかったの
だから。
ましてや叔母に到っては、言葉を失っている。
「母さま、叔母さま。その殿方のお名前は、今は申し上げられません。……でも、誠実で
尊敬することのできる、立派な殿方です……」
私はゆっくりと立ち上がり、座敷を後にした。
外はもう薄暗くなっていて、お弟子さん達もほとんど帰っているのか表は静まり返っていた。

【続く】

236 :名無し草:04/04/14 00:08
>横恋慕
悠理はほんとに魅録と結ばれちゃったのっ!?
う〜〜、どうなるんでしょう。歯がゆい…。

>サヨナラの代わりに
こ、こちらの二人はどこまで??
でも進展してるみたいで嬉しいです。次は魅録の決意表明でしょうか。
続きを楽しみにしてます。

237 :名無し草:04/04/14 00:47
>サヨナラの代わりに
野梨子の決意表明キターーー!(AA略
こういう凛としたところ、彼女らしくていいです。
236さんと同じく、魅録側がどうなるのか楽しみです。

238 :名無し草:04/04/14 01:28
225さん、227さん
bloody Mary は虐殺魔の血まみれのメアリ女王が由来だったですね。
すごいところから名前付けてごめんよ、マリさん。
でも227さんがマリさん像を素敵にふくらましてくれたのでうれしい。
千秋さんで慣れているせいか、魅録って年上のいい女とも合いますね。
マリさんがいい女であればあるほど、かえって野梨子にはつらいかもしれないけど。
いずれにせよ最後のセリフ、魅録なのか悠理なのか楽しみ。


239 :◆F/MOUSOU1Q :04/04/14 08:14
ご無沙汰しております。まとめサイト「妄想同好会」の管理人・嵐です。
突然ですが、「妄想同好会」を引越ししました。

新URL http://houka5.com/yuukan/
旧URL http://freehost.kakiko.com/loveyuukan

本部とR支部を統合したかったのと、サイトの容量の関係などからです。
今度の所は、コンテンツの一部に18禁がある場合は黙認、という
鯖なので一箇所でやっていけるかと。
お手数をおかけしますが、ブックマークやお気に入りなどに入れて
くださっている方は、変更をお願いいたします。

240 :名無し草:04/04/14 10:41
>239
嵐さま
了解しました。いつも更新作業お疲れ様です。
もうカウンタが19万まで回っているんですね、ビックリでつ。

241 :名無し草:04/04/14 11:46
>236タソ
もう結ばれてると思われw
ん?結ばれるって、そーいう意味ではないのか?

>嵐さま
いつもありがとうです。もうすぐ20万hit祭りなんてありそうですね。

242 :名無し草:04/04/14 21:08
>241
ええ、そーいう意味なのですが…紛らわしくてすみません。
ちょっと興奮して悠理にツッコミを入れてました。
自分では「悠理…あんた、ほんとにいいの!?それで!?」って感じでした。

>嵐様
お疲れ様です。素晴らしいです。
20万hit祭りなんて、想像するだけでワクワクしちゃいます。
これからもよろしくお願いします。

243 :@@@@@:04/04/15 12:26
なんかこのスレすごく気持ち悪い・・・
ありえない事ひとりで妄想して書き込んで人に見てもらう?
ぞっとします・・・

244 :名無し草:04/04/15 13:11
>嵐様
いつも楽しみにしています。
これからもよろしくお願いします。

「檻」の続きが気になる…作者様の降臨お待ちしています。

245 :名無し草:04/04/15 13:20
わたしも檻の続きをお待ちしてまつw
あと他の連載&リレーも楽しみにしているのでサカーさん達がんがって!

246 :名無し草:04/04/15 13:36
作家さま達がご降臨するのを待ちつつ、ヒマなので久々にいきなり次回予告〜w

その1
「ラーメン作るんだけど可憐どこ?」
「棚の右端にない?」
「えぇ〜、清四郎しか見あたらないよ」
「けんびしゆうりを代わりに使うんじゃだめなの?」
果たしてどんなラーメンが出来るのか!?
次回「燃えラーメンの暴走」伝説は、繰り返される。

その2
今日は朝からふんばってんのに、清四郎が出ないんだよ…。
こうなったら可憐を飲むしかないかなぁ…やだなぁ。
可憐ってにがすっぱしぶいんだもの。
こうなったらおまじない。
けんびしゆうりけんびしゆうりけんびしゆうり…。
でるかなぁ…

妄想の足しにもならん…。書き逃げ失礼!!


247 :@@@@@:04/04/15 13:58
皆様おひまみたいね・・・ふふふ

248 :名無し草:04/04/15 14:20
>246
久々の「次回予告」ですね、ワラタよ。
特にその2・・・清四郎はウ○コかい!w

249 :@@@@@:04/04/15 14:33
馬鹿馬鹿しくって見てられない・・・
と言いつつ今どこまで馬鹿話が続いているか時々
のぞくのが楽しみではあるのだが・・・
うぷぷぷ

250 :名無し草:04/04/15 14:36
>246,248
ワラタ
やっぱり頭から出てくるんだろうか…
眉を顰めながら、「その呪文はやめてもらえませんかねぇ」とか…

251 :名無し草:04/04/15 15:07
>250
想像してワラタよ。

252 :名無し草:04/04/15 15:21
>>250
ランプの精のようなのを想像してしまいました。
(出てくる場所がランプではないけれど。)
「その呪文はやめて…」に(笑)。

253 :名無し草:04/04/15 16:26
>(出てくる場所がランプではないけれど。)
お茶噴いちゃった。

254 :名無し草:04/04/15 17:42
小ネタの、我らがヒーロー、菊正宗清四郎、マン。の時宗ちゃんバージョン考えました。
…清四郎マン、何の役にも立ってません。
悠理編、可憐編の作者さま、笑って許して下さい。2レス使わせていただきます。


255 :菊正宗清四郎、マン。ー時宗&千秋編ー(1):04/04/15 17:42
普段はガリ勉の生徒会長。が、しかし、その実体は……
良い子の味方、
 菊   正   宗   清   四   郎   、   マ   ン   !
助けを求める声を聞きつけては変身して飛んでいく。
今日の助けを求める人は松竹梅時宗さん(年齢不詳)。

「どうしたんですか!」
「あー、菊正宗清四郎、マン!千秋ちゃんがわしの言う事を聞いてくれんのじゃ」
「…言い方が悪いんじゃないんですか?」
「えーい、そんなことはいいから、早くわしの代わりに説教をしてくれ!!」
「はいはい、わかりましたよ」
清四郎、マンはトントン、とドアをノックする。


256 :菊正宗清四郎、マン。ー時宗&千秋編ー(2):04/04/15 17:44
「時宗さんから伝言です。他の男と遊びに行くな、胸の開いたドレスを着るな、魅録の
ベッドで寝るな、煙草を吸うな、以上です」
ダイナマイトボディを豹柄のドレスに包み、煙草をくわえた千秋がじっと彼を見上げる。
「かたいこと言わないでよ。それより、ねぇあんたいいカラダしてるじゃない?」
清四郎、マン、千秋の胸の谷間に視線が釘付けだ。
「一杯つき合いなさいよ」
千秋はそう言いながら、彼の胸板に指を這わす。
「あ…あっ!?まだ3分経ってないのに、胸のランプが…しかも異常に加熱している!
緊急事態発生、脱出します!!」
そう叫び、真っ赤になった菊正宗清四郎、マンは大空へ向かって飛んでいった。
「ふむっ!!」

「かーわいいー。また来てね〜〜」
投げキッスをする愛妻を陰から見つめ、時宗は拳を振り上げた。
「こ、この役立たず!二度と来るでないぞーーー!!!」

おわり


257 :名無し草:04/04/15 17:46
>清四郎、マン

ワロタ!リアル遭遇は初。
二人の態度が対照的だったのがなんともツボだなあw


258 :名無し草:04/04/15 18:02
>清四郎、マン

うれしいよ〜!心のオアシスだよ。清四郎、マン!

259 :名無し草:04/04/15 18:36
小ネタの、我らがヒーロー、菊正宗清四郎、マン。
またしても時宗ちゃんバージョンなんですが、かぶってすみませんが、うpさせてください。
(スレを覗いて無意識のうちに書き込んだのかとびっくりしました。
>254-256様、すみません。できることならケコーンして下さい。)

260 :我らがヒーロー、菊正宗清四郎、マン。〜別の時宗編〜:04/04/15 18:37
普段はガリ勉の生徒会長。が、しかし、その実体は……

良い子の味方、
 菊   正   宗   清   四   郎   、   マ   ン   !

助けを求める声を聞きつけては変身して飛んでいく。
今日の助けを求める人は松竹梅時宗さん(年齢不詳)。
「どうしたんですか!」
「おお、菊正宗清四郎、マン! 千秋ちゃんがもう2ヶ月も帰ってこないんじゃ。何とかしてくれんか!」
「ふむ、しかし仮にもあなたの奥方でしょう。ご自分でなんとかするべきでは…」
「なんじゃとぉ、人が恥を忍んで頼んでおるというのに!
 …だいたいキサマ、日本男子とあろうものがそんな奇怪な格好をしおって」
時宗、全身タイツの清四郎、マンをジロリと見る。
清四郎、マンはチョト恥ずかしくなり、前を手でかくした。
「この鬼時宗! 怪しい奴は成敗してくれようぞ!てやーー」
「そんな! 助けを求めておいてひどいですよ!――あっ胸のランプが!」
日本刀をかわし、菊正宗清四郎、マンは大空へ向かって飛んでいった。
「ふむっ!!」

時宗の絶叫が響き渡る。
「おのれーー、敵前逃亡とは恥を知れーーー!!」

おわり

清四郎、マンの格好は全く個人的な想像です。嫌いな方すみません。

261 :名無し草:04/04/15 19:16
同じく時宗ちゃんで考えていたとは、凄い偶然。
こっちも面白い。全身タイツの清四郎、マン。
ちょっと見てみたいぞ。怖いもの見たさでw

262 :@@@@@:04/04/15 19:24
まだやってたのかよ・・・
おまえらキショイ・・・・・・・・・おえ〜

263 :名無し草:04/04/15 19:58
わー、すごい。菊正宗清四郎、マンが二つも!

>時宗編
セクシーな千秋ちゃんに真っ赤になる清四郎、マンが可愛いw
ツボです。

>別の時宗編
前を手でかくして…可愛いっす。
しかし、全身白タイツで飛んでいたとは、恥ずかしいヤシめ!w

264 :名無し草:04/04/15 20:23
時宗さん二連発!
どちらも場面の絵が浮かびます。うまいですね〜。

265 :@@@@@:04/04/15 21:08
ふ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
:::::::::::::::::::::::::::::::。

266 :名無し草:04/04/15 21:31
やったー!菊正宗清四郎、マン 二連発w
しかもどちらも時宗編、むっちゃワラタよー!

267 :名無し草:04/04/15 23:17
もうすぐ20万HIT…今盛り上がってるホロ苦も
10万HIT祭りから始まったんですね〜。続ききぼん!

268 :名無し草:04/04/15 23:30
>267
何か祭りの企画はあるんですかね。
またリク大会とかかな。盛り上がりたい!

269 :@@@@@:04/04/16 08:01
イラク事件で世の中は大騒ぎだっつ〜のに
夜中の11時すぎに
「きぼん」「わらた」「まつり」なんていって
危ない妄想にふけってるオバサン・・・
すっごく気持ち悪いよ君ら・・・・ぷぷ

270 :名無し草:04/04/16 09:07
>清四郎、マン!
時宗ちゃん、うんうん、彼ならそう言うだろうよと頷きながら読んでしまいました。
お二人とも巧いですね!
作者さま方、お次はモルダビア編なんかどうでしょうか〜?

271 :名無し草:04/04/16 09:14
20万hit、もうすぐだね。
今回は何か企画するのかな?
上ではリク祭りとかも出てたけど、20万hit祭りだと
競作はNG?


272 :名無し草:04/04/16 09:17
おお!久しぶりの菊正宗清四郎、マン!が二連発で!
しかも奇しくも同じ時宗ちゃん編とは!
254-256さん、260さん、ケコーンおめでとw

20万HIT祭り企画、楽しみだなぁ♪
リク大会があるなら私は他の一条作品とのリンクものをリクしたい。
「女ともだち」のヒロくんとかが登場して
西願瑶子似の可憐を気に入っちゃったりとかw

273 :名無し草:04/04/16 09:21
>270
うお〜!モルダビア編、私も読みたい!!

しかしモルダビアの助けを求める声ってのが想像できないんですが…w

274 :名無し草:04/04/16 09:31
>>272
他の一条作品とのリンクものって面白そう。
まぁ有閑しか読んでない人もいるから
上手くキャラ紹介を織り込まないとちょっと難しいけど。
祭り企画じゃなくても読みたいかも。

275 :名無し草:04/04/16 10:56
>270,273
「助けてくれ、清四郎、マン!私に合うサイズのチュチュが
無いんだ!姉妹で白鳥を踊りたいのに!」
とか?
「私と結婚するんだ!清四郎、マン!」とか?

276 :名無し草:04/04/16 11:35
>>275
ワラタ。腹がよじれるほどにw
く、苦しいよママン!

277 :名無し草:04/04/16 16:42
>275
チュチュを着て白鳥を踊るモルダビア…。
笑いすぎて苦しい〜。
グランディーバみたいなバレエになりそう。
重すぎてリフト可能なダンサーが見つからず
急遽、清四郎、マンが相手役になるとかw

278 :名無し草:04/04/16 17:27
>>277
いや、その直前に胸のランプが点灯するのさw
で、「ふむっ!」と飛び去る。

279 :名無し草:04/04/16 20:13
もうすぐ嵐さまのサイトが20万hitでつね。
せっかくだから何か10万hitの時みたいに何かしない?


というわけで、この話題はまゆこへgo!


280 :名無し草:04/04/17 06:34
>嵐さま、お疲れさまです。
20万hit祭り楽しみ〜(^0^)

「白鹿野梨子の貞操を狙え!」続きが楽しみですっ。
気になるぅぅ・・
ご降臨、お待ちしておりま〜す!!


281 :名無し草:04/04/17 06:57
sage忘れた・・すみません!

282 :名無し草:04/04/17 19:40
ホロ苦の続きが読みたーい!

283 :名無し草:04/04/17 19:52
思わぬ伏兵が読みたいーー
他のお話も読ーみーたーいーーー

284 :名無し草:04/04/17 23:12
横恋慕を続けます。
>230の続きです


285 :横恋慕(46) 魅×悠×清:04/04/17 23:13
毎朝の通学路で仲間達の情報を得るのが、このところの僕の日課になりつつあった。
悠理と諍いを起こして以来、部室にはろくに顔を出していないからだ。
何も知らず何も疑っていない野梨子は、顔を合わせる度に僕の顔色が悪いと言い、
「忙しくても、ちゃんと睡眠はとらないと・・・」など、一頻り説教をしながらも心配してくれる。
その後、楽しげに、時に不服そうに僕の知らない出来事について話し出す。

悠理や魅録の名が出る度に、僕は少しずつ少しずつ自分の心を殺していく。
そうすることで、心の平和を取り戻そうとする。
その試みは成功に近付いていると言えるだろう。感じのいい笑顔も作れるようになったし、もう
何を聞いても取り乱すような真似はしない。

野梨子は私情を交えつつ、毎日新しい情報を提供してくれた。

愛娘の薬指のリングに気付いた悠理の両親が狂気乱舞したということ。
ーそりゃ、相手が魅録なら安心しますわよねぇ。きっと結婚も大賛成ですわね・・・ー
美童が不倫をしているらしいこと。それが、どうやら本気らしいこと。
ーでも、人の道に外れることでしょ?私も可憐も許せませんの。魅録も呆れていましたわー
賭けに負けたので、可憐にエルメスのスカーフを買わされたこと。
ー悔しくて仕方ありませんわ。次は絶対に負けませんわよ、私・・・ー
それから、魅録と悠理が海辺のホテルで一夜を過ごしたらしいことまで。

彼女から聞くまでもなく、わかっていたことだ。
月曜の朝、彼らが一線を越えたことを僕は悟った。


286 :横恋慕(47):04/04/17 23:14
弾けんばかりの笑顔で恋人を見上げる悠理の横顔を、目を細めて見つめた。
ゆっくりと振り返った悠理は、僕と野梨子を見つけて白い歯を見せ、「おはよ!」と叫んだ。
だから、僕も笑顔で「おはよう」と言った。
僕に気付いた魅録は軽く片手を上げ、目だけで笑った。
野梨子はその意味に気付かなかったけれど。

その日から、僕と悠理は以前のように普通に挨拶を交わすようになった。
触れ合うことのない距離を保ちながら、言葉を選びながら、少しは軽口も叩けるようになった。
日を追うごとに、無理に作っている笑顔が本物に近付いていくように感じるし、胸の痛みにも
随分慣れた。そのうち、それすらも感じなくなるだろう。

あの時僕が申し出た言葉に、悠理からの返事はなかった。
だが、言葉の代わりに態度で示してくれた。僕が見たいと願った笑顔をくれた。
それが返事なのだとわかった。
悠理は赦そうとしてくれているのだ。
拒絶されたことに苛立ち、ひどい言葉を投げ付けてしまった僕を。
瞳はまだ笑っていないけれど、いつかまた心からの笑顔を見せてくれる日がくるかもしれない。


287 :横恋慕(48):04/04/17 23:15
「・・・せ・・・しろ・・・・・・清四郎?」
呼ばれていることに気付いて視線を落とすと、幼なじみが訝しげに僕を見上げていた。
聞いてますよ、と笑ってごまかす。
「それで・・・ね、昨日のことですけれど、お昼にいきなり剣菱のおばさまがいらっしゃって、『悠理が
卒業できるのも皆のお陰だから、お礼をしたい』って。『欲しいものなら何でもプレゼントするわよ』
なんて言われたものだから、可憐なんて興奮のあまり絶叫してましたわよ」
なるほど。あの夫妻のことだ。ロケットを要求されたとしても笑顔で応じるに違いない。
「清四郎は何を?」
瞳を輝かせている野梨子に、僕は黙って首を振る。
「あら、でも・・・そうですわよね。やっぱり私も遠慮した方が・・・」
少し恥ずかしそうに笑う野梨子に、僕はまた首を振る。
僕の欲しいものはもう手に入らない。
それだけのことだ。
「野梨子が遠慮することはありませんよ。僕にはもう、欲しいと思うものがないだけです」
「まあ・・・清四郎はもっと貪欲な人だと思ってましたのに。それじゃ、老人みたいですわよ?」
口元に手を当てて、ふふっと上品に笑う。
「よく考えれば何かあるでしょう?週末の夕食会までに考えておいてくれとのことでしたわ」
伝えましたわよ、と言いながら、野梨子は自分の教室へと足を向けた。


288 :横恋慕(49) :04/04/17 23:16
ふと思い出したのは、こんな詩の一節だった。

 あひたいひとはないか
 あひたいひとはない

確か、室生犀星の作だったように思うが、記憶が定かではない。
詩というもの自体に、元々あまり興味がなかったからだ。
だから、所々しか出て来ない。

 ほしいものがあるか
 もうない

えらく厭世的で諦観に支配された文体を、当時の自分は嫌悪したはずだった。
それは、口にすることも許されぬ想いが存在するなど、想像し得なかった幼い日のこと。

 もう一度いふが あひたいひとはないか
 めんどうくさい あひたいひとはない そんなもの世界に一人もない。

悠理が欲しい、とだだっ子のようにねだる自分を想像しようとして少し笑う。
言い出せるはずもなく、礼儀正しく断りを入れる自分の姿を思い浮かべ、また少し笑う。

二度とつながることのなかった電話を、まんじりともせず迎えた朝焼けの空を、
眩しいほどの笑顔を見せた悠理に「おはよう」と返した瞬間を、思い出す。

そうして、僕はもう一度だけ自分を笑う。
その笑顔を望んだのが、他ならぬ僕自身であったことを思い出し。


[続く]

289 :名無し草:04/04/18 00:03
>横恋慕
おおぅっ!
いいっすねー。
悠理の笑顔の前に心を閉ざす清四郎がステキ。
彼に貪欲になれ!と思いつつ、悩む彼をもっと見たいなとも思いw

関係ないが、可憐が絶叫したのにはワロタw

290 :名無し草:04/04/18 01:18
>横恋慕
私はロケットのくだりで笑いました。
確かにあの夫婦ならロケットでもぽーんと買ってくれそう・・・

清四郎の気持ちを考えると切なくなりますね。
このまま二人は互いの気持ちをちゃんとぶつけ合わないまま
終わってしまうのでしょうか。
うー・・・。

291 :名無し草:04/04/18 14:04
>横恋慕
いいですねー。ホント、こんなに面白くなるとは!
そして自分、こんなにはまってしまうとは!w
横恋慕の清四郎をはじめ、最近ここの彼は辛い想いをしてばかりですね。
幸せになってほしいなぁ・・・
>絶叫可憐
なんだろう。「おじさま、おばさま、玉の輿を下さる!!??」とか?

292 :名無し草:04/04/19 16:11
私も290さんと同じく、お互いの気持ちをぶつけないまま終わる二人に危惧してしまう・・・。
引き返せないとこまでいって魅録に手酷いダメージを与える前に、軌道修正して欲しいよ。
このままじゃ何も知らず浮かれてる魅録が気の毒だ。

293 :はじめに:04/04/19 21:26
少し前になりますが「檻・124-125」の野梨子と可憐のベットでの会話に触発されて
妄想が浮かんだものでうpさせていただきます。
「檻」の文章中に使われた単語やニュアンスを勝手に取り入れましたことを、
作者様はどうか、どうかお許し下さい。(作風やストーリー自体は全然違います)
友達以上恋人未満の、のほほん清×野で中篇になる予定です。

294 :清四郎の自動車大変記(1)清×野:04/04/19 21:28
春が過ぎ去り、夏が訪れるまでのほんのわずかの季節の隙間。
有閑倶楽部の面々が揃って聖プレジデント学園高等部に入学してまだ間もない頃、
初めての衣替えが終り、六人が生徒会室を占拠して有閑倶楽部を名乗りだす
ほんの少し前の菊正宗清四郎クンの物語でございます。
偶然か必然かわからない不思議な縁に導かれて出合った六人は、
始めは誤解や反目もありましたが、わだかまりも氷解して、いつしかすっかり意気投合。
新しい友人達はみんな性格もばらばらで、その上アクも強く、
声はデカイは協調性はないわのやりたい放題という、まったく仕様のない連中なのですが、
それでもどこか離れがたい魅力があります。
付き合い始めたのはまだ最近だというのに、
まるでずっと昔からの友達のような気さえする今日この頃です。
こんな登校風景も近頃ではよく見かけられるようになりました。

295 :清四郎の自動車大変記(2)清×野:04/04/19 21:31
「おっす清四郎、はよっ」
肩を叩く声は、清四郎にはもう馴染みのものでした。
「おはよう魅録。今朝はずいぶん早いですね」
清四郎は振り返ってパンク頭の少年に挨拶を返します。
「ああ、家にいたらヒドイ目に会うから逃げてきたんだよ。
昨日久しぶりにお袋が帰ってきてさ。魅録!飲むわよー!て朝まで宴会だぜ。
親と飲んで嬉しいか?ったく、たまんないぜ」
「ずいぶん若いお母さんですね。二日酔だったら僕が薬を調合しましょうか?」
「なんだ清四郎、お前そんなことも出来るのかよ?――あぁ。あんた医者の息子だったな」
でもそんなシロート薬だいじょうぶかよ、魅録は少し疑わしそうに言いました。
「あんたタマに怪しいとこあるしな。俺、実験台にされるのはイヤだぜ」
心配して問い詰める魅録。ですが清四郎は涼しい顔で笑うだけで答えません。
人の悪い清四郎に代わって答えたのは、よく通る高い声でした。
「清四郎の調合する薬は本当にとてもよく効きますのよ」
「ん?」
清四郎の肩よりまだ下の辺りから、おかっぱ頭の綺麗な少女が顔を出しました。
「おっと、野梨子もいたのか!?ちっこくって見えなかったぜ」
「まぁ、失礼ですわね」
黒目がちな瞳が魅録を見上げて笑っています。「おはよう、魅録」
おぉ、はよっ、気ィつかなくって悪かったな、魅録が笑うと、三人は並んで歩きはじめます。
そこに誰やら背後から駆けてくる足音が…。

296 :清四郎の自動車大変記(3)清×野:04/04/19 21:33
「おーいっ、お前らぁー!おっはよーっす!」
ドンと鈍い音がして魅録が前につんのめりました。
「うわっ!何だよ悠理、いってーなっ。いきなりうしろから蹴るなよな!」
「わりーわりー、だってさあ、なーんか魅録の制服姿が面白くってさぁー!」
彼女が現れると、場が一気に賑やかになります。今日も絶好調!太陽のように明るい
悠理がぴょんぴょん飛び跳ねながら三人の列に加わりました。
「俺も聖プレジデントの学生になったんだから、制服着るのは当たり前だろ」
「それが不思議なんだよなー、なんか変な感じだよぉ」
憎まれ口を叩きながらも悠理は嬉しそうです。
へへへと笑うと悪戯っ子の表情で、なおも魅録の肩をばんばんと叩き続けています。
「いたい、いたいっ!ばか!よせって」
「二日酔いの薬より湿布の方がいいかも知れませんね」
気の毒顔な清四郎に、口元と背中を押さえながら、魅録は両方たのむよと言いました。
「悠理の愛情表現はずいぶん強引ですのね」
「僕達も気をつけましょう」
四人がいくらも行かないうちに、今度は綺麗にカールさせたロングヘアが視界にふわりと現れました。
「まぁったく、あんた達は朝っぱらから騒々しいわねー」
「探さないでも何処にいるのかすぐわかったよ」
さらさらの金髪をなびかせて美童も列に加わります。
悠理とはまた全く違うタイプの派手な空気を身にまとった、艶やかな二人が加わりました。
「おはよう、可憐」
「あっ、美童だ。おはよっす!」
交わす会話も初々しい六人は、今日もこうして、他人の迷惑も顧みずに、
道いっぱいに広がっては元気に校舎へと向かいます。
本当に気心の知れた友達と呼べるようになるには、もう少しの時間が必要ですが、
六人の関係はなかなか上々です。

297 :清四郎の自動車大変記(4)清×野:04/04/19 21:38
好き勝手なことを言い合いながら仲良く歩く幅広の列をそっと外れると、
清四郎は少しあとから五人のうしろを付いて歩いていました。
その瞳はいつになく優しく、ひとりの少女に注がれていました。

彼らは清四郎の新しい友達でしたが、その中のひとり、白鹿野梨子さんは
彼が物心つく前からずっと一緒にいる幼馴染です。
野梨子は子息令嬢ばかりの聖プレジデントにおいてもなお稀な、正真正銘のお嬢様ですが、
それ故に世俗に対する免疫がないといいましょうか、世慣れないところがあり、
その上に生来の人見知りで不器用な性格や、さらには文句のつけようのない整った容姿
なども災いしたのでしょうか、なかなか友達を作ることが出来ませんでした。
長い間、野梨子の友達は清四郎だけでした。
それは清四郎の密かな心配の種でもあったのですが、
そんな彼女がようやく友達を得たのです。
朝の明るい陽射しの中で、彼女は新しい仲間に囲まれて、幸せそうに笑っています。


「清四郎、私、宝石を拾ったの」

南中との乱闘騒ぎとそれに続く停学騒動が一段落した後に、
頬を紅く染めてそっと打ち明けた野梨子の言葉が、清四郎の耳に今も残っています。
――宝石を拾ったの――
まるで初恋にも似た純粋で美しい響きは、
後に情緒障害といわれるようになる清四郎の心をして、不思議と切ないような、
甘い、ときめく気持ちにさせたのでした。
美童や魅録に囲まれて、悠理や可憐に引っ張られては、
はにかみながらも楽しそうに笑う野梨子の姿を見つめる清四郎は嬉しそうです。
清四郎は自分が新しい仲間を得たこと以上に、その中に野梨子がいること、野梨子に新しい、
そして自分以外にはたぶん初めてであるかも知れない友達と呼べる人間が出来たことを、
なによりも嬉しく思っていたのです。

298 :清四郎の自動車大変記(5)清×野:04/04/19 21:42
そんなある日のことでした。
きっかけは学校の帰り道に野梨子が言い出した一言でした。
さっきまで一緒にアイスクリームを買い食いしていた派手な連中とも別れて、
今は野梨子と清四郎、二人で歩く静かな帰り道です。
ここでの話題も近頃ではもっぱら新しい友人達のことになっています。
悠理がどうした可憐がこう言ったと、連中の名前の出ないときはありません。
野梨子は早くも、夏休みにはみんなであすこに行こう何をしようと話しています。
「――ね、行きましょうね、清四郎」
頬を上気させてはしゃぐ野梨子が愛らしくて、清四郎はにっこり笑って答えます。
「そうですね。今年は忙しい夏休みになりそうですね」
野梨子ははにかんだように微笑むとこくりと頷きました。
まさに恋する乙女そのものの仕草です。
まったく、仕様がないなと苦笑しながら、なんだか清四郎は落ち着かない気持ちになります。
野梨子のこんな表情を清四郎はいまだかつて知りませんでした。
(本当に、仲間っていうものは時にすごい力を発揮するんですね)
清四郎の目に、野梨子の見せる新しい表情はやけに眩しく映るのでした。

299 :清四郎の自動車大変記(6)清×野:04/04/19 21:44
「ねぇ、清四郎」
しばらく続いた沈黙のあと、ふいに野梨子が清四郎に笑顔を向けました。
途端、不思議なことが起こりました。
野梨子が清四郎を見て微笑んだ途端、
清四郎は正体不明の眩暈に似た感覚に襲われたのです。
(え?)
野梨子の笑顔が目の上でハレーションを起こしたように明滅します。
――まるで遅咲きの桜のように鮮やかな野梨子の笑顔。
――彼女の瞳は明けの明星。唇は、花開かんとする野薔薇の蕾。
(あれ?なんですか、いま突然浮かんできたこのフレーズは?)
体がかっと熱くなりました。胸の奥がじんと痺れて、
どうしようもなく頭がくらくらします。
(なんだ、これは?)
突然のことにわけもわからないまま清四郎は頭を押さえました。
心臓が早鐘を打っています。胸がドキドキして、こめかみにあてた指先は微かに震えてさえいます。
(貧血か?)
こんなことは初めてでした。
「どうかしましたの?清四郎?」
隣を歩く幼馴染の異変に気付いて、野梨子が心配そうに覗き込みました。
「具合でも悪いんですの?」
「いいえ」清四郎は反射的にそう答えました。
この変調を野梨子に知られてはいけない、理由はわかりませんがとっさにそう思ったのです。
「なんでもありませんよ。――僕が、どうかしましたか?」
一呼吸おくと内心の動揺を気取られぬように、清四郎は笑顔さえ作ってきり返しました。
この辺り、清四郎のポーカーフェイスは完璧です。
「いえ、何でもないのでしたらいいんですけど…清四郎が、一瞬よろめいたように見えましたから…」
「僕は野梨子と違って何もないところで転んだりしませんよ」
「まぁ清四郎、ヒドイですわ」野梨子が呆れて言いました。
「でも真実でしょ?」
「そんな憎まれ口が利けるのでしたら大丈夫ですわね。心配して損しましたわ」
野梨子は言うと、ぷいと顔を横に向けてしまいました。すねた時に彼女がよくする仕草です。
野梨子の視界から外れて、清四郎はほーっと息をつきました。

300 :清四郎の自動車大変記(7)清×野:04/04/19 21:48
胸はまだ結構な勢いで鐘を打っていましたが、それでも一時のような激しい
発作の波は収まったようです。
(何だったんでしょうね、一体)
呼吸を整えつつ、清四郎は訝しそうに左胸を押さえました。
隣を見ると、野梨子はまだそっぽを向いています。
怒った態度とは裏腹に、揺れる黒髪とそこから覗く横顔は、
彼の次の言葉を待っているようにも見えました。
「いま笑っていたカラスがもう――、今度は怒ってるんですか?」
野梨子はちらりとこちらを見ると振り返りました。
「一瞬でしたけれど清四郎の様子がとても苦しそうに見えて、私ずいぶん驚きましたのよ。
なのにあんなことを言って茶化すんですもの」咎める口調ではあるものの、
瞳はそれを裏切って心配そうに彼を見つめています。
清四郎は再び眩暈に襲われそうな予兆を感じて、慌てて話題を変えました。
「僕は大丈夫ですよ。ちょっと、昨夜中に雲海和尚に連絡する用事があったんですけどね、
読書に夢中ですっかり忘れていた事を今、思い出しました」もちろん口からでまかせです。
「そんなことよりも野梨子、さっき何か言いかけませんでしたか?」
「ええ。でも、たいした事じゃありませんわ」
「何なんですか?」そう言うと安心させるように微笑みました。
「今日はもう――別の機会でいいですわ」
タイミングを外した気がして、言い出すことをはじめは躊躇っていた野梨子ですが、
清四郎に何度か催促されて、やがて口を開きました。
「清四郎。私、最近ずっと考えていることがありますの」
そう言うと恥ずかしそうに下を向きました。
(何を照れてるんでしょうね)清四郎は続きを促します。
「清四郎、実は」
いったん言葉を切ると清四郎を見て、暫く何かを考えています。
が、やがて心を決めたように口を開くと、一気に言い切りました。
「実は私――、車の免許を取ろうと思いますの」
「――――はい?」清四郎の笑顔はここで凍りつきました。

301 :清四郎の自動車大変記 補足:04/04/19 21:52
以上、続きます。
この話、有閑メンバーがはたして免許取得可能年齢に達しているのかという疑問は
とりあえず脇に置いてご都合主義で進めてます。
(魅録はたぶん無免許or偽造免許で厨房時代から乗り回してるであろうと想定)
整合性を求める読者様スマソ。目を瞑って下さい!

302 :名無し草:04/04/19 22:13
>清四郎の自動車大変記
昔の清×野ストーリー大好き。初々しくて幼馴染の雰囲気がよく
出ていていいですね。
しかも文章がうまい!敬体って難しいのに・・・
続き早く読みたいです。

303 :名無し草:04/04/19 22:30
>自動車
久しぶりの新連載、期待大です!
物語調の文が新鮮で面白いです(敬体って言うの?シラナカッタ)
しかし、野梨子が自動車免許とは世のため人のため
是非とらないでいただきたいですねw


304 :名無し草:04/04/19 23:38
>清四郎の自動車大変記
ここでは珍しい文体で、新鮮でした。
自分がこういう文体のお話を読みなれてないので(敬体って言うのか。スマソ)
読むのに少し時間がかかったのですが、ところどころとてもいいなあと
思う表現があって面白かったです。
しかし野梨子の自動車免許は…考えただけでも恐ろしいw

続き、楽しみにしてます。

305 :名無し草:04/04/19 23:55
>自動車
わーい!続き物なのか!
なぜか短編だと思っていた>自分
新鮮で、なんだか温かい気持ちになれる文体。
さわやか清×野も久しぶりで嬉しい。
続きを楽しみにしています。

306 :名無し草:04/04/20 13:43
>自動車
さわやかで初々しくて、読んでいてとても楽しかった。
凄く面白そうで、続きが楽しみ。
出会ったばかりの6人の話も新鮮でイイでつね。
特に可憐と美童は文通友達だったから、初めて会ったときは
何かしらドラマがあったんだろうなwと妄想が膨らみまつ。

307 :名無し草:04/04/20 21:06
可憐さん降臨しないかな〜
暴走愛も、サヨナラも、続きが気になってます。
その他諸連載&短編も…
作者さま方、よろしくお願いしまーす。

308 :横恋慕(50) 魅×悠×清:04/04/21 01:18
>288の続きです

「今日はミモザちゃんはいいのか?」
魅録に軽く話を振られ、その隣に座っている美童がさらりと返す。
「うん。ダンナがいるみたいだから遠慮したよ。魅録こそ、悠理と約束がないなんて珍しいな」

男だけで飲みに出るのは、久しぶりだった。
やけに上機嫌な魅録に声をかけられ、三人は彼の行きつけの店へとやって来た。
「ああ、あいつは可憐につかまったらしいからさ」
笑いながら、魅録は煙草を取り出して火をつける。
この数日、彼女が虎視眈々と悠理を連れ出すチャンスを狙っていたことは皆知っていた。
もちろん魅録とのことを訊き出すためであろう。
なぜか野梨子も一緒に拉致されたようだ。いや、案外自分からついて行ったのかもしれない。

「さてと、何に乾杯するかな」
くわえ煙草で魅録が呟くと、美童はちらりと目の前の男へ視線を送った。
彼はその視線を軽くいなし、二人の親友へとグラスを掲げた。
「では、少し早めに卒業でも祝いますか?」


309 :横恋慕(51) :04/04/21 01:18
「指輪・・・どう?魅録ったら、あんたに内緒で買いたいって言うもんだから。サイズくらい測った
方がいいとは思ったんだけど・・・」
女三人で出かけるなんて、ずいぶん久しぶりだ。
バレンタインの頃から、殆ど毎日魅録と一緒にいたから。
目の前には、何だか瞳を輝かせている可憐と、そわそわ落ちつかない野梨子が並んでいる。
二人とも魅録とのことばかり訊きたがるから、あたいはそれに適当に答えながら、目の前の
ごはんを片付けて行く。
「ワンサイズ大きかったんじゃありません?」
野梨子が首を傾けながらあたいの手元をじっと見つめた。
指輪を触りながら、「そうね、直してあげましょうか?」と言う可憐に、小さく首を振る。
「大丈夫。ちょうどいいよ」

ほんとは少しだけ、ゆるい。
しっかりつないどいて欲しいのに。

あたいを驚かせたくて、可憐の店でこっそり買った、って魅録は笑顔で言った。
「卒業祝いってわけでもないけどさ、指輪買ったんだ。受け取ってくれるだろ?」
一瞬、頭ん中が白くなって、どうしていいかわかんなくなった。
「はめてやるから、手ぇ出せよ」
だけど、照れながら掌を差し出した魅録に、いらないなんて言えなかった。

―婚約指輪です。左手を出して下さい―
魅録にありがと、と手を出しながら、あたいは思い出していた。
あたいの目も見ずにそう言った男のことを。


310 :横恋慕(52):04/04/21 01:19
まずは当たり触りのない思い出や、進路についての話をしながらグラスを重ねていたが、
三杯目のジントニックのグラスを弄びながら、魅録が何か言いたげなそぶりを見せ始めた。
「僕に、何か?」
不審な視線に気づいた清四郎が水を向けると、ん、と言いながらグラスを口に運んだ。
「・・・こないだの土曜なんだけどさ、お前・・・電話したか?」
「魅録にですか?いいえ」
「いや、悠理にだよ」
その鋭い視線に対し、問われた男は不可解そうな表情を見せる。
「かけてませんよ。このところ、彼女には特に用もありませんし」
彼らのやりとりに、もう一人の男は口を差し挟まずにいる。
「・・・そっか、ならいいんだ。電話の後、悠理の様子がちょっと変だったもんでさ。あいつが
珍しく、ただのダチだ、なんて歯切れの悪い言い方するもんだから、かえって気になっち
まって・・・」
少し決まり悪そうに顔の前で手を振りながら、魅録は笑った。
「忘れてくれよ。その・・・いろいろ絡んだりして悪かったな。もう、やめるからさ」
このところのぎくしゃくした関係を指してか、魅録が軽く詫びを述べると、清四郎はちょっと
口の端を下げ、首を傾けた。別に、とか気にしてない、という時に彼がよく取るポーズだ。

その時、魅録の肩を誰かがポンと叩いた。ウェイターの制服を着ている。
「よ、魅録。今日は悠理は一緒じゃないのかよ」
「ああ、ケンジ・・・今日はちょっとな。紹介するよ、前に話した俺の仲間だ」
悠理のことを知っているらしいその店員に、初対面の二人はにこやかに挨拶をする。
ケンジと呼ばれた男は魅録の顔を覗き込み、ニヤニヤと笑った。
「あの後、どーなってんだよお前ら。こないだ渡した指輪、まさか突き返されてねーだろーな!?
だって悠理の奴、右手出してたじゃねーか。フツー左手だろ、フツー」
「んなとこまで見てたのかよ、ったく」
苦笑しながら魅録は立ち上がり、彼の背を押しながらもう一方の手をちょっと上げた。
「悪いな、清四郎、美童。ちょっと外すぜ」

311 :横恋慕(53):04/04/21 01:20
あの日、びちょびちょの髪を拭いていたら、いきなりノックされてあたいは飛び上がった。
「僕です。開けて下さい」
可憐に「同室でしょ?だってフィアンセですもの〜」なんて言われたけど、まさか本当に夜中に
訪ねてくるなんて・・・いや、風呂は入ったばっかだけど、でもあたいにも心の準備ってもんが・・・。
どうしたらいいのかわかんなくて、部屋の中を右往左往してるあたいになんかお構いなしに、
開けてくれないなら蹴破りますよ、と事務的な声がした。
そうして、コートを羽織ったままずかずかと入ってきたあいつは、笑顔一つ見せず指輪を取り出
して左手を出せと言った後、形式上受け取ってくれればいい、と付け加えた。
まるで契約書を突きつけられたような気がして、あたいは必死で首を振った。
ほんの2、3秒睨み合った後、その男は差し出した手をあっさりと引っ込めた。
腕時計に目を落とすと同時にため息をつき、箱に指輪を戻して机の上に置いた。そのままの
姿勢で口を開きかけたけど、結局何も言わなかった。
もう一度時間を確かめ、振り返りもせずに出て行った。

なぜかぴったりだった指輪。一度だけこっそりはめて、慌てて外した。
怖かったんだ。二度と外せなくなるような気がして。
あたいを愛してもくれない男に、一生縛り付けられてしまいそうな気がして。
箱ごとドアに投げ付けて、ベッドに潜り込んだ。
お前なんか、大っ嫌いだ。死んだって結婚なんかしてやるもんか。
呪文みたいに何度も何度も呟いた。

何でも理詰めで押し通す男。
あたいのことを剣菱のおまけだと言った男。
自分に相応しい女に、あたいを変えようとした男。

あたいが欲しかった言葉を、ひとつもくれなかった男。
あたいに、触れようともしなかった男。

312 :横恋慕(54):04/04/21 01:21
魅録がテーブルを離れたのを確認し、美童は長い息を吐いた。
「・・・僕の忠告なんか無視したんだと思ってた。電話はしたんだな、一応」
「かけてないと言ったでしょう?」
涼しい顔で返答する男に対し、美童は掌を上に向けて突き付ける。
「嘘つき。じゃ、携帯の発信履歴見せてよ」
口を開きかけた彼に、金髪男は追い討ちをかける。
「前にも言っただろ。お前の嘘なんかお見通しなんだ、言い訳はよしなよ」
結局、反論の代わりにため息しか戻ってはこなかった。
「で・・・?電話したのになんでこんなことになったのか説明してくれるかな、清四郎ちゃん。
悠理に名無しのダチ扱いされるなんてさ・・・謝らなかったのか?」
だが、清四郎は友人と談笑する魅録の背を見つめたまま黙り込んだ。
カウンターの端に寄りかかり、その二人は新しいグラスを突き合わせ、乾杯している。
魅録がしきりに照れている様子からして、悠理の話をしているのが見え見えだ。

「僕のボディサインは何ですかね。ポーカーフェイスは得意だと自負していたんですが」
やおら視線を戻し、清四郎は射るような視線で目の前の親友を見つめた。
美童は口を開いてから暫く躊躇ったが、その瞳を見返しながら小さく頷いた。
「・・・声だよ。半音下がる」
案外あっさりと種明かしをした美童に、なるほど、と喉を鳴らす。
「自分では気付かないもんだな。以後は肝に命じますよ」
言い終わらないうちに、なんだよ、上手くやってんじゃねーか、このヤロー!!というからかいの
声が店に響き、慌てた魅録が叫んだ男の口を塞ぐ。

「美童、ひとつ頼みがあるんですが・・・」
ちらりと横目で彼らを見た後、清四郎が呟くと、美童は、何だ?と身を乗り出した。
「お節介は、もうやめてもらえませんか」

313 :横恋慕(55):04/04/21 01:22
あれから、魅録は会う度にあたいを欲しがるようになった。
だけど、それを嫌だとは思わない。
拒否する理由もないし、魅録に抱かれていると安心するから。
あいつの声を思い出す度に、きしきし音を立てる胸を大人しくさせてくれるから。
だけど・・・あの時、あいつの名前を呼んでしまったことに、魅録は気付いてないだろうか。
どうしてなんだ?ずっと魅録を見つめていたはずなのに。
目を閉じた瞬間にあいつの気配が、声が、まとわりついてきて・・・。

まただ。あいつのことを考えると、胸がおかしくなる。ほら、息まで苦しくなってきた。
だからもう考えるのはよそう、って決めたのに。

ふと目を上げると、あたいの前で何かがパタパタと揺れている。
「どうしたの?あんたが食べる手も休めてボーッとするなんて・・・顔、赤いわよ?」
気づくと、可憐が手を振りながら、あたいの顔を覗き込んでいた。
「好きな人のことを考えてたに決まってますわ」
野梨子の声に、ビクッとした。声が出て来ないあたいの前で、二人は頷き合っている。

「恋をするとその方のことばかり考えてしまうのは、自然なことですわよ。私もそうでしたもの」
「やだぁ、野梨子ったら裕也さんのこと思い出してるんでしょ?」
頬を染めて睫毛を伏せた野梨子を、可憐がからかっている。
頭の隅にずっと引っかかってた小さな疑問が、形を取り始める。

恋・・・?これが・・・?
叫びそうになり、両手で口を押さえた。

世界が、ぐらりと揺れた気がした。


[続く]

314 :名無し草:04/04/21 07:23
>横恋慕
気づいちゃいましたね、悠理も…
浮かれてる魅録が哀しいよー。
先が気になる!

315 :檻(132):04/04/21 07:41
>>http://houka5.com/yuukan/long/l-49-5.htmlの続きです

一体、さっきから何回同じセリフを言えば気がすむのだろう――。
男は手を後ろに組んで直立不動したまま、ばれないようにそっと溜め息をついた。
「猫の子一匹、わたくし達に触れさせないように――」
大げさではなく、裾の広がった部分が
優に畳2畳分位はあるのではないかと思われるウエディングドレスに身を包んだ女
――兼六綾香は両手を広げ、優雅に振り向いた。
「ハッ! この松竹梅時宗、粉骨砕身の精神で任務に当たらせて頂く所存であります!!」
ピカピカの一年生のように緊張しまくり、最敬礼している人物は
男の直属の上司――警視総監、松竹梅時宗その人である。

3日前――。
時宗と男、そして男の相棒の3人は、その時担当していた連続殺人事件の捜査を外され
滅多に会わない雲の上のお偉方に呼び出された。
ついに不甲斐無い時宗共々、首になる日がやってきたかと身構えていたら
結婚式の警備をしてくれとの言い渡しに、ちょっと拍子抜けした。
「社会的に地位のある御方だから、丁重に接するように」
『皇族扱い』――雲の上の上司は、そう言っていた。
考えてみれば今現在、日本列島を騒がせている連続殺人事件の担当を外されてまで課せられる任務なのだから
それ相応の人物に違いない――男は勝手にそう思い込んでいた。
だけどいざ現場に着いてみると、守るべき人物は確かに社会的な地位こそあったが
その点を除けば、ただの我儘な御令嬢だった。


316 :檻(133):04/04/21 07:44
何より――。
視線をだましだましにずらしながら、男はソファでふんぞり返っている綾香の後ろで
不動明王のように佇んでいる女性を、視界に入れた。
恐ろしさの余り、直視は出来ない。
軽く100kgはあるだろう、小錦ばりのその女。
どう贔屓目に見ても、その女性は綾香の周りのどの体格のいいSPの男性よりも強そうに見えた。
高慢女にプチ小錦――。
この最強のカップリングの、何を守る必要があるのだろうと男は考える。
このコンビにわざわざ奇襲をかける物好きは、きっとそうそうはいない。
もしまかり間違って立ち向かって行かなければいけない場合は、最低でも神風特攻隊並みの覚悟は必要だろう。

「わたくし達の幸せを妬む、腐れた輩がおりますのよ――」
綾香は見せびらかすかのように、ただでさえ広がっているドレスの裾を更に広げるようにして
ゆっくりと一回転した。
「これが、そのダニの集団ですの」
金持ちというのは、どうしてこうも暇なのだろう――。
綾香が得意げに掲げたその紙を、男は陰鬱な気持ちで見上げた。
交番に貼ってある指名手配書とそっくりに作ってあるそれは、本物の手配書よりも凝った作りをしていた。
「剣菱悠理、黄桜可憐、美童グランマニエ――そうそう、そう言えば総監の御子息の
魅録さんもいらっしゃいますわね」
いかにもわざとらしく、今気が付きました、という演技で綾香は首を傾ける。


317 :檻(134):04/04/21 07:45
「ちょっと、あんたねぇ――」
相棒が、先ほどからの綾香の暴言についに堪忍袋の緒が切れたらしく、手を握り締め
一歩前に踏み出た。
家族、親友という程ではないが、男や相棒は時宗を通して、少なからず魅録と交友があった。
悪口を言われれば、腹が立つ位の思い入れはある。
「やめんか!!」
時宗が左腕を真っ直ぐ横に伸ばし、相棒を制した。
相棒は意外な横槍に驚いていたが、時宗の顔を見て行き場の無い拳を下ろして黙り込んだ。
時宗は――耐えていた。
体を小刻みに震わせ、両手は握りこぶしを作り、俯き加減の顔の中の歯は食いしばられていた。
可愛いという時期はとっくに過ぎてはいたけれど、それでも魅録は時宗にとって
大事な一人息子なのだ。悪し様に言われて、悔しくない訳は無い。
男はわずかに、暗い気持ちになった。
自分にあとスプーン1杯分の度胸があれば、せめて相棒のように文句の一つも言えたかもしれない。
「御心配は、無用です」
時宗は顔を上げ、胸を張りドンと叩いた。
「不肖、松竹梅時宗! 任務に私情を挟むような事は、決していたしません。
式が終わるその瞬間まで、必ずや無事、御守りいたします!」
「期待しておりますわ」
綾香は満足そうに、何回か頷いた。


318 :檻(135):04/04/21 07:46
コンコン、と軽くノックの音がした。
『どうぞ』という綾香のセリフと共に、部屋中の人間の視線が、一斉にドアに注がれる。
「御報告致します!」
軍人のような仕草でドアの前で最敬礼している男は、緊張しているのだろうか
目線が宙を泳いでいた。
「先ほど、電気管理塔の設備管理室の裏手付近で、臨時スタッフの少女が
倒れているのが発見されました!」
「・・・・・・だから?」
綾香はいかにもかったるそうに、髪を掻き上げた。
「・・・・・・は?」
報告をした男には予想外のリアクションだったようで、敬礼したまま、呆けている。
「だから何だと言うの? 人が一人倒れたくらいで、一々わたくしに報告しないで頂戴」
おめでたい日ににケチがつくわ、と御嬢様らしからぬ言葉を吐き、面倒臭そうにソファにもたれかかった。
男は耳を疑った――。
この日限りのアルバイトとはいえ、自分の為に働く者が倒れたというのに、心配するどころか『報告するな』とは何事か。
報告をしに来た男の方は、しどろもどろになりながらも、何とか言葉を繋いだ。
「はっ・・・・・・いや、しかし、その少女の状態がいささか変でして――。
どうやら薬物に依って意識を奪われたらしく、腹部には2、3打撲の形跡も――」
「何ですと!!」
言うや否や、時宗は瞬時に反応し、叫んだ。
「こんな事位で、大げさに騒がないで下さいな」
この期に及んで心配する気は無いらしく、綾香は退屈そうにドレスの袖のレースを弄んでいた。
「しかし綾香さん――これは只事ではありませんぞ!」
薬を嗅がされ眠らされて、殴られた跡もある――確かに、普通では無い。
「とにかく、その少女の元へ――」
男と相棒と時宗は目で合図をし合い、事情を聞くべく、部屋を出ようとした。


319 :檻(136):04/04/21 07:48
「それと――」
報告をしに来た男は、言い難そうに綾香を見る。男と相棒は、足を止めた。
「何? まだ何かあるの?」
綾香はこれでもかと言わんばかりに、不快な顔を隠さない。
「はっ――倒れていた少女の身元ですが、恐らく詩織様の御親戚の方だと思われるのですが」
「詩織の親戚・・・・・・?」
男は詩織と呼ばれた女性の方を見た――どうやらプチ小錦の名前は、詩織というらしい。
「ああ、詩織の口利きで入った従姉妹とかいう子の事ね。確か、カヨコとかサチコとか――」
「小夜子、です。綾香様」
詩織は微動だにせず、間違いを正す。
「ですから、もし御親戚の方なら、詩織様に来て頂いた方が良いかと」
「冗談じゃないわ」
綾香は両腕を組んで、眉をつり上げた。
「詩織は私の専属なの。下らない事で一々担ぎ出さないで」
昔から、クラスや会社の組織の中にこういう人間は、必ず一人は存在する。
地球は自分一人の為に回り、全ての人間は自分の為だけに存在しているというジャイアン思想。
男は鼻で溜め息をつき、相棒の顔を見た。
相棒も同じ事を考えているらしく、やれやれといった表情で綾香を見ている。
さすがは双子。体は2つに別れていても、考えている事は同じだ。


320 :檻(137):04/04/21 07:50
「綾香様」
それまでほとんど口を挟まなかった詩織が、主の名前を呼んだ。
「出来れば小夜子の様子を見てきたいのですが」
綾香は誰が見ても分かる位はっきりと、目を丸くした。
この様子を見るに、普段詩織は綾香に意見をしたり何かを頼むという事をしないのだろう。
「・・・・・・仕方ないわね、様子を見たら直ぐに戻って来るのよ」
渋々綾香は承諾し、詩織は短く、はい、とだけ返事をした。
「我々も行きましょう」
時宗が後を追おうとするのを、詩織は止めた。
「一人で大丈夫です。状況を判断して、事件性があるようでしたら御連絡します」
詩織は時宗に微笑んで、その巨体に似つかわしくない俊敏な動作で、部屋を後にした。
見かけによらず、いい人間なのかもしれない――男はそう思った。
何の根拠も無い、ただの直感だが。
「綾香様、そろそろ」
傍らのSPが、綾香を促した。
「30分前か――」
男は部屋の時計を見る。部屋の時計は、10時30分を告げていた。
「よし、各自配置につけ! 怪しい動きをする奴がいたら、目を離すなよ!」
時宗が声を張り上げ、部下達に緊張が走る。

魅録は、今頃何をしているのだろう――。
綾香が置いていった手配書を見ながら、男はそんな事を考えていた。


321 ::04/04/21 07:51
本日はここまでです。
ありがとうございました。

「清四郎の自動車」作者様、光栄です。
ありがとうございました。


322 :名無し草:04/04/21 10:55
>檻
お待ちしておりました。
いよいよ当日ですね。小夜子が倒れたというのは本当なんでしょうか、
それともフェイク?もし誰かに薬を飲まされたとしたら清四郎?
だとしたら殴ったのも???続きが気になるのでなるべく早くヨロシクです。

323 :名無し草:04/04/21 22:09
>横恋慕
清四郎が悠理に指輪をあげた時の描写、悠理の心理描写など、
とてもうまいと思いました。
美童が清四郎のボディサインを見破っていたというのも、
人間観察力のありそうな彼なら、いかにもという感じ。
新たな動きも出でてきたようですし、続きが楽しみです。

>檻
こちらも着々と動き出しましたね。
時宗ちゃんの描写がうまいです。頑張れ、時宗ちゃん!
本物の手配書よりも凝った作りをした手配書って、見てみたいです。
実際、手配されかねないようなことばかり、しているメンバーだしw

324 :名無し草:04/04/22 03:36
>横恋慕
お待ちしてました!!佳境ですね、相変わらずいい所で切れて
とってもワクワクしています。
三角関係も勿論のこと、オブザーバーたる美童がこれで手を引くのか、
また彼自身の恋の行方なども気になります。
今回の悠理に溜飲が下がりました、無自覚ちゃんだったのか。

325 :名無し草:04/04/22 13:53
>横恋慕
指輪がかなりキーになってる感じがとても好きです。

326 :名無し草:04/04/23 18:01
SF編再開!
ヽ(゚▽゚*)乂(*゚▽゚)ノ バンザーイ♪

327 :^^:04/04/23 21:20
きっも〜い!!!!!!!!!!
妄想語ってな〜にが楽しいんだか!
アニメ・マンガおたくの巣窟か〜ここは!!
ポテチとコーラむさぼりながら妄想してきっと
デブデブばっかりに違いない!
間違い無い!!!!!!!!!!!!!

328 :名無し草:04/04/23 21:37
すいぶん「!」が多いスレですね

329 :名無し草:04/04/23 21:46
>横恋慕
今回も面白かったです!
今後、彼らはどーなっちゃうんでしょ。
それにしても美童はカッコイイな。

>檻
わたし、こういう時宗ちゃん好きなのよね〜
物語も佳境にはいって益々続きが楽しみです。

>SF編
わたしも再開が嬉しいです。(ここで書くのはスレ違い?ゴメ)
ミロクがイイ味だしてますw

330 :名無し草:04/04/23 21:47
>326
やった!
面白くなりそうな展開ですね。嬉しい〜。


331 :名無し草:04/04/23 21:49
>清四郎の自動車大変記
凛とした野梨子も好きだけど
こういう野梨子も愛しいです。
またよろしく〜

332 :名無し草:04/04/23 23:26
調子に乗って、再び小ネタの『菊正宗清四郎、マン』考えました(時宗&千秋編の作者です)。
倶楽部のメンバーではどうしても思い浮かばず、豊作さんを登場させてしまいました。
はなはだ遅レスですが、別の時宗編作者さま…またネタかぶったら今度はどうしましょうw
豊作さん、ごめんなさい。でも大好きなので…。
>255-256 時宗&千秋編
>260 別の時宗編


333 :菊正宗清四郎、マン。ー豊作編ー:04/04/23 23:27
普段はガリ勉の生徒会長。が、しかし、その実体は……
良い子の味方、
 菊   正   宗   清   四   郎   、   マ   ン   !
助けを求める声を聞きつけては変身して飛んでいく。
今日の助けを求める人は・・・剣菱豊作さん(25〜6歳・推定)。

「どうしたんですか!」
あ、と声を上げかけた豊作の後方から、弾丸のように何かが飛び出してきた。
「来やがったな!このヤロー、あたいの声いっつも無視しやがってっっ!!」
豊作氏の妹、剣菱悠理さん(既出)が清四郎、マンにつかみかかる。
「ま、またお前か!?勉強は自分でやれと言っただろう!僕は忙しいんですよ!(怒)」
「出来ないから、お前を呼んでんじゃないか!!このドケチ!!!(逆ギレ)」
「この頭は飾りか!?ん?僕を呼ぶのに兄貴を使う知恵があるなら、他のことに回せ!!」
清四郎、マンは拳骨で左右から彼女の頭をぐりぐりする。
んぎぇーーーと絶叫する悠理嬢と、ちょっと楽しそうな正義の(?)味方。

その隣で、豊作がおずおずと声をかける。
「お、お願いしたいのは、悠理の勉強のことではなく、僕の片想いの橋渡しなのですが…。
相手は菊正宗和子さんという人で……でも、自信がなくって、ど…どうやって告白
すればいいのか……」
残念ながら、俯いてぼそぼそと呟く彼の声は、清四郎、マンの耳には入らなかったようだ。
胸のランプが点滅し始め、くるり、と清四郎、マンは彼に顔を向けた。
「この人を甘やかしてはいけませんよ。もう二度とこの手には乗りませんからね!」
そう言い残し、菊正宗清四郎、マンは大空へ向かって飛んでいった。
「ふむっ!!」

「えっ?あっ、あのっっっ!?ぼ、僕のお願いは……??」
情けない顔で空に手をのばす豊作の横で、悠理はピョンピョン飛び跳ねている。
「ねーーっ、今度はそのマント貸してよ、あたいも空飛びたい〜〜〜〜!!!」

おわり

334 :まゆこスレ521:04/04/24 00:17
違う話で申し訳ないです。
まゆこスレで話し合ったり投票したりした結果、このように決まりましたので、
お知らせします。


***  20万ヒット記念・競作祭り 〜短編&イラスト〜  ***

☆お題「色」

☆まとめHP「有閑倶楽部 妄想同好会」が20万ヒットに到達した日から1週間の間に、
 お題に関係したもので、好きな内容の短編かイラストをウプしてください。
<例>5月5日に到達した場合、13日の0:00まで(12日から13日に日付が変わるまで)

☆ウプの時は、名前欄に「20万hit競作・<作品のタイトル>」 と入れてください。

☆短編
・本スレへのウプを推奨、どうしても気が引ける…という人は「妄想同好会BBS」の
 「短編UP専用スレッド」へのウプも可です。
・10レス以下でお願いします。
・18禁の短編もOKですが、タイトル欄に「R」と明記してください。

☆イラスト
・18禁でないものは「妄想同好会 絵板」にウプしてください。
・18禁のイラストは次のいずれかをすれば、嵐さんがHPにウプしてくれるそうです。
 ア.嵐さん宛にメールして添付する。
 イ.どこかのウプローダーにウプして、嵐さんにURLを知らせる。
 ウ.自分のサイトに一時的にウプして、嵐さんにURLを知らせる。
・18禁の場合、「局部がかかれていない(見えない)物であり、出版物として商業市場
 (同人ではありません)に出せる程度の物」でお願いします。

=== 作家も自称作家も初心者もROMちゃんも・・・燃えてみませんか? ===

335 :名無し草:04/04/24 00:44
>清四郎、マン
笑わせてもらいました。
なんだかんだ云って清四郎、マンはまた剣菱さん家に来そうだなあ。
何たって「ちょっと楽しそうな」だし。
豊作さんもう少し存在をアピールしないとだめよ〜。

336 :檻(138):04/04/25 00:40
>>315の続きです。.


僕は、野梨子を愛していた。
崇高で穢れの無い、彼女の魂を愛していた。
それだけで満ち足りていたはずなのに、激しい雨が、あの不安定な気持ちを連れて来た。
だから僕は、今でも雨を好まない。

何日だったかは、正確には覚えていない。
梅雨真っ只中の六月だった事だけは記憶している。


「参りましたね」
家まであと500メートルという帰り道、僕と野梨子は夕立と一言で片付けるには
激しすぎる雨に襲われた。
天気予報のサイトも、新聞も、テレビも――朝方チェックしたものは全て降水確率0%だったから
傘など用意しているはずも無く、僕の家の玄関に着いた頃には、
濡れ鼠という形容が相応しい程、全身が濡れていた。
「そこで待っていて下さい、タオルを取って来ますから」
野梨子の家は隣だったが、そこに着くまでの短い間に再度10リットルは浴びるのではないかという程
雨は激しかった。
「丁寧に拭かないと、風邪を引きますよ」
僕は取ってきたバスタオルを野梨子の頭にかぶせ、包み込むようにして拭いた。
「清四郎こそ、風邪を引きましてよ」
野梨子はクスクスと笑い、僕の手からバスタオルを取り上げ
『お返し』と囁いて、僕の髪を拭いた。
野梨子の制服は、濡れて透けていた。
髪からつま先まで、雨という滴が衣を剥がしているようで、僕は直視出来なくなって目を逸らした。


337 :檻(139):04/04/25 00:41
「今日は、おじさまやおばさまはいらっしゃいますの?」
「いいえ」
父は学会で大阪へ、母は泊りがけで自分の実家へ、姉は飲み会で遅くなると言っていた。
何故そんな事を訊くのだろうと不思議に思っていた次の瞬間、野梨子の口から衝撃的な言葉が飛び出した。
「では、シャワーを浴びさせて頂いてもよろしいかしら」
内緒で、という意味なのだろうか。野梨子は唇に人差し指を当て、悪戯っぽく小首を傾げた。
「かまいませんげど・・・・・・。本当に誰も居ませんよ」
僕は再度、念を押した。
「その方が良いですわ。隣に家があるのに、上がり込んでシャワーを浴びるなんて図々しいと思われてしまいますもの」
浴室は遠いし、制服が臭くなるのは嫌ですもの――と、野梨子は付け加えた。
確かに白鹿家の浴室は玄関とは一番離れた位置にあり、そこに辿り着くまで
家の各箇所が濡れてしまう事は想像に難くなかった。

「清四郎」
ガラス戸を隔てた向こうから、野梨子の声がした。
「ここにいますよ」
僕は脱衣所で、野梨子の制服にドライヤーをかけながら返事をした。
制服というのは雨とは余程相性が悪いらしく、濡れたら直ぐに乾かさないと後々強烈に臭いが残る。
「上がるまで、そこで待っていて下さいね」
普通は逆ではないのだろうか――。僕は袖口に念入りに風を当てながら考えていた。
だけど万が一にもここで父でも帰って来て、雨に濡れたからと裸になって浴室へ
入って行ったら、大変な事になる。それを思うと、ここに居た方がいいのかもしれない。
磨りガラスの向こうに、ほっそりとした野梨子のシルエットが浮かぶ。
裸が見たいだとか、一緒に風呂に入りたいだとか――健康的な男子が感じるような情欲は湧いてこなかった。


338 :檻(140):04/04/25 00:42
野梨子を愛する事と、野梨子の肉体を求める事――。
一見近しいこの二つの事柄を、僕は心の中で対極の位置に置き、同一視しなかった。
――否、する権利は無かった。
冬に起きたある事件に依って、野梨子に愛される事は永遠に無いのだと、僕は知った。
以来、野梨子に対する性的な感情を、心の奥深く封印した。
男女が愛し合うという行為は、愛し愛されているという対等な関係においてのみ
正しく成立するものだと、僕は自負していた。

「上がりますわよ、清四郎」
浴室の中から、野梨子の声が響いてきた。
僕は乾いた制服を畳んで、脱衣所を出て扉を閉めた。

割り切っているはずなのに――。
僕は脱衣所の扉にもたれ掛かって、座り込んだ。
雨に濡れた野梨子の制服を見た時の、あの感情は何だろうと自問する。
淫靡で、背徳的で――なのにどこか甘く、切ない。
そんな想い。


339 :檻(141):04/04/25 00:43
「清四郎君に瓜二つの美少女がいるんだよ、知ってた?」
夏休みが明けた九月一日、同じクラスの出席番号が一つ前の尾中君が話し掛けてきた。
「僕に女装趣味はありませんよ」
僕は英語の辞書を鞄にしまいながら、至極真面目な顔をして、答えた。
「『瓜二つ』というのは、容姿の事じゃないよ」
尾中君は可笑しそうに笑いながら、写真を取り出した。
友達思いなところや正義感の強いところ、その癖、他人が踏み入って欲しくない心の領域には
手を触れない付き合い方は、どことなく魅録を思わせて、僕は彼に好感を持っていた。
「可愛い娘ですね」
悠理や可憐、野梨子のような一般的にはレベルが高いだろうと思われる美少女を
見慣れている僕でも、その少女は美しく思えた。
淡雪の如く白い肌の中に、小鹿のような大きな瞳。
長い睫毛にさくらんぼのような唇――さらさらの少し茶色がかったストレートヘアは
フランス人形やアンティーク人形を思い起こさせた。
日本人形の様な野梨子と並べたら、さぞ美しい絵が出来上がるだろうと想像する。
「二年三組、久遠寺小夜子。出席番号七番。
成績優秀、素行も規律正しく、教師からの信頼も厚い。
男女問わず、下級生や上級生からもじわじわと人気がでている。
一部のコアなファンからは、『女版菊正宗清四郎』『女清四郎』と呼ばれているらしい」
探偵の調査書を読み上げるように、生徒手帳のメモ書きを姿勢を正して読み上げる尾中君と
『女清四郎』という時代物の映画のタイトルのような別名が可笑しくて、僕は苦笑した。
「で、どうなんだい」
「どうなんだい、とは」
僕は言葉の意図が掴めなくて、オウムのように聞き返した。
「興味があるかって事だよ」
僕は、アイドルのポートレートの様によく撮れている小夜子の写真をじっと見つめた。


340 :檻(142):04/04/25 00:44
「こんな子を恋人にしたら、毎日の人生はバラ色でしょうね」
図らずも僕は、心にも無い台詞でその場を濁した。
「すればいいじゃないか。簡単だよ、君なら」
それが出来れば、どれだけ楽になるだろう――。
それでも僕はあの雨の日以来、自分を保つために最大限の努力をしてきたつもりだった。
僕が愛するのは、野梨子の精神だけであるべきなのだ。
彼女は僕を愛していないのだと、諦めの悪い自分の脳に幾度も言い聞かせた。
だけどそれは、努力が空回りしただけで終わった。
僕は次に、野梨子への想いを他の女性へ向ける事が出来ないだろうかと考えた。
白羽の矢を立てられた女性には無礼千万な話ではあると思ったが、野梨子への想いが暴走して
自我が崩壊してしまうよりは、遥かに良いと判断した。
僕は、可憐と悠理に目を向けてみた。
野梨子には及ばないが、彼女達との思い出は無数に存在し、それ相応の絆も出来ていた。
僕は、あらゆる手段を駆使した。
ある時は、電車の中で寝たふりをして可憐にもたれ掛かってみたり
またある時は、冗談めかして悠理を後ろから抱きしめてみたりもした。
だがその結果、得られたものは悉く期待を裏切るものばかりだった。
可憐から感じたそれは、その昔、母から抱きしめられた時に感じた母性に近いものであり
悠理に於いては、抱きしめた時、誤って彼女の無きに等しい胸に触れてしまった為
往復の平手打ちと、美童命名による『スケベ大王』という屈辱的なあだ名だけであった。
四面楚歌に陥った僕の気持ちは、前にも後ろにも動けなくなっていた。

尾中君の話に触発された訳でないが、僕は久遠寺小夜子という人物に少し興味をそそられていた。


341 :檻(143):04/04/25 00:46
摩訶不思議な縁でもあったのか、尾中君と会話したその二日後、僕は件の久遠寺小夜子と会う事になった。
彼女が、二年生の学園祭実行委員のリーダーとなったのだ。

「愛は芽生えたかい?」
美童のような気取った台詞に顔を上げると、尾中君は僕の前の席に椅子を引いて座った。
「芽生えませんよ」
小夜子が実行委員になってから、一週間が過ぎていた。
毎日のように部室に出入りする彼女は、持ち前の明るさや要領の良さが手伝って
もうすっかり倶楽部の一員として、違和感無く溶け込んでいた。
「噂好きの生徒の間では、早くも君と小夜子さんの熱愛が報じられているよ」
普段、ゴシップ的な情報には興味を持ちそうに無い尾中君が、珍しく事を掘り下げようとしていた。
もしかしたら彼も、小夜子のファンなのかもしれない。
「恋愛感情は無いですね」
僕は教科書を捲りながら、口調はやんわりと、語句はきっぱりと否定した。
事実、小夜子に恋愛感情は無い。
話をしてみて、写真と尾中君の会話から抱いたイメージを遥かに超える良さが彼女にはあった。
とりわけ彼女の持つ情報量の多さと、打てば何倍にもなって響き返ってくる話し応えのある
会話には、殊更惹かれた。
だけどそれは、野梨子に抱く恋愛感情とは違って、どちらかというと可憐や悠理に抱く友情に似ていた。
小夜子も僕に恋愛感情は抱いていない。上手くは説明出来ないが、それは絶対と断言出来る程、確信が持てた。
ただ一つ不可解な点を挙げるとすれば、僕と彼女はよく目が合うという事だった。
僕が彼女を注視している訳ではなく、その逆もまた然りなのに、何故いつも視線が絡み合うのだろう。
その謎だけは、未だによく解らない。
「もう少し話をしたいところだけど、次の移動、僕は準備の係りなんだ。先に科学実験室に行っているね」
尾中君は話し足りなさそうに、教室を後にした。


342 :檻(144):04/04/25 00:47
科学実験室に行く途中の二年生の廊下で、小夜子を見かけた。
数人のクラスメイトらしき人物達に囲まれて、歩いていた。
声を掛けても良かったが、今までの経験上この状況で声を掛ければ
僕自身が『ごきげんよう、菊正宗様』の嵐に巻き込まれてしまう事は明白だった。
「羨ましいわ、小夜子さん。有閑倶楽部の方々と御近づきになれるなんて」
「ねぇ、美童様は特定の恋人はいらっしゃるのかしら」
少女達が次々と質問を浴びせる中、小夜子は臆する事無く静かに微笑んでいた。
「そこまで詳しく美童様と御話しした事はないけれど、誰か一人特定の方、という感じでは無さそうだけれど」
小夜子という少女は、野梨子と対照的で感心する程、人付き合いが上手かった。
僕達の呼び方一つを採ってもそれは顕著に表れていて、倶楽部内では『さん』付け
そこを出れば一般の生徒達と同じ様に『様』を付け、器用に使い分けていた。
「美童様も素敵だけど、やっぱり私は松竹梅様が一番素敵だと思うの。
この間、バイクで走っている姿をお見かけしたわ。そのお姿の素敵な事と言ったら!
それでいて硬派でクール・・・・・・男の中の男って、ああいう方の事を言うのね」
「あら、男が格好良い時代なんて、とっくに終わっていてよ。今からは女が主流の時代。
可憐お姉様をご覧なさいな。いつも綺麗にお化粧をなさって、一糸乱れぬお洋服に完璧な
ヘアスタイル。ボディラインも常に一定に保たれていて、あの方こそ美の女神と言うに相応しい方だわ」
「『男らしい』とか『女らしい』とか、決め付ける事自体、ナンセンスよ。その点、
悠理様の中性的な魅力は捨てがたいと思うわ。女性でいて、尚且つその枠に囚われる事無く男性の持つ
野性的な部分も兼ね備えていて・・・・・・あのスタイリッシュさは、誰にも真似出来なくてよ」
議論に熱中する余り、少女達はほぼ真後ろにいる僕の存在には、気が付いていないようだった。


343 :檻(145):04/04/25 00:48
「小夜子さんは?」
「え?」
それまで傍観者を決め込んでいた小夜子は、不意打ちで話題を振られて一瞬戸惑っていた。
「小夜子さんは、どの方がお気に入り?」
クラスメイトの一人が、目を輝かせて尋ねた。
「皆さん優しくて、どの方も大好きなの。誰か一人になんて決められないけど・・・・・・。
そうね。何故だか、野梨子様のお姿はよく眼に留まるの」
どうしてかしらね、と小夜子が微笑むと、クラスメイト達は各々が前を向いたまま頷いた。
「分かるわ、小夜子さん。白鹿様は美しい方だもの」
「でも白鹿様って、有閑倶楽部以外の方と余りお話をされないのかしら? 私、見た事無いわ」
「きっと、ミステリアスな方なのね」
野梨子の激しい人見知りは、都合良くミステリアスと解釈されていた。物は言い様だな、と僕は思った。
「これはチャンスよ、小夜子さん。これを機に、白鹿様と御近づきになるべきだわ」
肩を叩くクラスメイトの顔を見て、小夜子は少し寂しげに、その長い睫毛をそっと伏せた。
「ええ。でも、野梨子様は清四郎様と心が通じ合っているから――」


突然、全てを悟った――。
矢張り僕は、小夜子に恋愛感情など抱いてはいなかったのだ。
僕は彼女に自分を重ね、同調していただけだった。
視線が合うのは、同じ物を見ていたから。
同じ物を見ていたのは、求めている物が同じだったから。


それから矢継ぎ早に色々な事が起きて、二週間が経った。

僕は、心を決めた。


344 :檻(146):04/04/25 00:50
「清四郎様、御時間です」
スタッフが控え室に入ってきて、清四郎に声を掛けた。
清四郎は緩やかに立ち上がり、テーブルの上の白い手袋を手に取った。
そして、手袋の横に置かれているガラスのビンをスタッフに渡した。
「これを処分しておいてくれませんか?」
ラベルも何も貼られていない空っぽのガラスのビンを、スタッフは不思議そうに受け取った。
「ビンの近くで空気を吸うと、眠くなるかもしれませんよ。それは眠り薬ですから」
「えっ」
慌てて手を滑らせたスタッフに、清四郎は穏やかに微笑んで、人差し指で自分の目を指差した。
「眠れない時に、時々使っていたんです」
「じゃあ、捨てては・・・・・・」
「今朝、使い切りましたから。容器はもう必要ありません」
では、と清四郎は音も無くドアを閉め、控え室を後にした。

式場への長い廊下が、引き返せない事を告げるように、延々と続いていた。


人は、自分の中に自分だけの世界を創り、その中の理に従って生きている。
僕もまた、自分の中の理に従って生きる。
欲しい物は、手に入れる。
例えもう、彼女の心の中に僕の姿が見えなくても。

あの冷たい冬の夜のように、野梨子が手の届かない処へ行ってしまわないうちに。


345 ::04/04/25 00:51
本日はここまでです。ありがとうございました。

346 :名無し草:04/04/25 01:49
>檻
大量のウプが嬉しいです。
やっと清四郎の心情が分かったものの、謎は深まるばかりのような・・・

彼は何故、野梨子に愛されないと思っているのか?
野梨子の心はどこに?
小夜子や尾中の役回りは?
眠り薬の意味は?
一体何が起ころうとしているのか???

もうすっかり、作者さんの手のひらの上で踊らされていますw
続きが激しく楽しみです。

347 :名無し草:04/04/25 09:03
>檻

冬の夜になにがあったんだぁ〜
ますます謎は深まるばかり・・・

作者さま、続きお待ちしています。

348 :名無し草:04/04/25 10:32
>檻
すご〜く続きが気になっていたんで、大量ウプに感動!
謎が解けるとまた謎が深まっていくような展開に
ドキドキです(*^o^*)

次のご降臨を楽しみにしてます!!

349 :名無し草:04/04/25 10:37
>檻
もうすぐ連載150回ですね。
心の底からはまっています。

野梨子は今頃どうしているのかな。

350 :名無し草:04/04/25 11:03
ちょっとおもしろい野梨子を見つけました。
分かる方いらっしゃるでしょうか?

ttp://pure-c.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/oekaki/bbsnote.cgi?fc=repost&l=1718

351 :名無し草:04/04/25 16:35
>檻
そういえば、もうすぐ150回なんですね。
着々とお話が進んでいますね〜。
野梨子がお風呂に入ってるシーン、すごくドキドキしました。
今回は一番謎だった清四郎の心情が少し分かって嬉しいです。
でも確かにまだまだ謎が多い…冬の日のできごとって一体何なんでしょうか。
続きを楽しみにしています。

352 :名無し草:04/04/25 19:58
暴走愛はどこいっちゃったんだろ。
続きがすっごい気になってるのです。お待ちしております。

353 :352:04/04/25 20:00
>どこいっちゃった〜…
って失礼な書き方ですね、作者さまごめんなさい。
ご降臨をお待ちしております!

354 :名無し草:04/04/25 22:44
嵐さんのとこ、20万ヒットまであと5000を切りましたYO!
さて、Xデーはいつになるのでしょう…
競作はどのくらい寄稿されるのか、今から楽しみです〜


355 :名無し草:04/04/27 19:06
レスがパタリと止まっちゃいましたね。
作家さんたちも、新年度プラス連休前で忙しいのかな?
競作SSを書くのに忙しい・・・もあると嬉しいのですがw

こういう時は小ネタでも。
6人がハマりそうな少女漫画って、何だと思います?
少女漫画なんて読まなさそうなキャラもいますが、
敢えて少女漫画限定で。

356 :名無し草:04/04/27 19:55
いきなりネタでスマソ。
清四郎>お父さんは心配症w

357 :名無し草:04/04/27 19:56
悠理(ただし初期の):BANANA FISH
可憐:白鳥麗子でございます!
野梨子:天才柳沢教授の生活

美童:その時々のお相手の女の子に合わせて何でも楽しく読め(読み)そう。
魅録:動物のお医者さん

清四郎と最近の悠理が読みそうな少女漫画…どうしても思い浮かびません。
清四郎はずっしり重い長編、悠理は…悠理は…悠理は……漫画すら「読」めない
レベルに成り下がってそうで…。

358 :名無し草:04/04/27 19:58
>355
悠 理=「伊賀のカバ丸」亜月裕 「お父さんは心配性」など岡田あーみん全般 
野梨子=「あさきゆめみし」大和和紀
可 憐=「NANA」矢沢あい (ミーハーな可憐が好きそう)
清四郎=「11人いる」など 萩尾望都作品全般
魅 録=「7SEEDS」「BASARA」田村由美
美 童=「ベルサイユのばら」池田理代子 「アンジェリク」木原敏江

思わずマジメに考えちゃったよ。
「NANA」以外、歳がバレそうなラインナップになってしまったw

359 :名無し草:04/04/27 20:35
王道物ばかりだけど、
悠理はパタリロ
野梨子はガラスの仮面やはいからさんが通る
可憐は、可憐はなんだろうなぁ、ときめきトゥナイトか・・砂の城?

360 :名無し草:04/04/27 20:50
野梨子:ガラスの仮面 ベルばら
可憐:王家の紋章 砂の城
清四郎:萩尾望都さんのもの
魅録:動物のお医者さん
美童:エースを狙え
悠理:あさりちゃん(かなり古いな…)

みなさまと同じようなこと考えてましたw

361 :名無し草:04/04/27 21:07
ネタとは関係ないけど・・・
みなさんのカキコを見てたら自分と同じイメージだったり
世代だったりするものがほとんどで、
なんだか激しく嬉しくなってしまった!!
>360さん
かなりヤバイくらい同じこと考えちゃいました(^^;)

362 :名無し草:04/04/27 21:51
>358
>美 童=「ベルサイユのばら」池田理代子 「アンジェリク」木原敏江
そのセレクトに激萌えです。
アンジェリク、ものすっごい好きでした♪
(彼の場合、自分=フェルゼンorフィリップに置き換えて読んでるんだろうか…)
魅録と悠理はジャンプとかを回し読み。
清四郎も意外と『ベルバラ』、『あさきゆめみし』あたり読んでそう。
だって和子さんが持ってるでしょ。で、「時代考証が今一つ…」とかうるさそう。

363 :362:04/04/27 21:54
あ、読み返して気付いた。
少女漫画限定にジャンプはないっすね。失礼をば…

364 :名無し草:04/04/27 22:13
>358
田村由美の漫画を知らないので魅録のはピンとこないんですが他の5人のは妙に納得。
私も>362さんのようにアンジェリク大好きでした。
んで美童は絶対自分をフィリップに置き換えて読んでると思うw
それと360さんも書いてるけど清四郎は萩尾作品が好きそうですよね。
SF研究会はいってるくらいだし…


魅録は「ブルーソネット」の柴田昌弘あたりを好んで読んでいそう。

365 :名無し草:04/04/27 22:22
355です。沢山レスが付いて嬉しい。
思った通り、少女漫画読みの人が多いようで(当たり前かw)

個人的には、359タソの可憐が砂の城にウケてしまいました。
ナタリーに対して「あーっ、もう何やってんのよっ!」とか文句いいながら、
真剣に読んでる姿が目に浮かびます。
それを清四郎が見ていて、「少女漫画にあれだけ入れ込めるとは幸せな
人ですね・・・」と考えていそうw

>362-363
ジャンプは凄くあり得ると思いますよ。
敢えて少女漫画にしたらどうなるのかな?と興味を持ったので、
狭い範囲にしてしまいました。こちらこそ、失礼をば。

366 :名無し草:04/04/28 06:08
そうそう、可憐はメロドラマに真剣に嵌りそうな可愛らしさがあるよね。

じゃあ少年漫画はどうでしょう。
ジャンプ系、スラダンとか大好きだけど、スラダンを読み漁る有閑メンバーはちと想像できん・・・

367 :名無し草:04/04/28 12:33
うーん、青年誌(男性誌?)まで手を広げると、
魅録はゴルゴ読みそうだなあと思ったんだけど・・・

368 :名無し草:04/04/28 12:44
>366
悠理:尾田栄一郎「One piece」 もっと単純じゃないとだめかな。
   鳥山明「ネコマジン」
清四郎:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」 あ、これは青年漫画ですね。
魅録:ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」 考えてみたら警察ものだったのは偶然。
野梨子:ほったゆみ・小畑健「ヒカルの碁」 絵がきれいでないと手に取れなさそう。
   でなければ手塚治虫作品。

美童と可憐には小林まこと「柔道部物語」でも読ませてみたいです。
完全拒否か意外とハマるかのどちらかかと。

369 :名無し草:04/04/28 14:21
少年漫画はあまり知らないんだけど・・・

悠 理=「北斗の拳」
野梨子=「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」
可 憐=「ふたりエッチ」←w
清四郎=「20世紀少年」
魅 録=「ふたり鷹」「エリア88」
美 童=「電影少女」

少女漫画だろうが少年漫画だろうが、美童と可憐は恋愛モノしか読まない気がする。
で、経験がないだけに可憐はそっちの興味がすごいと思うんだけどw


370 :文学少女とアンドロメダ:04/04/28 14:52
短編です。
野×悠(悠×野)で、ちょっとだけ魅×悠

371 :文学少女とアンドロメダ:04/04/28 14:53
<1> 或る年の2月11日 / 魅録

 週番であったため、朝一番に教室に入った魅録は、整然と並んだ机たちの中で、
ただひとつ、歪んでいる机を見つけて苦笑した。椅子も机の中に納まっておらず、
座ったときのままに飛び出ている。
 窓際の前から三番目の席。そこに座る生徒を魅録はすぐに思い浮かべることが
出来た。剣菱悠理である。
 彼女は魅録の友人である。お転婆というには度の過ぎるじゃじゃ馬娘であり、
中学生のときからつるんでいる。さんざん馬鹿騒ぎをしたいい仲間である。お互いに
異性と意識したことはなく、魅録に至っては「こいつは男友達」と断言していたのだが、
なんの因果か、現在二人は恋人同士だった。
 少し前、魅録は原因不明の野梨子と悠理の喧嘩を仲裁した。それが切っ掛けと
いえば切っ掛けである。
(おまけに悠理の奴、机の上に物を置きっぱなしじゃないないか――あれ)
 机の上にあるのは、悠理の持ち物にしてはいささか毛並みが違う。
「宮崎賢治――か」
 これは悠理のものではあるまい。前の席の女子生徒のものだろうか? 
 ――否、それも考えにくい。この間、彼女が本を読んでいるところを見たことがないし、
『現国ってわたくし苦手で……』と言っていたのを魅録は聞いている。
 だからといって隣の席の男子生徒とも考えにくい。宮崎賢治は高校生の男子生徒が
愛読するには、多少乙女チックに過ぎるという偏見が魅録にはあった。
 結局誰のものか分からなかった。そうこうするうちにぱらぱらと生徒たちが登校して
きて、教室はいつもの朝の光景がはじまり、にぎやかになる。
 ホームルームの時間が始まる直前に、ようやく悠理が登校してきた。相変わらず
慌しい奴だと思いながら挨拶するため近づこうとした魅録は、悠理が先程の本を
しばらく見詰めた後、大切そうに鞄にしまったのを見た。

372 :文学少女とアンドロメダ:04/04/28 14:54
<2> 或る年の2月10日 / 悠理



 暮れなずもうとしている空からは、紗のような光が差し込んできている。
 放課後の校舎は朱色に染まり、濃い影を其処此処に作った。
(眩しい)
 逆光は目に痛いくらいで、 赤と黒のコントラストは見慣れた校内をたやすく
非日常にせしめた。
 窓から顔を背け、悠理は教室に向かう。忘れ物を取りに来たのだ。外に運転手を
待たせているため急いではいたが、静謐が広がる廊下を走ることは憚られ、静かに
歩いた。
 教室に到着し、複雑な彫りの施された扉の前に立つと、中に人の気配がする。
 潜む必要はなかったが、なんとなく音を立てずに中を伺うと、窓際の席に座る少女
の姿が目に入った。
「の、――」
 声をかけようとして、しかし半ばにして噤む。
 少女は文庫本を読んでいた。カバーのない剥き出しのままの表紙は、茶色く褪せ
ている。おそらくかなり昔に発行されたものなのだろう。
 悠理の存在に気づく様子もなく、少女は微動だにせず没頭していた。俯き、文字に
目を落としているため、肩で切りそろえた緑の黒髪が零れ、隠れている白いうなじが
晒されている。
 気がつけば息を殺していた。
 それは溜息ひとつで壊れてしまうように儚く、そしてどこか完璧だった。
 放課後。少女。古い文庫本。夕日。
 朱墨を垂らすように赤は深さを増して、やがて沈んでゆく。世界の天井(そら)は
すでに群青が顕れていた。
 ただひたすら溺やかで、しかし何人たりとも踏み入れることは敵わぬ時間を、少女
は紡ぐ。
(このあたいでさえも)
 他でない、この自分でさえも。
 彼女の裡(うち)に入ることはゆるされない。

373 :文学少女とアンドロメダ:04/04/28 14:54
<3> 彗星のようにあっという間に過ぎ去っていった日々の中の些細な遣り取り。

「あー、退屈」
「私のように本を読んで時間を潰せばいいじゃありませんこと」
「嫌がらせ?」
「ふふ。――魅録は?」
「情報処理室のパソコンを直してる。清四郎は?」
「職員室に呼ばれてますわ。美童と可憐は今日はデートですし」
「野梨子と生徒会室でふたりっきりってのも珍しいな」
「そうですわね」
「なあ野梨子」
「………」
「野梨子ってば。ひとりで本読むなって」
「本はひとりで読むものですわ」
「いけず。――どういう内容?」
「……孤独で貧しいジョバンニという少年が、唯一自分を理解してくれる友人のカム
パネルラとともに銀河を列車で旅する話ですわ」
「銀河鉄道999?」
「何ですの、それは?」
「古いアニメ。それで? やっぱり機械の身体を探しに行くの」
「違いますわ。それは死者を運ぶ列車なのですわ」
「死者って、死者だよなぁ……あたい、そーゆーの苦手なんだけど」
「ホラーではありませんわ。きれいで……哀しい話ですのよ」
「天国に行く旅かぁ」
「ちょっと違いますわよ。ジョバンニはただその夢を見ているだけ。亡くなるのはカム
パネルラだけですわ。ジョバンニとカムパネルラは双子の運命を背負っているとの説
もあるのだけど、歩む運命は別々なんですの――それでもわたくしは彼らは幸福
だったと思うわ」
「どうして」
「ほんとうのさいわいを知ったから」

374 :文学少女とアンドロメダ:04/04/28 14:55
<4> 或る年の2月10日 / 野梨子

 空気が動いたような気がして、野梨子は思惟の淵から意識を浮き上がらせた。
 辺りが薄暗くなっていることにようやく気づき、野梨子は微苦笑する。
 物語に浸っていたのが半分、物思いに囚われていたのが半分。知らないうちに
長い時間が経ってしまったようだ。
 戸口の方へ視線を遣ると、閉めきっていた筈の扉が少し開いていた。遠く、ぱた
ぱたと去ってゆく上靴の音が聞える。
 野梨子はあるかなしかの微笑みを浮かべると、本を閉じた。
 まだ読みかけであったが、何度も読みかえしているため、結末は知っている。それ
どころか改めて活字を追わずとも、本当は瞳を閉じるだけで文章のひとつ、台詞の
ひとつを思い出すことが出来る。
 『ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろなかなしみも
みんなおぼしめしです。』
 本を鞄に入れようとして、しかし野梨子は途中でその手を止めた。少し考えた後、
本はそのまま机の上に置いて、立ち上がった。椅子も机の中にきちんと直さず、
座っていた形のままにしておく。
 ここで本を読んでいた痕跡を残すように。
 そしてそっと、ただ一度だけその表紙を撫でる。銀河鉄道の夜。かつてあなたに
語って聞かせた哀しい別れの話。あるいは優しくさいわいな話。
 もうわたくしはあなたを傷つけることはないでしょう。ジョバンニとカムパネルラの
ようにわたくしたちは、それぞれのさいわいのために、静かに分かれてゆくのだ。
 野梨子は胸に去来する淡い感情を、ゆっくりと受け止め、そして捨てた。そして振り
返らず、教室を去る。
 胸の中で何度も少女の名を呼ぶ。何度も何度も尽きることなく呼ぶ。
 それでもわたくしは、もうけっして振り返らない。
 

終わり。

375 :名無し草:04/04/28 18:31
>文学少女とアンドロメダ
私の少ない語彙力ではうまく表現できないのですが、
静かな読後感を残すお話だと思いました。
<3>以外、教室内に視点を置いて話を進めるやり方も
凄く面白かったです。

376 :名無し草:04/04/28 18:42
某サイトさんが作っていたゲーム作成サイトで
有閑バージョンを作ってみました。(某サイトさん、アリガトウ)
とりあえず、清四郎が野梨子を救うパターンで作ったけど、
誰か他のパターンでも作ってみると面白いかも・・・。

頑張れ!清四郎
http://avg-maker.com/63034.html

377 :名無し草:04/04/28 19:18
銀河鉄道の夜って、宮澤賢治ではなかったかの?
雨にもマケズ〜の人だよね?!


378 :名無し草:04/04/28 19:29
うっかり間違ったんだろ。

379 :名無し草:04/04/28 19:55
>文学少女
ある意味悠×野が一番好きなので、とても
心に染みました。

380 :名無し草:04/04/28 22:50
>378←w

381 :文学少女とアンドロメダ:04/04/29 09:20
うっかりでした。
この恥ずかしさ、どうすればいいのか
(前にも同じ間違いをしたことがあるのですが、なんか直らないのです)

382 :362:04/04/29 16:34
>381
ドンマイです。
タイトルも、行間を読ませる文章もとても好きでしたよ。
(果たしてどれだけ傷付け合ったのだろう、とか考えてしまった)
野梨子って、こういうしっとりしんみりした文体にぴったりですね、ほんと。

ちなみに自分は、本も読んだことはあるのですが、どうしても
「カームパネールラーーー」
って猫が叫んでる情景がつい思い浮かんでしまう…w
(悠理にも、アニメを見せるのが手っ取り早そう)


383 :名無し草:04/04/29 16:36
↑名前の欄、消し忘れますた。はずかしい…

384 :名無し草:04/04/29 20:41
私も中高生のとき宮澤賢治好きだったなぁと思い出しました。
銀河鉄道の夜は、ほんとうにキレイな話で、久しぶりに読みたくなりました。

ところで野梨子がカムパネルラで、悠理がジョバンニ?

385 :名無し草:04/04/29 20:45
関係ないけど、一条ゆかりスレが人多すぎで書き込めない。
一応壺使ってるんだけど、他の2chブラウザじゃないとダメなのかな

386 :名無し草:04/04/29 22:37
>385
さっき、IEで普通に書き込めたよ。
このあいだ私がそうだったんだけど、
少女まんが板の鯖移転したことに気づかないまま
元のURLで書き込みチャレンジしてるとか…

387 :名無し草:04/04/29 23:01
>386
ご指摘の通りでした。
ありがとうございます!

388 :名無し草:04/04/29 23:20
まあ、うっかりさんの多いスレってことで。

389 :名無し草:04/04/30 14:15
作家でびゅーさせて頂きます。
今までROMっていましたが、とうとう我慢できなくなりました。
はっきり言って他の作家さんと比べるとダンチでレベル下がりまくりですが、そんな文章でも構わないという心の広〜い方に読んで頂けたら幸いです。
他の作家さん並のレベルを要求されている方はスルーして下さいな。
特にカップリングはありませんが、野梨子がヒロインで彼女の心の成長を書いた中編小説です。
稚拙な文章で勢いだけですが、ヨロシクお願いします。


390 :青空のように(1):04/04/30 14:20
「野梨子、ちょっといいかな?」
「ええ、父さま、どうなさったの?」
私は父の訪問に驚きを隠せなかった。
普段家にいることの少ない父は、私の部屋を訪れることは皆無といってよい程だ。
「話があるんだ。居間に母さんもいるから、ちょっと来てくれないか?」
「わかりました、今行きます。」
私は何事かと思いながらも、父と共に母の待つ居間へと向かった。

「お見合い…ですか?」
「高校生のお前にはまだ早すぎるし、今までは全てお断りしてたんだが…」
父が困惑顔で話を続ける。
「先日、お世話になっている画廊の朝日山さんが来られてなぁ。
朝日山さんも断れない大事なお客様からのお話だから、とりあえず私の所に話だけでも通して、先方の顔を立てたいとの事だったんだけどなぁ…」
それならば問題ないではないか?どうしていつも通り断ってくれなかったのだろう?
「何か問題でもあったんですの?」
「悪いことになぁ、その時に貴子が来ててなぁ…」
「貴子叔母さまが…」
なんとも間が悪いとはこのことだ。
叔母は『野梨子さんの為なのよ!』が口癖になるほど、来る度に見合い話を持ってくる。
きっと叔母は大乗り気で快諾したのだろう、父や私の返事も聞かずに。
「そうなんだ。」
父と母、そして私はほぼ同時にため息を吐いた。


 叔母さんの名前を勝手に「貴子」にしてしまいました。
 名前がわからなかったので…。

391 :青空のように(2):04/04/30 14:23
「悠里ったら、また食べちらかしてますわよ。」
悠理は煎餅の袋を独り占めにしながら、ボリボリと煎餅をかじっている。
「いつもいつも、うるさいなぁ。」
口にはするものの、悠理はちらっと私の方を見ただけで、手は相変わらず煎餅を口に運びつづけている。
「野梨子、言うだけ無駄ですよ」
清四郎が新聞から目を離さずに口を挟んだ。
「そうそう、言って治るものならとっくに治っているわよ。」
「それは言える。」
「今更だよねぇ。」
可憐、魅録、美堂も口をそろえる。
私は仕方なしに食器棚から大き目の皿を取り出し、悠理の前に置いた。
(それはそうですけど…私が気にしすぎなのかしら?)
自分のこんな細かしい性格と、昨日の見合いの話が私の心を憂鬱にする。
そして再び溜息を吐いた。

「何よ、野梨子、さっきから溜息ばっかり。」
「えっ…?」
「そうだよ、さっきから何度も何度も、気になるじゃん。」
「何かあったんですか?」
「隠してないで話しちゃえよ。」
「話せば楽になるぜ。」
そうは言うものの、話すべきか話さずにいるべきか…。
いずれにしろ、いつかは分かってしまうこと。
私はこの際話してしまって、気の重さを少しでも軽くしようと思った。
「…私、次の日曜日にお見合いなんですの」
「お見合い!?」
五人の声が重なった。



392 :青空のように(3):04/04/30 14:31
悠理の手がピタリと止まり、清四郎は新聞を畳んでテーブルに置くと、こちらに向き直った。
可憐・美堂・魅録の三人も驚愕の表情を隠せない。
聖プレジデントは良家の子息・令嬢が多いので、旧家の令嬢などは見合い後婚約する人もいなくはない。
だが、男嫌いで名の通っている野梨子が見合いともなると、正に晴天の霹靂である。
叔母が見合い話を持ち込むことは聞いていたが、まさか野梨子がその手の話を受けるとは思っていなかった。
「本気?」
「野梨子、おばさんの持ってくる話だって嫌がってたじゃないか。」
「そうだよ!片っ端から断ってるって言ってたよね?」
「高校生で見合いかよ。」
「それが溜息の原因ですか?」
「ええ、昨日お話があったのですけど、父さまがお世話になっている方からのお話で、どうしても断れない状況になってしまって…。」


393 :青空のように(4):04/04/30 14:34
「それで、どんな人なのよ?いい男なの?野梨子!」
可憐が興味津々で聞いてくる。
「写真も何も見てませんけど、何でも京都の老舗旅館『亀之翁』の御子息だそうですわ…」
「ほう、『亀乃翁』ですか?」
「清四郎、知ってるのか?」
魅録が清四郎に訪ねる。
「京都ではもちろんですが、日本でも一、二を争う高級旅館ですね。皇族や財界人御用達で創業300年とか。」
「あたいも知ってるぞ。母ちゃんが京都に行くときに泊まってるもん。」
悠理の言葉に美堂が続く。
「旅館は僕も何度か泊まったことあるよ。
今は旅館だけでなくて、海外の著名なリゾート地でも会員制の高級リゾートホテルなどを手がけているって話だよ。世界のVIPも御用達のね。」
「まぁ、野梨子ったら、玉の輿じゃない!」
可憐の目が輝いている。
「でも、19で見合いってのもなぁ?相手にとっては美味しい話だろうけどさ。」
「あたいだったら絶対ヤダ!」
悠理と魅録はうんうんと頷き合っている。
「私も同じですわ。」
私はみんなの言葉に一段と気が重くなっていくのを感じた。
「先月、母さまが知り合いのお宅の園遊会でお茶を点てた時、私、お手伝いに行きましたの。
その時にお見えになっていたようで、私を気に入って下さったらしいのですが…」


394 :青空のように(5):04/04/30 14:37
会ったことのある人ならばまだしも、どんな人かも分からない相手に会ってどうしろというのだろうか?
叔母にしてみれば結婚が女の幸せ、望まれて嫁ぐのが一番なのだろう。
今、この年齢で結婚など考えられないし、考えたくも無い事だった。

そんな野梨子の思いとは裏腹に可憐が羨ましそうに呟く。
「はぁ〜、野梨子んちは来る話も違うわね〜。」
「では、私の代わりに可憐を推薦しましょうか?」
私は可憐に満面の笑みを向けた。代われるものなら代わって欲しい。
「何いってんのよ!相手はあんただから見合い話を進めてきたんでしょう?
本当、憎たらしいわね!あんたの本性を知らない相手が可哀想よ!」
可憐はそう吐き捨てると私を睨んでいる。
そんな視線を無視しつつも、可憐の言葉に同意を感じ得ない。
「本当、私のこと何も知らない方ですのにね。それなのに何故私をと望まれるのかしら…」
そして私は又、溜息を吐いた。


395 :青空のように(6):04/04/30 14:41
「なぁなぁ、日曜日の野梨子の見合い、覗きに行かないか?」
「あんた、バレたら野梨子に殺されるわよ。」
「バレないようにすればいいじゃん!」
なぁ、と同意を求めるように悠理は清四郎に擦り寄った。
「清四郎ちゃん、可愛い幼馴染の野梨子ちゃんが心配だろ?」
「心配する必要もないでしょう、悠理と違ってへまをするようなことはありませんから。」
清四郎は平然と答える。
「ふんだ!あたいのことは関係ないだろ!美堂とはどうよ?」
「んーっと、僕はちょっと興味ありかな?見合いってやったことないし。」
可憐は美堂のセリフに呆れていた。
「当ったり前じゃない。美堂みたいな女ったらしに世話しようなんて奇特な人、誰もいないわよ。」
「何か僕、ひどい言われ様なんですけどー。」
「そのとおりだろ。」
悠理も容赦がない。
「俺、興味あり。見合いってやっぱTVでやるようなヤツかな?」
魅録が清四郎に向かってニヤッと笑う。
「相手が亀乃翁ですから、きちんと手順は踏むと思いますよ。」


396 :青空のように(7):04/04/30 14:43
そういえば…と美堂が口を挟む。
「僕、亀乃翁の息子にも何度か会ったことあるんだよね。」
「えっ、どんな奴?」
「直接話したことないからわかんないけど、僕はあんまり好きなタイプじゃないな。」
「ということはいい男なのね。」
美堂はむっとしながら可憐を睨み、話を続ける。
「多分一人息子のはずだから、野梨子の相手と同一人物だと思うけど。
今は経営にも携わっていて、周りの評判もいいみたいだよ。」
「なんで、野梨子に教えてあげなかったんだ?」
魅録が美堂に訪ねる。
「会ったことのない相手なら先入観持たせるだけだよ。そういうことはしたくないしね。」
「美堂の話を聞いたら、尚更見てみたい気がするぞ。」
悠理はにぃーっと笑い、まわりの面々を見渡す。
「そうね、相手がどんな男か興味あるわね。
いい男だったらあたしが慰めてあげようかしら。」
「野梨子の保護者としては、どんな相手なのか見てみませんと。」
清四郎も腕を組み、自分を納得させるかのように呟く。
「但し、絶対バレないようにしてよね!あたし、野梨子だけは敵にまわしたくないわ。」
可憐の言葉に全員が顔を見合わせ、うん、うん、と頷き合った。

   【続く】


397 :名無し草:04/04/30 14:54
しょっぱなから大量うPで申し訳ありませんでした。
いやー、初投稿ってドキドキしますね。
今も指が震えています。
これからも頑張ってうPしますので、ヨロシクお願いします。

398 :名無し草:04/04/30 19:42
・・・・・美「童」でよろしく。

399 :名無し草:04/04/30 22:03
>398
ご指摘ありがとうございました。
うPで一人興奮してしまい、間違いに全然気が付きませんでした。
それにしても、名前を間違えてしまうなんて…恥

400 :名無し草:04/04/30 22:49
>青空のように

久々の新作、嬉しいです。
続き楽しみに待ってます。

401 :青空のように(8):04/05/01 09:41
>>396の続きです。

「そうと決まったら、問題は場所を聞き出すことだよな。」
魅録はどうしたもんかと考え込んだ。
ほかの面々も、何か良い方法はないものかと考え込んでいる。
「まさか野梨子に聞くわけにいきませんし。」
「そんなの簡単じゃん。みんな頭悪いなぁ。」
悠理以外の全員がむっとする。
「悠理に頭悪いと言われるのは心外ですね。」
「そーよ、あんたに言われるとムカつくわぁ。」
「悠理、何かいい手があるのか?」
「そんなの簡単じゃーん!
野梨子の叔母ちゃんに聞けばいいじゃんか。」
悠理は両手を腰に置き、胸を張って元気よく答える。
「はぁ?」
「おまえなー!そう簡単に教えてくれるかっつーの!」
「悠理を当てにした僕達がバカなんだよ。」
美童が呆れたように呟く。
「あたいらが聞いたって教えてくれないかも知んないけどさ、清四郎がおばちゃんに聞けば問題ないだろ。」
なるほど、みんなが納得する。
「ごもっともです。」
「あたいをバカにするなよ!」
悠理は一段と仰け反り、上半身をプルプル震わせながら高笑いをしていた。




402 :青空のように(9):04/05/01 09:43
清四郎が野梨子の母から仕入れた情報によると、お見合いは都内のホテルで行われるらしい。
そのホテルには大きな日本庭園があり、その中にある料亭の個室で行われるそうだ。
悠理は剣菱の名をフルに活用した。
お見合いが行われる前に部屋を1時間程借り、30分程で魅録が小型カメラと集音マイクを仕込む。
30分余裕を持たせたのは、野梨子と鉢合わせをしない為のものだ。
そんな心配をしなくても、野梨子達はホテルのラウンジ辺りで一度顔を合わせてから料亭へ移動すると思うのだが、野梨子に絶対バレてはいけないので、念には念を入れる。
更に隣の部屋を借りた悠理たちが、モニターで見合いを見物するという訳だ。
魅録がセットしている間、せっかくだからと料理も頼み、一度に全部運んでもらって食事をしながらの鑑賞会となった。
本当なら一流料亭では決して許されない行為なのだが、そこは剣菱の力と板長への多額の心づけでカバーした。
テーブルの上には見た目にも美しく、美味しそうな食べきれないほどの料理が並ぶ。
悠理は待ってましたとばかりに、早速料理に手を付けていた。
もちろん、部屋には誰も入らないようにと、再び多額の心づけを渡しながら仲居に釘を刺す。
そして見合いが始まった。


403 :青空のように(10):04/05/01 09:46
「野梨子さん、こちらが亀乃翁泰隆さん。
泰隆さん、こちらが白鹿野梨子さんです。」
二人ともお互い軽く会釈する。
泰隆はダーク・グレーの三つ揃いで、野梨子は錦糸で刺繍を施した色鮮やかな振袖だ。
席には画廊の朝日山と、野梨子の叔母が同席している。
初めは見合いを成功させたい亀乃翁側の主張で、お互いの両親も同席するという話だったが、野梨子にとっては義理の見合い。
はなから断るつもりでいる以上両親の手を煩わせる間でもないし、相手の方にもご両親の前で恥をかかせるのは申し訳ないように思い、両親の同席だけは頑として拒んだのだ。
「泰隆さんは、アメリカのカルフルニア大学で経営学を学ばれたんですって。
卒業後3年間現場でみっちりしごかれ、今は27歳という若さで『亀乃翁』の専務として既に敏腕を振るっているのよね。野梨子さんも『亀乃翁』さんの名前はご存知でしょう?」
「ええ、存じております。」
話を持ってきた朝日山が口を挟む間もなく、叔母がノリノリで全面的にお見合いを仕切りまくっていた。
「肩書きも男性としても申し分ない泰隆さんが、野梨子さんを園遊会でお見かけしてから、是非お付き合いしたいっておっしゃって下さったの。
知り合いという知り合いを尋ねて、やっと野梨子さんの所へこぎつけたのよね。」
泰隆は叔母の言葉も耳に入っていない様子で、じっと野梨子を見つめている。
どうやら、本人を目の前にして野梨子から目が離せなくなったようだ。

404 :青空のように(11):04/05/01 09:48
「貴方をお見かけしたあの日依頼、私は美しく、おしとやかで清楚な大和撫子そのものの野梨子さん、貴方のことしか考えられない。」
野梨子はやんわりと対応する。
「貴方ほどの殿方でしたら、何も私ではなくても多くの女性が放っておきませんでしょう?
私よりももっと大人で素敵な女性は沢山いらっしゃいますわ。」
しかし、泰隆は真剣な瞳で野梨子を真っ直ぐ見据える。
「私が妻に迎えたいと思ったのは、貴方だけです。
今すぐ返事が欲しいとは言いません。高校卒業してからでも、いえ、貴方が望むのでしたら大学を卒業するまで待っていい。
私と結婚を前提にお付き合いして下さい、お願いします。」
泰隆は野梨子を見つめながら切々と訴えた。
「貴方は私の表面しか見ていませんわ。
私が大和撫子とおっしゃっていますが、中身もそのとおりとは限りませんでしょう?」
泰隆の真剣さに呼応するように、野梨子の口調も真剣味を帯びてくる。
「それは、これからお付き合いして貴方を知るということではいけませんか?」
そんな泰隆に野梨子はきっぱりと言った。
「私は貴方が思っているほど、おしとやかでも大和撫子でもありませんわ。
ごめんなさい、私は今日、お断りするつもりで参りましたの。
私、まだまだ19歳ですし、殿方にも興味がありません。
ましてや結婚する気なんてありませんわ。」

405 :青空のように(12):04/05/01 09:49
「ジ・エンド」
「やっぱりな。」
モニターの前に揃っていた5個の頭が、それぞれの席に散って行った。
「野梨子ってば、あんなに惚れられているのにもったいない!
相手の男性がちょっと可哀想なくらいよ。」
「可憐、慰めてやるんじゃなかったのかよ?」
「冗談でしょ?確かにいい男だけど、野梨子の二番煎じなんて絶対にイヤよ!」
可憐は魅録をひと睨みすると、再び箸を取り、出汁巻き卵を口に入れる。
他の面々も一大イベントが終った今、せっせと料理を口に運んで味わっていた。
「そんなこといってると、玉の輿に乗れないじょ」
口一杯に頬張っていた悠理も、それらを飲み込んでぼそっと呟く。
「ま、わかりきっていた結果ですけどね。」
「なぁ、野梨子って大和撫子って言われるのが嫌なのかなぁ」
悠理は食事の手を止め、しばらく考え込んでいた様子だったが、頭に残っていた疑問を清四郎に聞いてみた。
「本人は嫌かもしれないけど、野梨子は見るからにそうなのよね。」
「うん、絵に書いたような大和撫子だよね。
父親は日本画の大家で母親がお茶の家元、正真正銘のお嬢様だよ。」
そうそう、と可憐と美童も顔を見合わせている。
「やっぱ、あたいなんかとはちがうんだよな。」

406 :青空のように(13):04/05/01 09:51
「でも野梨子はそうは思っていませんよ。」
清四郎は皆に聞かせるように悠理の疑問に答える。
「そうなのか?」
魅録も美童も可憐も悠理も、皆が驚いたように清四郎を見る。
「野梨子が刈穂裕也と恋をした時に、僕は彼を『住む世界の違う人』って言ったんです。
でも野梨子はこう言いました。『同じ人間なのに、なんでそういいますの?』とね。」
思いもしない野梨子のセリフを聞いて皆が驚く。
そんな仲間の顔を見て、清四郎も彼女の答えに驚いた自分を思い出していた。
「その時思ったんですよ。野梨子との壁を作っているのは野梨子自身ではなく、僕達なんです。
野梨子の家や伝統ではなくてね。」
そういえば…と魅録も口を開けた。
「野梨子は誰に対しても同じように接しているよな。
子供だって、老人だって、俺の族の仲間やヤっちゃんにもな」
「もしかしたら、野梨子の立居振舞いは本人にとってごく自然なことなんでしょうね。
悠理の天真爛漫さや可憐の女らしさと同じように。」
「そういえば、あたい、野梨子にはしょっちゅう怒られてるけど、ああしなさい、こうしなさいとは言われたことはないかも。」
「私達にはイヤミったらしいかもしれないけど、一番純粋なのよね、野梨子は。」
女友達の内なる魅力を再確認したらしい二人を微笑まし気に眺めながら、清四郎は続けた。
「だから、野梨子の努力しようとしている部分に目を向けてあげるような人でないと、野梨子の心には響かないと思いますよ。」

      【続く】

407 :青空のように(13):04/05/02 09:55
>>406の続きです。間に誰もいないのがちと寂しい…

「もう、野梨子さんたらとりつくしまもないんだから」
叔母はタクシーの中はもちろん、家へ着いてもまだぶつぶつと呟いている。
「野梨子さん、何も今すぐ結婚しろと言っているわけではないのよ。
望まれて結婚するのが女の幸せなんだから、この話はまたとない良縁なの。
向こうさんも大学卒業まで待ってもいいって言って下さってるのよ。
もう一度考えてごらんなさい。」
私は叔母を見据えるときっぱりと言った。
「せっかくですけども、叔母様、何度考えてもお答えは一緒ですわ。
私、今は誰とも結婚する気はありません。
すみません、疲れたので部屋で休ませて頂きます。」
一刻も早く一人になりたくて、私は叔母の話を遮り部屋へ戻った。

着替えながらも泰隆の言葉が頭の中を占める。
(おしとやかなで清楚な大和撫子…)
なんてつまらない言葉だろう。
それは誰かに頼ってしか生きていけない証。
おしとやか?清楚?大和撫子?
そんなものが役にたつのだろうか?
いつも清四郎に守られて弱いだけの私。
一人では何も出来なくて、いつも足手まといにならないように、邪魔にならないようにと。
それなのにプライドが高く、負けず嫌い。
それが高じて皮肉を言わずにはいられない。
こんな自分が…嫌い。
人目も気にすることなく、いつも自分の思うがままに行動し、型にはまらない。
私とは正反対の悠理が羨ましい。

408 :青空のように(14):04/05/02 09:57
私らしいって何があるのだろう?
小さな頃からお茶やお花、お琴に日本舞踊。
以前は大和撫子と言われる度に嬉しかった。
誉められたことが嬉しくて、稽古に励んでいた。
そしてお習い事には必ず「女性らしく、節度を保ち、人様につくすことが美徳」といわれ続け、それが当たり前と思ってきたけど、それが本当なのだろうか?
悠理の様に強くなりたい。
悠理の様に自由になりたい。
悠理の様に…。
でも分かってる、私は悠理になれないことを。
なりたくてもなれない、それが悠理。
そして私は今日何度目かの溜息をついた。

409 :青空のように(15):04/05/02 09:59
「野梨子、昨日のお見合いどうだったの?」
「そういえば昨日だったよね?」
私は真っ先に聞いてくるのは可憐と美童の二人だろうと予測していたので、予想通りの結果に思わず笑みがこぼれてしまった。
「どうって、勿論丁寧にお断りしましたわ。」
「やっぱり、あんたならそうよね。」
悠理が私達の会話に加わってきた。
「でも、少しは考えなかった?だって、あの「亀之翁」じゃん?」
「では、悠理にご紹介しましょうか?可憐には先日断られたところですし。」
見合いが終った事で少しだけ気分が軽くなった私は、思わず悠理に軽口を叩いてしまった。
「誰が!男なんか紹介してもらったって嬉しかないわい!」
「私も悠理と同じですわ。私、今日はお先に失礼しますわね。」
悠理と同じで同じでない…。
もう一つ抱えている重たい気分を紛らわす為に、青空の下を一人ゆっくりと歩いてみたくなった私は、外へ出ることにした。
「では、僕も…」
「今日は私、用事がありますの。だから清四郎はゆっくりなさって。」
立ち上がりかけた清四郎を抑え、私は生徒会室のドアへと向かった。
「一人で大丈夫ですか?」
「いやですわ、子供じゃあるまいし…。」
「そう言う意味ではないんですけどね。」
それなら…と魅録が鞄を手にして立ち上がった。
「俺もダチと会う約束してっから、途中まで送るよ。」
「みんなが心配するようですので、お願いしますわ。」
私は後ろを振り返り、魅録に微笑みかけた。

410 :青空のように(16):04/05/02 10:02
「魅録はどちらまで行かれますの?」
私は隣で歩いている魅録を見上げながら聞いた。
「ああ、あれはウソ。」
「えっ?」
「なんか、野梨子、悩んでるっぽかったからな。」
私は驚いて魅録の顔を見つめる。
「気付いてましたの?」
そんなに分かり易いのだろうか?ああ、それで清四郎も心配したのかも知れない。
「他の奴らは分かんねーけど、最近元気がないし、今日も結構溜息ついていたしな。
聞くだけならいくらでも聞くぜ。」
私はどうしようか迷った。
裕也さんの時も親身になって私達の為に動いてくれた魅録。
魅録なら…笑わずに聞いてくれるかも知れない。
私は思い切って口を開いた。

   【続く】




411 :名無し草:04/05/02 11:52
>青空のように

原作に忠実な主人公達ですね。
私は好きです。
今後野梨子がどのように変わっていくのか、
どのように自分探しをしていくのか
楽しみです。

続きお待ちしてまーす!

412 :名無し草:04/05/02 14:47
>青空のように
私も好きで楽しみにしてます。
さらさらと自然に流れ込んでくる描写が心地よいです。
ホントにそれぞれのキャラが凄く「らしい」動きをしますね>411
これからどんな展開を見せてくれるのかワクワクして待ってますので
どんどんうpしてくださいませ〜!

413 :名無し草:04/05/02 14:54
>青空のように

私も好きです。
会話がちょっと多いかな、と思います。
マンガの原作としてならすごく良かったかな。
でも、おもしろいので続きお待ちしています。

414 :名無し草:04/05/02 23:27
>青空のように
私も好きです。
ここではお話によっては違う雰囲気(容姿)の有閑メンバー
たちが脳内に浮かぶこともあって、それもまた大好きなので
すが、このお話は原作のままの絵が頭に浮かんできます。
続きをたのしみにまってまーす。


415 :名無し草:04/05/03 08:37
ふと思い付いたので少し妄想w

ある日の生徒会室。
悠理・野梨子を除くメンバーが暇を持て余していた。
男性陣の表情がいささか暗い。
美童は溜め息ばかりついているし、魅録も舌打ちしては頭を抱えている。
ポーカーフェイスを装いつつも、眉間の皺が隠せない清四郎。
一人、悠々とマニキュアを塗っていた可憐は、呆れつつも
ニンマリ微笑む。
「そんなに気になるならアイツらの機嫌とってくれば?
女って父親に似たタイプが好きみたいよ。
いっそイメチェンしてみたらぁ?」

可憐の言葉に一同目を見開く。
明らかに万作と清州を思い浮かべている顔だ。
「そっかぁ。悠理のタイプはおじさんなんだ…」
「国宝級が相手かよ…」
「………」

次の日、
鏡を見て、万作と似ても似つかない自分の美貌を嘆く美童と
ひたすら絵の練習に励む魅録がいたとかいなかったとか。

オソマツでスマソ。


416 :青空のように(16):04/05/03 09:59
「野梨子は野梨子、無理すんなって。それに、俺の知っている女の中では野梨子が一番強い。」
私は少しむっとしながら言ってしまった。
「私、全然強くなんてありませんわ。
いつも清四郎に頼ってばかりですし、…いつもみんなの足手まといですもの。」
私は魅録が何故その様な事を言うのか不思議だった。
「悠理が羨ましい…。」
「俺、尊敬してるんだぜ、野梨子の意思の強さに。」
「え?」
私は思わず足を止め、魅録の顔をまじまじと見た。
「そう、曲がったことは決して許さない、自分の意思を最後まで貫き通す強さは野梨子が一番だもんな。だから無理に他の誰かになる必要はないんじゃないか?」


417 :青空のように(17):04/05/03 10:00
魅録の言葉が私の心臓に突き刺さり、やがてじんわりと心に、全身に広がっていく。
ああ、私は誰かに言って欲しかったのかもしれない。
野梨子は野梨子のままでいいと。
「野梨子、どうした?」
声を掛けられ、私は初めて自分の目から涙がこぼれていることを知った。
「ごめん、俺なんか変なこと言った?」
私はあせっている魅録が困らないように、精一杯の笑顔を向けた。
「有難う、魅録、もう大丈夫ですわ。
私、子供のようだったのかも知れません。自分の無いものをあれも欲しい、これも欲しいって。
少し欲張りすぎですわね。」
魅録も私の言葉を聞いて安心したようだ。
「そうだな、それに、もしも野梨子が悠理みたいになった大変だぜ。
悠理一人でも持て余してるのに、二人になったら俺と清四郎の二人じゃ手に余っちまう。」
「悠理が聞いたら怒りますわよ。でも…。」
野梨子は久しぶりに心の底から笑った。


418 :青空のように(18):04/05/03 10:02
今日も悠理はクッキーの袋を抱え、ボリボリと食べている。
私はそんな悠理に構うことなく読書を続ける。
「なんか何時もと違うと思ったら、珍しく野梨子が何も言わないんだよな。」
チラッと私に視線を向けながらも手は止まらない。
「もう諦めましたわ。」
「ふーん、ならいいけどさ、なんか、言われないのも恐いような…」
私は本から目を離し、魅録へと視線を移した。
(意思を最後まで貫き通す強さは野梨子が一番、無理に他の誰かになる必要はない)
昨日、魅録が言ってくれた言葉。
その言葉で少し自分を好きになることが出来た。
私が私らしくある為に一歩前に踏み出すことが出来た。
視線を感じたのか、目が会うと魅録は軽くウィンクする。
私は微笑みを返すと、窓辺に立って外を眺めた。
そこには真っ青に澄み渡った一面の空。
まるで霧の晴れた私の心のように。

   【終わり】


419 :名無し草:04/05/03 10:08
最後まで私の妄想にお付き合い頂きまして有難うございました。
又、皆様から暖かいお言葉を頂き、目がうるうる状態でございますぅ。
今回はあまり萌えどころのないものでしたが、この話をベースに続編と数年後の話等を作っています。
他にも色々なカップリリングでのお話など欲張って作っていまして、又完成したらうPしたいと思って
いますのでヨロシクお願いします。


420 :名無し草:04/05/03 10:15
>416
すみません、>410の続きです。
 入れるの忘れました。今更なんですけど…スマソ。

421 :名無し草:04/05/03 11:26
>415
次の日、清四郎は何をはじめたんだろ?
……そもそも可憐、わかってて言ってるのか?

422 :名無し草:04/05/03 12:26
>415
私も、清四郎が気になって仕方ない…。
まさか……可憐パパについてリサーチ中、とか?

423 :名無し草:04/05/03 13:50
>415
美童に「万作おじさん」のルックスを、魅録に「絵」を持ってきたところが
うまいと思ったよ。
清四郎に「万作おじさん」の外見を当てても気にしなそうだし(経営能力なら別)、
「絵」を当てても「僕は僕」で練習などしないか、あるいはそつなくさらさらと
描いてしまうかで面白くなさそう。
その意味で、最早祖存在しない人を相手にどう出るかが気になります。

424 :名無し草:04/05/03 16:09
>415
>「……」
これって清四郎ですよね?
彼は悠理狙いなのか、野梨子狙いなのか、激しく気になりまする。
美童と魅録のストレートさには笑ったけどw

425 :名無し草:04/05/03 16:19
静かなので、妄想してみました。
「もし6人がバラバラにGWを過ごしているとしたら…?」

悠理=とーちゃんと一緒に食い倒れグルメツアー!
野梨子=母さまの茶会の手伝い&嫌々ながら父さまの絵のモデル
(清洲さん、こっそり娘のデッサン集を作ってそうだ)
可憐=ひたすらエステ通い
魅録=3日間はバイクの改造。残り2日はダチとツーリング
美童=彼女に誘われてモンテカルロあたりでバカンスを楽しむ
清四郎=東村寺で合宿。夜はこっそり囲碁のネット対戦。野梨子へのリベンジを誓う。

あんまりパッとしたオチが見つからない…もっと面白い過ごし方はありませんか??


426 :名無し草:04/05/03 16:39
>424
え、可憐狙いでしょう?
父親に似たタイプ、と言ったって、可憐の親父さんは既に亡くなっていて、
おそらく清四郎は面識もないわけで。
結果、「……」かと。

427 :ホロ苦い青春編 魅×野 :04/05/04 02:27
>>217さんの続きです。>>225-226さんをはさみつつ。

「…に、やってんだよ」
抱き合っていた二人ははじかれたように離れた。
「野梨子おまえ──魅録と付き合ってるんじゃなかったのかよ。
 なんで清四郎と抱き合ってんだよ」
声の主は悠理だった。
足もとには驚いて落としたらしい紙袋が転がっている。
「どういうことなんだよ、これ」
頬を紅潮させて野梨子をにらみつける悠理の視線から守るかのように、
清四郎がさりげなく野梨子の前に立ちはだかった。

「誤解ですよ、悠理。野梨子が酔って気分がすぐれない様子でしたから
 介抱していただけです」
「介抱って──あたい見たぞ。抱き合ってたじゃないか!」
悠理は声を荒げる。
「一人では立っていられない状態でしたからね。こんな状態で帰す
 わけにもいきませんし、酔いが冷めるまで胸を貸していただけです」
「そ…そうなのか?」
悠理の調子が弱まる。
「もちろんですよ。野梨子、具合は?」
清四郎ほど冷静になれない野梨子はただこくんとうなずいた。
その充血しきった真っ赤な目と、緊張のせいで青ざめた表情を見て
悠理も心配になってきたらしい。

428 :ホロ苦い青春編 魅×野:04/05/04 02:28
「悪かったな、変なこと言って。大丈夫か?」
「大丈夫、ですわ」
野梨子は何とか微笑んでみせた。
「これ──母ちゃんの京都の友達が送ってきた珍しい和菓子なんだ。
 野梨子に届けたら喜ぶかなあって思って」
そう言いながら、悠理は地面に転がった紙袋を拾い上げた。
「落としちまってごめん」
「そんな……かまいませんわ」
野梨子は震える手をのばして紙袋を受け取った。
悠理に嘘をついてしまった──そのことが後ろめたかった。

どなたか続きお願いします〜。

429 :名無し草:04/05/04 10:19
>青空のように
連載おつかれさま。とてもさらさら読みやすくて
よいお話でした。
だけど、ひとつ忠告。前後のコメントをもう少し
ドライにした方がいいよ。過去ログを参照してね。
>ホロ苦
前回を書いたものです。
当たり前に魅録のつもりで、清VS魅のバトルが始まるのを
想定していましたが、まさかこんな展開になるとはw
これがリレー小説のおもしろさですね。

430 :名無し草:04/05/04 11:49
>ホロ苦青春
わわ、これは悠→清?それとも表向きは清×悠?
いい感じに他キャラが絡んで来ましたな・・・・。

431 :名無し草:04/05/04 13:08
リレーって一人一回一スレじゃなかったっけ?
展開が面白かったからいいとは思うけど…

432 :名無し草:04/05/04 13:46
一人一回一スレ……!

433 :名無し草:04/05/04 14:43
1人が何回参加してもいいけど1回のうpは1スレだったような・・・
でもその辺のルールって確立してたっけ?

434 :名無し草:04/05/04 15:08
427書いたものです。
たしかに以前のレスを見ると1人1レスが基本なんですね。
1レスに縮めるべきでした。すみません。

435 :名無し草:04/05/04 18:49
>>431-434
なんか“スレ"と“レス”が混同しちゃってると思うんですが、
要するに「1人1回につき、1レス」ってことですよね?
そのお約束には私も気がついていませんでした。
今後参加させていただくときのために覚えておきますね。

>>434
ドンマイ! 今回のお話、面白かったですよ!
魅録ではなく悠理にしたところでお話が広がった気がします。
さて、お次はどう展開してゆくのでしょう?
またまた続きが楽しみになりました。

436 :悠理と清四郎 焼きソバ編:04/05/04 18:53
「悠理と清四郎 焼きソバ編」うpします。

↓前回までの「悠理と清四郎」

http://houka5.com/yuukan/short/cpsei/s16-605.html


437 :悠理と清四郎 焼きソバ編(1):04/05/04 18:54
「うぃーっす。ん、なんかいい匂いがするな」

鞄を肩に登場した魅録は生徒会室の扉を開けるなり、鼻をひくつかせた。
「臭いの現況はあれですわよ、魅録。部屋中、ソース臭くてたまりませんわ」
生徒会室のテーブルの上でカップ焼きそばが3分間待ったの状態で温められている。
その向こうでご機嫌な悠理嬢が割り箸を手にお待ちかねであった。
「なんだよ、野梨子ー。文句言うとわけてやんないぞー」
「結構ですわ。私ちゃんとお昼はいただきましたから。それより悠理、もう3分経ったんじゃ
ありません?」
いそいそと悠理はカップを持ち上げ、湯を捨てに流しに向った。
「わっ、ちっちっち」
悲鳴を上げる悠理に野梨子はため息をつく。
「だから言いましたでしょ、悠理。調理台でお湯を入れればよかったんですわ。運ぶと
絶対お湯がこぼれますわよ」

悠理は返事もせずに焼きソバを流しに運び、ドンと置くと、水をざーざー流し指を冷やし始めた。
後ろから魅録が声をかける。
「悠理、焼きソバにかかってるぜ、水」
「うわっ、やばいっ、あちーーーーっ」
あわてて流しから焼きソバをどけようとした悠理の手に、まだ捨ててなかったカップの湯が再び
こぼれたらしい。
「お前なー……」
呆れた魅録がさっさと焼きソバを取り上げ、湯を切った。
ぼーっとしている悠理の手を取り、再び流水で冷やす。
悠理は自分の手首を魅録が握っていることにうろたえる。
「あ、ありがと。もういいよ」
「だめだめ。こういうのはきちんと冷やさないと痕になるんだぜ」
悠理の狼狽ぶりに気づかぬように魅録は彼女の手首を持ち水にさらし続けた。
野梨子が少し微笑んで見つめている。
赤くなった悠理は黙ってされるがままになっていた。


438 :悠理と清四郎 焼きソバ編(2):04/05/04 18:54
「もう大丈夫みたいだな」
ひんやりとした悠理の手を握って魅録は笑った。
笑顔の中の瞳が一瞬、悠理の瞳を覗き込む。
その視線を交わすように黙って悠理はテーブルの椅子に座った。
なぜか全力疾走した時のように胸がどきどきしている。
作りかけた焼きソバにソースやふりかけをかけ、魅録は「ほらよ」と悠理の前に置いた。
のろのろと悠理は礼を言った。
「さんきゅ」
「もうのびてしまったじゃありませんこと?」
野梨子の言葉がどこか遠くで聞こえた。
しかし、今の悠理はそれどころではない。

(……あたしの勘違い、だよな?)
恐る恐る顔を上げた。
自分の正面の席についた魅録と視線が合う。
一昨日までの魅録だったらニヤッと笑ってよこしただろう。
それを悠理は期待した。いつもの彼の表情を見て安心したかった。
だが、悠理の願いに反して今日は、ちょっと奇妙な視線が返ってくる。
じっと見つめてくる。
一瞬困ったように視線をそらす。
だがすぐにまた見つめてくる。

それは、それは、ひょっとして。
呆然とした悠理の脳裏に浮かぶのは昨日の出来事だった。


439 :悠理と清四郎 焼きソバ編(3):04/05/04 18:55
「でやー」
「や、やっと終わったー」
文化祭の後片付け。生徒会の展示に使った大きなパネルを、魅録と二人で屋上の倉庫に運んだ。
狭い階段をパネルを縦にしたり、横にしたり、1階から4階のその上の屋上まで何往復しただろう。
やっと最後のパネルを倉庫に片付けた時には体力に自信のある二人もヘトヘトだ。
屋上でへたり込む二人を大きなオレンジ色が包み込む。
「う、わー。すっげー夕焼けじゃん」
「おー」
辺り一面のオレンジ色の中に身を置く内、悠理はふと走り回る清四郎の姿を思い出す。
廊下ですれ違っても悠理に気づきもしない程、忙しげに走り回っていた清四郎。
これで高校生活最後の文化祭ということで、彼なりに悔いを残したくなかったのだろう。
悠理がだらだらと屋台で時間を潰していると、すぐに見つけ出し、お説教をされた。
(へん。がんばっちゃってさ)
でも、忙しく働いている清四郎を見るのは嫌じゃない。
彼の姿を思い浮かべると胸が暖かくなった。

そんな自分を魅録が唇を噛んで見つめていることに悠理は気づかない。
ただ自分の想い人だけに心を馳せている。それが特別な想いだと気づかぬままに。

「よっし。行こっか」
元気になった悠理が振り返ると、魅録とばちっと目が合った。
珍しいものでも見るような魅録の視線に悠理は少々気分を害した。
「何だよ」
「ん。いや」
魅録が何やら口で呟く。

「行こ」
口ごもる魅録の前を悠理がすりぬける。
彼女が発する汗の甘い匂いに、魅録ははっとした。



440 :悠理と清四郎 焼きソバ編(4):04/05/04 18:55
屋上の重い扉を引いて、校内に入ると二人肩を並べて階段を下りた。
疲れのためか自然足取りも重くなる。

魅録がため息をついて、首を傾けて鳴らすと、すっと悠理の手を握ってきた。
悠理はちらっと魅録を見たが、特に何も言わなかった。
仕事を共にやりとげたという思いが魅録に自分の手を取らせたと思ったのだろう。
彼女は何も意識していない。
そのまま数段手をつないで降りる。

彼が立ち止まったので、つられて悠理も階段の中ほどで立ち止まる。
魅録の方が1段下にいる。
立ち止まった彼は悠理と手をつないだまま、黙っている。

「あのさ」
「ん?」
何気なく悠理は薄いピンクがかった頭の方へ身を乗り出した。
魅録は軽く頭を傾けると悠理の唇に、ちゅっと優しく口づけた。
そして「よっし」と言い残すと鼻歌を歌いながら、たららららんと階段を降りていく。
階段の中腹には悠理が凍り付いていた。


441 :悠理と清四郎 焼きソバ編(5):04/05/04 18:56
(まさかなー。魅録があたしのことを……ってあるわけないじゃんか、そんなこと!)

だとしたら昨日のあの「ちゅっ」は何だったんだろう。
すっかり冷えてのびきったカップ焼きそばを食べながら、悠理は必死で考えている。
そんなこと、あるわけない。
でも、だとしたら、あの「ちゅっ」は。あの手は。
そして、今日の、この視線は……。

「悠理、ちょっとくれよ」
魅録の声にぐっと焼きソバを喉につまらせて悠理は派手にむせた。
むせながら、涙目で首を振る。
「まっ、まずい、まずいって!」
「いいよ、まずくたって。腹減ったんだよ。いいだろ、ちょっとくれたって」
「だっ、だめ……」
魅録はテーブルを回り込むと悠理が握って放さない割り箸を、悠理の手ごと握ると、
焼きソバをすくい、自分の口に運んだ。
勢い、悠理と魅録の顔は急接近する。
「ごっそさん」
ニヤッと魅録が笑ったところに、扉が開いた。

「あーら、何仲良く焼きソバ食べてるのよお」
「うわっ、ソース臭い!」
可憐や美童の後から清四郎も部屋に入ってきた。
途端に悠理の心臓は跳ね上がる。
魅録の手がまだ悠理の手を握っている。思わず悠理は魅録の手を振りほどいた。

「おや、いい匂いですね。悠理、僕にも一口くれませんか」
にこにこした清四郎の言葉に、魅録が手をぱたぱた振る。
「やめとけって。いま、一口もらったんだけどさ、のびきってまずいの、何の」
無理矢理食べたくせに魅録が調子のいいことを言った。


442 :名無し草:04/05/04 18:56
433です。
>435さんが書いてくださった通り、書き間違いしてますた。恥
1人1*スレ*使ったら大変なことになりますわなw

お約束はなんとな〜く始まったものかもしれないので確かではないです。
>434さんのリレーも改行大杉ではねられて仕方なくだったかも、と
思ったし。

443 :悠理と清四郎 焼きソバ編(6):04/05/04 18:56
すかさず可憐が突っ込む。
「やぁだ、そんなまずいの食べてるの、悠理」
「悠理には伸びてようが関係ないんだろ、食べられれば、ね」
美童がにやにや笑った。野梨子もくすくす笑っている。
突然、悠理の体がカッと熱くなった。
いたたまれなくなり、食べかけのカップ焼きソバを持って席を立つ。
「……ごちそうさま」
「いいんですのよ、悠理。私たちに遠慮せずお召し上がりくださいな」
野梨子の言葉にも構わず、流しに運び、焼きソバを捨てようとする。

その時、悠理の手からひょいと焼きソバが取り上げられた。
涼しい笑顔の清四郎が焼きソバを口に運ぶ。むずかしい顔をしてうなずいた。
「なるほど少々のびてますね。でも食べられますよ。悠理、食べないんだったら僕がもらいますよ」
彼の持つ割り箸の先がソースや青ノリで汚れていて、悠理は泣きたくなった。
「だめ……」
そっと清四郎がひっぱったカップ焼きソバに力なく悠理がくっついてきた。
そのまま焼きソバにぶらさがっている。
清四郎をのぞく四人は爆笑した。
一人だけ、清四郎は驚いたように悠理をのぞきこむ。
「どうしたんですか」
焼きソバの下の悠理は清四郎に何か訴えかけるような顔をしていた。
そして清四郎に何か言おうと口を開けた途端、悠理の歯についた緑色のものが清四郎の目についた。
「あ。悠理、歯に青ノリついてますよ」

可憐が後で悠理に語ったところによると、次の瞬間、文字通り清四郎は後ろにふっとんだそうである。
あの清四郎がぶっとばされるところなんて、中々見られるものではない。

「いやぁ、いいもの見せてもらったわぁ」
落ち込む悠理を前に可憐はにやりと笑った。

<おわり>


444 :名無し草:04/05/04 20:30
>悠理と清四郎
えっと、いつも楽しみにしているシリーズなのですが、
今回は何度読んでもオチがわかりません…
二人は公認の付き合いじゃなかったのでしょうか?
最後、なぜふっ飛んだのですか?
もしかして、話は…続く?


445 :悠理と清四郎 焼きソバ編(6):04/05/04 20:42
>444
すみません、私の脳内でクリスマス編より前の設定でした。
どこにも断りを入れず、申し訳ないです。
悠理と清四郎はまだつきあっていない設定です。
そして、ふっとんだのは、その、悠理が恥ずかしさのあまりポカンとやってしまったという……。
ああっっ、ごめんなさーい。解説がないとわからない話を書いてしまって、トホホホホ

つづきません……

446 :名無し草:04/05/04 20:50
>ホロ苦い青春編
前回の作家さんは魅録のつもりだったんですね。
どう転ぶか分からない、リレー小説らしくて興味深かったです。
って、実は自分が>220だったりw
「悠理という手もあるな」ぐらいしか考えずに220を書いたのに、
そこはかとなく悠→清風味な展開になり、話がさらに広がって
きたと思います。427さんGJ!

>お約束
実は http://houka5.com/yuukan/long/l-06-1-1.html#262
1人1レスずつを提案したのも自分です。
でも、「気軽に参加できる」を考えて1人1レスと書いただけで、
「1レスでないと絶対駄目」のつもりでは無かったです。
「筆が乗って1レスを越える」も、「1レスのつもりが改行エラーに
引っ掛かって2レスになる」も、今となってはOKでいいのでは?

>悠理と清四郎
このシリーズの悠理、可愛くて好きです。
まさか魅録が絡んでくるとは思わなかったのでビックリ。
今後、魅録と悠理の関係がどうなっていくのか、清四郎と悠理は?
などなど気になることだらけです。
魅録の代わりに吹っ飛ばされたようにも見える清四郎が、ちょっと
気の毒だったりw 
続かないとのことですが、個人的には続きを熱烈きぼんです。

447 :名無し草:04/05/04 20:58
444です。作者さま、レスありがとうございました。
疑問が氷解いたしました(まさか魅録がぶっ飛ばした?とか勘繰ってみました)。
落書き→悠理と清四郎→コレ→クリスマス→ホワイトデー
って感じの時間軸でしょうか。だとすると、すごく納得ですw
また二人のお話書いて下さいね〜

448 :名無し草:04/05/04 21:19
>悠理と清四郎
私もこのシリーズ大好きですー。
>>436から前のお話も再読してきましたが好きだー好きだー。
意地悪な清四郎もいいし、恋する悠理がホント可愛い。
今回はどんどんパニックに陥る悠理のあたふたぶりに可愛さを感じました。
清四郎はぶっ飛んだだけじゃなくヤキソバも被ったんじゃないだろうか。笑えますな。

449 :名無し草:04/05/04 22:07
>448
>ヤキソバも被ったんじゃないだろうか。笑えますな。

あはは!それはホントに笑えるw
各作者さんの書くお話、それだけでも充分楽しめるけれど、
みんなの書いてくれる感想でも更に笑えたり妄想が膨らんだりで
本当にこのスレに通うのが楽しいです。

>ホロ苦
今回の話、悠理が実は清四郎を・・・!という設定か、
実は魅録が好きなんだけど必死に自分の気持ちを抑えて二人を応援していた悠理
・・という設定のどちらでも読めるな・・なんて楽しみながら読ませていただきましたw

>悠理と清四郎
まさかこのシリーズに魅録がからんでくるとは!
しかもこれクリスマス前なんですね。
その後のお話の中では語られていなかったその時の魅録が気になります。

450 :名無し草:04/05/04 22:25
>実は魅録が好きなんだけど必死に自分の気持ちを抑えて二人を応援していた悠理

あ、そうか。こっちにもできるね。
話が膨らんでいきそうで楽しみ。

>各作者さんの書くお話、それだけでも充分楽しめるけれど、
>みんなの書いてくれる感想でも更に笑えたり妄想が膨らんだり

禿同です。
一人で読んでるよりも、何倍も楽しめるのが嬉しい。

451 :名無し草:04/05/04 23:39
>447
おかげさまで私も疑問が氷解しました。
時間軸、「悠理と清四郎」が「落書き編」より後なんですね。
このシリーズは私もほんとに好きで、楽しみに読ませてもらっているのですが、
先の作品を後に持ってくる頭がなくって……ちょっと設定が変わったのかな?
なんて考えてました。アホです。
しかしこれで納得。ありがとうございました。
そういう視点で考えると、焼きソバ編は落書き編より前でもいいのかもな、と
思ったりします。

> ただ自分の想い人だけに心を馳せている。それが特別な想いだと気づかぬままに。

の焼きソバ編と違って、落書き編では名前を書くという具体的行動に出ていますよね。

歯についた青のりを指摘されて清四郎をぶっ飛ばす悠理…可愛いです!
日常のひとコマの選び方と、それに伴う感情の動きの描き方が素敵だと思います。
ストーリーが進むだけでなく、間を埋めるばあいもある、となると、
シリーズ各作品の前後がとても気になります。
作者さん、またの作品をお待ちしてます。

452 :名無し草:04/05/04 23:57
>451
あ、そっか。気付いてないんだったら、コレが最初か…。
そう考えれば清四郎の言動もすんなり受け入れられますな。
そもそも、「悠理と清四郎」の後に相合い傘のエピソードを読んで、
ちょっとだけ頭が「?」でした。キスしてたぢゃん!?って。
と、作者さんのいないところで勝手に納得。

453 :名無し草:04/05/05 00:49
>焼きソバ編
>彼の持つ割り箸の先がソースや青ノリで汚れていて、悠理は泣きたくなった。

こういう、「青ノリ付き割り箸」のような、細かいけれども存在の大きい小物や
状況への着眼・表現が好きです。

発表済の作品だけを見た場合で、作者さんの真意は別なのかもしれませんが、
焼きソバ→落書き→悠理と清四郎については 私も勝手に納得。
話順を入れ替える発想がなかったので、目からウロコですっきりしました。

454 :名無し草:04/05/05 01:23
んーー、“焼きそば”が最初だとは思うけど、“落書き”と“悠理と清四郎”の
順序の方は読めば読むほど難しくなってきました。
「耳をつんざくような雄叫び」をあげていた悠理が、何事もなかった
かのように清四郎に作品ノートを見せに来るだろうか?という疑問が…。
どちらかと言うなら、“悠理と清四郎”より“落書き”を後に置いた方が
自然かもしれません。

シリーズ全体として好きな作品であり、個々の作品もそれぞれに好きなので、
順番がなくとも十分に楽しいのですが、こうなると気になりますね。
次回作でわかってきたりするかしら。期待しています。

455 :宇宙からのR指令:04/05/05 02:23
短編をうPさせてください。
全篇通して、R指定とさせていただきますので、
未成年者、苦手な方はスルーの方向でお願いします。

456 :宇宙からのR指令<1>:04/05/05 02:24
ある夏の夜のこと。

菊正宗清四郎(18)は中々寝付けず、遅くまで机に向っていた。
突然、うぃーーんという音と共に窓の外が明るくなり、清四郎は驚いた。
「こ、これは一体?」
窓を開けると、そこにはLサイズのピザ程度の大きさをした赤銅色の円盤が静かに浮かんでいる。
清四郎がそっと手を伸ばしても円盤はぴくりとも動かない。
思い切って円盤を掴むと、驚いたことに薄いその物体はすんなり清四郎の手に収まった。
驚きつつも、清四郎は期待に震え、円盤を引き寄せ、ためつすがめつ観察する。
その内に、ふいに円盤が貝のようにぱっくりと口を開けた。
あっという間もなく中から伸びてきた数十本の触手に清四郎は捕らえられた。
目映い光が彼の体を包んだ。


457 :宇宙からのR指令<2>:04/05/05 02:25
黄桜可憐(18)は自室の天井を見ながら、今、自分の身に何が起こっているかを
把握できないでいた。
日曜日、部屋で寛いでいると突然、友人・菊正宗清四郎が訪れたので、取り合えず自室に通したのだが。
彼はなぜか今、自分の上に乗っている。

「せ、清四郎? ナニシテンノ?」
「すみませんね、可憐。こんなことをして。でも、僕にはあなたの体を調べるという大事な使命があるんです」
「……なに? 何て言ったの? 私の体を調べる? はあ?」

ぴっと清四郎の長い指が機械仕掛けのように伸びてきて、驚きの余り、瞳を見開いている可憐の頬に触れた。
余りのその指の冷たさに可憐はぞくりとする。脅えて呟く。
「……イヤ。清四郎」
冷たい瞳をした清四郎は機械的に言葉を発した。
「ハダ。滑らかだが、やや乾燥気味」
可憐は呆気に取られている。清四郎の指がまた動く。
人差し指が可憐の唇を押すと、指は優しく押し戻された。
「クチビル。柔らかい」
呟くと、考え込むように首を傾げた。
「クチビルの……味は?」
清四郎はいきなり可憐の唇を舐めた。
「む……ん、んんっ、いやっ。ちょっと清四郎……」
可憐が顔を背けるのを無理矢理こちらに向かせる。
舌を可憐の口中に入れると、彼女の舌に絡め、くまなく調査する。
唾液を引いたまま、やっと唇を離すと再び機械的に呟く。
「無味。若干、化粧品の味がする」



458 :宇宙からのR指令<3>:04/05/05 02:26
肩で息をする可憐の耳をつまんで引っ張る。
「ミミ。やや大きく薄い」
舐める。可憐が「あんっ」と叫んだ。
「無味」
思いなおして、ちろちろと耳たぶから耳穴を舌で舐める。
彼女の体が波打つのを確認する。
「感度良好」

可憐はやっとのことで身体を起こしたが、清四郎がこう呟くのを信じられない気持ちで聞き
思い切り後ずさった。
「次、カラダ」
後退していく可憐に無表情に呼びかける。
「怖がらないでください。調べるだけだから。服の上からでもいい」
じりじりと近づいてくる清四郎に可憐は瞳に涙を浮かべ、首を振る。
「いやっ、いやぁ」
だが、抗議の声も虚しく壁際まで追い詰められた。
無表情に清四郎が発声する。
「ム・ネ」
両手がまっすぐに伸びてきた。
ぽかんと見つめる可憐の視線の下を潜り、彼女の豊かなバストに触れる。
「清四郎……」
可憐は八の字に伸ばした両腕を背中と共に壁につけると、じっと清四郎の検査に耐えようとしていた。
が、見る見る内に彼女の顔には血が上り、瞳は熱く潤んでくる。



459 :宇宙からのR指令<4>:04/05/05 02:27
清四郎は一体どうしてしまったというのか。
まるで何かに体を乗っ取られたとしか言いようがない、彼の豹変ぶりに可憐はただただ脅えるばかりだ。
清四郎はまだ可憐の胸に手を置いている。指を広げて、形を確かめているようだ。
「量感豊か。張りがある」
Tシャツの上からそっと撫で回す。
(あっ……)
敏感なところを刺激され、可憐の身体が熱くなる。息が乱れてきた。
そんな彼女の様子を清四郎は窺っている。
「苦しいですか」
「うん……」
それを聞くと清四郎の瞳が光った。

「弱点は胸にある模様。もっと調査してみます。可憐。立って後ろを向いてください」
しぶしぶ可憐は立ち上がると、不安そうな顔で清四郎に背中を向けた。
「清四郎!もう!ほんとに……きゃぁっ」
Tシャツの下から侵入してきたひんやりとした手がブラジャーの中にまで入り込んできた。
そのままブラジャーをずり上げる。
「ちょっとぉ、もう、いやぁ。服の上からって言ったじゃなぁい……」
半泣きの可憐に構わず、清四郎は可憐の胸を力強く揉みしだきながら言った。
「ムネは柔らかく、温かい。先端にボタンのようなものがついている。押してみる」
突起を指で押し込んだ。あう、と、可憐がうなる。
「押すものではないのか。引っぱってみる」
可憐がはぁんとあえいだ。
「……違うな。ひねってみる」
清四郎が突起を人差し指と親指でつまみ、転がした。
身をよじらせ可憐が甘い声で抗議する。
「あ、あ……ん。いや……、やめてよ、せいしろう……」
清四郎は眼光鋭く問いただす。
「乳を出すボタンか?乳は出るのか?」
「乳? 出るわけない……あ、あー」


460 :宇宙からのR指令<5>:04/05/05 02:28
清四郎は素早く可憐の前に回り、突起いや乳首に吸い付くと、空いている方の乳首を
激しく指で転がしたので、可憐は小さく悲鳴を上げる。
乳首から口を離すと清四郎は呟いた。
「甘い」
彼はしばらく可憐の胸を弄んでいたが、やがて興味の対象を別に移した。
「次、シリ」
執拗な愛撫に半ば陶酔していた可憐がぎょっとして叫んだ。
「しり、ってお尻!? い、いやっ。いやよっ。下はやめてっ」

清四郎は可憐の懇願も聞かず、彼女のスカートを剥ぎ取った。
続いて腰回りの小さな薄い布地も取ろうとする。
可憐は必死で抑えたが、奮戦かなわず白い尻が徐々に見えてきた。
「ああ……。いやよ、清四郎……」
ついに布を取り去ると、清四郎は勝ち誇ったように呟いた。
「シリ。白い。大きく丸みを帯びていて、中央に裂け目がある」
そして裂け目に手をかけたので可憐が真っ赤になって怒鳴った。
「いやっ!!やめて、変態!馬鹿!すけべ!そんなとこ見たら死んでやるー!」
「ここを見られると死ぬらしいです。試してみましょう」
ぐっと裂け目を開いてその奥に目をこらす。
可憐は両手で顔を覆うと絶叫した。
「いやーーーーーっ、やめてーーーっ、あーん、いやーん」
そんな彼女の様子には動じず、清四郎は冷たく言い放つ。
「死なないようです」
そしてその奥を調べようとして、自分の手が濡れたのに気づく。
「裂け目の前方から大量の分泌物が出ている」
「清四郎のばかぁ……。ひどいわ……、死んでやるぅ」
頭を抱えている可憐の耳元で清四郎は囁いた。
「なぜこんなに濡れているんですか?」
「知らないっ」
可憐の言葉に清四郎は頷くと呟いた。
「調べます」


461 :宇宙からのR指令<6>:04/05/05 02:31
清四郎は可憐の表情を伺いながら指をぬかるみにすべらせた。
「亀裂の中は熱い。熱を持っている。ぬるぬるしている。下にも唇のような襞が。ん?奥があるようだ。
指を入れてみる……浅い? いや、深いか」
清四郎は指をぐっと奥に差し込んだ。可憐の内壁がしめつけてくる。
もう一本指を入れてみる。中をさぐってみる。
可憐がびくりと身体を震わせ、大きく息をついた。
彼女に目をやりながら、清四郎はふと指についた分泌物を舐めてみた。
そして初めてにっこりと微笑む。
「うまい」
「……えっ?」

清四郎はいきなり分泌物の源へ口をつけた。
「うまい、これは何ですか」
舌を使ってなめつくそうとする。唇様のものへ口をつけ、吸い、舌を這わせた。
激しい刺激に可憐は身をよじらせて悲鳴を上げる。
取り付かれた清四郎は口の周りをべっとりと濡らしたまま、ギラギラした瞳で可憐を問いただす。
「どうやったらコレをもっと作れるんですか」
可憐が答えられる状態ではないので、胸の突起をつねった。下のぬかるみへ手を施し、刺激してみる。
そして再び増えてきた分泌物を清四郎は可憐の秘部に口をつけて嬉々としてなめとる。
「あ……あっ、あ……もうぉ、だぁめぇ……う…んっ」
瞳をとろんとさせた可憐が足をぐっと閉じてきたので、力を入れて広げさせる。
そのままぬかるみを舐めていると、突然可憐が悲鳴を上げ、体を痙攣させた。
彼女の身体から力が抜けぐにゃりとすると同時に大量の分泌物が生成され、清四郎は驚いた。
「なるほど、こうやればこのうまいものが生産されるんですね」

絶頂を迎えた後の気だるさに脱力している可憐に清四郎は微笑みながら囁いた。
「あなたはすばらしい。これからもっと働いてもらいますよ、可憐」
「え、どうゆうこと……って、あっ、あー、清四郎、ああーっん」
その日、可憐の部屋からは何度も熱い叫びが聞こえてきた、らしい。

宇宙人に体を乗っ取られた清四郎の目的が何だったのかは、未だ謎に包まれている。
to be continue...?

462 :名無し草:04/05/05 12:21
>ほろにが
今までの描写を見てると悠→魅と感じられるけど
悠→清とするにはそのへんは「ただ魅録がいないとつまらないから」
ということになるのかな?
まぁなんにせよ、矛盾を解決して進んでいくのは大変ですが
みんなでつくっていくのはやっぱり楽しいですね。
5人が揃ったという感じで、こうなると美童もそろそろという感じですが
美童は彼のホロ苦いがあるし。と思うのですが
美童編は作者さまもう続きはないと言っていたので、どうにか
彼を絡められないかな?

463 :サヨナラの代わりに (56):04/05/05 17:12
>235の続きです

あの日以降、俺と野梨子はすれ違いの日々を送っていた。
もともと俺の仕事は不規則極まりないものだし、野梨子の方も茶会を控えているとやらで
忙しい日が続いているらしい。
メールの遣り取りでなんとかお互いの都合を合わせようとしたが、休みがなかなか合わない。
俺は会うことすらままならないもどかしさに、野梨子に八つ当たりしそうになったことも
何度かあった。
こんな時、電話でなくて良かったと思う。
一旦口に出してしまえば取り返しがつかないが、メールだと打ってる間に気分が少し
落ち着いてきて書き直しが利く。
結局、当り障りのない内容に非番の予定を加えて送信した。
折り合いがつくことを願いながらも、心のどこかでは既に諦めてもいた。

464 :サヨナラの代わりに (57):04/05/05 17:13
真夜中近く、俺はようやく残業を終えて警視庁を後にした。
地下鉄の駅へ向かいながら携帯を取り出し、着信履歴とメールのチェックをする。
着信は、ほんの数件しかない。
ダチも俺が滅多に電話に出れないとわかっていて、寄越して来るのはメールがほとんどだ。
まあ、たいがいが遊びの誘いか『元気か?』といったようなものだ。
そんな中で、野梨子からだけのものは割と長めで、ちゃんとした手紙みたいなヤツだった。
なのに、今日のメールは極端に短い。
『今日、いつでも結構ですのでお電話ください。野梨子』
そっか、俺はここんところ声も聞いちゃいない。
迷うことなく、親指が野梨子の番号を探す。
出てきた、数えるほどしかかけたことのない番号。
そのままボタンを押そうとしたが、時間が時間だけに俺はためらってしまった。
さすがに、もう寝ているかもしれない。
けど、液晶画面の時刻は午後11時57分。
あと3分しかないが、それでもまだ『今日』のはずだ。
俺はためらいを振り切り、ボタンを押すことにした。

465 :サヨナラの代わりに (57):04/05/05 17:15
あと少しで、今日という日が終わる。
恐らく、電話は来ない。
ひどく声を聞きたいと思って、あんなメッセージを入れて今まで待っていたけれど、もう
諦めて休んだ方がいいのかもしれない。
私は、さして見てもいなかったテレビを消し、いつも通り戸締まりを確認しようとソファから
立ち上がった。
のろのろとまず玄関に行き、鍵とチェーンがかかっているか確認する。
お風呂の換気扇のスイッチを確認し、リビングに戻って窓の鍵を確認する。
大丈夫、問題ない。
それから部屋の電気のスイッチに手を伸ばそうとした時、テーブルに置きっぱなしになっていた
携帯電話が視界に入ってきた。
未練がましくほんの数秒目を留めてみるけど、振動するそぶりはない。
私はわざと音を立ててスイッチの傾きを逆にした。
途端に真っ暗になる。
急に気だるい気分に襲われつつ、寝室へ向かう。
ドアノブに手をかける。
不意に、僅かな光を捉えた気がした。
と同時に、振動音が聞こえる。
私が振り返ってテーブルを見ると、確かに携帯電話が小刻みに動いていた。
魅録からでありますように。
祈るような気持ちで携帯電話を手にし、開いてみた。
『松竹梅魅録』
私は迷わず通話ボタンを押し、耳元に電話を軽く押し当てる。
「野梨子、こんな遅くにごめん。今からでもいいか?」
久し振りに聞く魅録の声。
心もち低めで、しっかりしていて、とにかく私はこの声が聞きたかった。
「ええ、かけてくださってありがとう」

【続く】


466 :名無し草:04/05/05 20:26
>サヨナラ
うぅー。ついに佳境ですね!
いつかきっとの時から、この作品の野梨子が
大好きです。静かで、凛としていて。

そしてまたいい所で【続く】な作者さまイケズ〜(w

467 :名無し草:04/05/05 20:58
すみません、今間違いに気付きました。
>465は、サヨナラの代わりに(58)です。

468 :名無し草:04/05/05 21:05
>サヨナラ
おっ!待ってました。
楽しみなんだ〜毎回。
お早いお越しをお待ちしてます!

469 :名無し草:04/05/05 23:03
妄想同好会のカウンタがただいま199322です。
明後日には20万突破しそうですね。

470 :名無し草:04/05/06 00:11
>469
おお!もうすぐでつね。
祭りは盛り上がるでしょうか。
どんなお話が降臨するのか、その時が来るのが楽しみ。


471 :名無し草:04/05/06 00:48
>469
連休中に出かけていた人が帰って来て見に行ったり、
もうすぐ20万かなソワソワという人(それは私w)が
しょっちゅう見に行ったりするだろうから、
ラストスパートかかりそうな予感。
楽しみ〜

472 :名無し草:04/05/06 01:45
>469
今日中に祭り始まるかな?
明日の今頃を楽しみに、オヤスミ〜


473 :名無し草:04/05/06 02:37
20万HITの概要はあちらで説明されてるよね。
「色」を題材に誰でも参加していいなら、新しい作者さんも出てくるかなーと楽しみだ。

474 :名無し草:04/05/06 07:48
20万HIT目前!嬉しい!!
が、話書き終わってない漏れ!大丈夫か!間に合うのか!?(W
お祭りの前日はドキドキワクワクだーーっ。

475 :名無し草:04/05/06 12:39
>474
競作に参加されるんですね! 楽しみに待ってまーす。
といいつつ私もまだ書き終わってません。大丈夫か!間に合うのか!?w
明日(7日)からということは13日までですね。>20万ヒット祭

476 :名無し草:04/05/06 14:34
>474-475
競作参加されるんですね!盛り上がりそうで楽しみです。
私も早く書き上げねば。大丈夫か!間に合うのか!?w
ドキドキのお祭りですね。

477 :名無し草:04/05/06 16:43
なんだよ、皆準備万端じゃないかw
今回の競作は豊作と見込んでもよさそうね。
楽しみに待ってまつ>作家タン

478 :名無し草:04/05/06 18:26
準備万端が準備万作に見えた・・・

479 :名無し草:04/05/06 19:02
準備万作競作豊作・・・

480 :名無し草:04/05/06 19:35
全ての競作に豊作さん出演の図を思い浮かべちゃったよ

481 :名無し草:04/05/06 19:47
じゃあ、次回の競作のお題は「豊作」ってことで



482 :名無し草:04/05/06 19:55
今199747だから、あと250強。1:00か2:00頃に到達?ワクワク

>481
前回のウソ競作・ピーターみたいにやったりしてw

483 :名無し草:04/05/06 20:00
>475
><例>5月5日に到達した場合、13日の0:00まで(12日から13日に
>日付が変わるまで)

>334にこうあるから、今夜中に到達したら14日0:00までで、
明日なら15日0:00までだと思うよ。

484 :名無し草:04/05/06 22:35
お!カウンタが199910!
眠れない…

485 :名無し草:04/05/06 22:38
>484
日付けが変わる前にいきそうだね。
思ったより早いや。ラストスパートが、かかったかな。

486 :名無し草:04/05/06 22:41
行くのかなぁ、どうなのかなぁ。
作者様方はもう創作終えられたんですかね。
自分も挑戦してみたらあえなく撃沈。創作の道は厳しいな。その分皆さんを応援してます。

487 :名無し草:04/05/06 22:51
今見たら199932だった。あっという間かもね。

488 :名無し草:04/05/06 23:23
ついに20万ヒーット!!
祭り開催ですね!?

489 :名無し草:04/05/06 23:32
やった!早かったですね。
皆さんがどれだけ心待ちにしてたかがよくわかります。
どんなお話が読めるかワクワク。
ちなみに私も挑戦中ですが、けっこう難しい。
1週間以内にどうにかまとめるつもりで頑張ります…。

490 :名無し草:04/05/06 23:34
いよいよですね。さっそくですが、
競作参加作品をうpさせて頂きます。
8レスほど使います。

491 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(1):04/05/06 23:35
あれから数年後。


今の彼女にとって、時間の感覚は無いに等しいものだった。
ただ、仕事に没頭するだけの毎日。


-彼がいない。

たったそれだけで、彼女の生活は一変した。


(恋の始まりがあれば、終わりもやってくる)


いつだったか、彼がそんな言葉を
意味ありげに呟いていたのを思い出す。
しかし、彼女が経験した燃えるような恋は
そんなもので推し量れるほど簡単なものではなかった。

492 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(2):04/05/06 23:36
辺りが新緑で包まれた初夏のある日。
彼女は短めの休暇を取り、ある地方を訪れていた。

こうして高台から眺める風景は格別だった。
青い空に、青い海・・・都会で暮らす者達にとっては
最高の贅沢と言えるだろう。

数年ほど前まで、彼とよくここを訪れては
この空を・・・この海を眺めたものだった。



さまざまな出来事が頭の中を駆け巡る。
思えば、彼と最後に別れたのもこの場所だった。

いつの間にか、彼女の脳裏にあの日が蘇っていた。

493 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(3):04/05/06 23:37
あれは高校卒業間近の頃だった。
卒業旅行も兼ねて、この地方を訪れていた。

二人だけの旅行は久しぶりだった。
他愛のない話をしたり、
彼の溢れるばかりの雑学に聞き入ったり。
いつものような時間が過ぎていく筈だった。

しかし、彼等にとって夢のような時間は
一瞬にして崩壊した。

彼が突然ドイツに留学すると言い出したのだ。


「どうして言ってくれなかったの?私ってその程度の存在?」
「すみません。ずっと言い出せなかったんです。貴方だから
貴方だから言えなかった・・・」
「・・・・・」


彼女は涙を堪えて、目の前の彼を見た。
真剣な眼差しがこちらを見つめている。

494 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(4):04/05/06 23:39
(泣くな・・・)


彼女は自分自信にそう強く言い聞かせたが、
涙は一向に止まってくれそうもなかった。

「チャンスなんです。ドイツに行って、
自分自身をもっと高めたいんだ。
僕は今のままの自分に満足が出来ない。
今のままの僕では、10年後の僕も
10年後の貴方もきっと退屈する・・・」

彼女は思った。それなら自分はどうすればいいのだろう?
彼自身が留学を望んでいる。彼自身の夢のために。
数年後の自分達の未来のために。

しかし、彼女には耐えられる自信が無かった。
彼のいない毎日なんて、想像も出来なかったから。
答えは、思ったよりもすんなりと出てきた。

「分かったわ。だったら、こうしない?
あんたはドイツで夢を叶える。私はこっちで
ウチの店を二倍以上に大きくしてみせる。
そしたら、また会うってことで」
「・・・貴方はそれで、いいんですか?僕は・・・」

彼は少し哀しそうな表情で、口を開いたが
彼女の手がそれを止めた。

495 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(5):04/05/06 23:40
「ストップ。それ以上言わないで。一緒に
付いて行きたくなっちゃうじゃない」
「・・・・・」
「私はね、私だけのために生きるあんたを見ていたくないだけ。
「・・・・・」
「私はね・・・夢のために生きるあんたが好きなんだから」

彼女は涙を堪えながら、精一杯の強がりを言ってみせる。
しかし、後悔は無かった。自分の素直な気持ちを、
精一杯の想いを彼に伝えることが出来たから。

彼は、そんな彼女の言葉に暫く押し黙っていたが
ふとぽつりと呟いた。

「待っていてくれますか?どのくらい時間が掛かるか分からない。
3年後かもしれない、いや・・・5年後かもしれない。
それでも・・・待っていてくれますか?」
「待ってる。5年後でも、10年後でも・・・。
その代わり、挫けたりしたら絶対に許さないから」
「僕がそんな男に見えますか?」
「ふふ。そうだったわね」

ふと、笑みがこぼれる。
そんな彼女につられて、彼も笑った。

「愛してます」
「私もよ。愛してるわ」

幾度と無く囁き合った愛の言葉。
そのどんな言葉よりも、深く、重く感じられた。

最後のキスは、ほのかに潮風の香がした・・・。

496 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(6):04/05/06 23:41
程なく時間は現実に引き戻された。

彼との夢のような日々は、二度と戻らない。
目の前にあるのは今と、自らが切り開いていく未来だけ。

「さて、そろそろ戻るかな」

彼女は軽く伸びをしながらそう呟いた。

その時だった。
二本の大きな手が彼女の顔を覆い隠した。

「どちらに戻るのですかな?お嬢さん」

後から響いてくる、低く通る声。
忘れる筈が無い。間違える筈が無い。
ずっと待っていた貴方の声を。

「清四郎・・・」

思わず、自らの顔を覆い隠す大きな腕を
強く握りしめた。

「やっと日本に、貴方の元に
帰ってくることが出来ました」

清四郎と呼ばれた男は、そう言って
その風貌には似合わない程、
穏やかな笑みを浮かべて見せた。

497 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(6):04/05/06 23:43
「でも、どうしてここが分かったの?」
「僕が日本に帰った時、貴方と会う最初の場所は
ここしかないって思ったんです。きっと貴方も
ここで待っていてくれると確信していました」
「ふふ、凄い自信ね」
「貴方に関してはね」

そう言って笑い合う。 いつのまにか、彼女の頬を涙が伝っていた。

「もうっ。いったい何年待ったと思ってるのよ。私ってば
何人もの男からプロポーズされたんだから。
玉の輿だっていたんだからね。それでも
あんたには、あんたの存在には敵わなかった・・・」

彼女は涙の含んだ声でそう叫ぶと、
彼の深く大きな胸に飛び込んだ。
彼はそんな彼女の気持ちに答えるように
強く抱きしめた。愛しい存在を確かめるように。

「僕も貴方には敵いませんよ。僕が心に決めたのは
生涯、貴方ひとりだけです」
「清四郎・・・」
「可憐・・・愛しています。僕と、人生を共にしてくれませんか?」

そうして彼のポケットから取り出された小箱から、
キラリと光る誕生石が顔を出す。
その表情は真剣な眼差しで満ちていた。

「清四郎、愛してるわ。今も、そしてこれから先もずっと」

程なくして、ふたつの唇が重なり合った。
あの時と同じ、ほのかな潮風の香がした。

498 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(8):04/05/06 23:47
それからふたりは、会えなかった時間を
取り戻すかのように語り合った。
波の音が心地よく耳に響いている。

「経済誌、見ましたよ。頑張っているみたいですね。
"ジュエリーAKIの若き女社長、宝石業界を背負って立つ"」
「ふふ。そうじゃなきゃ、別れた意味がないもの。
そうそう、あんたの遺伝子研究も順調みたいね」
「ええ。本格的な夢の実現はまだまだですけどね」

思わず、笑みがこぼれた。自分のすぐ側に愛しい彼がいる。
それだけで、こんなにも世界が違うのだ。

「そうそう、あの悠理が結婚するって聞いた?」
「ええ。国際電話で。彼女のお相手からでしたけど。
まぁ、彼なら心配ないですよ。きっと。剣菱のおばさんとも
うまくやっていくでしょうね」

499 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>(9):04/05/06 23:48
「野梨子は、二人目が出来たって」
「この間、手紙を貰いましたよ。幸せそうでした」
「でもあいつが野梨子と結婚なんてね。今でも信じられないわ。
どーせ尻に敷かれてるんだろうけど」
可憐はそう言って笑った。ふと横の清四郎を見ると
前を向いて、ひとしきり何かを考え込んでいる。

「何考えてるの?」
「僕たちは・・・どうなんでしょうね?」
「そんなの決まってるわよ」

-この青い空と、青い海。
そして、あんたと私がいれば
幸せに決まってるじゃない。
-それはそうですね。

ふたりはそう呟き合いながら、目の前に広がる
どこまでも青い風景を見つめていた。

500 :20万hit競作・<Kiss in the Blue>:04/05/06 23:49
オワリです。8レスの予定ですが、9レスになってしまいました。
それと通し番号が一部重なってしまいました。
お見苦しくてすみません。それでは失礼します。

501 :名無し草:04/05/06 23:53
いよいよ祭りがスタートしましたね。
有閑倶楽部の面々がどんな色に染め上げられるのか楽しみです。
第1弾、Kiss in the blue さわやかなお話ありがとう!


502 :名無し草:04/05/06 23:58
20万ヒットおめでとうございます!
出遅れてしまったけど、>>334の期限のとこだけ書き直して、再告知しておきますね。



***  20万ヒット記念・競作祭り 〜短編&イラスト〜  ***

☆お題「色」に関係したもので、好きな内容の短編かイラストをウプしてください。

☆期限は14日の0:00までです(13日から14日に日付が変わるまで)

☆ウプの時は、名前欄に「20万hit競作・<作品のタイトル>」 と入れてください。

☆短編
・本スレへのウプを推奨、どうしても気が引ける…という人は「妄想同好会BBS」の
 「短編UP専用スレッド」へのウプも可です。
・10レス以下でお願いします。
・18禁の短編もOKですが、タイトル欄に「R」と明記してください。

☆イラスト
・18禁でないものは「妄想同好会 絵板」にウプしてください。
・18禁のイラストは次のいずれかをすれば、嵐さんがHPにウプしてくれるそうです。
 ア.嵐さん宛にメールして添付する。
 イ.どこかのウプローダーにウプして、嵐さんにURLを知らせる。
 ウ.自分のサイトに一時的にウプして、嵐さんにURLを知らせる。
・18禁の場合、「局部がかかれていない(見えない)物であり、出版物として商業市場
 (同人ではありません)に出せる程度の物」でお願いします。

=== 作家も自称作家も初心者もROMちゃんも・・・燃えてみませんか? ===

503 :名無し草:04/05/07 00:19
>Kiss in the blue
トップバッターお疲れさまです。
祭りの開始と同時のうp万歳!
最初にふさわしいブルーという色と、すっきりしたお話で
よかったです。

504 :名無し草:04/05/07 07:52
おお、寝ている間に20万ヒットしたのですね!
おめでとうございまーす!!
>Kiss in the blue
清×可の素敵なお話ですね。
突然の再会に胸がきゅんとなりました。
「青」い海を見つめる二人には明るい未来が待ってそうですね。
トップバッター乙です〜


505 :名無し草:04/05/07 13:51
20万ヒットおめでとうございます>嵐様、皆様

競作参加させていただきます。
清四郎×白鹿夫人で10レスいただきます。

506 :誰か知るらむ、天井の……(1):04/05/07 13:51
寝室の暗がりの中に誰かいる。
女は息を殺すと、震えながらそっと身を起こした。
夫と娘は共に欧州に旅立ち、明後日まで戻らないはずだ。
とすれば、夫婦の寝室に忍び入るものは怪しい者に他ならない。
恐怖に身を固くしながら震える手で枕元の灯りを探す。
手が細かく震えているため、何度もつかみそこなって、何回目かにやっと電灯のスイッチの
紐を掴んだ。
灯りをつければ、かえって人がいることを気づかせてしまうやもしれない。
だが、あるいは驚いて逃げ去ってくれるかもしれない。
そうであってほしかった。
女は額に大粒の汗をかき、息をこらえながら思い切って紐を引っ張った。

カチリとスイッチの音がして電灯が辺りを仄かに照らし出した。
灯りの中に男の影が浮かび上がる。
女は恐怖の余り、思わず擦れた悲鳴を上げた。
震えながら女はじっと人影に目を凝らす。
影は微動だにしなかったが、やがて声を発した。
「……すみません、おばさん」

その声を聞いた瞬間、女の体からふぅっと力が抜けた。
彼女のよく知っている人物の声だったからである。
「清四郎さんなの?」
人影が頷くのがわかった。
女は安堵のため息をついた。心臓がばくばく言っている。
こんなに恐ろしい思いをしたのは初めてだと、隣家の息子を恨めしく思った。
「清四郎さん、こんな夜更けにどうなさったの? 何かご用事ですか?」
微かに少年がため息をつく音が聞こえた。
少年は女の布団の足元に座っていたのだった。
いつ入ってきたのだろう、女は少年の背後にある襖に目をやった。
襖はぴたりと閉まっている。


507 :誰か知るらむ、天井の……(1):04/05/07 13:52
今夜はいつになく眠れなくて、ずっと天井を見上げたまま考え事をしていたのである。
その内に天井に大きなシミがあるのに気づいた。
一体いつできたものやら、毎日同じ場所に布団を敷いて寝ているのに、
気がついたのは今晩が初めてである。
今日ふいにできたシミだろうか、それとも長い日数をかけてここまで大きくなったのだろうか。
雨水が家のどこかに溜まってシミになって出てくるという話を聞いたことがある。
明日業者を呼んで見てもらわなくては。
そんなことをつらつらと考えていた。

シミは大きくてその輪郭はぼやけていた。丸といえば丸にも見えるし、四角といえば四角にも見える。
生き物のようだといえば、そうも見え、何だか薄気味悪く思えてくる。
ようやく眠気がやってきて枕灯を消した後も目の前にそのシミが見えるようだった。
あのシミは何色をしていただろうか。
黒だったと思うが、頭の中に浮かんでくるイメージは海老色と呼ばれる濃い紫である。
はたしてシミがそんな色をしているだろうか。
明日の朝になればわかることである。
「明日の朝になれば……」
そう思いながらも中々寝付けずにいた。

そういうわけで、うつらともしていなかったのに
いつのまにか隣家の息子が自分の布団の脇に座っていたのである。
女は薄気味悪くなってきた。
「驚かさないで清四郎さん。いくらよく知っているお家でもこんな夜更けに
勝手に家の中に入ってくるのは非常識ですよ」
ややきつく咎める。

清四郎は女の声がまるで耳に入っていないように、じっとしている。
そのうちに幼さの残る端整な顔を女に向けた。
乏しい光源の中、清四郎の顔には濃い影ができている。
女はふと、彼がそう幼くはないのだということに気がついて、落ち着かない気持ちになった。
彼はこの春休みが終われば、女の愛娘と揃って高校に進学する予定である。


508 :誰か知るらむ、天井の……(3):04/05/07 13:52
邪念を払おうと大きく息をついた。
隣の息子のことは彼が歩き初めの頃からよく知っている。
おむつこそ替えたことは無いものの、野梨子の兄弟のように、身内同然に接してきたつもりである。
だからこそ、その彼が家宅侵入という大それたことをしでかしても、大声を上げて人を呼んだりしない。
その彼に―――警戒など。
する方がおかしいのだと、女は思った。

だが、彼が女に向っておもむろに膝を進めた時、
思わず女は後に退こうとして後ろに手をついた。
その拍子に、枕灯に手が当たり横様に倒す。
少年の顔がふいと見えなくなった。

暗闇の中、少年の吐息が微かに聞こえる。

「おばさん」
灯りが畳についた少年の手を照らし出していた。その上の方から少年の声は聞こえる。
おばさん、と言った後、少し躊躇ってから清四郎は言葉を継いだ。
「僕、おばさんに謝らなければいけないことがあるんです」
ごく、と唾を飲み込む音を懸命に堪えて、女は問う。
「何かしら。清四郎さんが私に謝ることって」
清四郎はため息をついたようだった。
「怒りませんか」
無断で他人の寝屋に侵入しておきながら、怒られることを気にしているらしい。
女は困って、困りながら枕元のカーデガンを探すと肩に羽織る。
夜気に身体がすっかり冷え切っている。
「そりゃ、ことによっては怒りますけど、そんなに端から怒るつもりはありませんよ。
なんですの、清四郎さん。おっしゃってちょうだい」


509 :誰か知るらむ、天井の……(4):04/05/07 13:53
清四郎はしばらく思案しているようだったが、やがて話し出した。
「去年の夏、こちらで勉強していたんです。野梨子と一緒に、和室の大きな座卓を使って。
宿題を一週間で全部片付けてしまうつもりでした」
「ええ、覚えてますわ。野梨子はあの頃、悠理ちゃんや可憐ちゃんともまだ仲良しでは
なくて、清四郎ちゃんにべったりで」
話しているせいで少し緊張が解けたのか、女は枕灯を直す。
再び清四郎の顔がぼんやりと見えた。
「夕方になっておばさんがお帰りになったんです。ひどく暑い日だったのに、おばさんは
着物でした。桔梗の柄の、藤色の」
女は少年の言葉にじっと耳を傾ける。
「おばさんは野梨子に向って汗をかいたのでシャワーを浴びてくる、と言いました。
それからしばらくして僕は小用で席を立ちました」
思い当たることがあって、女の顔が見る見る赤らんだ。
「僕、陰から見たんです、おばさんが風呂に入るところを」

清四郎と目が合う。女は身を固くした。
「おばさんは着物を脱いだ。紐を手早くほどいて、襦袢だけになった。
それから上にあげていた髪を下ろして、それから襦袢も脱いで……」

突然彼は口をつぐんだ。
薄暗い灯りの中、見えたわけではないが、顔を赤らめて恥じているようだ。
女の方はただ困惑していた。
身内同然の少年に若くもない身体を見られても別にどうということは
ないのだが、一体少年が何を考えているのかが掴めない。
まさか大それたことは考えていないとよいが。


510 :誰か知るらむ、天井の……(5):04/05/07 13:54
口の中がからからに乾いている女は、清四郎がそっと自分の手に触れたのを感じた。
自分の娘と同じ年の少年に何を恐れることがあろうかと思うが
硬直した身体は清四郎に手をとられたまま、ふりほどくこともできない。
ふいに清四郎が大きな吐息をついた。
そして振り絞るような声で女に告げる。

「おばさん、僕、おばさんが好きです」

女は唖然とした。
普段知っている清四郎は中学生に似合わず、落ち着いた声でしっかりと自分の意見をのべる
少年だった。利発で、且つ優しく、よくもまあたかだか十五年やそこら生きた位で、こんなにも
大人びた雰囲気を身につけるものだと女は思ったものである。

その彼が今、自分の手にそっと触れながら、がたがたと身を震わせて
今にも消え入りそうな声で自分を好いていると告白している。
女は驚いたとか思いがけず嬉しいとは全く思わずに、ただ困ったことになったと内心嘆息した。

よくあることだ。
少年期のもやもやしたものを一番身近にいる相手にぶつけたくなる。
それを恋と彼らは言うのだろう。
だが理性の上で成り立ったのではない感情を、ただの激情とでも言うべきものを
ぶつけられたとて、こちらは迷惑なだけだ。


511 :誰か知るらむ、天井の……(6):04/05/07 13:54
女の心はすうと落ち着いてきた。
落ち着いてくると、気をしっかり持って、この隣家の息子を優しく諭し
反省させて帰らせてやろうという気になってきた。
余裕を持った笑みを浮かべると女は清四郎の目を見た。
「まぁ、ありがとう、清四郎さん。思いがけずそんなお話、とても嬉しいですわ。
ですけどね、あなたのしたことはとても笑えることではありませんよ。
わかるでしょう、清四郎さん位の良いおつむをお持ちだったら?」
「……はい」
うなだれた少年に畳み掛けるように女は責める。
「今夜のことは誰にもないしょにしておきます。あなたのお母様にも、もちろん野梨子にも。
ですから早くお帰りなさい」
返事は無い。
女は焦れて少年を急かす。
「清四郎さん。聞いていらっしゃるの?」
喉を震わす声がする。
女は驚いた。
「どうなさったの? 清四郎さん、泣いてらっしゃるの」
あわてて清四郎は手のひらでぐいと顔を擦り、鼻を啜った。

「すみません、何でも……ただ」
ただ、と言葉を切って、清四郎は大きく呼吸した。

「ただ、これで終わったんだなと思うとつい胸が詰まって。すみません。
ここ何ヶ月かずっと貴女のことばかり考えていて、いつ貴女に告白しようか、そればかり
考えていたんです。本当に貴女のことばかり考えていたんです……」
少年の素直な心情の吐露に女は胸を突かれる。
思いがけず心が動いたことに女は驚いた。
しばらく少年は黙ると、ぽつりと言った。
「おばさん、僕は馬鹿なことをしました。怒ってらっしゃるでしょう、すみません」


512 :誰か知るらむ、天井の……(7):04/05/07 13:55
女は困って膝を進めた。
「……清四郎さん、そんなにご自分を責めないで。よくあることですわ。
あなたはまだお若いんですもの」
清四郎は残り涙をすすりながら笑った。
「よくあることですか……そうなんだ。こんなに胸が痛くて辛いのも、貴女を想って
眠れないことも、自分にしてみれば一大事でした。世間ではよくあることなのですね。
それは……知らなかったな」

また自嘲気味に笑う。少年のそんな仕草は女にはただただ可愛らしく、思わず目を細める。
少年は頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。ご迷惑をおかけしました。今後二度とこんなことは致しません。
しばらくこちらに来ることも控えます。どうかお許しください」
潔い少年の態度に女はほっとすると共になぜか淋しさを感じる。
女は首を振った。
「いいのよ、清四郎さん。お気になさらないで。もうなさらないと誓ってくれるのなら
それでいいのよ。今まで通りに野梨子とも仲良くなさって、ね?」

小さくうなずくと清四郎は立ち上がる。ふとこんなことを言った。
「おばさんが丹精なさっている朝顔、今年ももう開く頃でしょうね。野梨子から毎年話は
聞くんだけれど、僕は一度もきちんと咲いているところを見たことがないんです」
思いを断ち切るように笑った。
「いつか見せてくださいね」

はにかんだような少年の笑顔が女の胸に焼きついた。
女はよい返事ができないでいた。
彼の言葉に返答する代わりにこんなことを言った。


513 :誰か知るらむ、天井の……(8):04/05/07 13:55
「清四郎さん、ちょっと天井を見てくださらない。なんだか変なシミがあるのよ」
行きかけていた清四郎は足を止めると天井を見上げた。
薄暗い中、天井がぼんやりと見える。
シミがある辺りに清四郎は目をやったが、よく見えないと言った。
そう、と女は答えたが言葉が足りないような気がして慌てて言葉を継いだ。

「なんだかね変な色をしているのよ、そのシミ。海老色のような。そんな色であるはずが
ないと思うんだけど、気になったら眠れなくなってしまって。……ごめんなさいね、
お引留めしてしまって。いいのよ、朝になればわかることだから」
「朝になれば……」
清四郎は口の中で呟いた。

女は自分の横顔に火の様に熱い視線が注がれているのを感じながら呟いた。
「そう、朝になればわかる……ありがとう。もう、お帰りになって」
女は清四郎の顔を見られないでいた。

「朝になれば……」
少年はもう一度呟いた。




514 :誰か知るらむ、天井の……(9):04/05/07 13:56
彼と娘が二人寄り添うように我が家の庭を歩くのをぼんやりと眺めながら
女はもう十年も昔のことを思い出していた。
あんな昔のことを気に留めている私はどこかおかしいのだろうか。
清四郎はあの日のことをまるで忘れてしまったかのように、わが娘と屈託なく笑い合っている。
今は娘の婚約者である。

女は吐息をついた。
あの日から続くやるせない思いは女をひどく緩慢にし、憂いを帯びさせた。
十年前の夜にきっとそれは少年からうつされたのだと、彼女は悔しく思う。

野梨子がこちらに寄ってきた。
「清四郎が朝顔はどうしたんですか、ですって。お母様、そういえばいつの間にか朝顔を
お植えにならなくなりましたわよね」
「ええ、何だか思うように咲かないのが嫌になってしまって」
娘はやはり近づいてきた彼に向って肩を竦める。
お茶、入れますわね、と娘が母屋に入ってしまうと、彼と二人きりになった。

「微かな朝の気配に、紫紺の朝顔が次々に花ほころばせていくのをあの日初めて見ました」
沈黙の後、清四郎が耳元で囁くのを聞き、女は身を震わせた。
彼は続けて囁く。
「もう朝顔は植えないのですか」
清四郎の瞳を一瞬見つめると、女は草履を履いて歩き出した。
彼が追ってくる気配がした。
と、思うと、ふいに自分の手の中に何かが押し込まれるのを女は感じた。

振り向くと清四郎は野梨子を追って母屋に上がって行くところであった。
胸を動悸させながらわが手を見ると、そこにあったのは古びた一本の紐だった。


515 :誰か知るらむ、天井の……(10):04/05/07 13:57
じっと見つめていると野梨子がお茶の入ったお盆を手に現れる。
「あら、清四郎は、お母様? どうなさったの、そんなもの持ってぼんやりなさって」
女は黙って手のひらの中のものを見つめている。
「お母様?」

女はふっと娘に笑みを漏らした。
「寝巻きの下帯がどこへ行ったのかと思ったら、こんなところにあったのよ。
本当にどうしたのかしら、こんなところにあるなんて」
くるりと踵を返し、自室へと引き戻った。

天井を仰ぎ見ると、今は微かに擦れたようなシミがあった。
あの夜が明けてから、明るいところで見たシミは何のへんてつもないただの薄茶色をしていた。
特別どうというのではない、ただのシミだった。
女はあれからシミを毎日見上げたが、再び海老色に見えることはなかった。
なぜあの日だけ、あの夜だけ、あんな色に見えたのだろう。
女は毎晩シミの下に寝ながら考えたものだ。

「来年は朝顔を植えてみようかしら」
ふと呟く。
「朝顔を植えたら、あの人なんて言うかしら」

女は苦笑し、やがて淋しげに首を振った。





516 :誰か知るらむ、天井の……:04/05/07 13:58
すみません、レス番失敗しました。507は(2)です。

517 :誰か知るらむ、天井の……:04/05/07 13:59
ご、ごめんなさい、「20万ヒット競作」ってタイトルに入れるの忘れた・・・
もうダメポ・・・

518 :名無し草:04/05/07 14:44
おおっ、早くも2作目がっ!
今回の競作は沢山の作品がウプされそうで、楽しみです。

>誰か知るらむ、天井の……
出だしといい、意味あり気なタイトルといい、ホラー話なのかと
ドキドキしながら読みました。カップリングにもビックリです。
最初は清四郎→白鹿夫人だったのに、いつの間にか逆転
したかのような雰囲気になっているのが、趣深くていいですね。
>513の後、もしかしてこの二人は・・・?
罪作りな香具師だな、清四郎w

>516-517
分かったから大丈夫ですよー

519 :名無し草:04/05/07 15:08
うおぉ〜〜〜
異色の組み合わせ!競作ならではって感じ
有閑版源氏物語 菊正宗光源氏
美しい情景が目に浮かびます。
(R)付けなくていいの?とドキドキしながら読み進めましたが、
大人のしっとりした世界に引き込まれました
それにしても、清四郎・・・
他の母親にも手を出しそうだなぁ〜〜w

520 :名無し草:04/05/07 17:44
>誰か知るらむ、天井の…
うわぁ〜〜めちゃくちゃ好きです!
野梨子のママ、綺麗ですものね。
憂いを帯びた彼女が目に浮かびます。

521 :名無し草:04/05/07 20:59
やったぁ〜、早々に2作目。
少し前に清四郎×野梨子ママネタで盛り上がったけど、まさか本当に読めるとわ!!
興奮して、すでに脳内で勝手に第二部昼ドラ編開始。ドロドロ…。
作者さまごめんなさい。


522 :名無し草:04/05/07 23:26
こんばんは。これから競作をうpさせて頂きます。
8レス程お邪魔致します。

523 :20万hit競作・<Marrige Blue>(1):04/05/07 23:26
初夏吉日。空は雲一つ無い青空が広がっていた。
一台のバイクが海岸沿いの道路を勢い良く走っている。

魅録は紅い姿のそれを、まるで自分の手足のように操る。
その姿は、あの頃と何ら変わっていない。

「いやっほう。バイクに乗るのなんて久しぶりだぁ」
「やっぱ速度制限無しってのは爽快だぜ。普段はそうもいかないからな」
「お前・・・仕事でもバイクに乗ってんだもんなぁ」

背中越しに悠理の声が聞こえてくる。
こうして二人で出掛けるのも何ヶ月ぶりだろうか?
魅録は背中にぴったりと張り付いている彼女と
いつもの他愛ない会話を交わしながら、そう思っていた。

魅録の脳裏には、これまでの
さまざまな出来事が蘇っていた。

あれから悠理は聖プレジデント大学を卒業後、
兄である、剣菱豊作の秘書として働いている。
彼女なりに自らが生まれ育った家のことを考えた結果だ。

一方魅録は同じく聖プレジデント大学を卒業後
警視庁の採用試験に一発合格。当初からの希望だった
交通課に配属され、白バイ隊として任務に就いている。

524 :20万hit競作・<Marrige Blue>(2):04/05/07 23:27
ふたりが付き合い始めて、4年が経とうという頃。
魅録は一大決心でプロポーズをした。
それは、大学を卒業して、まもなく1年になろうとしていた
今年の冬のこと。

悠理は最初こそ、照れ臭そうに下を向いていたが
瞳に大粒の涙を浮かべながら笑った。
それは、今まで見たどんな表情よりも綺麗だった。

それから剣菱夫妻の計らいで、盛大な婚約発表会が
催された。その後も悠理の婚約者として、
さまざまな御披露目パーティーに出席した。

窮屈なパーティの連続に、疲れもしたが
悠理とこれからも一緒にいられるという幸せに比べれば
どうと言うことは無かった。パーティーの間中
彼の横にぴったりと張り付いていた
彼女の気持ちも、どうやら同じようだった。

実を言うと、今日のデートも昨日の夜に
剣菱財閥の重要な取引先である、
クィーンレコード主催のパーティーを
こっそり抜け出して来たのだった。

疲れた様子の悠理を気遣ってのことだが、
今頃、剣菱夫妻と主催者である副社長の神野氏は
豆鉄砲をくらったような顔をしているだろう。
血相を変えた父・時宗に、それをなだめる母・千秋。
そんなことを想像してしまう自分が可笑しくなる。

525 :20万hit競作・<Marrige Blue>(3):04/05/07 23:28
「おい、魅録。何1人で笑ってるんだ?」
そんな風にひとりで考え事をしていると、
後から再び声が降ってきた。気のせいだろうか?
声にいつもの覇気が感じられない。

「いや・・・ちょっとな。そんなことよりもうすぐ着くぜ」
「うん」
「だから、もう少しの辛抱な」
「うん」
「悠理?」
やはり様子がおかしい。彼の声も上の空のようだった。

(もう少し、急いだ方がいいみたいだな)
魅録は内心そう思いながら、バイクのスピードを上げた。

それから1時間程して、目的地である湘南海岸に到着した。
目の前には青い海と眩しい太陽が広がっている。
ここに来るのは本当に久しぶりだった。
学生時代は幾度と無く訪れたものだが。

「やっぱりイイな」
「あぁ。お前、ずっと来たがってたもんな」
ふたりはバイクから降りると、防波堤の上に腰を下ろしていた。
悠理はやはり疲れていたのか、小さく欠伸をした。

「大丈夫か?眠いなら寄りかかれよ」
「うん。さんきゅ」
悠理は魅録の肩に身を寄せると静かに眼を閉じた。
ふたりは暫くの間、そうして肩を寄せ合いながら
穏やかな波の音に耳を傾けていた。

526 :20万hit競作・<Marrige Blue>(4):04/05/07 23:30
それから、どのくらい時間が経ったのだろうか?
魅録は悠理の声に、いつのまにか閉じられていた瞼を開いた。
「魅録、起きてるか?」
「今起きたとこだ。眠っちまったみたいだな」
「魅録・・・あのさ」
「どうした?」
そう言ってふと横を見ると、やけに不安げな表情の悠理が
こちらをまっすぐに見つめていた。
「可憐の事。何だかもう見ていられなくてさ」
「・・・・・」

清四郎と可憐の付き合いを聞いたときは、本当に驚いたものだった。
高校卒業後、清四郎はドイツに留学。
その後はドイツのシュバルツ大学に入学し
見事主席で卒業。向こうの研究室に残って
研究に没頭しているようだ。

可憐は聖プレジデントの経済学部を卒業し
ジュエリーAKIの若社長として、その手腕を振るっている。
しかし、ふたりは卒業以来一度も会っていないらしい。
悠理はそんなふたりの気持ちを計りかねていた。

「清四郎の事を振り切るように仕事に没頭する可憐見てたら
あたしまでつらくなっちまって。清四郎のやつもう5年だぜ。
いい加減帰って来てやってもいいじゃないか!あたし達の
婚約パーティーにも顔を出さなかったし。連絡手段が
たまの国際電話とメールって残酷すぎるよ」
魅録は悠理の言葉に、じっと押し黙って
何かを考え込んでいる様子だったが、
やがて静かに口を開いた。

527 :20万hit競作・<Marrige Blue>(5):04/05/07 23:32
「きっと清四郎は清四郎なりに何か考えるところがあるんだろ。
それは可憐も同じだと思うぜ。だからふたりとも
どんなに会いたくても会わずに自分の夢を追いかけてる」
しかし、悠理は納得出来ないという表情で続けた。

「清四郎なりに考えてることって何だよ?あたしには分かんないよ。
好きなヤツを5年もほっとくってことか?」
「俺はそうは思わない。お前だって清四郎が
そんなやつじゃないって分かってるはずだろ?」
「・・・お前も・・・あるのか?」
悠理は小さくそう呟くと、不安げな表情で魅録の方を見た。
その表情はやけに淋しげで、切なく感じられた。

「その・・・お前も清四郎みたいに考えてることあるのかなって
夢とか、これからしたい事とかさ」
「そりゃ・・・まぁな。俺の場合は
清四郎みたいにでっかい夢じゃねえけど」
「そうなんだ・・・」
悠理は淋しそうに下を向くと、少し拗ねたように
一差し指で、防波堤の上をなぞっている。

「・・・俺の場合は、お前を幸せにすることだよ」
「魅録・・・本当にどこにもいかないんだな?」
「俺はどこにもいかねえよ。ずっと・・・一緒だ」
魅録はそう一言呟くと、悠理の柔らかな桜色の唇に触れた。
彼女の頬からは、涙が伝っていた。
ふと先程まで聞こえていた波の音が途絶えた。
まるで自分達の周りだけ、時が止まったように。

528 :20万hit競作・<Marrige Blue>(6):04/05/07 23:32
どのくらいそうしていただろうか?
しばらくして、波の音が耳に響いてきた。
ふたりは何だか気恥ずかしくなって、唇を離した。

「ごめんな・・・。あたしってば不安だったんだ。
魅録はあたしなんかと結婚してもいいのかなって。
野梨子や可憐みたいに女らしくないし、
それらしい事、何にもしてやれないって分かってるから
それに、お前も清四郎みたいに、いつかは
夢を追いかけて何処かにいっちまうのかなって」
悠理は目の前の青い海を見つめながら、
ゆっくりとそう呟いた。

「ばかだなぁ。そんなわけないだろ」
魅録はそう言ってニカッと笑うと、
淡い栗色の髪を優しく撫でた。

いつの頃からだろう。彼の少年のような笑顔に
こんなにも心が揺るがされてしまうなんて。
こんなにも・・・胸が温かくなるなんて。

「悠理は悠理だろ。そのまんまでいいんだよ」
「魅録・・・」
「それに結婚だって今までの延長線上って思えばいいんだ」
「うん。そうだな。さんきゅ」
「ほら。もう泣くな」
悠理は魅録の言葉にコクリと頷くと、
今日一番の笑顔を浮かべたのだった。

529 :20万hit競作・<Marrige Blue>(7):04/05/07 23:33
「可憐と清四郎は、幸せになるために別れたのかな?」
「そうだな・・・きっと。お互いの夢を叶えるために
自分らしく生きるために。きっとそれがあいつらの愛し方なんだ。
だから俺達はあいつらの親友として、それを見守ってやることが
一番だって思ってる」
「そっか・・・そうだよな」
悠理はようやく納得したのか、静かにそう呟いた。


「そして、俺達には俺達の幸せがある」
「うん。あたしも魅録と幸せになりたい」
「俺達、幸せになるぞ」
「うんっ」
もはや、悠理の心に不安は無かった。
この男となれば、幸せになれる。
自分らしく生きていける。
そう思ったから。

「そろそろ帰るか。みんな心配してるだろうしな」
「あたし、腹減った〜」
「そう来ると思ったよ。どこかで何か食って帰るか」
「やった〜魅録ちゃん愛してる」
「へいへい」

(もっとムードのいいときに言ってくれると尚いいんだけどな)
魅録は心の中でそう付け加えた。

「お〜い。魅録早く来いよ。あたし、もう腹ぺこぺこだよ」
いつのまにかバイクの横で、悠理が大きく手を振っている。
魅録は脱力して、思わずため息を突いた。

530 :20万hit競作・<Marrige Blue>(8):04/05/07 23:35
-それから一ヶ月後。

ふたりはハワイの教会で盛大な結婚式を挙げた。
大勢の祝福に包まれながら。

幸せはここにある。

悠理の投げたブーケが青空に舞った。

今も、これからも、
すべての人が幸せでありますように。

心から そう願った。

Happy is in the blue sky!



THE END

531 :20万hit競作・<Marrige Blue>:04/05/07 23:35
終わりです。ありがとうございました。

532 :名無し草:04/05/08 00:16
>Marrige Blue
マリッジ「ブルー」か。うまい!
作者さん、次は美×野を期待していいのでしょうか…?(ワクワク

533 :名無し草:04/05/08 02:46
祝!20万hit。
競作参加します。8レスいただきます。
清四郎と野梨子しか登場しませんので、苦手な方、スルーを。


534 :20万hit競作・夜の虹(1):04/05/08 02:48
「もう別れない?これ以上付き合っても、私のこと好きになってくれないでしょ?
菊正宗君が望むような女性にはなれないわ。誰かと比べられるのはもう沢山よ」
それだけ言うと、電話は切れた。

大学へ進み、何人かの女性と「お付き合い」なるものをしてみたが、
どれも長くは続かなかった。
最後はいつも別れを告げられる。
そして「誰かと比べないで」と女達は言った。
自分でも知らぬうちに、誰かの面影(イメージ)を相手に求めていたようだ。

「誰か」が誰なのか。
気付いたのは、つい最近のこと。
皮肉なことに、「誰か」が愛しい人によって醸し出していた色香に触れた時だった。


535 :20万hit競作・夜の虹(2):04/05/08 02:51
ポリクリが始まり―そう、僕は医学部へ進んだ―
時間に追われる生活となった。

ある初夏の黎明。
目覚めると、藍色の空の底辺に橙色の光が現れる刻だった。
着替えを済ませるうちに、橙色の光は空の真ん中で藍色と混ざり合った。
新聞を取りに外へ行く。藍と橙の空はいつの間にか青空となっていた。

外へ出ると、静寂の中に車のエンジン音が響いている。
「おや?あの車は…」見覚えのある深緑色の車が、白鹿邸の門前に止まっていた。

野梨子が車へ向け手を振ると、その車は短いクラクションを残し走り去った。
家へ入ろうと振り返った野梨子は、少しはにかんだ優しい笑顔を残していた。
愛しい者への笑顔の名残。
僕の存在に気付いた野梨子は、慌ててその笑顔を消した。


536 :20万hit競作・夜の虹(3):04/05/08 02:54
「あら清四郎。お早うございます。随分早いですわね。
久しぶりにお会いしますわね。実習、大変なのでしょう?」
僕は、これまでに見たことのない野梨子の表情に見とれていたようだ。
野梨子に声を掛けられ、我に返った。

「野梨子も随分早いですね。
と言っても、今帰って来たんじゃ『随分遅い』の方が正しいんでしょうか?
朝帰りなんかして大丈夫なんですか?」
何故か棘のある言い方をしてしまった。

「父さまも母さまも留守ですのよ。今日のことは内緒にしていてくださいな」
野梨子は悪戯がばれた子供のように、少しばつが悪そうな顔をした。

「これから実習なのでしょ?お引止めしてしまって御免なさい。
お話したいこともありますし、お時間ができたら声を掛けて下さいな」
そう言い残し、野梨子は自宅へ入った。

いつの間にか長くなった髪をラフにまとめ、淡い黄色で柔らかい素材の
ワンピースを着た野梨子は、逆光の所為だけでなく眩しかった。
色香と隙――それを感じた時、胸の内で風が舞った。
……この感じを……。どこかで持ったことがある。
確かに、この感じだ。


537 :20万hit競作・夜の虹(4):04/05/08 02:57
野梨子が初めて恋をした冬。
裕也さんを見送った上野駅からの帰路、僕と野梨子は喧嘩になった。

「これで良かったんですよ。
例え彼が金沢に帰らなくても、お付き合いは出来なかったんですから」
僕は野梨子へ言った。
「どうしてですの?住む世界が違う人だから?
私、そんなことで好きになることを諦めたりしませんわ。
清四郎は意地悪ですわ……」
野梨子は泣くのを必死に堪えていた。

「独りで帰りますわ」と、野梨子は走って僕の傍から去った。
追いかければ、すぐに追い着いただろう。
だけど追いかける気にはなれなかった。
それは他の四人のように、在り来りな慰めの言葉が、自分の口から
出そうになかったから。
そして…。
純粋に人を愛した野梨子から放たれた色香。
それを感じた自分に戸惑っていたから。

突然甦った五年前の冬の出来事。
潤んだ瞳と紅い口唇。今でも思い出せる。

そうだ。この感じは、あの時に感じたものと同じなんだ。


538 :20万hit競作・夜の虹(5):04/05/08 02:59
そういえば…。
ずっとずっと昔にも、似た感じを持った。

あれは…。
初めて野梨子と二人だけで出掛けた日。小学部に入った頃だったか。
バスに乗って、今はもう無くなったプラネタリウムへ行った。
子供同士で初めて出掛けるとあって、野梨子は緊張していた。
「野梨子ちゃんを守るんだ」僕は騎士(ナイト)にでもなった気分だった。

プラネタリウムの中は街の喧騒とは別世界だった。
色々な星を見た最後だった。
ハワイでは夜にも月明かりで、虹が出ることを知った。

太陽の下に見る虹とは違って神秘的だった。
「きれい……。本当の夜の虹を見てみたいわ。清四郎ちゃん」
「いつか僕が本当の夜の虹を野梨子ちゃんに見せてあげる」
「本当?絶対ね。約束よ」野梨子は瞳をキラキラと輝かせていた。
野梨子の喜ぶ顔を見て、「絶対に野梨子ちゃんに見せてあげるんだ」と
心に誓ったことを思い出す。

野梨子の喜ぶ顔を見て感じた気持ち。
そう。あの時も今と似た感じを持ったんだ。


539 :20万hit競作・夜の虹(6):04/05/08 03:01
あの黎明に胸の内で舞った風。
風は忘れていた昔の記憶を呼び覚ました。

黎明に感じた眩しさも、五年前の冬に感じた戸惑いも、幼い頃に感じた悦びも
すべて同じことを意味していた。
それに気付くまでに、こんなに時間がかかるとは。
その間に野梨子は、手の届かないところに行こうとしている。

夜の虹を見せると約束したはずなのに……。
あの約束を野梨子は今も覚えているのだろうか?

夜の虹。
それを見た者は神から最高の祝福を受けるという言い伝えがある。
二人で祝福を受けることは、もうないのだろうか……?


540 :20万hit競作・夜の虹(7):04/05/08 03:03
数日後、偶然に本屋で夜の虹の写真集を見つけた。
野梨子の記憶を確かめたくて、写真集を手に野梨子を訪れた。

「覚えていますか?」僕は野梨子へ写真集を渡した。
写真集の頁を捲りながら野梨子は微笑んだ。
「懐かしいですわね……。私は、あの時の約束をずっと覚えていましたわ。
でも……」
僕は暫く野梨子の言葉を待ったが、野梨子の言葉は途切れたままだった。
答えを聞くのは躊躇われたが、僕は訊いた。
「野梨子、僕はあの約束を果たしたいと思っています。
二人で一緒に行くことは出来ますか?」
まだ間に合いますか?少し遅すぎましたか?―これは僕の心の声

少しの沈黙の後。
写真集から目を逸らさず野梨子は答える。
「清四郎。虹の向こうの色って何色かご存知?
マジェンタ色―赤紫色―なんですって。
ゲーテは『宇宙の色』って表していますわ。
私……。清四郎にはいつまでもこの色のような存在でいて欲しいんです」

マジェンタ色の様な存在?―それはどういうことですか?
何度かその意味を問うた。
だけど、野梨子は「自分で考えて下さいな」と教えてはくれなかった。


541 :20万hit競作・夜の虹(8):04/05/08 03:05
マジェンタ色―赤紫色
ゲーテが『宇宙の色』と表したのは、この色がスペクトル―虹の七色
を超えた不思議な色だと感じたから。
七色の中で昔から高貴な色とされた紫色―神に最も近いとされた色。
それを超えるから、『神の色』『神のいる宇宙(そら)の色』なのだとか……。
その色の意味は、「思いやり」「包み込むような優しさ」だという。

僕は野梨子の言った意味を考える。
僕は野梨子にとってどんな存在であれば良い?
僕はこれからどうすれば良い?
答が出てこない。

やっと自分の気持ちに気付いたのに……。
僕達は、二人で祝福を受けられるのだろうか?

                             終  


542 :20万hit競作・夜の虹:04/05/08 03:08
以上です。ありがとうございました。

543 :名無し草:04/05/08 03:31
>Marrige Blue
なるほど1作目とリンクしているわけですね。
二つの物語が交差して話に奥行きが出てますね。
もう一つあると、期待しておりますよ、作家さんw

>夜の虹
「夜の虹」や「宇宙の色」などキーワードが斬新で面白いです。
野梨子の匂わせた答えは……清四郎には残念でした、ですよね?
二人で祝福を…って、気づけ、せいしろーっ!

乙でした。


544 :名無し草:04/05/08 06:37
>夜の虹
野梨子への想いにずっと気が付かなかったり、彼女の言葉の意味が
分からなかったりするところが、恋愛音痴(と私は思ってますw)な
清四郎らしいなぁと思いました。
「夜の虹」も「虹の向こうの色」も、ロマンをそそる存在なのに、
それと清四郎の鈍さとのミスマッチが面白かったです。
(↑誉めてるつもりなんですが、そうは見えないかも・・・(つДT) )

545 :名無し草:04/05/08 13:31
>夜の虹
藍と橙の空、深緑の車・・・色を使った表現が絵画のようで
素敵でした。裕也さんを見送った後の二人の会話もよかったな。
原作を読んだときも、この後二人で一緒に帰ったはずだから
二人はどんなこと話したんだろ・・と思ったし。
>519 有閑版源氏物語 菊正宗光源氏
ウケました。野梨子ママ=藤壺、野梨子=紫の上、って感じ?
手に入らない野梨子ママの形代として野梨子と結婚するのかなあ。
菊正宗光源氏は。

546 :名無し草:04/05/08 15:02
>夜の虹
ところどころに「色」の描写が出て来て、
テーマが明確に心に残りました。
甘々清×野も大好きだけれど、こういう切なさも
幼馴染みの彼らならではで、切なくて大好きです。

547 :名無し草:04/05/08 16:10
>夜の虹
(7)であれあれ〜?と思いつつ読み進めてみれば、(8)の最後の2文で
どっかーんとひっくり返りました。やってくれたよ、清四郎(苦笑)。
流石は“音痴”なんだなぁ……。面白かったです。

548 :名無し草:04/05/08 18:50
拙い作品ですが、競作に参加したいと思います。
カップリングは混合もので、敢えて書きません。8レスお借りします。
全ての方に、感謝を込めて・・・

549 :20万hit競作・<十人百色> (1):04/05/08 18:51
 卒業式まで数える程になったその日、有閑倶楽部の六人は、誰言うともなく
生徒会室に集まっていた。中等部三年の時に今のメンバーになって以来初めての、
別れの時が近付いているのだ。
 内部進学する者の多い聖プレジデント学園には珍しく、清四郎・魅録・可憐の
三人は外部の大学に進む道を選んだ。可憐は推薦で早々に合格を決め、残り二人
も受験で第一志望の大学に合格。他の三人は学内の大学に行くものの、学部は
バラバラなため、今までのように始終顔を合わせることは叶わないだろう。

 そう考えると、自分は感傷などとは無縁な人間だと思ってきた清四郎でさえ、
どこか寂しいような物悲しいような気持ちになってくる。
(生徒会室も、卒業式までに片付けて明け渡さなければなりませんね)
 段取りなどの実務的なことを考えつつも、脳裏に浮かぶのは退屈だ退屈だと
文句を言いながら、この部屋に集った日々の想い出ばかり。数々の冒険と、
仲間たちとの強い絆――
 自分の世界に浸っていた彼がそれに気付くのには、少し時間がかかった。


(え……?)
 いつもより静かだとは感じていた。自分と似たような感傷を、他のメンバーも
抱いているせいかと思っていたが、どうやらそれは勘違いであったらしい。
 静かなのは、どことなく張り詰めた部屋の空気のせいであり、その元は可憐
から発せられていた。彼女は虚ろな視線を宙に漂わせ、隠しようのない憂鬱な
表情をしていたのだ。明るく華やかな雰囲気を撒き散らしている普段の姿とは、
正反対の暗い顔。

550 :20万hit競作・<十人百色> (2):04/05/08 18:53
 戸惑う気持ちから、思わず他の四人の様子を伺う。幸い、全員が一目で見える
位置に座っていたため、一瞬にして状況を把握することができた。
 こんな時、いつもなら真っ先に声をかけるであろう美童は、困ったような顔を
して魅録の方に視線をさ迷わせている。悠理も同じだ。深刻そうな表情を浮かべて、
魅録をチラチラと見ている。野梨子は、自分と同様に当惑しているようだ。
 そして、二人から視線を受けている魅録は――


 彼は心ここにあらずの可憐を、一途に見つめていた。そういう方面に疎い自分
にさえ、充分に意味が分かる眼差し。
(魅録が可憐を? 美童と悠理は、彼の想いを知っている……?)
 ふいに、おいていかれたような気持ちになる。
 自主登校だったこの数ヵ月、受験勉強のために家と図書館を往復していた自分。
仲間と電話やメールで話したり、たまに会ったりすることはあったが、いつも
一緒に居た頃とは違う日常を送っていた。その間に何かが起き、今までとは違う
人間関係が生まれていたのだ。

(可憐の憂い顔は何故なんでしょう? 魅録が何か、したんでしょうか?)
 自分の知っている魅録は、女性を悩ませるような男ではなかった。仮に悩ませる
ようなことがあったとしても、そのことに対して何も対処しないでいるとは思えない。
(可憐のあんな姿も、初めて見ました)
 何度失恋しようと不屈の精神で立ち直る逞しさに、呆れながらも一目置いてきたが、
今度ばかりは違ったのだろうか? いや、恋と決め付けるのは早計かもしれない。

「……だから…だから言ったろう、やめておけって」
 魅録の口から唐突に出た吐き捨てるような言葉に、更に面食らう。口は悪いが、
正義感が強くて友達思い――それが自分の知る彼だった。それなのに、こんな風に
相手を否定するような物言いをするとは……

551 :20万hit競作・<十人百色> (3):04/05/08 18:54
「分かってるわよ。そんなに意地悪言わなくても、いいじゃないっ!」
 負けじと応酬した可憐だったが、自分たちを見つめる四人の視線に気付き、
ハッと我に返った表情になる。
「あたしったら……久しぶりに会ったのに、ごめんね。今日は帰るわ。またね」


 引き止める間もなく出ていった可憐を、一呼吸置いて魅録が追いかけてゆく。
「また意地悪言いに来たの?」
「違う、そんなんじゃねえ」
「じゃあ、何よ!? 玉の輿に乗り損なって泣いてる、馬鹿な女を笑うため?」
 開いたままの扉から、廊下の話し声が聞こえてくる。
(放っておく気にはなれませんが、かといって、どうすればいいのか……)
 簡単に踏み込んではいけない領域のように思う。

 一瞬の静寂の後で、魅録の叫ぶような声が空気を震わせた。
「玉の輿ぐらい俺が作ってやるって、言いに来たんだよ!」
「み…魅録……!?」
 美童がヒュッと口笛を吹く。その後廊下の声は急に小さくなり、少しして二人が
去ってゆく気配が伝わってきた。
 可憐の相手は、魅録も知っている人間だったようだ。彼女を止めていたのは自分
の恋心のせいというより、先を危ぶんだからだろう。魅録にはそういう男気がある。
そして、その予感は当たってしまったと。

552 :20万hit競作・<十人百色> (4):04/05/08 18:55
(魅録の想いは叶ったのでしょうか? それにしても、あの二人には驚きました)
 美人でセクシーさも兼ね備えている可憐ではあるが、今まで彼女に女性を感じた
ことは一度も無かった。性別を越えた仲間、それが可憐であり、野梨子と悠理でも
あったのだから。けれど先程の彼女からは、「女」の匂いがしていた……
 魅録もそうだ。恋や女性より、メカいじりや男友達と遊ぶことの方が好きで、
有閑倶楽部の女性たちは唯一の例外――それが魅録であった筈なのに、恋に憑かれ、
プロポーズもどきの言葉まで口にするとは……


 想いを巡らせている頭に、威勢のいい声が飛び込んできた。
「あたいも帰ろっと!」
 悠理がスクッと立ち上がる。
「母ちゃんと約束してたんだ。忘れてた」
 言い訳めいたことを呟きながら、部屋を出てゆく後姿はしかし、悄然としていた。
悠理に向かって何か言いかけた美童が、声を発する直前に振り返り、野梨子を見る。

(え!?)
 瞬時交わされる、二人の視線。先に動いたのは野梨子だった。小さく微笑んで、
頷いてみせる。
「ありがと、野梨子」
 言い捨てて、美童はそそくさと後を追う。部屋に、自分と野梨子だけが残された。

(悠理が魅録、美童が悠理を? では野梨子と美童は……?)
 男・女という以前に、性別=子どもとしか考えていなかった悠理が男に恋をして
いるという事実が、信じられなかった。魅録とも、男同士のような付き合いだと
思っていたのに。
 美童に至っては、一人の女性に恋する姿が全く想像つかなかった。ましてや、
相手があの悠理だとは……

553 :20万hit競作・<十人百色> (5):04/05/08 18:56
 よく見知った筈の仲間たちが、違う人間に見えてくる。今回、自分が蚊帳の外
だったのは、本当に受験勉強に没頭していたせいなのか? もしかして、彼らは
以前からああいう人間で、自分が分かっていなかっただけだとしたら……!?

     ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

「……ろう…清四郎?」
「……え!? ああ、何ですか?」
 野梨子の呼びかける声に気付き、慌てて返事をする。隣りを歩く彼女のことも
忘れ、先程の「事件」を考えていたのだ。
「怖い顔をして、どうしましたの? 何か厭なことでも?」
「厭なことというか、分からないことだらけで――」
 率直に答える。

「魅録と可憐には驚かされましたし、その後の美童と悠理にも驚きました。
一体いつから、あんなことになっていたのか……野梨子は知っていたんですか?」
「美童と悠理のことは知っていましたが、魅録と可憐のことは今日まで知りません
でしたわ。でも、今になってみると、それらしい節もありましたわね」
「美童から、悠理への気持ちを聞いていたんですか?」
「ええ」

 そんな馬鹿なという思いが、語調をきつくする。
「信じられませんね。恋に関しては海千山千の美童が、恋愛初心者の野梨子に相談
するなんて」
「失礼なことを言いますのね。私にだって、話を聞くぐらいはできますのよ。
それに、そんな台詞、清四郎にだけは言われたくないですわ」

554 :20万hit競作・<十人百色> (6):04/05/08 18:56
 恋愛経験の無さを皮肉っぽく指摘する野梨子に、悠理との間に縁談が持ち上がった
時のことを思い出す。
 あの時、清四郎の性格で女性と本気で付き合える筈が無いと、彼女は言った。
付き合ったとしても、人が知っていることを知らないのは恥だからという一時的な
興味だけだろう、清四郎にとって女性とはその程度のものなのだと。
 情緒障害者のように言われて呆然としつつも、反論できなかった自分――

「すみません、口が過ぎました。僕は全く知りませんでしたので、知らない人を
見たようで、戸惑っているんです」
「まあ、清四郎ったら」
 野梨子はコロコロと笑うと、言葉を続けた。
「長い付き合いをしてきた仲間でしょう?」
「そうなんですが、ああいう姿は初めて見たので、面食らっています」
 只一人、変わっていないと思える野梨子にだけは、正直な気持ちを言えた。

「みんなの恋愛は前にも見たでしょ? ああ、悠理だけは違いますわね」
「いえ、悠理もですが、他の三人も以前とは違っていましたから」
 チチと恋愛した時の魅録、他の男性と恋愛した時の可憐、他の女性と恋愛した
時の美童――どれとも違っていた。
「それはそうですわ。相手が変われば、同じという訳にはいきませんもの。『十人
百色』ということなのでしょうね」


 早速訂正する。
「『十人十色』の間違いですね。使い方も違います。野梨子ともあろう人が、
悠理みたいな間違いをして――」
「そう言うと思いましたわ」
 途中で遮り、尚も笑う。
「……」
 からかわれたと気付いて憮然とする。

555 :20万hit競作・<十人百色> (7):04/05/08 18:57
「最近、思うんですの。十人十色と言うけれど、本当は十色どころではなく二十色
や三十色、ひょっとしたら百色ぐらいあるのではないかと」
「一人の人間は一色だけでなく沢山の色を持っている、ということですか?」
 気を取り直して聞いてみた。野梨子の話は重要な示唆を含んでいるように感じる。
「ええ。一人の色が幾通りもあり、一人一人もそれぞれ違う――だから人間関係は
難しいのでしょうね。ある一面だけを見て、その人のことを分かったつもりに
なっているのは、酷く傲慢なことなのかもしれませんわ」

 ムッとして答える。
「僕が傲慢だと言いたいんですか?」
「違いますわよ。自分に対して思ったことです。私、今のように知り合う前は、
悠理や可憐のことを誤解していましたでしょう? あの頃の自分は傲慢だったと、
深く反省しているんです」
「……」

 誤魔化されたような気をよそに、野梨子は語り続ける。
「例えば可憐。私がイメージする彼女の色は情熱の赤なのですが、いつも同じ
赤ではないように思いますの」
「どんな赤がありますか?」
 聞かずにはいられない気持ちになる。今日の野梨子は、まるで小悪魔だ。翻弄
しつつも、巧みな話術で自分を惹き込んでゆく。

「世話好きな姐御肌の時はオレンジがかった赤、一目惚れした時はピンク色に
近い赤、今日の憂い顔は青の混じった赤――紫でしょうか」
「なるほど」
「赤にばかりに拘る必要も、ないのでしょうね。恋している時、人は特に違う
顔を見せるものですし」

556 :20万hit競作・<十人百色> (8):04/05/08 19:00

 キッパリと言い切る姿に、ふと問い詰めたくなる。
「随分と自信があるような言い方ですね。それは経験則ですか?」
「……ええ」
「刈穂裕也の時の?」
「裕也さん? それもありますわ」
「それも、とは? もしかして……美童?」
 思い切って踏み込む。二人の間に交わされた意味ありげな視線。あれは?

「さあ、どうでしょうね……ふふふ」
 誘っているようにも聞こえる、独特の声音。日本人形のような小さく整った
顔の中で、瞳だけが妖しく煌いていた。端を僅かに上げた朱色の唇が、
相対する者を蠱惑する……
 ぞくり、という音が背筋を這い登っていった。
(これは……誰だ!?)

 二人の間を吹き抜けてゆく突風に、黒髪をそれ自体何かの生き物のように
蠢かせて微笑む野梨子は、清四郎の全く知らない色を浮かべていた。
 「女」という色を――


【Fin】



以上です。読んでくださり、又はスルーしてくださり、ありがとうございました。
「夜の虹」のお話と、野梨子の色香に清四郎が・・・の部分が被ってしまっていて
青くなったのですが、私の硬直した脳では違う展開にはできませんでした。
「夜の虹」の作者さんが不快に感じられましたら、誠に申し訳ありません。

557 :名無し草:04/05/08 20:44
>野梨子の策略通り清四郎が「十人百色」を訂正しようとするシーンが
とてもいい!野梨子女史の才女っぷりを堪能しました。
>>Marrige Blue
スペリングはmarriageだと思いますが・・・。清四郎みたいに
細かいこと言ってすみません。美×野、楽しみにしてます。

558 :名無し草:04/05/08 21:34
>十人百色
野梨子が色っぽくてとてもよかったです。
そして、魅録がかっこいいw

559 :名無し草:04/05/08 22:37
>十人百色
面白かったです!テンポの良さで最後まで一気に読んでしまいました。
最後の野梨子の変貌ぶりにも驚かされました。
乙でーす。

560 :名無し草:04/05/08 23:22
嵐様、皆様、20万hitおめでとうございます。競作に参加させていただきますw
コスプレ悠理をめぐって清四郎と魅録が勝手に(!)バトルを繰り広げるお話です。
タイトルは映画からパクリました。9レス使います。

561 :20万hit競作<catch me, if you can・1>:04/05/08 23:23
むせ返るほどの深い緑の中、男は汗が滲んだ額を手の甲で拭い、空を仰いだ。
異国情緒溢れる森には、極彩色の蝶や都会ではお目にかかることのない不思議な鳥が彼の頭上を
舞っている。そのまま手をかざし、鬱蒼と茂る樹々の間から射し込む強烈な光を軽く避ける。
瞳を灼くその眩さと、まとわりつく熱気が彼に知らしめる。
ーここは人の手によって造られた温室ではない。正真正銘のジャングルなのだーと。
彼の周囲には生命の輝きが満ち溢れてはいるが、時折聴こえる鳥の啼き声以外は殆ど無音。
人っ子一人見当たらない。
「ーーやれやれ、悠理のお遊びにつき合うのもラクじゃありませんね」
呟くと、彼は汗で乱れた前髪を掻き上げ、近くの倒木に腰を下ろす。

             × × × × ×

事の発端は、いつものジャンケンだった。
勝者である悠理は高々と拳を天へ突き上げ、週末の予定をこう宣言したのだった。
「ジャングルでターザンごっこに決定〜〜!」
げんなりする三人と、それなりに乗り気の魅録、清四郎。
「ーー最近なんだか頭痛がしますの」
「ーーー僕、未開の地に行くとじんましんが…」
「ーーーーそうそう!あたし、ママのお店手伝う約束だったわぁ」
なんだかんだと理由をつけてインドア派は東京に残り、むくれる悠理につき合わされる形で、清四郎と
魅録は剣菱万作が所有する赤道直下の無人島へと乗り込んだ。
しかし、無人島とは言えど、実際のところは手つかずの自然ではない。娘の苦手な蛇や毒虫は全て
駆逐済みの、安全なアドベンチャーアイランドなのである。さらに、ディズニーランドよろしく、『蝶の庭』
や『虹の滝』や『極楽鳥の泉』がしつらえられており、目指す小屋と共に地図に記載されている。

悠理が考案したゲームのルールは至ってシンプルだ。
ターザン役の悠理を、ハンター役の魅録と清四郎が追う。捕まえた時点でゲームセット。
二人の追っ手を躱して島の西端に位置する小屋に先に辿り着けば、悠理の勝ちである。
「じゃあな、5分後にゲームスタートぉ!」
本物さながらの衣裳を身につけた悠理が、嬉々として宣言した。

562 :20万hit競作<catch me, if you can・2>:04/05/08 23:25
森へ吸い込まれて行く悠理を見送りながら、地図を手にして男達はお互いの腹を探り合う。
で、どうする?という視線を送ってきた親友へ、清四郎は不敵な笑顔を向けた。
二人で協力して悠理を追うという選択肢もあるのだが、彼の口から出た言葉は…。
「別行動で。悠理は僕が捕まえます」
その瞬間、魅録の鋭い瞳が光った。「…その勝負、受けて立つぜ」

             × × × × ×

島の中央に位置する山を、魅録は突き進んでいた。
今頃、迂回コースを辿っているであろう黒髪の男を思い浮かべ、にやりと笑う。
彼は確信していた。この山を突っ切るのが最短距離だから、悠理はこのコースを取るに違いない。
あいつが迂回なんかするわけねーからな。まあ、俺の足ならじきに追いつくさ。
彼の腰には、小さなピストルがはさんである。ピンクの液体が入った弾を発射するおもちゃの銃だ。
この色に悠理が染まれば彼の勝ち、水色なら清四郎の勝ちということになる。
無論、素手で捕まえてもOKだ。
「悪いが、悠理はお前さんにゃ渡せねぇ。あいつを捕まえんのは…この俺だ」
独りごちながら顔を上げた瞬間、目の前を何かがヒュッと横切っていった。
大木から垂れ下がった蔓に掴まり、左から右へと飛んでゆくのは、紛れもなく…
毛皮で拵えたチューブトップとショートパンツに身を包んだーーー獲物。

「やっほーい、魅録ぅ〜!こっこまでおーいで〜〜っだ」

一瞬の邂逅の後、悠理はこ憎たらしい笑顔のまま姿を消した。
構えた銃も照準が合わず、空しく目の前の枝を染めただけのようだった。
揺れ戻ってきた蔓の僅かなぬくもりを確かめながら、魅録は苦笑と共に悪態を吐く。
「ったく、どこまで飛んでったんだ!?まさにターザン…いや、一応女だから、ジェーンか?」
だが、野生に帰ったかのような生き生きとした悠理の表情と、アンバランスなほど白い手足が瞼に
焼き付いて離れない。
「次は…逃がさないぜ」
呟きながら、魅録はまた足を進めた。

563 :20万hit競作<catch me, if you can・3>:04/05/08 23:26
魅録は自信満々で直進したようだが、悠理はない知恵を絞って裏をかこうとするに違いない。
そう考えた清四郎は、腰を下ろしたままもう一度地図を取り出した。
「と、いうよりも…寄り道せずにはいられないでしょうね」
タイムアップは日没。それまで二人に捕まらずに小屋に辿り着けばよいのだから、この魅力的な島を
悠理が堪能しないわけがない。
すっかり勝つ気でいた悠理が自分の手中に落ちる様を想像し、つい口元が緩む。
この暑さだ。あの野生児がまず目指すのは泉か、滝か…。
まあ、ビーチでないことは確かだな。見通しのよい所では、魅録に狙撃される可能性が高い。

「負けた奴が勝者の言うことを、何でもきくってのでどうだ?」
一個だけな、と嬉しそうに人指し指を立ててつけ加えた悠理の前で、魅録の眉がぴくりと動いた。
何を企んでいるのやら、自信満々で瞳を輝かせる悠理に向け、魅録は口の端だけで笑顔を作る。
「ーーーああ、いいぜ。あとで泣き入れんじゃねーぞ」
もう一人の挑戦者である清四郎はただ黙って頷く。
お互い、相手に不足はない。はしゃぐ悠理をよそに、二人の男の間で静かに火花が散った。

地図を指で辿る。中央の山から流れ落ちる形で滝は島の南側、泉は北西のはずれ、か。
立ち上がると、清四郎は迷わず歩を進めた。

             × × × × ×

滾々と湧き出る泉のほとりにしゃがみ込み、悠理は手を水に浸した。
「ひゃっ!?つめたっっ」
予想外の冷たさに一瞬引っ込めるものの、今度は裸足の足を踏み入れた。そのまま中央まで
ざぶざぶ進むと、水を両手で思いきりはね上げ、一人で水遊びをする。
雫がキラキラと輝くのを見て、きゃっきゃと無邪気に声を上げる。
その時、視界の端に何か動くものが映り、悠理はさっと身構えた。
魅録はまだ山の上にいるはずだぞ。身軽さなら、あたいの方が数段上なんだから。
ーーーまさか清四郎?でも、ここって、小屋を目指すルートからはだいぶ外れてるし…。

564 :20万hit競作<catch me, if you can・4>:04/05/08 23:27
木立を抜けて飛び出してきたのは、目にも鮮やかな真っ赤な鳥だった。
悠理はまた歓声を上げる。地図に『極楽鳥の泉』と書いてはあったけど、本当にいるなんて!
その鳥は水辺に着地すると、先客を気にも留めず水をついばみ始めた。
「わぁあー、すげー、本物だぁーーー」
追っ手のことなどすっかり失念し、悠理は特注の『ターザン風毛皮製短パン』のポケットを探る。
こんなこともあろうかと、途中で拾った木の実をしのばせておいたのだ。
「おいで、ほら…」
その鳥は優雅に羽ばたくと、差し伸べた手に躊躇うことなくとまった。

             × × × × ×

木陰から、一人の男がその様子を見守っていた。
悠理につき合ってやるポーズを取りながら、いつしかゲームに夢中になっている自分に苦笑しながら。
スポットライトのような眩ゆい木漏れ日を受ける、すんなりと伸びた肢体。うっすらと陽に灼けていな
がらも、男とは一線を画すその肌の白さに、今さらながら息を呑んだ。

その時、細く長い彼女の腕に、炎のような飾り羽根を持つ鳥がとまる。
彼女が唇を尖らせて慈しむように口笛を吹くと、餌をついばんでいた鳥が顔を上げ、囀り始めた。
美しい野生の鳥をまるでペットのように手なずけてしまう悠理に、男はまた暫し見蕩れる。

いつかは手に入れたい、と考えていた。
その”いつか”が唐突にやって来たことを彼は知る。そのチャンスは今しかないことを。
ぐずぐずしていたら、もう一人のスナイパーが彼女を仕留めてしまうだろう。

音を立てずに銃を取り出し、標的に照準を合わせる。
だが、何を考えたのか、ふっと笑うと腰に戻した。

565 :20万hit競作<catch me, if you can・5>:04/05/08 23:28
「アカカザリフウチョウーーー写真で見るよりも、きれいな鳥ですね」
背後から知った声が聞こえ、悠理は弾かれたように振り返る。
彼女の動揺と共に、美しい赤い鳥も飛び去ってしまった。

泉のほとりに立つ清四郎の姿を目にし、悠理はやっとゲームのことを思い出した。
距離にして5〜6メートル。手にはピストルを持っていないようだし、瞬発力なら負けないはずだ。
ギリギリだけどーーー逃げ切れる。
咄嗟にそう判断した筈なのに、見つめ合ったまま動けない。
瞬きもせず自分を凝視する黒い瞳の温度が、いつもよりも僅かに高いような気がして。
軽く目を細めると、その男は噛みしめるように言った。
「ーーーきれいだな」

それが自分へと向けられた言葉だと気付き、心拍数が倍に跳ね上がる。
どうにか後退ろうとしながら、悠理は口を開いた。
「な…んであたいがここにいるってわかったんだ?だって、ここ…島の端っこだぞ?」
「だって、見たかったんでしょう?極楽鳥」
彼女の問いに、清四郎はさも当たり前のように答える。
うっと言葉に詰まる悠理の前で、その男は嬉しそうに笑う。
「僕も見てみたかったんですよ。だから、悠理なら間違いなく来るだろうと思いまして」
相変わらず自分の行動パターンを読まれていることが悔しくて、悠理は唇を噛んだ。

「僕の勝ちですよ」
清四郎は自信に満ちた表情で、その距離を縮めようともしないまま手を差し出した。
「さあ、悠理。こっちにおいで」
ぴしりと張りつめた声に、息苦しさを覚えた。

「ーーー捕まえてみろってんだ!」
叫ぶなり踵を返し、悠理は一目散に駆け出す。同時に、後ろで激しい水音が上がった。

566 :20万hit競作<catch me, if you can・6>:04/05/08 23:29
走る、走る、走る。
生い茂る樹々を縫うように、悠理は逃走する。
通せんぼする倒木や岩を飛び越え、行く手を阻まんと手を伸ばす枝もひらりと躱し…。
その様は、まるで本当に密林で生まれ育った子鹿さながら。
平地であれば遅れを取る筈のない清四郎も、その後ろ姿をとうとう見失ってしまった。

追うことを諦めた彼は両膝に手をつき、大きく肩を上下させる。その首筋を汗が流れ落ちる。
だが、暫くして顔を上げると、クッと笑った。
「ーーー生け捕り作戦、失敗か…」
銃を抜き出すと、ちょっと首を傾げてそれを眺めた。

             × × × × ×

口から飛び出してしまいそうな心臓を懸命になだめながら、悠理は樹上で息を潜めていた。
清四郎の足音が聞こえなくなってから、随分走った筈だ。もうそろそろ動けるかな。
そっと空を確かめると、寄り道をしてしまったせいもあって太陽がだいぶ傾いている。
マズイ。早く小屋に行かないと負けちゃうよぉ。

魅録と一緒に追い掛けてくるものだとばかり思っていたのに…。それをうまく逃げ切って、二人
まとめて言うこときかせちゃえ、という目論みだったのに。
不服そうにため息をつきながら、悠理は初期の目的を思い出す。
ーー清四郎には、卒業まで宿題全部やらせようと思ってた。
ーークラスメイトの魅録には、テストのカンニングを手伝わせるつもりだった。
この計画を断念するわけにはいかない。死活問題なんだからな。
その時、熱を帯びた黒い瞳がふと瞼の裏に甦り、慌てて目の前で手を振る。
あ、あんなの何でもないに決まってる。あたいの勘違い…だよな。
ポケットのおやつでエネルギーを補給した後、自分に気合いを入れて立ち上がる。
「よぉーっし。何がなんでも逃げ切るぞ。そんで、あいつらに言うこときかせてやるんだ!」
まっすぐに目的地を目指そう、と腹を決めて飛び下りた。
このパワーを勉強に回す気など、さらさらない悠理であった。

567 :20万hit競作<catch me, if you can・7>:04/05/08 23:29
あと一息でゴール、という所で殺気を感じ、悠理は咄嗟に身を沈めた。何かが頭上を掠め、軽い
破裂音と共に数メートル先の幹がピンクに染まる。
うわぁ、きれい。花が咲いたみたい…なんて思ってる場合じゃないだろ!?清四郎をやっと撒いたと
思ったら、今度は魅録の待ち伏せかよ!!一人でノリツッコミしつつ、倒木の陰に転がり込む。
間一髪でまた鮮やかな色が弾け飛ぶのが見えた。
「待ちくたびれたぜ、悠理。どこで油売ってたんだよ!」
どこか嬉しそうな声に、悠理は自分で決めたルールを呪う。『ターザン』役の自分は反撃する武器
を持っていないのだ。さっきのように都合よく目の前に蔓がぶら下がっているわけでもなく、楯になり
そうなものも見当たらない。周囲を必死で見回しているうちに、足音は近付いてくる。
目を上げると、深い森に抱かれた小屋が見える。
くっそ〜。あと、少しなのに…。悠理はぎり、と奥歯を噛み締めた。
隠れていたところで、いずれ捕まるのは目に見えてる。弾は6発。つまり、残りは3発だ。狙い撃ち
されるとしても、それを3回躱して小屋に飛び込めばーーーあたいの勝ちだ。
「悠理、聞こえてるか!?おもちゃでもお前を撃ちたくないんだ。さっさと降参しろよ…」
さっきより声が近いと知り、悠理はいちかばちかの賭けに出た。

             × × × × ×

エメラルドグリーンの森の中で、悠理は刺客の真正面に立ち尽くしていた。
魅録は勝利を確信し、ニヤリと笑う。同時に獲物は観念した表情を浮かべた。
右へ左へ身を翻す悠理に魅録はさらに2発の弾を無駄にしたが、最後の最後に漸く追いつめたのだ。
もう、二人を隔てる物は何一つなかった。
「ーーーったく、往生際の悪い奴だよな。だから降参しろって言ったろ?」
魅録の瞳に清四郎と同じ種類の熱を見た悠理は混乱していた。この状況では、認めざるを得なかっ
たからだ。予想以上に彼らがこの勝負に真剣に臨んでいるということに。
不意に身の危険を感じ、ごくりと喉を鳴らす。
こ、こいつら、もしかして張り合ってる?あたいを捕まえてどーする気なんだ…?
だが、その疑問を口に出す間もなく、思考は中断された。
「今度こそ、仕留めるぜ」
思わず腕で顔を覆う女の胸に照準を合わせ、男は容赦なく引き金を引いた。

568 :20万hit競作<catch me, if you can・8>:04/05/08 23:31
「まー、そんなことして遊んでたんですの」
「やっぱ僕行かなくてよかった。あのサルと追っかけっこなんて…」
「それで、どっちが勝ったのよぉ?」
東京に戻るなり、残留組から問いつめられて『ターザンごっこ』について渋々説明する羽目に陥った
魅録は、可憐の声に一瞬動きを止めた後、肩をすくめる。
「ーーここにあの二人がいないってのが、その答えかな」
一足先に帰って来た、と自嘲気味に笑った魅録に、三人は少し同情めいた表情で頷いた。

             × × × × ×

それは、魅録が勝利を確信した瞬間の出来事だった。
いきなり飛び込んできた何かが視界に広がり、悠理の姿が見えなくなった。

何が起きたのかはわからない。
ただ、映画のスローモーションのようだと魅録は思う。
みるみるうちに自分の髪と同じ色に染まるその物体が、どうやら上着らしいことに漸く気づく。
ーーーああ、そうだ、確か清四郎が着てたヤツだな。
コマ送りのように、ゆっくりと落ちて行くのを目で追いながら、彼は悠長にそんなことを考えていた。

果たして。再び悠理が姿を現した時、彼女を後ろから抱えるようにしてその男が立っていた。

「剣菱悠理、確保」
魅録以上に呆然とする悠理の耳元で、清四郎は言った。
「だから、僕の勝ちだと言ったでしょう?」
そう言って、満足そうに笑った。

569 :20万hit競作<catch me, if you can・9>:04/05/08 23:32
負けを知った魅録が背を向けた後、清四郎が銃を使わなかったことに気付いた悠理は不可解そう
に後ろの男を振り返った。
「何考えてんだよ、清四郎。さっさと撃てばよかっただろ!さっき、後ろから……」
悔しさのせいか、そうではないのか、負け惜しみを言う悠理の頬が朱に染まっている。
どうやら、海に沈まんとしている南国の夕陽ばかりが原因ではなさそうだ。
思いきりむくれている悠理のウエストに腕を回したまま、清四郎は軽く眉を上げた。
「おや?やっぱり僕に捕まえて欲しかったんですか?」
「そっ、そうじゃなくて、カッコつけんなって言ってんだよ!ってか、とりあえず放せ!!」
どうにか拘束から逃れようと身をよじる獲物を、そのまま自分に向き直らせて彼はニヤリと笑った。
むき出しの腹に回された二本の腕は緩むどころか一層体を締め付け、悠理は息を呑んだ。
さらにその指は、からかうように素肌の上を滑り始める。

「悠理を捕まえるくらい、この腕があれば充分です。それに…」
「そ…それに?」
悠理はごくんと唾を飲み、その男が何を言い出すのかと不安げに見上げる。
「ーーーこんなものを使わなくても、あなたを僕の色に染める自信がありますから」
言うが早いか、清四郎がウインクしながら額に唇を押し付けると、悠理は顔から火を噴いた。

「さて、と。じゃあーー罰ゲームは何にしましょうかねぇ…」
満面の笑みを浮かべ、勝者は腕の中の女を見つめる。
「確かーーー『何でも』言うことをきいてくれるんですよね、悠理?」
嬉しそうな悪魔の声に、哀れな子羊は足の先まで蒼白になった。
自分の浅はかな提案を後悔しても、もう遅いようだ。
とんでもない男に捕まってしまったらしい。
「もうそろそろ暗くなりますし、いい具合に目の前に小屋もありますからねぇ…」

そうしてーーー
悠理がギュッと目を閉じた瞬間、耳元で甘い判決が下された。




570 :名無し草:04/05/08 23:34
以上で「catch me, if you can」は終わりです。
お題に挑戦するのは初めてなので難しかったですが、面白かったです。
なかなかまとまらず長くなりました。最後まで読んで下さった方、
スルーして下さった方、どうもありがとうございました。


571 :名無し草:04/05/08 23:53
20万ヒット、おめでとうございます。
7レスお借りして、競作に参加したいと思います。
カップリングは美×野で、Rはありません。
苦手な方は、スルーでお願いします。

572 :銀の掛け橋 (1):04/05/08 23:56
「おめでとうございます。妊娠4ヶ月ですよ」

うだるような暑さの中、野梨子はひとりであてどなく歩いていた。
夫が家を出てから1ヶ月、今頃になって来たコウノトリを恨めしく思い、さりとてこれから
どうするか思いあぐねて家に帰れずにいた。

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 

夫が出て行った日は、梅雨の最中の肌寒い日だった。
「野梨子、今までありがとう。それじゃ、身体には気を付けて」
カーキ色のジャケットを羽織った夫は、最低限の身の回りのものだけ詰めたカバンを持ち、
最後に野梨子を見て微笑んでから玄関の敷居を越えていった。
一緒に暮らして3年、両親以外の親戚一同の反対を押し切って結婚したものの、伝統を
重んじる親戚は最後まで夫を異端視することを止めなかった。
温厚な夫は一度として表立って事を荒立てるようなことはしなかったが、その代わり、
ふたりの間には常に緊張感が漂っていた。
「美童…」
野梨子は遠ざかっていく夫の背中を見送りながら、思わず夫の名を呟いた。
この結果は、この一月ほどの間、お互いが膝つき合わせてちゃんと話し合って決めた
ことだった。
とはいえ、その瞬間が目の前に繰り広げられると野梨子の心は少しずつ乱れ始め、
とても冷静さを保ち続けることができなくなってきた。
もともと、夫を嫌いになって別れるわけではない。
だから、夫がもうここに帰ってくることはないという現実は、野梨子をその日の
天気のように暗く寒々しい世界に容赦なく突き落としていった。

573 :銀の掛け橋 (2):04/05/08 23:57
『Antique』
歩きつかれた野梨子が足を止めた場所は、店名そのままのアンティークショップ。
手前に飾られた銀のカトラリーに目を奪われる。
外の陽光の強さから逃れたい思いもあって、迷わずガラス戸を引いて中に入った。

「いらっしゃいませ」
野梨子が中に入ると、店の主人だろう年配の女性が奥から出てきた。
程よく冷房が効いた店内には、野梨子の他に客はいなかった。
「表に出されてるカトラリー、銀製のものですか?」
「ええ、ごく初期のジョージ・ジェンセンのものなんですよ。ひとつひとつごらんに
なりますか?」
女主人は野梨子に向かって微笑んだ。
野梨子はその申し出に微笑み返して答えとした。
「ちょっと前を失礼します」
女主人はゆっくりと野梨子の側を通り抜け、ディスプレイからカトラリーを持ち出し、
近くにあった、商品でもあるテーブルの上に置いた。
「それではごゆっくりどうぞ」
女主人は野梨子から離れた。

574 :名無し草:04/05/08 23:59
>catch me, if you can
いやー、色というお題の時点で出てくることが予想できた「俺色に染める」
を有閑らしいアドベンチャーもので仕上げるとは〜。
どこまでも自信満々な清四郎が非常に「らしかった」っす。面白かった!

しかし、、皆話のレベル高いなぁ。

575 :銀の掛け橋 (3):04/05/09 00:00
「いらっしゃいませ」
野梨子がカトラリーを眺め始めてしばらくたった頃、新しく客が入ってきたらしく、
女主人が奥から出てきた。
野梨子はちょうどガラス戸に背を向けるようにして立っていたから、どんな人が
入ってきたかは全く見えなかった。
「野梨子」
カトラリーへ集中していた自分の意識が不意に途切れた時、後ろから聞き覚えの
ある声が自分を呼んだ。
野梨子はその時持っていたフォークを元に戻し、声のする方へ振り向いた。
「美童…」
わずか50CMほどの距離に立っている人を見て、野梨子は絶句した。
この1ヶ月の間、全く連絡を取り合うことのなかった夫が目の前にいる。
野梨子は思わずたじろいでしまい、足が勝手に後ろに一歩下がった。
よろけながらも、野梨子は夫から視線を逸らすことができない。
その場を取り繕うために何か言葉を口にすべきだと思ったが、急に心臓が早鐘を
打ち出して息苦しくなり、それどころではなくなっていた。

576 :銀の掛け橋 (4):04/05/09 00:02
「これ、よく似てるよね」
夫が手にしたフォークは、さっき野梨子が眺めていたのと同じ物だった。
夫の父方の祖母から結婚の時に贈られた銀のカトラリー。
グランマニエ家に代々伝わるそれは、夫の手元にあるフォークと同じように、重ねた歳月の
渋みを感じさせる光沢を放っていた。
「美童、あれはお返ししますわ。グランマニエ家代々に伝わる大事なものですもの、
 今いらっしゃる場所さえ教えてくだされば、きちんと梱包してすぐにでも送りますわ」
野梨子は、無理に笑顔を作って夫に言った。
急に、カトラリーを手渡された日のことが走馬灯のように蘇ってくる。
生粋の北欧人である夫の祖母は夫と余り似ておらず、また日本で散々親戚の反対に合って
きたせいで、ここでも結婚に反対されるのではないかと内心びくびくしていた。
ところが、夫が野梨子にもわかるようにフランス語で結婚の報告をすると、最初冷たそうに
見えた表情が途端に何とも言えない優しいものに変わった。
そして座っていた椅子から立ち上がって、後ろにあるキャビネットを開いた。
「私からは、これを」
夫の祖母は、取り出した箱の蓋を開いて野梨子達に渡した。
グランマニエ家の紋章が、ひとつひとつに刻み込まれている。
野梨子は驚いて夫の顔を見た。
夫に婿に来てもらう形で結婚することを、きちんと説明しなければならない。
「おばあさま、僕達の結婚は…」
「わかってます。ヴィヨンから聞いてますよ」
夫の祖母は笑顔で夫の説明を遮った。
「私は、こういうものは、名前に関係なくグランマニエにゆかりのある人に引き継いで
 もらえばそれでいいと思ってますから」

577 :銀の掛け橋 (5):04/05/09 00:03
「野梨子、これからちょっと時間ある?」
夫の言葉で野梨子は我に返った。
さっと腕時計に目を遣ると、ショップに入ってから優に20分も経っていることに気付いた。
「私、これから行かなければならないところがありますの」
野梨子は嘘をついた。
そして本当にそれらしく見せるため、野梨子は女主人に会釈して店の外に出た。
「野梨子、ちょっと待って」
夫も、急いで店から出てきた。
野梨子はそれに構わず、どんどん先へ歩いていく。
夫は、終に野梨子の右腕を掴んだ。
野梨子は振りほどこうと腕を大きく振ってみたが、男の力には叶わない。
仕方なく、野梨子はその場に立ち止まった。
「野梨子、僕達やり直せないかな」
夫がポツリと呟いた。
「離婚届、出せなかったんだ。びりびりに破いてしまった」
「美童…」
野梨子は、人目も構わず夫の胸に飛び込んだ。
夫はふわりと野梨子を抱き締め、野梨子は夫にしがみついて声も上げずに泣き出した。

578 :銀の掛け橋 (6):04/05/09 00:04
夫が家に戻ってきたのは、それから1週間経ってからだった。
出て行った時と同じカバンと、それからもうひとつ紙袋を下げて玄関の敷居を跨いで来た。
「美童、それは何ですの?」
出迎えた野梨子は、見慣れぬ紙袋について夫に聞いた。
「ジョージ・ジェンセン」
「ジョージ・ジェンセン?」
夫は野梨子に紙袋を渡し、靴を脱ぐため腰を下ろした。
野梨子もつられて腰を下ろし、紙袋の中を覗いた。
「これは…」
野梨子は箱を袋から取り出し、見覚えのある刻印に指で触れた。
初期のジョージ・ジェンセンのカトラリー。
野梨子は、溢れんばかりの涙で潤んだ瞳で夫を見上げた。
「次の日に、あの店に行ったんだ。そしたらまだあってね。買わずにいられなかったんだ」

579 :銀の掛け橋 (7):04/05/09 00:06
1ヵ月後、夫が買ったキャビネットが家に届けられた。
デンマーク製のそれは正面が硝子で、中に置いたものが透けて見えるようになっていた。
夫はそれを寝室に置き、まずはグランマニエ家代々に伝わるカトラリーと初期のジョージ・
ジェンセンのカトラリーを置いた。
それから他にもいくつかの置物を置いたが、何故か2段目には何も置かずスペースを空けていた。
「ここには何も置きませんの?」
野梨子は、飾り付けを終えた夫に聞いてみた。
夫は野梨子の側に寄り、ごく僅かに膨らみかけた野梨子のお腹の上に右手を置いてから言った。
「心配しなくても、これから順々に埋まっていくよ」

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

その第一陣が、ちょうど半年後、スウェーデンの夫の祖母から届いた。
初めての曾孫の誕生を祝ってのその中身は、特別に誂えさせた銀製の子供用カップとプレートであった。

THE END

580 :名無し草:04/05/09 00:08
銀の掛け橋は、以上です。ありがとうございました。

581 :名無し草:04/05/09 00:29
>catch me, if you can
どたばた元気に有閑らしくて良かったです。
どこまでも自信満々でしっかり結果も浚った清四郎に、
「うんうん、やっぱりこういう奴だよ」と頷いてました(^^
その分、ぬかった魅録には少しばかり寂しい結末でしたが(^^;

>銀の掛け橋
とてもきれいなお話でした。ハッピーエンドで良かった良かった。
銀の掛け橋がこれからもそのお役目を果たしてゆく様子が見えるようでした。

582 :名無し草:04/05/09 00:35
>catch me, if you can
かなり萌えました。
それにしてもアドベンチャー系の話がここで来るとは、びっくりです。

>銀の架け橋。
なるほど、食器の銀できましたか。
ほんわか胸があったかくなりました。こういうの好きです。

583 :名無し草:04/05/09 00:46
>銀の架け橋
ジョージ・ジェンセンのカトラリー好きなのに眺めるだけの庶民としては、
有閑のブルジョワジーを改めて感じたりしちゃいました・・。
しっとりした落ち着いた空気に、この二人ならではの緩やかな愛を感じました。
美×野ってこういうとこがいいっすね。うんうん。

584 :名無し草:04/05/09 00:54
『銀の掛け橋』を書いたものです。
582さん、583さん、『銀の架け橋』が正しいです。
誤字の指摘ありがとうございました。
それから、題名に“20万hit競作”と入れ忘れてしまい、
申しわけございませんでした。

585 :582:04/05/09 01:19
>銀の掛け橋さま
いいえ、とんでもない。
自分だって「掛け」と「架け」の違いなんて知りませんでした。
ただうちのパソ子ちゃんのIMEが勝手に変換してくれただけなので(汗


586 :名無し草:04/05/09 01:37
>catch me, if you can

それぞれに駆け引きしながらの追いかけっこがすごく面白かったです。
キャラそれぞれの動きも様々に散りばめられた鮮やかな
色彩の数々もすんなり頭に映像が浮かびました。
しかし頭脳戦となるとやはり清四郎の一人勝ちですね。
魅録には気の毒でしたが、清×悠のオチで嬉しかったです。

587 :名無し草:04/05/09 01:58
>catch me, if you can
面白かった〜。
かなり萌えました!
私も清×悠のオチで嬉しかったです。
魅録は確かに気の毒だけど、やっぱり清×悠が一番しっくりくるなあ。
色という題もとても生きてたと思います。

588 :名無し草:04/05/09 02:20
今回の競作は清四郎にスポットが当たってますね。

589 :名無し草:04/05/09 02:25
>588
確かに。
危うさ、計算高さ、(ある意味)まぬけさ、いろいろ読めて面白いです。
中でもcatch me, if you canでの彼の面目躍如の言動が気に入ってます。

590 :名無し草:04/05/09 02:53
>589
挙げた中で「(ある意味)まぬけさ」が読めたのが、
個人的には面白かったな。
今までの作品だとあまり描かれなかった部分なので、
複数読めて新鮮だった。

591 :20万hit競作・<宵染めし 1>:04/05/09 03:01
 髪がずいぶんと伸びた。
 そう思い、布団の上にうねうねと伸びるその一房を掬って指に絡める。
 結婚に前後して、彼女は人前で髪を下ろさなくなった。
 僕に恋を自覚させた緑の黒髪は今、障子の隙間から差し込んでくる薄暮に
溶けて黄色い。
 それが僕には終わりの時を暗喩されているように思えた。

「もう終わりにしますの」
 あえかなる吐息が止み、しばらくの静寂の後に紡がれたのは淡々とした言葉
だった。問いかけの形ではあったが、その響きは自問めいている。真意を測りかね
て彼女の方を向くと、僕の腕の中で身じろぎひとつしないまま、中杢の天井を眺めて
いた。
 彼女の横顔はひどく静かだった。そこからは何の感情も汲み取ることが出来ない。
黒目勝ちの瞳は瞬きもせず。
 いつから彼女はこのような顔をするようになったのだろう。
 変わってしまったものを思って、僕は瞳を伏せた。
 なんとたくさんのものが変わってしまったことだろう。歩む道さえ違えば、牡丹の
ように咲き誇ることもあったかもしれない。しかし彼女はすでに夜にしか咲かない
夕顔だった。
 かつて夫の隣で浮かべていた翳りのない微笑みを奪ったのは、この僕だ。
 ――それでも彼女は僕を赦した。赦すしか、なかったのだろう。
 今思えば、僕の精神状態はそれほど酷い状態にあった。
 僕が命を絶つのではないかという危惧が、彼女に行為を強いさせたのかもしれ
ない。以降、彼女は僕が求めるままに抱かれた。
 君は知らないだろう。
 それが、どんな拒絶の言葉よりも手酷く、僕を打ち据えたことを。

592 :20万hit競作・<宵染めし 2>:04/05/09 03:02
 僕は起き上がると、布団の上から退いた。シャツに袖を通し、釦を嵌める。それ
だけの行為をこなすのに、酷く自制が必要だった。なんとか身支度を整えてから、
僕は未だ褥の上にいる彼女を振り返った。
 彼女もまた身を起こし、白の襦袢を羽織っているところだった。
 目が合った。
 何かを言わなければ。そう思いながらも、胸に渦巻く感情のどれひとつとして
 纏まりのある言葉になることはなかった。
 かつて、彼女を褥の上に縫いとめたときそのままの想いが、まだこの胸に沈んで
いる。抗う彼女がつけた爪痕が、いまだ僕の肩から消えないように。
 激情が喉元まで競りあがり、息を詰まらせる。
 どうして早く気づかなかったのだろう。どうしてこんな伝え方しか出来なかったの
だろう。
 十代のあの頃に想いに気づき、伝えていたならば。
 
「野――」


 ザァァァアァァァァ



 突然振り出した雨の音に、はっとして言葉を呑みこんだ。
 激情が潮のように引いてゆき、代わりに羞恥が僕を包む。この後に及んで
 一体、僕は何を言おうとしていた。
 僕に。

 ――この僕に、何が言えるというのだ。


593 :20万hit競作・<宵染めし 3>:04/05/09 03:02
 絡んでいた視線が、解けた。
 瞳を伏せた彼女は布団の上から出て、衣擦れの音とともに窓の傍らに立った。
 木造の家を叩く激しい雨音が嘘のように、障子紙が滲ませる茜は柔らかである。
 僕が凝と見詰める前で、彼女は肌蹴たままの腹部を柔らかに撫でる。拍子に
襦袢の後ろ襟が動き、白い肩甲骨が見え隠れした。
 彼女は影を映す障子を見詰めたまま、振り返らない。そして足元にある紐を
拾い上げ、胸まである髪を簡単に結いあげた。
 後れ髪が障子越しの夕日に光る。
 僕は堪らず目を背け、そのまま踵を返した。襖に手をかけ、部屋を出ようとした
その瞬間、彼女が何かをちいさく呟いた。


「                   」
 ザァァァアァァァァ


 思わず部屋の入り口で立ち止まる。
 夕立に掻き消されて、何を言っているのかよく分からないと僕は思った。
 ただ、今このときも、彼女はけっして振り返らなかったことだけは確信していた。
 僕もまた振り返らず、今度は立ち止まることなく、部屋を出た。

 ザァァァアァァァァ

 雨音は鳴り続けている。



594 :20万hit競作・<宵染めし 4>:04/05/09 03:03
 雨が降ってからそれほど経過していないにも関わらず、あちこちに大きな水溜り
が出来ている。そこに攻撃的な大粒の雨がひっきりなしに波紋を作り続けていた。
 時折すれ違う人々は突然の雨に降られて一様に小走りであり、ゆっくりと歩く僕を
訝しげな眼差しを遣る。それでも足を速める気力はどうしても湧かなかった。
 ずぶ濡れになって歩きながら、何もかもを忘れられたならと、僕は願う。
 この雨に流すことが出来るのならば。
 全ての色と音を消していくこの雨音が、彼女のあの言葉を塗りつぶしてくれるの
ならば。
 僕は空を見上げた。
 天の一点から、ざあざあざあざあと雨が降ってくる。顔じゅうに痛みを感じながら、
それでも視線を外すことが出来ない。
 今この瞬間、僕は自分が泣いているのか、それとも雨に打たれているだけなのか
分からなくなっていた。

 ――あの言葉は、夕立に掻き消されてしまい、よく分からなかったのだと、出来る
ことならば僕は思い込みたかった。
 鎮めた筈の心を、残酷にも千々に乱すその言葉を、聞かなかったことにしたかった。
『……遣らずの雨ですわね』
 去り際、君はそう云った。

 

 ―――嗚呼!




595 :20万hit競作・<宵染めし 5>:04/05/09 03:05
 「清四郎……っ!」
 刹那、けっして殺すことの出来ぬ声音が、声色が、僕の耳に届く。
 振り返ることを恐れ、僕はそのまま固まった。
 背後の人物もまた、躊躇ったかのようにそれ以上近づいてくることはなかった。
 僕たちの間には、ただアスファルトを叩きつける雨の音だけがあった。それでも
背後に厭わしくも愛しき存在を感じて、僕は金縛りにあったように動けない。
 僕は酷く打ちのめされ、もう自分から動くことなどできない。

 ぱしゃん

 水溜りを蹴り上げるような音が聞こえた刹那、僕は全てを手放し、勢いよく振り
返っていた。
 胸元に抱きついてきた野梨子を抱きしめる。
 強く、これ以上となく強く、骨も折れよと掻き抱く。
 言葉はなく、感情さえなかったのかもしれない。
 
 やがて夕立が過ぎ去り、名残惜しく離れた。言葉なく見詰め合う。
 野梨子は酷い格好をしていた。慌てて着付けた着物は、走ったせいで早くも
着崩れしていた。生地はたっぷりと雨を含んでいる。もう着れないかもしれない。
 結い上げている髪もしとどに濡れて、ぽたりぽたりと雫を零している。僕は髪に
指をさし込んでその紐を解いた。野梨子は瞳を閉じる。垂れる髪を手に取ると、
その一房に口吻けた。髪に含まれる濃厚な雨の匂いが野梨子の体温とともに
立ち上がり、消えた。
 気がつけば日はほとんど落ちて、世界の底だけが赤い。仄暗い世界の中で、
野梨子の髪はもう緑にも薄暮色にも見えなかった。


 ただ繻子のように滑らかな夜がある。
 


                               <了>

596 :20万hit競作・<宵染めし>:04/05/09 03:06
皆さん清四郎を書いているので変えようと思ったのですが、結局清四郎。

597 :名無し草:04/05/09 04:05
>>491-499 Kiss in the Blue
【青】青い空/青い海
清四郎×可憐

>>506-515 誰か知るらむ、天井の……
【紫】天井に海老色の染み/桔梗の柄の藤色/朝顔の紫
清四郎×野梨子母

>>523-530 Marrige Blue
【青】マリッジブルー/青空
魅録×悠理

>>534-531 夜の虹
【色香】【宇宙の色(マジェンタ色)】
清四郎→野梨子

>>549-556 十人百色
【十人百色】【女という色】
清四郎←野梨子?

>>561-569 catch me, if you can
【僕の色に染める】
魅録→悠理/清四郎×悠理

>>572-579 銀の掛け橋
【銀製のジョージ・ジェンセンのカトラリー】
美童×野梨子

>>591-595 宵染めし
【髪の色】緑の黒髪/薄暮色/夜色
清四郎×野梨子

598 :名無し草:04/05/09 04:55
>宵染めし
うわー…。
読んでいくうちにどんどん話にひきこまれていって、その世界に
なんだか圧倒されてしまいました。
空の色と共に野梨子の髪の色が変化していく情景が鮮やかに
浮かんできました。
離れようとして離れることのできないでいる二人が辛いですね。
想いの激しさにもなんだかドキドキ。

>597
まとめ、乙です!
今のところ、かなり良い調子でうpがありますね。まさに豊作だ。

599 :名無し草:04/05/09 11:24
>宵染めし
読んだ後に思わず感嘆の溜息をついてしまった…
素敵でした。


600 :名無し草:04/05/09 12:02
>宵染めし
とても素敵でため息がこぼれました。
この展開だときっと別れが待っていると思っていました。
こうなって幸せと一概には言えないと思いますが、
なんとも言えない切ない気持ちでいっぱいになりました。
「遣らずの雨」という言葉を今回初めて知りました。…大丈夫か、浪人生。

601 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>:04/05/09 14:29
20万hitの競作をupします。清×悠で5レス使用します。同じく清四郎祭りに便乗です。

602 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>1:04/05/09 14:30
息切れする程暑い、夏の日の夜だった。
耳奥に感じる声音は、導を持たず体内を彷徨い、
背中に感じる身体の重みは、僕をとても不確かな気分にさせた。


     ―――――――――――――――――――――――――


近くの河川敷で、恒例の花火大会が行われた。
僕はその数日前まで雲海和尚の師事の元、夏合宿に参加していた。
都心の盛夏はじめじめと蒸し暑く、それ故に、人々が集う場では冷房が効き過ぎていた。
好んで通っている図書館も、コーヒーの美味い喫茶店も、一人の時間を味わうには相応しくない程、
冷え切っていたのだ。だから合宿の話が持ち上がった時、僕は二つ返事で承諾した。
向かった先は、北端の大地だった。
陽が昇り切らないうちに起床し、潔い白地の柔道着に袖を通す。
神聖な黒帯を固く締めると、心持ちまでも引き締まる気がした。
道場の葦戸を開け、手付かずの空気を呼び込む。
そして陽が傾くまで、己の精神や肉体を鍛え上げる。
清清しい土地で流す汗は酷く正しく、健康的に思われた。


603 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>2:04/05/09 14:31
僕は其処で夏休みの大半を過ごした為、稽古も最終日を迎える頃には初秋の気配を
感じるようになっていた。高い空に、千切れ雲が映える。
見上げたそれに、懐かしい顔が重なった。
この生活を知れば、彼らは僕のストイシズムに閉口するだろう。
幼馴染の彼女は、眼差しの奥に戸惑いを見せるかもしれない。
そして――あいつはどう思うだろうか。
瞬時、苦虫を噛み潰したような歪な顔が浮かび、僕は一人、苦笑いした。



帰りの車中、活字に目を走らせていると、視野が橙に染まった。
沈みゆく日輪の光りだった。
僕はふいに、高校生活最後の夏休みであったことに気付いた。
しかし、そのことに特別な意味付けをする気は毛頭無かった。
何故なら、夏はまた巡るのだから。その形や色合いを、僅かに変えて。


604 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>3:04/05/09 14:33
久方振りに戻った東京では、残暑が待ち受けていた。
湿り気の多い空気が身体を支配し、僕は期せずして不愉快になる。
何故、こうも暑いのだろう。着込んだカッターシャツに、汗が伝わり落ちた。



花火大会の夜、張り切って着たと言う紫陽花模様の浴衣は、闇に映えた。
しかし時が進むに連れ、その表情は次第に曇っていった。
見ると、下駄の鼻緒が擦れ指の皮が剥け、仕舞いには鼻緒さえも取れている。
そこで止むを得ず皆とは行動を逸し、彼女を背負い帰路に着くことにした。
詰まらないと零す彼女に気の利いた話でもと思ったが、
結局僕は、この夏の規則正しい日々を語ることに終始した。
僕の話を、彼女は僕の耳元で笑ったり頷いたり、時折言葉を挟みながら聞き入っている。
こうして僕は僕たちの繋がりを見出し、拙い細切れの出来事をとり止めも無く紡ぎながら
二人の思い出へと変えていった。



花火がしたい、と背中の彼女が呟く。僕は同意し、通り掛かりの店で花火を買い求めた。
出る直前、レジ近くに置かれたビーチサンダルが目に留まった。
窓越しに窺い知る彼女は、パーキングエリアの片隅に腰を下ろし、星々を仰ぎ見ている。
彼女を引き止める尤もな理由が失われそうで、僕は躊躇う。
そして、花火一つを手にしたまま店を後にした。



ライターで点した蝋は、緩やかに灯りを発した。僕たちは境内の石段を陣取り、火花を楽しんだ。
夜空を彩る大輪の菊のような艶やかさには敵わないが、
灯火に浮かぶ刹那の花々は、その儚さ故に、言わずとも過ぎゆく季節を思わせた。
彼女は、何も言葉を発しない。尽きる寸前の蝉が、ジジ、ジジ、と短く鳴いている。
夜半に任せた僕は、隣に咲く鮮やかな紫陽花を臆すること無く捉えていた。


605 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>4:04/05/09 14:34
今ならば、と僕は思う。
今なら僕は、僕がこれから歩むべき道について語ることが出来る。
皆より一足早く、高校生活に区切りをつけること。そして、それが目前に迫っていること。
住み慣れた街の夏を拒んだのは、暑さの所為だけでは無かった。
僕は、気付かぬ振りをして飛び立つ積もりだった。
そして見知らぬ土地で霧雨を眺めながら、甘美な追憶に浸れば良いのだと考えていた。
この街に、余計な足跡を残して行きたくは無かった。
僕は、彼女の涙を懼れた。
彼女の笑顔を奪う日々を懼れた。
より的確に言うならば、彼女の日常から僕という帆影が失われることを懼れたのかもしれない。
僕は言葉を択びながら、慎重に、且つ事実だけを淡々と述べていった。



話を終えると、彼女は先程に倣い天を仰いだ。
そして泣きも驚きもせず、ただ一言、この花火キライ、と零した。
殆どの花火が燃え尽き、残すは心許無い線香花火だけになっていた。
嫌う理由を、華美から離れている所為なのかと訊くと、彼女はゆっくりと頭を横に振る。
そして左頬を、僕の肩先に預けた。
最後の花火に灯火を移す。パチリ、パチリ。
弱弱しかった花が、徐々に息吹を増す。
消えた後、覗き込んだ瞳は残り火を映しとり、幾つかの色合いに染まっていた。
重ねた唇は、夏の香がした。
僕は瞼の裏に、暗がりに紛れてしまった彼女の左耳の、青いピアスを思い描いていた。
そして恐らく耳にすることの叶わない、蜩の鳴声を思い起こしていた。


606 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>5:04/05/09 14:35
僕は、東京の夏が、移りゆく季節の中で一番好きだった。
排気ガスと角張った味気無い空に囲まれている街の、鈍く、騒々しく、厳しい夏の日々を僕は愛した。
それはまた時として、青く、白く、溌剌とした活気ある表情を見せることも知っていた。
そして僕の胸裏には、あの日求めた青い花が今でも咲いている。
決して枯れること無く、瑞々しい花びらを従え、深く根を張り、僕の心に咲き続けている。



今年もまた、夏が巡る。
花火を手にした僕は、記憶の海に漂う蜩の音色に馳せながら、
伸ばされた左の掌を、しっかりと握り締めた。
揺れる紫陽花柄の袖口は、白南風の薫りを含んでいた。



                      <終わり>

607 :20万hit競作・<夏の夜、青い花が咲く>:04/05/09 14:36
有難うございました。

608 :名無し草:04/05/09 16:54
>夏の夜、青い花が咲く
やった!清×悠だ!
代名詞だけの展開で、まるでサイレント映画のように浮かび上がる情緒を楽しめました。
多くを語らない悠理とそれを見つめる清四郎と二人の繋がった想い。うーん、いいお話だったぁ・・・。

609 :名無し草:04/05/09 18:04
>catch me, if you can
極彩色の鳥が飛び回るジャングルに遊ぶ三人の姿が目に浮かびます。
場面転換に切れがあり、最後まで気持ちよく読めました。
しかし、一体どこで寝たんだ、魅録w

>銀の架け橋
銀のカトラリーが優雅さに一役買ってますね。
古くからあったものに新しいもの(歴史)が加わっていく様子が
ほのぼのしました。


610 :名無し草:04/05/09 18:05
>宵染めし
清四郎に引きずられるように墜ちて行く野梨子の
それでも清らかな佇まいが何とも言えません。
時は夕闇が訪れる頃ですが、夜明けのような雰囲気がします。

>夏の夜、青い花が咲く
うーん、たぶん作者さんの頭の中には全体の話のイメージが朧げにしか無いのだと思います。
読み解くのにかなり時間がかかりました。
清四郎がちょっと「青い」ですね。本人は旅烏を気取っているようですが。

力作なのできつい意見を言うのは申し訳ないのですが、一つ一つの言葉の意味を
もっと正確に捉えてほしいと思います。
もちろん自戒も込めてますが・・・。


611 :名無し草:04/05/09 18:19
>夏の夜、青い花が咲く
誰に聞かせるでもない清四郎の心の内、頭の中をそのまま、思い出すままに
書きつづったもののような印象でした。
清四郎、すこし自分に酔ってるような気もするなぁ…(苦笑)。

610さんがおっしゃるように読むのに時間がかかり、まだ作者さんのイメージが
かたまっていないのかなと思いました。ただ、視点を変えると、
「青い」清四郎の「青さ」がよく出ていたとも言えるかもしれません。

612 :名無し草:04/05/09 19:26
赤ペン先生がいつもはりついてるスレはここですか?

613 :名無し草:04/05/09 20:02
20万HITおよび、お祭り開催おめでとうございます!
お目汚しになりそうですが、私もお祭りに参加したく、ぬるいカポー話をうpさせて頂きます。
7レス程頂きます。

614 :銀色の出来心(1):04/05/09 20:04
「清四郎、今日は先に帰って下さいな。クラスの子とちょっとした用事がありますの」
――やはり悪いことなんてするものではない。
一つの悪事を隠すために、また一つこうやって、罪悪感を背負う羽目になるのだから……。
清四郎は私の嘘を見抜いたかしら。
彼は勘の鋭い人だから、野梨子の態度に何かを感じているかもしれない。その考えが野梨子をまた少し憂鬱な気分にさせ、彼女は小さなため息をほうとついた。
大丈夫、絶対に誰にもわからないわ。だってあの時、部室には誰もいませんでしたもの。湧き上がる不安を追い払うように、野梨子は強く自分に言い聞かせた。
放課後も遅い夕暮れ時。
人影もまばらになった校舎にチャイムの音が鳴り響くと、彼女は身を翻して走り始める。
本当はこんな目立つ行動は慎むべきなのはわかっている。けれども野梨子は自分でもよくわからない衝動に突き動かされて走らずにはいられなかった。
チャイムの音色に急き立てられるように、誰もいない廊下を駆け抜ける少女の姿は、軽やかでありながらどこか危うく、不安定だった。
やがて『3―C』と書かれた教室の前にたどり着くと、弾んだ息を整える。
もう一度辺りを見回して誰もいないことを確認すると、野梨子は扉を開き、そっと中に忍び込んだ。

615 :銀色の出来心(2):04/05/09 20:06
しんと静まり返った教室では、足音がとても大きく響いた。
野梨子はゆっくり教室を横切ると、窓際に近い机の前で歩を止めた。
机の前に立ち、ポケットに手を入れると、中からそっと一つのものを取り出す。
大事そうに包んでいた手をゆっくりと開けると、手の平の上で、何か小さな銀色の欠片が光った。野梨子の大きな目がまぶしさに耐えかねるように細められた。
彼女は手の平の上で静かに輝く銀色の光をじっと見つめていた。
この光は彼女のものではなかった。彼女はこの光の持ち主の、翳りのないまなざしを思いだして、罪悪感と後ろめたさで胸が痛くなった。
どうして、あんなことをしてしまったのだろう。
あれから何度目かの後悔が彼女をさいなむ。
人のものを盗むなんて。
これまで穢れひとつなく生きてきた彼女に、盗みという言葉はとても重かった。
最初、野梨子にそんなつもりはなかった。すぐに返してあげるつもりだった。
なのに手に入れたいと思ってしまった。彼の大切にしているものを手に入れて、手放せなくなってしまった。
野梨子が手にしているもの、それは男物のシルバーリングだった。

魅録がこの指輪を身につけるようになったのは、もう随分まえのことだった。

616 :銀色の出来心(3):04/05/09 20:11
「時間より早く着いちまってな、お前らを待ってる間に、ほら、コイツを、そこの露天の兄ちゃんから買ったんだ」
そう言って魅録が、指輪をはめた手を得意そうに見せびらかしたのは、みんなで映画に行くための待ち合わせをしていた時のことだった。
少し日焼けした魅録の指に、シルバーリングはとてもよく似合っていた。
どうだ、似合うか?と聞いてきた魅録に、あの日、野梨子は思った通りに、えぇ、よく似合ってますわと答えたのだった。
さんきゅっ、そう言ってにっと笑った魅録は、まるで宝物を誉められた少年のようだった。あの時の笑顔は、今も野梨子の目の上に、残像のように残っている。
そんな些細なきっかけで手にした指輪を、魅録はそれ以来とても大事にした。
どこに行くときも魅録の指にはその指輪がはまっていたし、時おりは部室で指輪を磨いていることもあった。
そんな時は窓際に椅子を持っていって、黙ってせっせと磨いている。大きな体を丸めて作業に没頭しているかと思えばつと伸びて、指輪を日光にかざして輝きをみる。
そんな魅録の、星を眺める天文学者のような無垢な表情を見つめていると、野梨子は幸せな気分になれるのだった。
そんな魅録が指輪を無くしたのは1ヶ月程まえだった。
「あれ?おっかしいな、どこいったんだ!?」
魅録は随分と探し回っていた。野梨子達も手分けをして色々な所を見て回ったけれど、指輪は出てこなかった。
魅録はお気に入りの指輪が消えて、すっかりしょげてしまい、野梨子は魅録が大切にしていたものが一日も早く見つかるように願いながら、
気にしてあちこち見て回るようにしていた。
そして、見つけたのだ。

617 :銀色の出来心(4):04/05/09 20:14
その日、部室に一番乗りした野梨子は、メンバーが来るまでに全員のお茶の準備をしていて、手を滑らせて茶さじを落としてしまった。
小さな茶さじは思いのほか勢いよく飛んで、食器棚の下奥深くに入り込んでしまい、野梨子は苦労して取り出す羽目になったが、
その時さらに奥の方で、きらりと光る銀色の光を見つけたのだ。それは六人全員であんなに探しても出てこなかった魅録の指輪だった。
指輪は光など届く筈もない場所から、まるで野梨子にここにある、見つけてくれと誘うように輝いていた。
野梨子はぼんやり思い出した。指輪が消えた日、可憐が部室に、お風呂で見る為のポータブルTVが壊れたから魅録に直して欲しいと持ってきた。
魅録は床に座り込んでTVを修理して、その時に、細かい作業に邪魔になる指輪を無意識に外して、脇に置いたのかもしれない。
そしてそれを食器棚に食料品を漁りにきた悠理が謝って蹴っ飛ばしたのかもしれない……。
野梨子は指輪を手に入れた。
埃を払い、銀色の輝きに見入っていた野梨子は、部室に誰かが入ってくる気配を感じて、とっさにそれをポケットに仕舞い込んだ。
メンバーは次々と揃い、やがて魅録も現れたが、とうとう野梨子は指輪を彼に差し出すことは出来なかった。
それ以来、罪悪感は日に日に募り、今日は返そう、今日こそは返そうと思いながら、今も指輪は野梨子のもとにある。
魅録の大切なものなのに、大切なものだからこそ。
メタリックで硬質な、けれどどこか温かみのある銀色の光が、どことなく指輪の持ち主に似ていことに気付いたのは、今さらになってからだった。
こうして手放せないまま日々は過ぎた。

618 :銀色の出来心(5):04/05/09 20:18
私、なんて子供じみたことをしているのかしら。
野梨子は滑らかな指輪の表面をなぞりながら決心する。
でも、それも今日でお終いにするのだ。この指輪を魅録の机に返してしまえば問題は解決する。誰にも見られずに、指輪を机の中に置いてしまえば、
後ろめたさからも開放され、野梨子はいつもの毎日に戻れるのだ。
これを返してしまえば、きっともう魅録を見て胸が痛くなったりすることもなくなるだろう。そう思うと、何より気が楽になった。
(――嘘つき)
さあ、返してしまおう。机の中にそっと戻しておけばいい。魅録の指輪はそれなりに有名だから、きっと校内のどこかで落としたものを、誰かが届けてくれたと思うだろうし、
もしかしたら最初からそこにあったものを自分が気付かなかったくらいに思うかもしれない。魅録はそういう人だ。人を疑うことはしない。
魅録はとても真っ直ぐな人ですもの。
野梨子は指輪を机の中に仕舞おうと身を屈めた。
その時、指輪がきらりと光った。銀色の光が目に焼きつく。
(――本当に、それでいいの?)
野梨子の手が止まった。

619 :銀色の出来心(6):04/05/09 20:21
野梨子は無意識に指輪を手元に引き寄せていた。
指輪は銀色の光を湛えて、ただ静かにそこにあるだけだった。
ガラガラッ!突然、教室のドアを開ける音がして、野梨子ははっとした。
「あれ?野梨子!?」
そう言った声に、野梨子は凍って動けなくなった。
魅録!どうして!? 野梨子の呼吸が止まった。
「どうしたんだよ、こんな所で?…あれ、その指輪――」
背中に魅録の視線が痛いほど刺さる。
野梨子は混乱した頭で、必死になってこの場を治める方法を考えた。
いま見つけたんだと嘘を吐くのが一番いい考えに思えた。それなら多分、決して難しいことじゃない、けれど―――
(それが本当に、私の望んだこと?)
「どした?…野梨子?」いつもと違う様子の野梨子に魅録が声をかけた。
指輪を掴んだ指先は冷たく温度を失い、短い時間の中で野梨子の思いは千千に乱れとぶ。野梨子は懸命に考えた。そして――
結局、野梨子は、本当はずっと前から気付いていた事実にたどり着いた。

620 :銀色の出来心(7):04/05/09 20:25
野梨子は振り向いた。そこには少し心配そうに自分を見つめる、強くて真っ直ぐな瞳があった。
「――私、魅録に謝らないといけないことがありますの」
そう言って、指輪を持った手を魅録に向かって差し出す。
黙って指輪を返して、知らぬ素振りで済ませれば、この場はきっと乗り切れるだろう。でもそれは、魅録に嘘をつくということ。
最初からわかっていたこと。魅録にだけは、私は嘘を吐きたくない。
この偽りの無い、穢れない眼差しを持った、この人にだけは。
野梨子は一度目を閉じて、そして開いたときに彼女は、魅録に、そして芽生え始めた想いに対峙した。

<終り>

621 :名無し草:04/05/09 21:19
>銀色の出来心
野梨子の揺れ動く心が素敵です。
事件に向かうときは強いのに、恋愛ごとには乙女そのもの
魅録に心が通じるといいですね。

622 :名無し草:04/05/09 22:01
>銀色の出来心
揺れる乙女心をうまく表現してるなと思いました。
可愛いな、野梨子。
魅録とうまくいくといいでつね。乙です。

623 :名無し草:04/05/09 22:51
>銀色の出来心
銀色の指輪が自分にもひどく魅力的なモノに感じられました。
罪悪感を感じつつも返すことの出来ない野梨子の気持ちが良くわかるなぁ。

624 :名無し草:04/05/09 23:10
毎日新しいお話がうpされていて、お祭り万歳!です。
豊作・大漁・大入り満員(ちょっと違う…)!!
作者様方、本当にありがとうございます。
今のところ、意外にもしっとり系が多いですね。
どれも素晴らしくて、もちろん全部読ませていただいてます。
これからも、どんなお話が出てくるかと楽しみにしてまーす。
(そろそろRも降臨しないかな〜〜〜w)


625 :名無し草:04/05/09 23:54
>624
お祭り万歳に激しく同意です。
まだ期間の半分しか過ぎてないのに、こんなに沢山の素敵なお話が
読めるなんて。後半にも期待大です。
Rもですが、絵師さんの降臨もきぼん。それから、連載の続きも読みたいです。
クレクレ厨でごめんなさい。それぐらい楽しみにしてますってことで。

626 :名無し草:04/05/10 00:49
ホント、豊作ですね。ついでに豊作さん話も出ないかな、なんて。

627 :名無し草:04/05/10 09:27
絵師さん降臨シテター!
イラストトップバッター乙です。
妄想をかきたてるような二人の世界にウトーリ

作家さんも豊作だし、今回の競作は本当に華やかですね。
他の絵師さんの降臨にも期待してます。

628 :名無し草:04/05/10 09:44
>少女時代(絵板)
絵師さん降臨!万歳万歳万々歳!
たまりません、悠×野の間に流れる甘くて気だるい感じが。
桃色で染めつくされた室内で、ベッドに散る薔薇の紅い花びらが
アクセントになってますね。

上にも出てるのだが、一応絵板のURL貼っときますね。

http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi



629 :名無し草:04/05/10 10:35
嵐さんの中間報告だと他にも2つあるそうな。
メールで送ったってことはRイラストかな?ワクワク

630 :名無し草:04/05/10 17:31
>銀色の出来心
揺れる野梨子の心がすごく可愛かったです。
終わり方もいい!
>少女時代
悠×野キター!!(AA略
野梨子の目元がたまりません。保存です。

631 :名無し草:04/05/10 17:51
>少女時代
うっ、野梨子魔性だぁ。悠理が食われてるのが悠理スキーとしては悲しい。

632 :名無し草:04/05/10 22:49
今夜は静かでつね・・・。
作家さん、絵師さん、お待ちしておりますよ!

633 :名無し草:04/05/10 22:59
20万ヒットを祝って競作に参加します。
カップルはネタばれになるので書きませんが、混合ものです。
6レスお借りします。

634 :20万hit競作・<色模様> (1):04/05/10 23:01

忍ぶれど 色でにけり 我が恋は ものや思ふと 人の問ふまで


 あーあ今の俺じゃん、と魅録は頭を抱える。

 昨日、美童に言われた。
「そんなに好きなの?」
 視線の先にいたのは彼女。とぼけてみせたものの、充分過ぎるほどの反応を
示してしまった俺。なんでアイツは、こういうコトには敏感なんだよ!? ずっと
隠してきたのにな。
 だって、彼女には清四郎がいる。悔しいけどお似合いだ。大体、俺と彼女なんて
接点無い。有閑倶楽部で出会わなかったら、絶対白い眼で見られてたぜ。最初に
会った時も、露骨にヤな顔されたしな。

 裕也に惚れた時は驚いたよなぁ。あの男嫌いが裕也を庇うもんだから、スッカリ
毒気を抜かれちまった。
 清四郎は「お嬢さんは不良っぽい男に弱いものです」なんて悟ったようなこと
言ってたけど、それなら、俺だって似たようなモンだと思うんだが。なのに、
こっちは「何をなさるの!? いやらしい!」だぜ。大違いだ。

 分かっちゃいるけどな。あの頃は男に偏見持ってたみたいだし、自分の勘違いに
気付いてからは、顔を真っ赤にして謝ってもくれた。あの時の可愛さったら!
 いや、それはともかく、だ。問題は残りの四人だ。つーか、清四郎と可憐だ。
あの二人も知ってるんだろうか? まさか本人も……!? うわっ、それだけは
勘弁して欲しいぜ。悠理にまでバレてたら最後だな。
 ここは思い切って告白した方がいいのかな。でも、どう考えても見込みゼロだぞ。
う〜ん……

635 :20万hit競作・<色模様> (2):04/05/10 23:02

花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに


 怖いものですわね、と野梨子は考える。

 「無駄な物想いをしているうちに長雨も降って、自分の容貌も空しく色褪せて
しまった」なんて、他人事(ひとごと)とは思えませんわ。いえ、小野小町みたいに
美人だと自惚れているのではなくて、恋煩いで見られない顔になっているのでは
ないかと、不安でたまりませんの。
 魅録にだけは、そんな顔を見られたくないですわ。少しでもいい顔を見て欲しい
と思ったり、そんな自分の自己顕示欲が厭だったり。

 裕也さんの時は、こんなではありませんでした。あれこれ考える間もなく時が
進みましたし、恋していたことに気付いたのでさえ、お別れした後でしたもの。
 でも今回は、悩んでばかり。長い間仲間として過ごしてきたから、そしてそれを
壊したくないから、どんなことをしてでも隠し通そうと思うのに、視線は魅録を
追ってしまう。
 笑顔が好き。友達思いなところが好き。正義感の強さが好き!

 ああ、またこんなに心が溢れてしまいましたわ。止める事のできない想い。
自分で自分をどうすることもできないなんて、恋って怖いものでしたのね。可憐に
言ったら、当たり前でしょ!と怒られそうですわ。
 でも、私は知りませんでしたもの。恋がこんなに重いものだなんて、魅録を
こんなに好きになってしまうなんて……

636 :20万hit競作・<色模様> (3):04/05/10 23:05

君ならで たれにか見せむ 梅のはな 色をも香をも 知る人ぞ知る


 ほうっ、と清四郎は吐息を漏らす。

 「あなた以外の誰に見せましょうか、梅の花を。その優れた色や香りを分かる
人は少ないのです」というところですかね。今まさに、そういう心境ですよ。
 今までなら、梅の花を見付けることがあったら、野梨子に見せたでしょうね。
彼女は梅の花が好きで、その凛とした佇まいもよく似ていますから。大切な幼馴染
の笑顔を見るのは、気持ちのいいものです。
 でも今は違う。見せたいのはあの女性(ひと)。二人で一緒に見て、感動を分かち
合いたい。彼女なら、美しさや匂やかさを分かってくれるのではないかと。

 分かる人は少ない――そう、彼女の本当の良さを分かる人は少ないんですよね。
いつも男と夢を追いかけているような人ですが、自分を磨く努力は怠らないし、
どんなに好きになった相手でも取り込まれない強さを持っている。それでいて、
とても情が深い。
 自分だけは分かる、と思ってしまうのも、恋ゆえなのでしょうか。涙もろさも
秘めた純情も、僕だけには分かる、なんて。

 玉の輿を作る自信はありますが、好かれる自信が無いのが困りものです。冷血漢
だと思われていそうですしね。まあ、実際そうなんですが(苦笑)。でも、彼女への
熱い想いには、冷血漢を返上したい気分ですよ。
 高千穂のことを値踏みしてしまったのは、あの頃にはもう好きになっていたから
でしょうね。このタイプでOKなのに、何故僕は駄目なんだろうと。

 さて、どうしましょうかね。こういう方面はどうも苦手です。ロマンチックな
ことが好きだから、ムード作りが大切と分かってはいるのですが、美童のように
臆面もなくできませんしね。フム……

637 :20万hit競作・<色模様> (4):04/05/10 23:06

色見えで 移ろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける


 冗談じゃないわよ、と可憐は腹を立てる。

 「色が見えていて変わるものは花ですが、色が見えないで変わるものは世の中
の人の心という花です」ですってぇ……しかも、「『世の中の人』という言葉は
『男性』を指す」って何よ!? 世の中には女だって半分居るのよ。これじゃ、
男しか居ないみたいじゃない!
 裏切った男をなじりもせず、人の心は移ろいやすいものですからねぇなんて、
浮気男を庇ってどうすんのよ! こんなこと言ってるから、男が調子づくのよ。

 ……分かってるわ。この歌が清四郎を思い出させるから頭にくるんだって。
女に真剣に惚れるなんて、絶対にしない奴。付き合って女がその気になった頃に
アッサリ振って、こういう歌をしれっと呟くタイプよ、あれは。
 分かってるのに、何で惚れちゃったんだろ。あんな冷血漢を好きになっても、
泣かされるのがオチなのに。あの冷静な顔を崩したいって思っちゃったのよね。
その下にある、誰も知らない素顔を見たい、私にだけは見せて欲しいって。

 えーい、思い悩んでるなんて可憐さんらしくもない。恋は実行あるのみ。玉砕が
怖くて、女やってられるもんですか!
 ……なんて意気込んでみるものの、仲間内の相手だとやりにくい。他の四人にも
気を使うし。
 清四郎って、やっぱり野梨子が好きなのかしら? 野梨子の方は、どうも恋してる
みたいなのよね。しかも、相手は清四郎では無さそうで。って、野梨子よりあたしよ。
ホント、どうしよう……

638 :20万hit競作・<色模様> (5):04/05/10 23:09

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず


 僕のためにあるような歌だな、と美童は思う。

 古典は苦手だけど和歌はいいよね。恋の歌や季節の歌。繊細な僕にピッタリだ。
 「濡れに濡れる雄島の海人(あま)の袖でさえ、私の袖のように紅色には変わって
いないことを、あなたに見せたいものです」か……僕の袖の色もそうかも。でもなぁ、
この歌を囁いてみたところで、あいつはナニソレ!?で終わっちゃうだろうな。古典
なんて、宇宙語ぐらいにしか思ってなさそうだし。

 情緒や色気とは凡そ無関係。なんで、あんなガサツな奴に惚れちゃったんだか。
どこが好きなんだろう? 食欲魔人で乱暴者で知性ゼロ。いいトコなんて全然無い。
 けど、天真爛漫なところは、ちょっといいかなって思う。
 澄ましていれば結構美人だし、ほんのたまにだけど、ドキッとするような色っぽい
眼差しをすることがある。友達思いのトコもいいよね。口ではキツイこと言ってても、
本当は優しいしさ。僕に無い逞しさも魅力的だ。

 でも、どうやって口説けばいいんだろ? 花より団子タイプだから食べ物で釣る
のがいいかなって思うけど、それだけではイイヒトで終わっちゃいそうだし。
 僕が本気だって知ったら、大声で笑い飛ばしそうな予感がする。それでもいいや
って思ったり、そんなの耐えられそうにないって思ったり、五分おきに悩んでる。
これじゃあ、プレイボーイも形無しだよ……

639 :20万hit競作・<色模様> (6):04/05/10 23:11

花は散り その色となく ながむれば むなしき空に 春雨ぞ降る


 なんだこりゃ、と悠理は呆れる。

 「桜の花は散ってしまって、心惹かれる色もないままに眺めていると、曇った
大空からは春の雨が降り続けることです」って、だから何なんだよ!? 惹かれ
ないんなら、他の物見るとか、見るのやめて他のコトすりゃいいじゃん!
 こいつは暇人なのか? あたいたちも暇人だけど、雨を眺めるなんて物好きは、
恋した時の可憐ぐらいなモンだぞ!?

 あ、もう一人いた。美童だ。あいつ、最近ヘンなんだよな。女からの誘いも全部
断ってるみたいだし、空を見上げては溜息、菓子食っては溜息ついてる。
 こっちをよく見てるのも妙な感じだ。お説教するつもりか、そんなのは清四郎
だけで沢山だと思ったけど、何も言わずにジーッと見てるから違うみたいだし。
目が合うと胸が苦しくなるから、止めて欲しいんだよな。

 一度ハッキリ言ってやろうか? お前のせいで気分悪いんだって。何か知らない
けど、お前のコトばっかり考えちゃうんだぞって。食欲も落ちてて、好きな物が
全然食べられないから腹立つったら。それもこれも、全部美童が悪いんだっ!!!

640 :名無し草:04/05/10 23:12
以上です。
1レスに一人分ずつ書くやり方は、1回目の競作の時の「旅立ち前夜」さんを
真似させていただきました。ありがとうございます。

641 :名無し草:04/05/10 23:20
>色模様
待っていたかいがありましたw
六人六様の恋模様がとてもらしくって良かったです。
色をお題にした歌っていろいろあるんですね。
大変興味深く見ました。乙です!

642 :名無し草:04/05/11 01:28
>色模様
恋だと自覚していない悠理が、とっても悠理らしくて良いですね〜。
歌に対しての『なんだこりゃ』っていうのも(笑)


643 :名無し草:04/05/11 01:43
競作参加させてください。
美×野です。

644 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(1):04/05/11 01:44
美童グランマニエは焦っていた。

「えっ、そ、そうなの? もう東京駅? これからタクシーで帰るって?
 わ……かったぁ。ずいぶん帰るの早かったんだね。ほら、明日帰ってくるって
 言ってたじゃない? え? 帰ってきたら困ることでもあるんですかって?
 そんなことあるわけないじゃなーい。あははははは。じゃ、あとで」

ぶち。と電話を切ると美童は血相を変えてベッドに腰掛ける女を振り返った。
明らかに今の会話を聞いていたであろう彼女は、しかし美童の流す冷や汗を
気にも留めずに、すました顔で煙草をふかしている。
純白の部屋の中に繊細な装飾が施された白のベッド。白い絹のシーツの上に白い裸体。
屋敷全体を白を基調にまとめているのは、今はグランマニエ姓を名乗る野梨子の趣味だ。
その野梨子がもうすぐ帰って来る。

「……奥さん?」
煙を吐きながら女が問う。美童は焦りを悟られないようににこやかな笑顔を作った。
「そうなんだよ、ごめんね。もっとゆっくりしてもらいたかったんだけどさ、
 もう東京駅なんだって。タクシーに乗るらしいから、たぶん30分位で着くと思うんだ」
「ふぅん」
明るいティーブラウンに染め上げた髪を掻き揚げる女は、生返事をしながらそれでも動こうと
しない。美童は焦れて声をかけた。女の帰りを急かすなんて最低だ。だけど今はそんなこと言ってられない。
「あのさぁ、悪いんだけど……」
「……ああ。ごめん」
物憂げに返事をすると彼女はようやく仕度を始める。
だが昨夜、ダーツバーで知り合った30半ばのこの女の動作は明らかに鈍で、美童の額に
油汗が滲み出してきた。率先して彼女の仕度を手伝う。



645 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(2):04/05/11 01:45
「えっと、君の服は……ゆうべ雨でずぶぬれになって乾かしたんだっけ」
「洗濯機で洗って、バスルームで浴室乾燥機にかけてるわ」
ダッシュで浴室まで行くと、彼女のブラウスを取ってくる。
目も覚めるようなショッキングピンクのブラウスはすっかり乾いていた。
女は礼を言うと下着の上にブラウスを纏う。
小ぶりだが形のよい胸に美童は一瞬惜しいような顔をしたが、すぐに我に返る。

「はい、鞄。雨に濡れたけど余り染みになってないみたいだね。よかった、よかった」
「美童くん、私の靴のヒールが昨日折れちゃったの、覚えてる?」

忘れてた。
美童は玄関まで走る。
大理石を敷き詰めたその空間は思い切り広々ととったおかげで、
家の印象をより豪奢なものにしている。
冷たく白い床の上でネイビーブルーのミュールが可哀想なことになっていた。
踵が首の皮一枚でつながっているのを見るや、美童は身の丈以上もあるシューズ
クロゼットを漁り、奥の方から最近妻が履いているのを見たことがない
可愛らしいデザインのパンプスを引っ張り出すと、それを持ってベッドルームに
引き返す。

「こ、これ。ヒール直す時間が無いから、代わりに履いてって」
「可愛い靴ねぇ。奥さんのでしょ、いいの? ……22.5センチ!? あなたの奥さんってずいぶん
 小さい足なのねぇ。私、24.5センチだから無理よ、履けないわ」
ドレッサーの前に座りローズの口紅を引き直しながら女は笑う。
美童は心の中で舌打ちした。君、楽しんでるな? それどころじゃないんだよぉ。

「タクシー呼んであげるから、そんなに歩かなくていいんじゃない?
似合うから履いていきなよ。どっちみち、君の靴を直す時間は無いんだ、ごめんね」
鏡の中の顔が悪戯っぽく美童の顔を見上げる。
「タクシー? いいわよ、私のうち遠いし、電車で帰るわ」


646 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(3):04/05/11 01:46
優しげな微笑を浮かべて美童は女の肩に手を置いた。
「いいって。タクシー代位、僕が出すから。慌てさせたお詫びさ」
女は冷たく美童を見るとこう言い残して洗面所に消えた。
「いいの? 私の家、芦屋だけど」
「あ、芦屋!? ぐっ……い、いいさぁ」

東京から芦屋までタクシーで幾らかかるのかなぁ。
さすがの僕もちょっと痛いかも。今月のお小遣い足りるかなぁ。

肩を落としていた美童は身支度の終わった女が金のキャップがついた小さなアトマイザーを
取り出したのを見て慌てた。
「ちょっ、だめだよ。コロンは匂いが残るから……!」
女は驚いたように目を見開いた。
それから微笑んで、

 シュッ

「あっ……」
美童は芳しい霧が自分を包むのを呆然として見守った。




647 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(4):04/05/11 01:46
「くっそー。匂いが取れないじゃないかぁ」
女がタクシーに乗って走り去った後、あわててベッドルームの窓を開けた。
思い出したように自分の匂いを嗅ぐ。
いかにも女性向の甘い香りが鼻を衝いた。
「どどど、どうしよう。シャワー……いや、こんな時間にシャワーは怪しい。
そうだ、もうこれしかない……」
美童は自分のコロンを取り出すと、思い切り香りの霧を浴びる。
「う。ぐっ。お……えーーーーっ」
Mixされた匂いは強烈な悪臭となり、たまらず美童は洗面所に駆け込んだ。
リバースしそうになったが何とか持ち直した美童は思わず洋式便座に腰掛け
ため息をつく。
彼の透き通るようなブルーの瞳に、艶やかな薔薇色が映る。

「な、んじゃ、こりゃーーーーーーっっ!」

洗面所の白いドアにデカデカと赤い文字が書かれている。

『ビドー 最低男。とてもステキな夜でした。忘れないわ。ばーか』

「僕も忘れないよ、きっとーーーっ」
と、叫びながら美童は洗面所のタオルでごしごしドアを拭いた。
白いドアに書かれた赤い文字は擦れて薄くなったものの、
完全には赤色が拭き取れない。
おまけにまだ文字が読み取れる。

「ああああああ」
頭を抱えた美童はふとグッドアイデアを思いついた。
ベッドルームに走ると、ドレッサーの引き出しから野梨子が置いていった口紅を
取り出し、再び洗面所に走る。
そしてドアの赤い汚れが残った上に口紅で文字を書き出した。

648 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(5):04/05/11 01:47
『ノリコ 最高女。とてもステキな女で す。忘れない 。びーど』

「まぁ……美童ったら」
ドアの文字を読んだ野梨子は感激の面持ちで久しぶりに会う夫に微笑んだ。
「嬉しいですけど、なんだか恥ずかしいですわ。こんなドアになんて……。
それに忘れない、なんてもう会わないみたいですわよ」
「そ、そうかな」
内心疲れ切っていたが、そんなことはおくびにも出さずに美童は微笑んだ。
「でも、嬉しいですわ、美童。こんなに書き直した痕が……頭を捻ってくださったのね。
 旅の疲れも吹き飛びそうですわ」
しかし、野梨子はそこで顔をしかめ、夫の身体に顔を近づける。
「……なんか、臭いですわよ美童。一体何をおつけになったの?」
「あ、こ、これは、最初につけた香りが気に入らなくて、別のをつけたら変な臭いに
なっちゃって……」
「別の?」
野梨子の瞳がキラリンと光った。
「美童はお気に入りの香水、一つだけですわよね。学生の頃からずっと使っている……。
 それともう一つ、一体何をおつけになったの?」
「そ、それは、ごめん。野梨子のなんだ」
「私の……?」
こうなりゃヤケクソダ。
「女の子の香水、僕がつけても案外いけるんじゃないかって思ったんだけど、全然だめだった。
 失敗。やっぱり野梨子がつけなきゃね」
「そうですの……」
納得したようでいて、野梨子の瞳が疑り深く美童を覗き込んでいる。


649 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(6):04/05/11 01:48
キッチンでコーヒーを入れていると、野梨子が不思議そうな顔でやってきた。
「お洗濯なさったんですの?」
美童の背中がぎくりとする。野梨子が出かけた二日間の洗濯物は脱衣所で山になっている。
洗ったのは例の彼女のブラウスだけだ。
「ん? してないよ。あ、ええと、タオルだけしたかな?」
「そうですの……? あの、これ……」
そう言って野梨子が取り出したのは、
鮮やかなショッキングピンクに染まった野梨子のお気に入りのパジャマだった。
「私が置いておいたのをお洗濯してくださったんですのね。洗濯機の底に残ってましたわ。
 でも、もともと白だったんですのよ、この色……一体何の色ですの?」

わざとだ。絶対わざとだ。あの女、わざと置いてあった野梨子のパジャマと一緒に
自分のショッキングピンクのブラウスを洗ったに違いない。
どうやって切り抜けよう。美童は我が家の純白で揃えられたタオルを思い浮かべた。
こんなショッキングピンクのものなんて、我が家には、ない。

「水道工事があってね、赤水が出たからそのせいだよ、きっと」
優雅な微笑を浮かべながら美童は嘘ぶいた。
あいまいな笑顔でうなずいた野梨子の目は明らかに何かを疑いだしている。

ベッドルームのベランダから野梨子が口紅のついた吸殻をつまんで現れた時、
ついに美童は観念した。

野梨子はすでに冷ややかな瞳をして、夫を見つめている。
「の、野梨子……」
「美童。私、出かける前にお約束いたしましたわよね、美童と。もし、私と美童の神聖な
 この新居に別の女性を入れるようなことがあれば……」


650 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(8):04/05/11 01:48
離婚。

美童の頭の中で離婚の文字が浮かんだその瞬間、彼は叫んだ。
「ごめん、野梨子。実は僕、野梨子がいない間に……」
「……いない間に?」
「女装したんだ!」
「ぶっ。女装!?」
呆気に取られた野梨子の前で、美童は一世一代の演技を始めた。
「そーなの。僕って前から女装が好きでさぁ。でも野梨子が見たら嫌がるだろうし、
 野梨子がいない間にって、ドレス着て、口紅塗ってさあ、鏡の前でこんなふうに
 こんなふうに、ポーズしてたの。ば、馬鹿でごめんね……」
言っていて美童は無性に悲しくなってきた。
ひょっとしたらどっちみち野梨子には嫌われてしまうかも、変態って……。
ううう。

うなだれた美童がちらと野梨子を見ると、彼女はしごく真面目な顔をしていた。
「美童……。結婚する時に約束したじゃありませんか。お互いに秘密は持たないって。
 どんな恥ずかしいことでも夫婦なんだから二人で共有しようって。
 そんな、美童に女装の趣味があるなんて知りませんでしたわ。おっしゃってくだされば
よかったのに」
「う、うん。何だか恥ずかしくってさ」

野梨子は優しく微笑んだ。
「大丈夫ですわよ。嫌いになったりなんかしませんわ」
「野梨子……」
「大好きですわ、美童」
「うん……僕も……愛してる、野梨子」


651 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(9):04/05/11 01:49
ごめんね、ごめんね、野梨子。
女を家に連れ込んでごめんね。
もうたぶんしないよ。いや、絶対にしないよ。
野梨子、大好き。

そっと二人は何日かぶりでキスをした。
美童が野梨子をベッドに寝かせようとすると、彼女は恥らって言った。
「カーテンをひいてくださいな、美童。こんなに明るい内から恥ずかしいですわ」
にっこりと笑って美童は純白のカーテンをひいた。
そこには。


    『ま       た       ね』




652 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>(10):04/05/11 01:49
野梨子がベッドから飛び起きると目を剥いた。
「び、美童! なんですの、それ!」
美童もベッドから飛び降りるとカーテンの文字を背中で覆い隠そうとする。
「あーっ、なんかエアコンの修理の人がさあ、すごい職人気質の人で修理が終わると
 自分のサインを入れるんだよお。まいったなあ、カーテンになんか書いちゃって。
 しかも赤で。まいったなあ」
「サインって……『またね』って」
そうそう、と美童は膝を打った。
「そうそう、「又根」さんだよ。思い出した! 又根さん、いい人だったなあ、うん」
野梨子は眉間に皺を寄せた。
「……又根さん……? 美童……」
「いや、ほんとに面白い人だったよ、又根さん!」
「もうやめてくださいな、……美童」
「また会いたいなあ、又根さんに。又根さんにまたね、なーんちゃって」
「美童!」

五分後、美童の左頬、ついで右頬が手のひら型に赤く染まった。


おわり


653 :20万hit競作・<発つ女、痕を残さず>:04/05/11 01:50
以上で終わりです。
面白かったです。また機会があったら参加してみたいです。
ありがとうございました。

654 :名無し草:04/05/11 01:57
>発つ女、痕を残さず
ついつい寝ないで起きていてしまった甲斐がありました。
白に赤、白に赤、白に赤、白に赤、…白に、赤。
あーあーあーあー、とれねーわこれ、絶対(苦笑)。
清純可憐な砂糖菓子的イメージになりがちな美×野で、
こんな笑えるお話が読めるとは思っておりませんでした。作者さん、乙です!

しかし美童…徹底的にアホですね。でも彼だから似合ってしまうというか。

655 :名無し草:04/05/11 03:17
原作がらみの小ネタで競作に参加させていただきます。
清→悠 魅→悠 美→悠の三部です。全部で12レス分お借りします。

656 :20万hit競作・Tricolore Minds-Red(1):04/05/11 03:18
きっと今回のも狂言じみたものだ。さほど大事ではないだろう。
隣で苛つく魅録の様子を、僕は初め他人事のように眺めていた。

悠理によく似た男の名は、東山なんとかと言った。
そいつの部屋を探し当て、深夜僕らはそこへ向かう。
部屋の中央に立ち、その様相を見渡してからのことだった。
起こっている事態を、僕がようやく飲み込むことができたのは。
僕が焦りという感情を持ったのは、恐らくこの時が最初だった。

僕らは次の場所へと車を飛ばした。
訪ねた部屋の玄関先で、僕は我ながら驚いた。
たったの指二本で、まさか銅製の硬貨が折れ曲がってしまうとは。
あのチンピラには申し訳なかったが、我を忘れた僕のせいで、
彼は少なくともふた月は立って歩くことが出来ないだろう。

そこからは、どこをどう辿ってこの場所に来たのかすら思い出せない。
その時の僕は、僕の中の余裕というものを完全に見失っていた。

決戦の場に着く。魅録と別れ、僕が目指すは半地下室だ。
目的の部屋を探すため、僕は全力で屋敷の敷地内を疾走する。
地面に半分迫り出した窓を見付け、壁に張り付き息を殺す。
僕は素早く屈み、部屋の中を覗き込んだ。

657 :20万hit競作・Tricolore Minds-Red(2):04/05/11 03:19
そこに見えたものは。
僕が僕を忘れ去るのに、十分すぎるほどの光景だった。
銃を持つ男に威勢良く飛びかかった女が、
続けざまに図体のでかい男に乱暴されている。
それは間違いなくあいつの姿。僕がずっと追っていた、悠理の姿だった。

考えるより先に、僕は動く。
窓を蹴破り、僕が敵のど真ん中へ飛び込むまでに、きっと1秒もかかっていない。
自信を持って言い切れる。
気の毒なことに奴らの行いが、僕の理性のたがを外す結果となってしまったのだ。

降り注ぐガラスの破片を縫って、僕は敵よりもまず、おまえの視線を探す。
おまえは僕を見て一瞬驚き、脱力し、そして弱々しく笑った。
よく見ると、額に傷を拵えている。
その血の赤に、僕の中の何かが、音を立てて弾け飛んだ。

――許さない。僕は絶対に、こいつらを許さない!
烈火の如しとはこのことか。沸き上がる怒りに、僕の拳は震え始める。
これ以上おまえを見ていると、己の制御が利かなくなりそうだった。
意図的におまえの傷から目を逸らし、
僕は迫り来る「土建屋」達に黙々と拳を叩き込み続けた。

658 :20万hit競作・Tricolore Minds-Red(3):04/05/11 03:20
敵が一人、地に沈む。
――無事か?
僕はおまえを振り返る。
赤く腫れた頬、恐らく殴られでもしたのだろう。

二人目が視界から消える。僕はまたおまえを見返る。
衣服に残る大きな靴跡、きっと汚い足で蹴り付けられたに違いない。

そして逃げた三人目を追おうとした時。
おまえは僕を、大声で呼び止めた。
両手を縛られたままおまえは声を荒げ、待ちくたびれたじゃないかと僕を罵った。
体の震えを必死で隠し、きっと精一杯強がりながらも、
しかしその瞳は懸命に、僕に怯えを訴えていた。

鎮まることのない怒りに、僕の両手は未だ打ち震える。
だが僕はそれを悟られぬよう、黙っておまえの縄を解く。
枷の外れたおまえは部屋を飛び出し、主犯格の元へと駆け出していった。
僕はすぐさま後を追う。曲がった角で、魅録に出くわす。
そこでおまえの飛び蹴りを目にした僕は――
溢れ返る沢山の言葉を飲み込んだ。

659 :20万hit競作・Tricolore Minds-Red(4):04/05/11 03:21
悠理もういい、やめてくれ。
おまえの強さは、そのままおまえの弱さなんだ。
僕ならここにいる。だからもう強がるのはやめてくれ。
こんな時にまで、止まらない震えを隠さないでくれ。
怖かったのだとそう言えば、僕は幾らでも胸を貸してやる。
おまえはただ大人しく、僕に守られていればそれでいい。
だから悠理、もっと僕を、僕だけを頼ってくれ――。

果たしておまえはその語りかけに、ほんの少しでも気付いているだろうか。
僕の葛藤を知って知らずか、まだ蹴り足りないとおまえは駄々をこねる。
おまえを落ち着かせるために、作った笑顔の裏側で、
未だふつふつと燃え残る赤い感情。
次におまえが危険に曝されそうな時は、僕が必ず側にいる。
おまえの髪を撫でながら、僕はその誓いを強く胸に刻み付けていた。

                                  Red オワリ。

660 :20万hit競作・Tricolore Minds-White(1):04/05/11 03:22
魅録ちゃん、愛してる。
さっき悠理はそう言った。その言葉は俺の耳に、今も甘い余韻を残している。

誰に頼まれたわけでもないが、俺は自ら望んでこの洞穴へと降りてきた。
理由は至って簡単だ。あの言葉に、体が勝手に反応してしまっただけのことだ。

他人様の足をへし折った俺も俺だが――こいつよりはまだマシか。
ガキの首を飛ばしちまった悠理は、薄気味悪いこの場所で意識を放り出している。
俺は冷えきった地面にしゃがみこみ、しげしげとその顔を覗き込んだ。
小さなデコを全開にして、安心しきったように寝息を立ててやがる。
ったく、俺がいなかったらどうしてたんだよ。少し笑い、そのデコを指で弾く。
しょうがねぇ、このまま放っておけば風邪を引かせちまう。
俺はノビちまった悠理を抱き起こし、その体を背に担ぎ上げた。

やっぱり縛らなきゃ無理か、ここから連れて上がるのは。
安定しない悠理の体を一旦降ろし、俺は悠理もろとも自分の体を縛り上げる。
しかしこいつを支えながらの縄結束は、思ったよりも難しい。
固く結ったはずの結び目も、気が付けばまた別の箇所が緩んでくる。
北国の冷気にさらされ、指先にも時折痛みが走る。
当の悠理は何も知らずに、俺の背中でお休み中だ。
手が言うことを聞かないせいもあった。俺はほんの少しだけイラついた。
そもそもあれだ。こいつといると、いつもロクな事が起きやしねぇんだ。
その度にガキみてぇに笑って泣いて、今はガキみてぇにおねんねだ。
困った時には半ベソで、いつも俺の腕にしがみついてくるんだよな。
ったくお前は……可愛い奴だぜ。

661 :20万hit競作・Tricolore Minds-White(2):04/05/11 03:23
――ちょっと待て。
思わず手が止まった。意外だった、自分でも。
何よりも、満たされた気持ちでいる自分に、俺はことのほか驚いた。
穴に落ちたこいつのお陰で、下手すりゃミイラに呪われるかもしれねぇって状況なのに。
それなのに俺は、この事態に巻き込まれた事に腹を立てるどころか……
むしろそれを喜んでないか?

ロープを縛り終え、ふと気付いた。
僅かな苛立ちの元は、この妙なくすぐったさにあったんだと。
さっきからずっと、俺の耳たぶに何かが触れている。……悠理の髪だ。
背中を振り返る。今度はその髪が、俺の唇にするっと触れた。
風が薄く吹き込んで、悠理の前髪が揺れている。
さらさら、ふわふわと、まるで誘うように揺れてやがる。俺の、すぐ鼻先で。
俗に言う、「女の香り」。俺は初めてそれを知った。
何だかわからねぇがそれがやけに心地良くて――
俺はその香りごと、気の済むまで息を吸った。

662 :20万hit競作・Tricolore Minds-White(3):04/05/11 03:23
「おーいどうしただ、何モタモタしてるだー!」
「魅録いいですかー、ロープを引き上げますよ!」
上から無骨な声が降ってくる。
穴の開いた天井から二つの顔。あれは親父さんと清四郎だ。
俺は渋々返事を返した。出来るだけ無愛想な声で。

なんでこんなに悔しいんだ。考える間もなく、俺の足は地面から離れた。
痛くはないだろうか、落ちやしないだろうか。それが気になり、悠理を見ると。
壁際の干からびた母娘が視界に入り、俺は少し気まずくなった。
きっとあんたらはこの状況を、さぞ面白おかしく見てたんだろうな。
心臓の音がうるさいのは、あんたらが怖いからじゃないんだぜ。
決して故意ではなかったが、体を傷付けてしまったこともある。
俺は宙に浮きながら、彼女らに軽い会釈を残しておいた。

ゆっくりとロープが引き上げられる。
右手をロープに、左手は悠理に。悔しくも俺の両手は塞がったままだ。
にも関わらずだった。
お前の吐く息が俺の首筋を撫で付け、お前の太股が俺の腕を暖め、
お前の二つの弾力が、俺の角張った肩胛骨を包み込んでいる。
あの骨々しい身体のどこに、こんな柔らかさを隠し持ってたというんだ。
届きそうで届かないその唇に、止まらない俺の苛立ちは一体どうしろと。
初めて知った感触を、存分に味わうことも許されない、
この仕打ちはちょっと酷すぎやしねぇか?
畜生、「愛してる」だなんて、簡単に言いやがって……。

やばい。これ以上考えてると、俺はもう頭がイカれちまいそうだ。
見てみろ、あの乾いた母娘がまた、惨めな俺を笑ってる。
この手が自由になったあかつきには――覚えてろよ、悠理。

663 :20万hit競作・Tricolore Minds-White(4):04/05/11 03:24
段々と、出口が近くなる。
――チッ。いっそのこと俺も、ノビた振りでもして時間を稼いでおけば良かったか。
俺の舌打ちが、洞穴の底へと空しく落ちていく。
頭上から落ちてくる光に目を慣らしながらも、俺はまだ諦めていなかった。
今の俺に最低出来ること。それをやるなら今しかない。
意を決して顎を引く。眠り人をじっと見つめる。そして。
薄く赤みの差す悠理の頬へと、俺は誘われるままに口付けた。
――魅録ちゃん、愛してる。
お前がさり気なく言った、あの言葉。
ここを出たら、いつかもう一度ちゃんと聞かせてくれよな。

突如、視界が開けた。辺り一面、吸い込まれそうな白のフィールド。
360度、どこまでも広がる銀世界に、俺の目は激しく眩んだ。
そして腰を下ろし、縄を解き、俺はお前の頬を打つ。
ゆっくりと薄目を開くと、お前は俺に極上の笑顔をこぼした。
今、俺の中では、覚えたてのこの感情が。
降り積もる新雪よりも、白く眩しく輝きを放ち始めていた。

                                      White オワリ。

664 :20万hit競作・Tricolore Minds-Blue(1):04/05/11 03:25
――辛いよ、怖いよ、置いてくなよ!
精一杯の声で僕は叫ぶ。腕を伸ばし、何度も何度もそう叫ぶ。
だけど声は届かない。とうとう僕の前から、あいつらは姿を消してしまった。

弱った体が言うことを聞かない。仲間の姿もどこにもない。
重い手足を引きずりながら、僕は孤独を噛み締めていた。
役に立たない手足なら、いっそもぎ取ってしまおうか。
馬鹿なことを考えた罰だろう。僕は崖から足を踏み外してしまった。
気が付けば僕の体はそのまま、遠い崖下へと吸い込まれていった。

薄れゆく意識の中、心は限りなくブルーに染まる。
僕を一人置き去りにして、どこかへ消えてしまったあいつら。
押し寄せる劣等感が、僕の心を寒色に染めていく。
何が仲間だよ。友情なんてクソ食らえだ。もうどうにでもなれ。
僕は半ば投げやりに、残り少ない意識をあっさりと手放してしまった。

665 :20万hit競作・Tricolore Minds-Blue(2):04/05/11 03:25
――雨?
頬を冷やす雫に、僕の意識は少しずつ引き戻される。
あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。
痛い。体中のあちこちが、悲鳴を上げたくなるほどに痛い。
もしかして僕は、本当にやってしまったのだろうか。
それを確かめるべく、指先を少し動かしてみる。
少なくとも、腕をもぎ取った形跡はない。
――当たり前か。全く、バカだよね。
僕は僕自身を、嘲るように笑った。
第一僕にそんな度胸があれば、きっと今頃、
こんな場所にぼーっと寝そべってなんかいやしない。
子鹿が跳ねるように、軽々と山を登っていったあいつ。
僕にもあんな芸当が出来れば、足手まといになんてならないのにな……。
僕は、無駄に長いだけの自分の四肢を、心の底から恨んだ。

ピチャリ、ピチャリと、また僕の頬を数滴の雫が冷やした。
――やっぱり雨?雨が降ってるのか?
目の奥のぼんやりとした光に、僕はゆっくりと重い瞼を持ち上げた。
瞼が完全に開いたところで、僕は驚いた。
ほんの数十センチ先に、あいつの顔がある。
僕を見捨てていったはずのあいつが、じっと僕を見下ろしている。
その二つの瞳に、これでもかというほどの涙を溜めて、
あいつは僕を、じっと見ている。

666 :20万hit競作・Tricolore Minds-Blue(3):04/05/11 03:26
ごめんなさい――。
異国タヒチの谷底に、その泣き声がこだまする。
僕のためにあいつが、いつも笑ってるあいつが、こんな顔をして泣くなんて。
目の前で泣きじゃくる悠理の姿を、僕は不思議な気持ちで捉えていた。
泣いてる君に「うん」と一言、それしか言えなかった僕だけれど、
そんな僕にも一つだけ、君のために出来ることがある。
それは、前言撤回だ。ミス・タヒチなど、僕にとってはどうでもいい。
今の君を前にすれば、むしろそんなものの方が、クソ食らえだ。

「そこ、石あるよ!木の根っこ、気ぃ付けて」
折れそうなほどに細い体で、君は僕達の先を歩く。
息を上げ、その肌に汗を浮かせながら、君は僕を精一杯気遣ってくれている。
怪我を負わせた責任からか、何度も僕を振り返る。
自分は転んで膝を擦り剥こうが、木にぶつかり悲鳴を上げようが、
君は僕達の足下に明かりを絶やさない。
それなのに、今の僕ときたら――。
怪我しているのをいいことに、ただ魅録の背中に、自分の身を預けているだけだった。

667 :20万hit競作・Tricolore Minds-Blue(4):04/05/11 03:26
頑張る君を見て、僕は強く思った。
もうこれ以上、無様な姿は見せたくない。いや、見せるわけにはいかないんだ。
神様、悠理にご褒美を――そして、僕に力を。

僕は魅録に、背中から降ろしてくれと柔らかに頼んだ。
魅録の断り文句に僕は、感謝するどころかあるまじき考えをよぎらせる。
――ありがた迷惑。
そんな言葉を浮かべてしまうほど体裁を構いたい自分に、僕は内心驚いた。
だけどこの気持ち、自分でもよくわからないんだ。
今の僕には、一歩先を行く、あの華奢なナビゲーターの姿しか目に入っていないんだ。
何故だかあの大粒の涙が僕の頬に、僕の記憶に、染み付いてしまって離れないんだ。

ようやく僕らの前に、光が差した。
僕は降ろしてくれと、再び言った。
今度は魅録の制止を聞くより先に、僕はその背中から飛び降りた。
別の仲間と合流し、僕達はやっと見付けた建物に転がり込む。
部屋に通されると、疲れ果てた君は、床にその身を投げ出してしまった。

体はまだ痛むけれど、神様がくれた力、せっかくだから使ってみたい。
僕は君を抱え上げ、そっとソファーへ寝かせてあげた。
そして眠る君の耳元で囁く。
君をナビゲートできる男になるために、今度は僕が頑張る番だよと。

僕は決めた。今日から僕の蒼い瞳には、もう君のことしか映さない。

                                         Blue オワリ。

668 :20万hit競作・Tricolore Minds:04/05/11 03:27
楽しい企画に参加させて頂けたことに感謝いたします。
ありがとうございました。

669 :名無し草:04/05/11 04:24
>Tricolore Minds
お祭りだから、あまり固い事は言いたくないのですが、>334・>502とも
>・10レス以下でお願いします。
となっています。
この制約の中で同じお題を競い合うからこそ、「競作」なのでは。

670 :名無し草:04/05/11 06:05
短編三つってことで別にいいんじゃないでしょうか?
原作と関連したお話で状況が想像し易くて面白かったです。

671 :名無し草:04/05/11 07:51
というか、最初から12レスと元気に宣言してるから、
作者タソはお約束を読まなかったんじゃないの?
それが問題なんだとオモ。
読んだ上で>670タソみたいに解釈してウプしたんなら、
最初にそう書くでしょ。
10レスのつもりでウプしたら、行数制限に引っ掛かって
11レスになっちゃったというんなら、気の毒とも思うけど。

672 :名無し草:04/05/11 09:54
短編3作いっぺんにupしたんで、まとめて12レスになっちゃったけれど
1作あたり10レス以下なら問題ないのでは?
タイトルこそ揃えてはいるけれど、それぞれ単体として独立した物語だし。
1人1作までという決まりはないですよね?

それがダメだというなら時間を置いてupしたとはいえ、
「Kiss in the Blue」と「Marrige Blue」の2作も
問題アリなんじゃないでしょうか・・・。
これ、同じ作者さんによるシリーズものですよね?
マリッジの魅×悠は明らかにキスの清×可を本編としたサイドストーリーだし。

669さん、671さん、その辺はいかがお考えなのでしょう?
よろしければ今後の参考の為、お聞かせ願いたいのですが。

わたしは別にOKだと思いますがね。
キスとマリッジの作者さん、引き合いに出してごめんなさいね。

673 :名無し草:04/05/11 09:55
じゃあ、この件は作者さんのコメント待ちってことで。


↓以下、ウプor感想ドゾー

674 :名無し草:04/05/11 09:59
リロードしないでレスしたら、672さんの後だった(鬱
あの、議論するなら、まゆこスレでやったらどうでしょう?
672さんみたいに切り口上で「お聞かせ願いたい」なんて
書かれたら、他のウプや感想レスがしずらくなってしまうと
思うんですが。

675 :名無し草:04/05/11 10:09
>10レス制限
まあ、>669の指摘で次からはちゃんと読んでくれると思うし、もういいのでは。

>Tricolore Minds
原作の使い方が巧いなと思いました。三人それぞれの色にも納得です。

676 :名無し草:04/05/11 12:31
Tricolore Mindsを書いた者です。
私のしたことが話題になっていましたので・・・
お騒がせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
最近この企画を知ったために、お約束にきちんと目を通さず、
レス数に制限があったことを知らずにうpしてしまいました。
私の不注意でご迷惑をおかけした方々に、大変申し訳ないことをしたと反省しています。
それからご注意、ご意見、ご感想を下さった方々、本当にありがとうございました。

677 :名無し草:04/05/11 12:43

good jop!

それでは何事もなかったかのようにwうp&感想どぞー。


678 :名無し草:04/05/11 12:48
>色模様
こういう手があったかと驚きました。
他の人も書いているように6人がそれらしくて良かったし、
原作の話がちょこちょこ出てくるのも面白かったです。

>発つ女、痕を残さず
浮気男は大嫌いで、家に連れ込むなんて言語道断と
思っているのに、ついつい美童を応援したくなりました。
見事に作者さんの掌の上で転がされたようなw

679 :名無し草:04/05/11 16:33
私もせめて二次創作だけでは浮気に触れたくないんだけど、「発つ女、痕を残さず」笑えましたー。
これが清四郎だったらダメだな、美童だから許されるし、妻が有閑女性キャラだから安心して読めるんだなぁと。

680 :名無し草:04/05/11 16:57
>色模様
可愛くて読みやすくてよかったです。
野梨子に萌えました。
>笑顔が好き。友達思いなところが好き。正義感の強さが好き!
ここが…
それから悠理がかわいかった。

>発つ女、痕を残さず
まず、タイトルがうまい!美×野というと654さんの
いうようにまず「清純可憐な砂糖菓子」というのが
浮かびますが、爆笑しましたw

681 :名無し草:04/05/11 18:49
競作うpします
8レス使用します

682 :20万hit競作・イメージカラー 1:04/05/11 18:50
「新聞部からの原稿依頼で、自分のイメージカラーについて
 書いて欲しいとの事です」
清四郎の言葉に野梨子が首をかしげて質問する。
「イメージカラーってなんですの」
「自分のイメージを色であらわすんです。なんでも新年度の役員紹介
 の記事に使うそうですよ。普通の自己紹介は去年載せたから、
 今年は少し変わった形にしたいそうです」
「それって俺たちが留年したことに対する皮肉かよ。
 イメージカラーなんて聞いたこともないことについての
 原稿なんて書けっこねーじゃん」
魅録が不平をもらす。
「あら、自分のカラーを持つのっていいことじゃない。
 魅録もこの際自分のイメージカラーを探してみたら」
「そういう可憐のイメージカラーって何だよ。玉の輿の色
 なんてないぞ」
魅録と同じく不満げな顔をした悠理の質問に可憐は余裕の
微笑を浮かべながら答える。
「今はいわないわ。新聞を読めばわかるわよ」
「ちぇ、もったいぶるんだから」
「さてと、僕も早く家へ帰って原稿を書かなくちゃ」
美童の言葉を機に、皆それぞれ家路をたどった。

683 :20万hit競作・イメージカラー 2:04/05/11 18:51
生徒会長
「イメージカラーねぇ、僕も今まで考えてみたこともありませんよ。
 何かいい色はありますかねぇ」
そう独り言をつぶやきながら清四郎は色見本帖をパラパラとめくった。
「やはりこの色にしますか」
そして原稿を書き始めた。

僕のイメージカラーは紫です。
聖徳太子の時代から高貴な色とされてきた紫は、心理学的にも気持ちを
落ち着ける色とされているように、常に冷静・沈着をモットーとし、
生徒会長を務める自分にふさわしい色だと思います。
紫の中でも特に桔梗色が好きです。


684 :20万hit競作・イメージカラー 3:04/05/11 18:52
副会長
「あ〜あ、いくら考えてもイメージカラーなんて思いつかねーよ。
 なんかいい色ねーかなー」
ぶつぶつぼやきながら庭を眺めている魅録。
「そうだ、この色にしよう」
ようやく原稿用紙に向かってペンを走らせた。

俺のイメージカラーは緑。
緑は生き生きとして瑞々しい力を持ち、生命力にあふれている。
春の新緑、夏の濃い緑、秋の落ち着いた緑、冬の深みのある緑、
いずれも甲乙つけがたいものがあるが、俺としては
やはり春の若草色が好みだ。

685 :20万hit競作・イメージカラー 4:04/05/11 18:52
経理
「う〜ん、何色がいいかなぁ。僕はどんな色でも似合うから
 特にイメージカラーってないんだよね。困ったなぁ」
鏡を見ながら悩む美童。
「やっぱりこの色かな」
考えながら原稿に取り組む。

僕のイメージカラーはオレンジ。
鮮やかで華やかな僕にぴったりの色だと思う。
みずみずしいとれたてのオレンジの色が
僕の一番好きな色です。

686 :20万hit競作・イメージカラー 5:04/05/11 18:54
書記
「さっきは、つい勢いでああいっちゃったけど、
 私もイメージカラーなんて考えてないのよね。
 一体何色にしようかしら」
そういいながら可憐は手元にある雑誌を見る。
「どの色も素敵なのよね。どうしようかな」
あれこれ迷ったあげく、ようやく原稿を書き出した。

私のイメージカラーは黄色です。
暖かなタンポポの黄色や、さわやかなレモンの色、
黄色のバラは純愛のシンボルだし、
でも一番好きなのはカナリア色。
姿は可愛らしく、声は素敵なカナリアの黄色は
いかにも幸運を運んでくれそうに思えます。

687 :20万hit競作・イメージカラー 6:04/05/11 18:54
運動部部長
「イメージカラーについてなんてどう書けばいいんだよ」
文句たらたらの悠理は原稿用紙を睨み付けた。
「こうなったらこれで決めるか」
部屋の壁にあるダーツの的に何枚かの色紙を貼り付け、
目を閉じて矢を投げると、原稿を書いた。

あたいのイメージカラーは赤。
夏の太陽を思わせる赤は行動的なあたいにピッタリだと思う。
それに赤いものにはおいしいものが多い。
イチゴにスイカ、さくらんぼにりんご。
みんなおいしくてビタミン豊富だから健康にもいい。
だからあたいは赤が好きだ。


688 :20万hit競作・イメージカラー 7:04/05/11 18:55
文化部部長
「イメージカラーってどういう色をいうのかしら」
家に帰った野梨子は辞書で意味を調べる。
「自分の理想とする姿を現す色という意味もありますのね。
 そうすると私の場合はやはりこの色かしら」
さらさらと一気に原稿を書き上げる。

私のイメージカラーは白です。
何物にも汚されない気高い純白は、
わたしのあこがれであり、目標でもあります。
人や物に対しても先入観や偏見を持たず、
白紙の状態で接することのできる人に
なりたいと思っています。

689 :20万hit競作・イメージカラー 8:04/05/11 19:02
新聞部のコメント

会長 紫には欲求不満の色、という一面もある。品行方正、
謹厳実直な生徒会長の心の奥には抑圧された欲求不満が渦をまいているのだろうか?

副会長 彼の場合、緑よりもピンクこそがイメージカラーなのではないか。ピンクと聞いて
彼の髪を思い浮かべる女性とは多いであろう。しかし、会長の紫とピンクを並べると…(以下略)

経理 オレンジとは意外だった。白馬の王子の白か、金髪の金色の方が彼のイメージには
あっている気がする。ただ昔は高級品だったオレンジも今はすっかり大衆化
してしまったことと、彼の現状を比べると…(以下略)

書記 黄色のバラは純愛ではなく、不倫の愛をあらわすという説もある。そうすると、
彼女の望む『玉の輿』は略奪愛によってもたらされることになるのだろうか?

運動部部長 確かに赤は彼女のイメージである。活動的であるのはいうまでもないが、
彼女が『赤点』の常連であるのもまた周知の事実である。

文化部部長 彼女もまた白のイメージそのままである。しかし、彼女には白に関して
一般にはあまり知られていないエピソードがある。生徒会役員が留年することになった
原因の再試の際、彼女を含む全員の答案用紙がなんと『白紙』だったというのだ。
皆も赤点や白紙を恐れることはない(笑)。

この記事が載った校内新聞は、後日他校生の間でプレミアがついたといわれている。
おわり

690 :名無し草:04/05/11 19:30
>イメージカラー
オチが良かった!そしてうまかった!
ふんふん、そうだねそうだね、全員順繰りに自分のイメージカラーを申告して…
終わりかな?と思ったところへ、
「会長とピンクを並べると」「大衆化したオレンジ」「赤点」「白紙」の数々の言葉。
笑わせていただきました。

691 :名無し草:04/05/11 19:31
>イメージカラー
正直7レス目までは今ひとつピンと来ませんでしたが
最後の新聞部のコメントがきいてますね
有閑倶楽部に向ってこんなコメントが書けるとは勇気があるというか
命知らずと言うか……。プレミアがついたということは
きっと即刻回収されたのでしょうねw

それにしてもこれで何作目でしょう(すでに把握できず)
秀作をたくさん読むことができて幸せです。

692 :名無し草:04/05/11 20:05
20万hitおめでとうございます。
6レス使用します。

693 :20万hit競作・彼女の傘(1):04/05/11 20:07
降り出した雨が、窓に線を描いている。
交差点を行き交う人々の足取りが、心なしか早まった。
ひとり、またひとりと傘を開いていくのを、二階席の窓際から見下ろす。
別に興味をそそられる光景ではなかった。
それでも、色とりどりの傘を眺め続けた。
彼女はそんな俺の横顔を、ただじっと見詰め続けている。
互いの間に置かれたままのグラスが汗ばみ、封すら切られていないストローを濡らし始めた。
傍らを通りかかった店員が訝しげな視線を寄越したが、
事情を察したのか足早に立ち去った。
こういったロケーションのカフェでは、在り来たりな別れの風景なのかもしれない。
口を開くのが怖くて、先延ばしにしたくて、煙草を弄る。が、既に空箱になっていた。
くしゃりと箱を握りつぶした俺の前で、彼女は静かに席を立った。
「……行きますわね」
テーブルの隅に立て掛けてあった傘を手に取り、そう言った。
それでも何も言えず、眼下を眺め続けた。
彼女の足音が少しずつ遠ざかり、程なくして、消えた。

――終わり、か。
なんてことは無い、単なる学生時代の恋愛の一つだ。
そう自分に言い聞かせる。
明日には、何も無かったような顔をして、あの生徒会室で顔を合わせなければならない。
たとえ彼女があの男と笑い合っていようと……顔を背けてはいけないのだ。

雨音が強くなった。それにつられて、再び視線を往来に戻す。
そこに飛び込んできたのは、交差点を渡る赤い傘だった。
「野梨子……」
思わず名を呼ぶ。勿論、彼女の耳に届くことは無い。
そのまま、小さくなっていく赤い傘を、為す術もなく見送っていた。

雨など降らなければ、良かったのに。
彼女の傘が赤くなければ、良かったのに。
あんなにも鮮やかな色でなければ、見つけることはなかったのに――

694 :20万hit競作・彼女の傘(2):04/05/11 20:09
あれから、雨は止まずに降り続けている。
雨粒に揺れる枝葉を生徒会室の窓から眺める俺の背後で、悠理の携帯が鳴った。
常識外れの着信ボリュームに苦言を呈しようと振り返る。
しかし彼女が手にしている携帯を見て、口にする台詞を変えた。
「あれ悠理、携帯替えたのか?」
「え? ううん、前と変わらないよ。ほら」
悠理が俺に携帯を差し出して見せる。
それを受け取りながら、俺は首を傾げた。
「だって色が違うじゃねえか。前は赤だったろ? これ、黒だしさ」
先刻差し出した形のまま、悠理が指をぴくりと震わせた。
新聞を読んでいた清四郎が顔を上げた。
鏡を覗き込んでいた可憐が振り返った。
メールを打っていた美童が、その指を止めた。
ただ一人、彼女だけは俺のほうを見ようともしなかった。
「魅録、ちょっとこれを――」
清四郎が一冊の本を鞄の中から取り出した。
「この本の表紙は、何色ですか?」
「何って、黒だろ?」
「冗談止めろよ、魅録」
悠理が噛み付くような口調で俺に言う。
「お前こそ冗談は止めろって」
笑い飛ばそうと、周りを見回し――取り囲んだ彼等が頬を引き攣らせながら、自分を見ていることに気付く。
「――どうしたって言うんです、魅録。この本の表紙は――」
清四郎が手にした本を俺の目の前に突き出した。
「赤、です」
時が止まった。
誰もが微動だにせず、呼吸すら止めて俺を見つめる中、彼女が徐に顔を上げた。
その唇は微かに震えているようにも見えた。

695 :20万hit競作・彼女の傘(3):04/05/11 20:10
自室で医学書と首っ引きになっていた清四郎が、左右に首を振りながら眼鏡を外した。
目元を指で揉みながら、深い溜息を吐いている。
そんな様子を視界の隅に捉えながら、胸元に仕舞い込んでいた煙草を取り出す。
流石に他人のベットの上で一服はまずかろうと、床に腰を下ろした。
「やっぱり、こんな症例はないか」
自嘲して、一本咥えた。
「他人事みたいに言いますね」
「分からないんだよ。いや、実感がわかないって言ったほうが正しいかもな。
俺の中では赤って色が元から存在しなかったみたいな感覚っていうのかな」
「何か思い当たる節はないんですか。赤だけ見えなくなるような、原因が」
「何も――」
ない。そう言い掛けて、口を噤んだ。

――赤い、傘――

あの日、濡れる窓越しに一際鮮やかに視界に飛び込んできた、彼女の赤い傘。

「なにか、あるんですね?」
俺の様子に勘付いたらしい清四郎に、真摯な眼差しで見つめられた。
「いや――」
言えるはずがなかった。
差し伸べられたのは皮肉にも、俺が失ったものを得た手だったのだから。
「なにも、ないよ」
清四郎の蒼いシャツを見詰めながら、そう呟いた。

696 :20万hit競作・彼女の傘(4):04/05/11 20:12
空が、白い。
久々に顔を覗かせた太陽がこの足元を照らしているというのに、
天にあるべき色は存在しなかった。
蒼も、失った。

そして。

日一日と、俺の世界から色が失われていった。

赤が消え、蒼が消え、黄色が、緑が消え――全ての色を認識することが出来なくなった。
モノクロ映画を観ているかのような錯覚に陥る。
信号すら確認出来なくなり、ハンドルを握るのを止めた。
色を失い、風を失ってもなお歩くことを余儀なくされた俺の眼には、何もかもが変わって見えた。
しかし、そんな白と黒のみで構成された世界の中で、
昔と変わらずに見えるものがたった一つだけあった。

彼女の艶やかな黒髪、だった。

然し、それは今の自分にとって、何の意味も成さなかった。
あの男の隣で微笑むたびに揺れる黒髪に触れる事はもう、出来ないのだから。

697 :20万hit競作・彼女の傘(5):04/05/11 20:13
呼び出したのは、彼女だった。
『あの日と同じ店の、同じ席でお待ちしています』
それだけを告げて切れた携帯を、掌でずっと握り締めながら、重たい足を二階へと運んだ。
彼女は既に窓際の角席に座っている。
そして、傍らにはあの時と同じように、傘が立て掛けられていた。
「待ったか?」
彼女の前に置かれたコーヒーは、既に半分ほどになっていた。
「降り出しそうだよな、雨」
傘を顎で示しながら、言う。
「今日も、あの赤い傘なのか?」
彼女は小さく頷いた。

会話が途切れる。
窓を叩く雨音が、店内にかかるBGMと奇妙に調和し始めた。
間が持たず、煙草に手を伸ばした俺に、彼女が言う。
「私が魅録から色を奪ってしまったんですのね」
「いや……俺自身の問題だ。関係ねえよ」
「責めてくださいな。こんなことになったのは、お前のせいだって。
そうやって優しくされる方が、余計に――」
黒く縁取られた彼女の右眼から、一粒の涙が零れた。
「余計に、辛いですのに」

掛ける言葉が、見つからなかった。

「ごめんなさい」

そう言って、彼女は立ち去った。

698 :20万hit競作・彼女の傘(6):04/05/11 20:16
あの日と同じように彼女は、横断歩道を渡っていくのだろう。
あの赤い傘をさし、躊躇いもせず、振り返りもせずに。
あの男の元へ。
だが、もう――この色無き世界では、彼女を見つけることは出来ない。
そう思いながらも、視線は眼下の交差点を見下ろしていた。
足早に歩く人々は向かう先に疑いを抱くでもなく、真っ直ぐに前を見詰めている。
白の、黒の、灰色の傘をさした人々の足にもまた、迷いはなかった。

刹那――自分の眼を疑った。
黒と白の傘に混ざり、たった一つだけ、赤い傘が通り過ぎようとしていた。
河の流れに抗うことなく去り行く水面に浮いた一片の花弁のように、
ゆらりゆらりと遠ざかっていく。
しかし――今この掌を伸ばしても、この声を嗄らしても、
その背中を追い掛けたとしても――捕まえることは、出来ない。

もう、出来ない。

きつく眼を閉じる。

そして、共に過ごした短い時間を咀嚼しながら、ゆっくりと眼を開けた。

其処は彩られた世界だった。黄色も緑も青も……そして赤も存在する世界だった。
慌てて彼女が去った方向へと視線を向ける。
だが――色彩を得た俺の眼ではもう――

彼女の傘を見つけることは、出来なかった。



699 :名無し草:04/05/11 20:30
>彼女の傘
マジ泣きしました。
うまく言えない自分の表現力がもどかしいですが、
ラストのくだりで本当に涙がこぼれました。
まさに『色』のお話だったと思います。


700 :名無し草:04/05/11 20:53
>彼女の傘
魅録にとっては野梨子自身がどこにいても見つけてしまう
赤い傘だったわけなのですね。
野梨子と両思いじゃないのが何とも切ない・・・
乙です!

701 :名無し草:04/05/11 21:27
>彼女の傘
切ない・・・胸にジワジワと沁みこみました。
魅録の野梨子への想いを思うと・・・萌え。


702 :名無し草:04/05/11 21:48
>彼女の傘
これ、映像でみたいくらい萌え。
魅録視点で、全て当たり前に色がある状態から段々と色が失われていってそれから
ラストシーンでまた当たり前に色がある状態に戻っていくというような感じで
撮って欲しい。

703 :名無し草:04/05/11 22:01
20万hitおめでとうございます。
競作に参加させて頂きます。
主人公は美童くん。
10レスお借りします。

704 :名無し草:04/05/11 22:02
>彼女の傘
どなたか、8mmでの自主制作を・・・


705 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(1):04/05/11 22:04
「珍しいですね、美童が一緒に飲みたいなんて。」
大学生になった僕達は、学部も専攻する学科もバラバラな為、学校で顔を会わせることが少なくなったけど、有閑倶楽部は今もみんなで集まっては遊んだり飲んだり、相変わらず派手に騒いでいる。
でも、ここ二、三ヶ月、僕はその集まりを避けていた。
そんな僕を心配してなのか、ただ問い詰めたいだけなのか分からないけど、毎日のように悠理や可憐からメールが来る。
忙しい等と適当に誤魔化してはいるけど、ま、僕というよりは噂を聞きつけてだと思うけどね。
さすがに、清四郎、野梨子、魅録の三人は僕から話すのを待っているんだと思う。
僕は清四郎の携帯にメールを入れ、一緒に飲みたいので今晩行ってもいいか聞いてみた。
しばらくしてOKの返事が来たので、最近お気に入りのワインを土産に出向いたというわけ。
僕も清四郎も、二人でゆっくり話をするのは久しぶりだ。
お互いの近況から始まって、授業の話や他のメンバーの事等話題には事欠かない。
既にワインは空になり、清四郎が持ってきたウィスキーも三分の一ほどしかなくなっていた。
「それはそうと、君の噂は僕達の学部まで届いてますよ。
付き合っていた女性達と全部別れたそうで。プレイボーイは卒業ですか?」
僕は何と答えようか考えながら、琥珀色の液体が入ったグラスを見つめていた。
彼女達と別れた事も、今日、清四郎の家へ飲みに来たのも勿論理由があるわけで…
しばらく沈黙が続く。
その静寂の合間を縫うように、階下から言い争う声が聞こえてきた。
僕が驚いたように清四郎を見つめると、バツが悪そうに口を開いた。
「どうも姉貴が妊娠しているようなんです。」
えっ、清四郎、今何て言った?
「先ほど氷を取りにキッチンへ行こうと階下へ降りたら、珍しく親父と姉貴が大声で言い争っていまして、何事かと聞き耳をたてていたんですよ。そうしたらお腹の子供がどうのと…。
姉貴に付き合っているような男性がいるとは思えなかったので、本当に驚いているんです。」
僕の酔いは一気に覚め、心臓は早鐘を打った様にドキドキしている。
なぜなら、僕には思いっきり心当たりがあるから。
そう、それは3ヶ月前のあの日…


706 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(2):04/05/11 22:05
僕は当時付き合っていた彼女と、ホテルの最上階にある夜景が美しいバーで待ち合わせをした。
彼女が来る前に軽く飲みたかった僕は、少し早めに家を出た。もちろんまだ彼女は来ていない。
僕はシンガポール・スリングを片手に、まるで宝石箱を散りばめた様な夜景を眺めながらグラスを傾けていた。
「…っと!うるさいなぁ、邪魔しないでって言ってるでしょ!」
ん?今の声は…
声の発せられた場所のほうへ顔を向けたが、男の影に隠れて良く見えない。
ただ、セミロングの黒髪の女性が、隣に座っている男を鬱陶しそうに追い払っているようだった。
「あんたは、お・よ・び・じゃ・な・い・の。」
相手に言い聞かせるように、一語一語区切りながら言い放つ。
僕は何気に外を見る振りをしながら向きを換え、女性の顔を見ようと椅子をずらした。
やはりそうだ、清四郎のお姉さん、和子さんだ。
僕はしばらく二人のやり取りを眺めていた。
どうやら男は和子さんを必死にくどいているようだけど、彼女には全くその気がないらしい。
それでもめげずに、男は彼女の背中に手を置いた。
嫌がっているのが分かんないのかなぁ?
美しい女性に声を掛けるのは世の常識だけど、引き際も美しくないとね。
そして僕は席を立った。


707 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(3):04/05/11 22:06
「和子さん、お待たせ!」
僕は男を無視して彼女の右隣に座った。
和子さんも最初は驚いた顔をしていたんだけど、すぐ僕に話を合わせた。
「遅いじゃないの!おかげで、変なのが付きまとって困ってたのよ!」
隣の男にチラッと視線を向けたが、すぐに笑顔に戻って腕を絡ませてきた。
さすが、頭の良い大人の女性は違う。
「Is anything business at her of me?(僕の彼女に何か用でも?)」
僕はわざと英語で質問する。
こうすると大抵の日本人は黙って逃げて行くんだよね。もちろんこの男も例外ではなかった。
「有難う美童君、助かったわ!」
「彼氏だったらどうしようかなと思ったんですけど。」
「いきなり隣に来て、勝手座って、勝手に喋り始めたのよ。ホント、しつこくって困っていたとこなの。」
和子さんは心から安堵している様子だ。
「和子さん、美人だから。でも口説かれて悪い気はしないでしょう?」
「冗談でしょ?好きでもない男と一緒にいるくらいなら一人で飲んでいる方がましよ。
誘われたら喜んでベッドまで共にする、お手軽女と一緒にしないで欲しいわ。」
僕的にはそういう恋愛の方が後腐れなくていいんだけど。
その場限りの恋ってドラマチックで燃えちゃうよね。
「美童君も一人?よかったら付き合わない?」
僕はどうしようか悩んだ。
今思うと付き合うのに悩んだのではなく、彼女にどう言い訳しようか悩んでいたのかも知れない。
僕の無言に関係なく和子さんは言葉を続けた。
「…っていうか、付き合って欲しいのよね、今日は。」
後で彼女には断りの電話をしよう。
でも、間違いなく振られちゃうかな?


708 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(4):04/05/11 22:08
「和子さんはドクターになったんだよね?忙しいんでしょ?こんなところで飲んでていいの?」
「あら、医者はお酒も飲んじゃいけないのかしら?ふふっ、医者って言ってもまだ研修生だけど。」
彼女は遠くを見つめて自嘲気味に笑った。
「それでも患者さんを診ているんでしょう?」
「そうね。でも、今は医者を続ける自信がないの。
他にも沢山の選択肢だってあったのに、何故医者の道を選んじゃったのかしらね?」
和子さんの口から出る言葉はいつもより小さく、トーンも低い。
「何かあったんですか?」
しばらくして和子さんは口を開いた。
「私の受け持ちの患者さんが亡くなったの。栞ちゃんっていう小学生の可愛い女の子だったわ。
そりゃ、主治医って言ってもまだまだ未熟な研修生だから、実際に見るのは指導医と呼ばれるオーベンの人達よ?だから、仕方が無いって言ってしまうのは簡単なんだけど…
これからもずっと、同じような思いをするんだろうなぁって考えてたらね…」
空になったグラスを指で弄びながら、寂しそうな目で呟く。
「こんなこと美童君に言ったって仕方ないのにね。きっと、誰かに聞いて欲しかったんだわ。
いいの、忘れてちょうだい。」


709 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(5):04/05/11 22:09
僕はいつも颯爽とした和子さんしか知らない。
女性には誉め言葉じゃないかも知れないけど、凛々しくて格好いいんだよね。
だからこそ弱く、寂しげな一面を見てしまった僕は悲しくなった。
だって、女性には悲しい顔よりも笑顔の方が絶対似合うと思うから。
「和子さんがドクターである以上、これからも辛い思いをするかも知れないけど…
でも、和子さんは立派なドクターになるんでしょ?
僕達にはない『救える手』を持っているんだから、辛い事以上に救える命も、たくさんの笑顔も待っているんじゃないかな。それって、とっても素敵なことだと思わない?」
和子さんは驚いたように僕を見据え、やがて、肩にしがみついていた何かを振り払うかのように大きく息を吐くと、満面の笑みを向けた。
それは誰よりも綺麗で美しい笑顔だった。
「美童君っていい男ね。」
「和子さん、今頃気づいたの?」
ああ、これで少しは元気になったかな?
僕は彼女の役に立てたのかな?
「よーし、今日は飲むわよ!覚悟しなさい!」
和子さんの明るく通る声は、いつもどおり元気を取り戻したようだ。
僕は「アメリカン・ビューティ」という薔薇の名前と同じカクテルを二つオーダーして、一つを和子さんに渡し、赤く美しい薔薇色のお酒で乾杯した。
「和子さんの未来が薔薇色でありますように。」
チン!
二つのグラスが触れ、小気味いい音を立てた。


710 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(6):04/05/11 22:11
気が付いた時には朝を迎え、僕は見覚えの無い部屋で目が覚めた。
僕は右腕のだるさと胸に感じる重みの原因を探る為、首を右側に向けてみる。
すると、僕の肩の上に乗っている艶やかな黒髪が目に飛び込んで来た。
…やっぱり、和子さんだよね?
僕は昨日の事を思い出そうと必死に記憶をたどる。
二人でお酒を浴びるように飲んでいたのは覚えているんだけど、その後は…うーん、やっぱり思い出せない。
どうやらホテルの一室らしいが、チェック・インした覚えも無いし、いつ部屋に入ったのかも覚えていない。
何気にシーツの中を覗いて見たけど、僕も和子さんも予想通り下着一枚着けていなかった。
Hしちゃったのかなぁ?
もしそうだとしたら…非常にもったいない。
和子さんのような素敵な女性とベッドを共にして何も覚えていないなんて!
今更、「覚えてないからもう一回!」なーんて言ったら、平手打ちを食らうのがオチだし。
そんな馬鹿な事ばかり考えていた僕の気配を感じ取ったのか、和子さんも目を覚ましたようで、シーツの中でもぞもぞしている。
「おはよう、和子さん。」
「…ん?」
目をぱちくりしながら、僕の顔をじっと見る。
「なんで、美童君がいるの?ここどこ?」
「やっぱり和子さんも覚えてない?」
和子さんは起き上がろうとしたけど、自分が裸なのに気付くと慌ててシーツを手繰り寄せ、
あーあと天井を仰いだ。
「私としたことが弟の友達と寝ちゃったなんて、恥ずかしくて誰にも言えないわ。」


711 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(7):04/05/11 22:13
僕だって誰にも言えない。ましてや清四郎にバレたら…殺されるかもしれない。
自分の考えに少だけブルーになっている僕に向かって、和子さんがあっさりと言った。
「大丈夫よ、美童君。十九、二十歳の小娘じゃあるまいし、責任取れだなんて古臭い事、私が言う訳ないでしょ?お互い様よ。」
和子さんはふふっと笑いながら言葉を続ける。
「美童君のような美少年と一夜を共に過ごしたのも、もしかしたら、神様が私にくれたプレゼントなのかしらね?覚えていないのが残念だけど。」
シーツをまとったまま悪戯っぽく微笑む彼女は、ギリシャ神話の愛と美の女神「アフロディテ」の様で、僕はその美しさにしばらく見とれていた。
「美童君、先にシャワー使っていいわよ。」
黙ったまま見つめている僕を不思議に思ったのか、和子さんが口を開いた。
そんな彼女の言葉に甘えて先にシャワーを使わせてもらう。
バスルームに向かっている時も、シャワーを浴びている時も、僕はさっき見た和子さんの美しさに酔わされていた。
頭を左右に振り、違う事を考えようとしても、脳裏に浮かぶのは和子さんの溢れんばかりの笑顔。
そんな努力も空しくなり、バスルームから出ると、頭の中に浮かぶ彼女の元へ行った。
しかし、既に和子さんの姿はなかった。
僕もそんなに長くシャワーを浴びていなかったから、かなり急いで出て行ったようだ。
和子さんの慌てぶりが想像できて、何だか可笑しい。
可笑しいはずなのに何故か胸に痛みが走る。何故だろう?僕に黙っていなくなったから?
僕は自問自答を繰り返しながら答えを探していた。
でも、もう答えは分かっている。それが「恋」だってこと。
僕が今求めて止まないのは和子さんなんだ。
ふと彼女の温もりを感じたくなった僕は、彼女がいたベッドに再び潜り込もうととして見つけてしまった。
それはシーツについていた真紅の花びら。
そう、彼女は初めてだったんだ。


712 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(8):04/05/11 22:14
「清四郎、僕、おじさんと和子さんに話があるから。」
僕は清四郎の部屋を出ると、おじさんと和子さんのいる茶の間の襖の前で足を止めた。
緊張で手足が震えるが、深呼吸を何度か繰り返す内、次第に震えが治まっていく。
勢いに任せてここまで来たが、僕はもう心に決めていた。
もう一度深呼吸すると、襖越しに声を掛けた。
「おじさん、美童です。お話があるので中に入ってもいいですか?」
おじさんは襖を開けてくれたが、その顔は想像どおり険しく厳しい。
「悪い美童君、今は取り込み中でな。」
「わかっています。でも、僕にも関係ある話だと思うので。」
思いがけない言葉が返って来たのか、さすがのおじさんも心底驚いているようだ。
「中に入りなさい。」
僕は中へと進み、おじさんの正面に座った。
「美童君、どうして君がここにいるのよ!」
僕は和子さんの声を無視し、再び深呼吸をすると、清四郎から聞かされた事で判明した事実を口にした。
「すみません、和子さんのお腹にいるベイビーの父親は僕です。」
おじさんは険しい顔で僕をじっと見据えている。
「な、なに言ってんのよ!勘違いもいいとこだわ!美童君、君が父親なわけないでしょ!
これでも私、男には不自由していないの!君と一度寝たからって父親とは限らないでしょ!」
和子さんは僕を睨みながら猛烈に反撃してきた。
「でも、和子さん、初めてだったじゃないか。シーツに深紅の花びらが散っていたよ。」
和子の顔が羞恥で真っ赤になった。
「なっ!もう!人前でそんなプライベートな事喋るんじゃない!
とにかく、この子に父親なんてものはいないの!マリア様だって処女懐妊したじゃない!
同じ人類なんだから、マリア様に出来て私に出来ないはずがないわ!」
「お前なぁ、医者が言うセリフじゃないだろう!」
流石のおじさんも呆れ果てた顔をしていたが、僕は我慢出来なくて大声で笑ってしまった。
聖母マリアと同じって…和子さんって最高!
僕はさっきまでの緊張が嘘のように、晴れ晴れとした気分になっていた。


713 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(9):04/05/11 22:16
「おじさん、ちょっと二人で話してもいいですか?」
おじさんは好きなようにしろとでも言わんばかりに、無言のまま頷いた。
僕は和子さんの手を引いて廊下へ出る。
「僕、さっき清四郎から聞いて驚いた。和子さん、何にも教えてくれないんだもん。」
「父親は美童君でもないし、子供は私が一人で育てるから何も問題ないもの。」
「僕、出来ればもっと早く和子さんに会いたかったんだけど、意外と時間がかかっちゃって…。
僕のことは清四郎から色々聞いていると思うけど、彼女達とキレイさっぱり別れたんだ。
和子さんが好き。あの日から和子さんしか見えないんだ。和子さんは僕が嫌い?」
和子さんは押し黙ったまま何も答えてくれない。それが答えなのかな?
「嫌いでも仕方ないけど、本当のこと教えて欲しいんだ。」
和子さんは目さえ合わそうとしない。
やっぱり嫌われてるんだ、僕…。
少し、沈黙が続いた後、和子さんがようやく口を開いた。
「嫌いだったらこんなに悩まないわよ。
前途ある学生の将来を、こんなことで縛っちゃったら可哀想じゃない。」
ああ、和子さんって素直じゃないけど、なんて可愛いんだろ。
僕は嬉しくって思わず彼女を抱きしめてしまった。
「僕と一緒にいれば、あの夜のように辛い時は助けてあげられるんだけどな。」
「それはとても素敵な提案ね。」
和子さんはやっと僕の目を見て微笑んだ。
「美童、君はチェレンジャーですな。間違いなく尻に敷かれますよ。」
いきなり階段の方から清四郎の声が聞こえてきた。
どうやら僕達の会話を聞いて全てを理解したらしい。
「清四郎はわかってないな。僕は凛々しくて格好いい和子さんが好きなんだ。」
「はいはい、ご馳走様。では美童、酒盛りの続きをしましょう。色々聞きたいこともありますし。」
にやにやしながら言う清四郎に恐怖を覚えながらも、僕は和子さんに向かって言った。
「和子さん、次はきちんとプロポーズしに来るから、この前みたいに逃げちゃダメだよ!」


714 :20万hit競作・ああ薔薇色の人生(10):04/05/11 22:18
来年、僕はパパになる。
僕と和子さんの子供なら絶対可愛いに決まっている。
僕と和子さんと僕達の可愛いベイビー。
あの日、僕達は和子さんの薔薇色の人生に乾杯した。
だから、そんな彼女を選んだ僕の人生もきっと薔薇色に違いない。

【終わり】


715 :名無し草:04/05/11 22:29
>ああ薔薇色の人生

>「私としたことが弟の友達と寝ちゃったなんて、恥ずかしくて誰にも言えないわ。」
この台詞、乙です。本当に、和子さんが言いそうな気がしました。

このふたり、美童が尻に敷かれてるみたいに見えて実は和子さんが美童を頼ってると
いう関係を妄想してしまいました。



716 :名無し草:04/05/11 22:34
>ああ薔薇色の人生
和子さんがいい女で、美童が惚れるのもわかるなあ。
考えたこともなかったけど、美童と和子さんって似合う!
すごく暖かい気持ちになりました。
乙です!

717 :名無し草:04/05/11 22:39
>ああ薔薇色の人生
やった!和子さんだ!美童との組み合わせも意外とよさそうですね。
しかし…初めてだったのに勢いでホテルへ…ということは、
美童を以前から好きだったのかしら?和子さんってばw

718 :名無し草:04/05/11 23:38
お祭りも終盤に差し掛かりましたが、連日、嵐のような
作品うpがあって夢のようです!
作家さんって、こんなにたくさんいらしたんですねぇ。
ラストに向けてまた素晴らしいお話が降臨しますように!
合掌!

719 :名無し草:04/05/12 00:57
今回清四郎祭りとも云うべき彼中心の話が多くて、
魅録の影が薄いのが悲しかったんだけど。
「彼女の傘」の切なさが光る描写は、
今までの清四郎に負けず劣らず魅力的に描かれた魅録で嬉しかったです。
作者さんありがとう。

720 :名無し草:04/05/12 03:22
競作祭り参加させて頂きます。
妄想スレ&嵐様の妄想同好会の益々の発展をお祈りします。
8レス頂きます。

721 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(1):04/05/12 03:25
むせ返るような薔薇の香り。
この季節の閑静な高級住宅街は、住人達が金と手間をかけて育てた薔薇の香りに包まれる。
我が家に薔薇の木はないけれど、今日あたりアイツはきっと抱えきれない薔薇の花束と、ケーキを持って帰ってくるかもしれない。
金色の陽射しが射しこむけだるい午後。あたしは何もする気になれずに、リビングでひとり、長い時間を過ごしている。
テーブルの上の殆ど口もつけていない紅茶は冷めきって、白いレースのカーテンが風にふわりとそよいでも、あたしの心は躍らない。
薔薇の季節。鮮やかな花びらを幾重にもまとって咲き誇る高貴な植物は、私にひとつの記憶を思い出させる。
10代最後の夏だった。薔薇園で出会ったひとつの恋は、あたしに怖いほど綺麗なんてものがあることを教えてくれた。
出会った瞬間から、あたしはぞっとするほど美しい瞳にからめとられた。
彼の声はあたしの奥深いところを蕩けさせて、彼の冷たい腕は痺れるような感触で、あたしを霧の中に引きずり込んだ。
多分あそこはこの世ではない場所にある薔薇園だったのだろう。
深い霧の立ち込める薔薇園であたし達は愛を語り合った。
その場所に時間の流れはなくて、すべての境界線はあいまいで、生と死も、愛も恐れも、幸福も絶望も、
すべてはどうでもいいことのように思えた。
ただ彼がそこにいて、あたし達は永遠に抱き合い、甘く堕ちていく感覚に酔いしれていた。

722 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(2):04/05/12 03:26
彼は今も、ただひとりで、あの薔薇園にいるのだろうか?
深い霧立ち込める薔薇の園で、永遠の孤独に耐えながら、あなたはまださ迷っているの?
最後に見た彼の泣き顔は、とても寂しそうだった。
――忘れないで…。
そう言った彼の声が耳について離れない。
ずっとひとりでぼっちで、彼はとても淋しい人だった。

…ねえ、柾臣さん。あたし、あなたとの約束を忘れたわけじゃないのよ…。

今日のようにあんまり薔薇の香りが強すぎる日は、あの時の感覚が、思い出とは思えないほどリアルに胸に迫る。

あたしの心は懐かしさと恐怖に打ち震えて、あたしは薔薇に飲み込まれそうになった…。

723 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(3):04/05/12 03:28


いつのまにか、あたしは眠っていたのだろうか?

「たっだいまーっ!」
あたしの物思いを打ち砕くように、陽気な声が玄関に響き渡った。
あたしははっと我に返る。まだ頭がぼーっとしている。あたしはのろのろと立ち上がった。
「ただいまーっ。あれ?可憐いないのー?君のスウィート・ハートがプレゼントを抱えて帰ってきたよーっ」よく通る夫の声が近づいてくる。
「ここにいるわよ。待って、いま出迎えるから」
「あ、そこだね。可憐、僕のヴィーナス!!」馬鹿みたいな台詞と共に夫がリビングに入ってきた。
「なっ!!」
――毎年恒例のことだからと、予想していたはずなのに、私はリビングに現れた夫の姿に言葉を失った。
そこにはせっかくの品のいいアタッシュケースを襷がけ、小指にはケーキの包みを引っ掛けて、
あとは両手に限界を超えた量の薔薇の花束を抱えた、そのせいで顔も見えない変な人が立っていた。
「び、美童!」あたしは口をぱくぱくさせる。
赤、黄色、ピンク、薄いピンク、白、紫、朱色、オレンジ――目のくらむような色彩の洪水!
手当たり次第にどっさりと、コイツ、花屋の薔薇全部買い占めてきたんじゃないでしょうね!?
あたしは一気に現実に引き戻されて、頭の中でそろばんを弾く、あんた、それいくらしたのよ!?薔薇の花って高いのよっっ!!
「さあ可憐、君に愛の花束を!」

724 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(4):04/05/12 03:29
大荷物を抱えて少しぜいぜい言っている。
「そんな変な格好で言っても決まらないわよーだ」
あたしはいつも通りに憎まれ口を叩いた。
あたしに冷たくあしらわれて、夫はひょいと花束のうしろから顔を出すと、
情けない声で叫びだした。
「もう格好悪くてもいいからさー、早く花束受け取って助けてよ!重いんだよー!!」
…もう、情けないったらないわ。
あたしは先にケーキを受け取って安全な場所に隔離した後、花束を受け取る。
と、いきなりよろめく。なに、これっ!本当に重いじゃない!!
「あー、しんどかったぁ。おっ、可憐はやっぱすごいな。僕ここまで持って帰るのすごく苦労したんだけどさ、
可憐は軽々抱えてるよねぇ」
身軽になった夫は腕を伸ばして、場違いな感嘆の声を上げている。
「ちょっと、変な感心しないでよ!それより仕事はどうしたのよ」
早めに切り上げたんだよ、あたしの腰に手を回しながら陽気に言った。
「だって薔薇の花束には、ケーキと白いカーテンと、明るい陽射しが似合うだろ?」
ウインクすると夫は、その後あたしの耳元に顔を寄せて、内緒話でもするみたいに囁いた。
でも本当の理由はね、もちろん…
「1秒でも早く、可憐の喜ぶ顔がみたかったからさ」
そう言うとまつげが触れそうな至近距離でにこりと微笑んだ。
夫の罪のない、澄んだ緑色の瞳が、陽光が踊るようにきらきらと光った。
そして、それを見たあたしは、なぜか突然、大声で泣きだしたい衝動に駆られた。

725 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(5):04/05/12 03:31
泣きたい衝動を堪えるために、あたしは夫にわざとつっけんどんなことを言った。
「こんなに沢山の薔薇、飾れないわよ」
「だったら白鹿邸と松竹梅邸にもおすそ分けすれば?
たしか去年もそうしたよね。女の子は幾つになっても花が好きだもんね」
そう言うと、得意そうにフンフンと笑う。
「今年は特にいっぱいおまけしてもらったしね。ほら、僕って花束の似合う素敵な美中年だからさ。あぁ、美しいって本当に――」
「はいはい罪ね罪ね」夫が言おうとした言葉を私は適当に引き継いだ。
幾つになっても変わらない、というよりコイツ、どんどん能天気に拍車がかかってるんじゃないかしら。
呆れながら私は夫をリビングの外に押しやった。
「お茶にするんでしょ。だったら早く着替えてきてよ」
夫が書斎に荷物を置きに行っている間に、私は光溢れるキッチンに移動して、
花瓶を用意するまでのあいだ、いったん流しに花束を置いた。
瑞々しい生花の香り。時にむせ返るほど強烈な香りは、咲き誇る生命の匂い。
そう、この花は生きているんだ。あたしはしごく当たり前のことに今さら気付いた。

あの時交わした約束を、あたしは忘れたわけじゃない。けれど…。
あたしはあの約束を思い出すことが、年々辛くなってくる…。

726 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(6):04/05/12 03:33
「――いたっ!」
指先に痛みが走った。
見ると取りきれてなかった薔薇の棘が、花束の中に差し入れた私の手を傷つけていた。
それは、あたしの心を見透かした、彼の責めの印にも思えた。
指先に紅い血が滲み、その色があの人の唇の朱に似ているようで、
あたしは呆けたように、それをぼんやりと眺めた。

不意に腕をつかまれて、あたしは心の底からびっくりした。みると夫が隣に立って、責めるようにあたしを見つめていた。「び、美童…」そのまま何も言わずに傷ついたあたしの指をぱくりとくわえる。なんて子供じみた動作!あたしは慌てた。
「美童ったら!もうっ、子供みたいなことやめてよ!」
「…――ばかだな可憐は。気をつけなきゃ駄目だよ」意外にも静かな口調でそう言うと、さらに傷口をぺろりと舐める。
――暖かくて、くすぐったい。
血はすぐに止まった。
じゃあ僕着替えてくるね。それを見届けると優しく言って、夫は歩き出した。

727 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(7):04/05/12 03:38
彼は何も言わない。
揺れるあたしを責めもしなければ、したり顔でわかるよと言ったりもしない。
ただ毎年、あたしの古傷が痛む季節になると、大量の薔薇の花束と、尽きない笑顔で私を埋めつくす。毎年、毎年、何度でも、埋め尽くす。
哀しい恋いの記憶を、自分との思い出で塗り替えてしまえとでもいうように。
あの小心者の優男の、それでも、それは「強さ」だと思う。
「待って、美童」去ろうとする美童をあたしは引きとめた。
「ん?なに?」美童が振り返る。
「ありがと」あたしは照れながらお礼を言うと、それから少し考えて、あたしは毎日浴びるくらいに言われているけれど、
自分からはめったに言ったためしのない(だって恥ずかしいんだもん)台詞を言ってみる「愛してるわよ」
美童はちょっと驚いてから、すぐにシュガーパイよりも甘い満面の笑みで投げキッスをよこした。
じゃあ僕はその倍、愛してるよ。すぐ着替えてくるから。可憐の愛情入り紅茶、楽しみだな、そう言って軽やかな足取りで2階に消えた。

728 :20万HIT競作・薔薇色の憂鬱(8):04/05/12 03:40


柾臣さん。

恋をするとき、あたしはいつも本気だった。
誰と交わしたどの恋にも、あたしは嘘は吐かなかった。
けれどその中でも、貴方は特別な人だった。
貴方との恋は、私にとって、なによりも特別な恋だったのよ。

――ごめんなさい、雅臣さん。

あたしは花束を抱きしめた。薔薇は滑らかな花びらで頬を優しく撫でてくれて、もう私を傷つけることはなかった。
あたしは顔を上げると、お茶の準備をはじめた。
お湯を沸かし、ティーカップを温めて、
丁寧に愛をこめて、
甘ったれな金髪の王子様のためにとびきり美味しい紅茶を入れるのだ。

紅茶の葉を選びながら、そういえばあたしは思い出した。
こういうのも薔薇に例えられるんだっけ。
ラ・ヴィ・アン・ローズ。
嗚呼、薔薇色の人生。

おわり

729 :名無し草:04/05/12 03:45
ありがとうございました。
前作の「ああ薔薇色の人生」と微妙に被っている所がありました。
作者様、気を悪くされたらすみませんでした。

730 :名無し草:04/05/12 03:59
もう書いても大丈夫かな。

>薔薇色の憂鬱
リアルタイムで読めて嬉しかったです。夜更かしは三文の得?w
さり気なくも見える日常の話なのに、しっとりと心に染み入ってきました。
夫婦の歴史を感じさせる展開がいいですね。若い頃より脳天気さが
増してる美童だけど、決めるとこは決めてていい感じ。
可憐の柾臣への想いも切なくて、しんみりしてしまいました。
その一方で、頭の中でそろばんを弾く姿には大笑い。さすが商人の娘w

一つだけ。>728の6行目も「柾臣」ですよね?
細かいことを言ってすみません。清四郎チェックwということでお許しを。

731 :名無し草:04/05/12 04:40
このスレはまだ440KBだけど、競作祭り中で早く進みそうなので、
次スレのテンプレ叩き台を、まゆこスレに早めに貼りました。
http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/591-n
意見はまゆこスレによろしくです。

このペースだと、レス番800近くまではこのスレを使えるかな?
では再びウプ&感想ドゾー


732 :名無し草:04/05/12 09:32
>薔薇色
和子さんと美童の子なら、どっちに似ても可愛いだろうなぁw
美童似の美少女で性格は和子さんな娘が
伯父と菊正宗病院の実権を争う話とか読みたい。

733 :名無し草:04/05/12 09:49
>729
ああ薔薇色の人生を書いた者です。
気を悪くするなんて全然無いですよ。
似て否なるもとは正にこの物語たちの事で、それが競作の良い所で楽しい所ですよね。


734 :名無し草:04/05/12 10:26
個人的にものすごく読みたいんで、向こうの掲示板から
嵐さんのレスを転載しちゃえ。


>競作に参加している作家さん
こちらの掲示板には下記のようなスレッドもありますので、
もし良かったら、作品の裏話などにお使いください。
競作作品をとりまとめてUPする際に、作品の後ろに
つけさせていただきますので。
「裏話スレッド」
http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1027901602
(競作以外の作品も、ご自由にどうぞ)


つうことで、楽しみにしてますw

735 :名無し草:04/05/12 14:07
>薔薇色の憂鬱
「発つ女、痕を残さず」とはまた別の美童の美童らしさと、その良さを
見せてもらったように思います。
帰宅時の描写が特に好きです。美童、いい美中年になったもんだなぁ〜。

736 :名無し草:04/05/12 16:22
競作は今のところ17作品で、締め切りまであと1日と少し。
今日もウプは夜になってからかな。
競作作家さん、連載作家さん、短編作家さん、カモーン!

737 :名無し草:04/05/12 19:53
>薔薇色の憂鬱
美×可待ってました!
すっごく好きです、この作品。コメディらしさの中に
美童の気配りが散りばめられていたり、可憐の根は純粋な
ところが丁寧に描かれていて感心しました。

738 :名無し草:04/05/12 20:33
競作参加させていただきます。
悠理と野梨子のカップリングで、はじめのほうは
少しR風味だったりするのでお気に召さない方はスルー
していただけるよう断りを入れておきます。
7レスいただきます。

739 :20万HIT競作・sense(1):04/05/12 20:37
髪の毛が揺れる。彼女の、ふわふわの髪の毛が。
真剣な瞳で野梨子の身体を射す、悠理の髪の毛が揺れている。

情事のあいだ、悠理も野梨子もいつもほとんど口を利かない。
言葉を交わさずに、二人は全てを交えていた。
言葉を使わないからこそ、感じられる事が沢山ある気がした。

『一般の男性よりも、悠理さまはずっと男らしいですわ』『中性的な容姿が素敵』

そんな風に形容される彼女。確かに、下から見上げる、夢中になっている悠理の
表情は『まるで少年』という表現をしても間違いとは言えないと思う。
けれど、野梨子は知っている。
真っ白な制服の下に隠れているのは、それよりもっと白い肌。
身体のライン。浮き出た鎖骨。うっすら開いた唇。額ににじむ汗。しっとり濡れた瞳。
ひとつひとつが艶めかしく、いつも野梨子はぞくりとさせられる。
どんなに彼女が『女』であるか。 知っているのは自分だけ。
それを見ることが出来るのも今日が最後だと思うと、瞳に焼き付けないといけないと
思うのに。悠理が眩しくて、彼女は目をほんの少し細めた。


740 :20万HIT競作・sense():04/05/12 20:38
「…どうした?」「いいえ」何でもないわ、というように野梨子は首を振った。
コシの強いみどりの黒髪が、彼女の頬を一度だけなでて落ち着く。
「ふーん」つまらなそうに呟くと、悠理は野梨子の唇に、何か果物でも食べるかのよう
に口づけた。「ん…っむ…」「……ふ」
二人の透明なしずくが必然的に、下になっている野梨子の唇の端からこぼれ、彼女の頬を伝い、シーツ代わりに床に敷いた部室の白いテーブルクロスに落ち、淡い染みをつくった。

お互いの吐息がお互いを濡らし、二人は高みに昇りつめる。
もっと奥へ。もっと遠くへ。
「あっ、あっ、ゆう……り」「っ、……!」

────────────

思い出すのは、あの日の午後。あの空気。あの会話。

あの台詞。



741 :20万HIT競作・sense(3):04/05/12 20:39
五月。初夏だった。
部活動が活性化してくるこの時期は、委員長である悠理と野梨子という組み
合わせが多くなる。
その日も放課後2人部室に残って書類を作成していた。
窓を背にして、悠理は右に、野梨子は左に、隣同士座っていた。
悠理は野梨子に借りたボールペンで。野梨子は万年筆。
まだ長袖の制服が少しだけ暑くて、緑茶に氷を入れたこと。
そんな細かな事が、妙にはっきり記憶に残っている。

「……」「……」
膨大な量の書類のために、2人は無言で仕事に勤しんでいた。サラサラとペンを走らせる
音が、小気味よく部室に響いていた。

始めて1時間が経った頃。
「野梨子」「え?」

一瞬の出来事だった。

唇が触れた、と思った次の瞬間には、野梨子が見ているのは悠理の横顔だった。
「……どうして?」
どうして。
何するの、でもなく、気持ち悪い、でもない。
たださっき悠理に口付けられた唇からこぼれた言葉がそれだった。


742 :20万HIT競作・sense(4):04/05/12 20:42
「どうしてって…」彼女は手を休めてこちらを見て、少し上を見て考えるような
表情を見せてから、言った。
「野梨子の唇が」「くちびる、が?」何?

「唇の色がね。紅いから、少し分けて貰おうかな、って思って」

ごく自然に、なんだ、そうだったの──と思って、野梨子は答えた。
「……そう」「うん、そー。」  そして2人は仕事を再開した。

それから、30分。
「悠理」「え?」
これもまた、一瞬の出来事だったように思う。悠理がやったようにやったつもりだから。

「……なんで?」
聞かれた問いに、当たり前のように野梨子は答えた。

「悠理の。悠理の唇の色が、薄いから、少し分けて差し上げようかと思って」

「……そっか」「ええ」  いま一度、仕事を再開する。


743 :20万HIT競作・sense(5):04/05/12 20:43
中断されたのは、10分後だった。
初めて見るもののように、二人の少女はお互いの瞳を覗き込む。
野梨子を見据えたまま、悠理の唇が動いた。

「混ざったら、どんな色になると思う?」

その後すぐにガタン、と音がした事は覚えているのだけれど、それが椅子が倒れた音
だったのか、それとも2人の中で何かがはじけた音だったのかは、良く思い出せない。
窓の外の新緑を背景に、床に座り込んで2人は口付けを交わした。
いつからか分からないけれど、ずっとこうしたかった事を、その時2人は始めて知った。
頭が痺れるくらいに。ずっとずっと、こうしたかった。
それはちょっとした永遠みたいに、長く長い口付けだった。

それがはじまり。

744 :20万HIT競作・sense(6):04/05/12 20:43
「…なぁ」「え?」まどろみながら考えていた野梨子は、悠理の声で
我に返った。「何考えてたの?」「…なんでも、ありませんわ」
あれから10ヶ月の間に幾度も口付けをかわしたけれど、今でも野梨子の唇の色は
他の人に比べて紅いし、悠理の唇の色は薄い。
「ウソだね」言いながら、右隣の彼女は野梨子の髪の毛を腕枕している左手で弄ぶ。
同じ女なのだからきっと痺れるだろうに、と野梨子はいつも思う。
(男性も腕枕して痺れるという事を彼女は知らない)
2人が同じ気だるさを持て余すこのひと時が、野梨子は大好きだった。
だけれど、いつまでもこのままでいては帰ることすら出来ない。
限られた中でこそ、時間も密度を増すのに違いない。

でも、帰れない。自分の弱さにあきれ返ってしまうけれど。
「…悠理」「ねえ、お願いがあるんだけど」(お願い……?)
不意に起き上がった悠理に戸惑いながらも、野梨子は「なんですの?」と答えた。
「あのさ」指を折りながら、悠理は言う。
「手と、耳と、鼻と、口と、それから───目。目にキスして」
「……どうして?」何を言い出すのだろう、と野梨子は思った。
「感じたいから」「…何を?」
「感触を感じて、覚えてたいから」「?」
「野梨子の、手ざわりと、音と、匂いと、味と、色。覚えたい」「……え?」
キスをすればいいのは分かったけれど、今いち良くつかめない。
「でも」「いいから。あたしもしてあげるから」「─────」
悠理の手に誘導されて、野梨子は彼女の上に乗った。
目を伏せた悠理は、透き通るように白く、ため息がこぼれるくらい綺麗だ。
「はい」静かに彼女が言う。「じゃ、手」言われたとおり、野梨子は手に口付ける。
悠理の言わんとすることが分かった訳ではないけれど、彼女は決して理不尽な事は
言わないのを野梨子は知っていたし、ただキスするだけでほんの少しでも長く
一緒にいられるならそんなのなんてことは無い、と思ったから。
もし伝わるなら面白い、と思う。
さっきなんとなく好感を持ってそれは『五感』というのだ、と教えなかった
『手ざわりと、味と、音と、匂いと、色』が、もしも、目の前の少女に伝わるならば。


745 :20万HIT競作・sense():04/05/12 20:44
「…うん」野梨子が悠理の瞼から唇を離すと、悠理は満足そうにニコッと笑った。
「下になって。野梨子」そう言って入れ替わる。
いつもの、一番自然な、野梨子が悠理を見上げる形になった。
「目、閉じて」「……ええ」

感覚が研ぎ澄まされる。
悠理はそっと野梨子の左手を取ると、絡ませた小指に口づけた。(───!)
「目開けるなってば」「あ、えっ、ごめんなさい」
思わず目を開けたのは、神経が過敏だからとかそういう事じゃなくて、
さっき野梨子が悠理に伝えたものをそのまま、彼女が伝えてきたように感じたから。
気のせいかもしれないけれど。
でも、思うだけなら。

静かにキスが降りてくる。色素の薄い、彼女の唇。
野梨子が悠理に伝えたものを今、悠理が野梨子に、伝えようとしている。

──約束なんて一度も出来なかった二人の、その指切りの手ざわりを。

──クロスの皺がそのまま五線になって、それを蹴飛ばす素足が奏でる音を。

──窓もドアも鍵を締め切ったこの部屋でカーテンを膨らませた、二人の風の匂いを。

──甘い、甘い、甘いだけの味を。

そして。

瞼に悠理の唇が触れた瞬間、野梨子の瞳から涙が零れ落ちた。


746 :20万HIT競作・sense(8):04/05/12 20:45
「どした?」「……っ」
何も言えずに泣くだけの野梨子に、悠理は苦笑いする。
「つーか、お前が泣くな」

そう。
『もう、終わりに』と。そう言ったのは、野梨子のほう。
けれど、彼女が言わなければ悠理が言っていた。
どちらが言うか、それだけの話だった。
別れを切り出されるのが恐かった野梨子が先に言った、ただそれだけの話。

野梨子は泣き止んだ。「おし」イイコだ、と悠理に頭を撫でられる。
泣くのを止めたのは、悠理に言われたからじゃない。
見えた『色』を涙で流してしまうのが惜しい、と思ったのと
泣いたら悠理が見えなくなる、という事に気付いたから。

まだ外は明るい。
夕方が迫ると、離れがたくなるから。まだ空に青の残るうちに二人は身支度を始めた。
床に座ったまま、簡単に畳んでおいた制服を手に取り腕を通し、ひとつひとつボタン
を留めて、向かい合う。
結ぼうとお互い手に取った相手の赤いリボンが白い手首に絡む。
毎朝結んでも家のものに直されるから、悠理が正しく結べるのは野梨子の制服の
リボンだけだ。
キュッ、という音が空気を引き締めるように野梨子の耳に届いた。

「………もう、行きますわ」「…うん」


747 :名無し草:04/05/12 20:48
同時に部屋を出ることはしない。二人が恋人同士でいられるのは締め切ったこの
部屋の中でだけ。一瞬でも外気に触れたら魔法が解ける。
いつも先に出るのは野梨子だ。濡れた空気のこの部屋に一人残される事も、開けた窓
から入ってくる風がその空気をさらって行くのを待つのも耐えられないから。
ドアに向かいながら野梨子は、最後のイベントはなかなか面白かった、と思う。
同じものをきっと感じたと思う。気のせいかもしれないけれど。
手ざわりも、音も、匂いも、味も、

そう。色も────「野梨子!」
突然呼ばれて、ドアノブにかけた手を離して振り返る。「……なんですの?」

右手で自分の唇に触れ、瞑った右目の瞼に触れて悠理は言う。端正な顔つき。
「綺麗な色だったな」(──────!)
気のせいじゃない。二人とも、同じ色を見た。同じ色を見た。
胸が詰まって何も言えそうになかったけれど。
「ええ……!」
ただどうか。どうか、最高の笑顔を彼女に見せる事が出来ますように。

バタン 締めた扉にもたれ掛かる。壁一枚隔てて悠理は隣にいるはずだけれど、
もう果てしなく遠く感じる。実際、もう遠いのだ。
「『綺麗な色だったな』────」呟いて、自分の唇に触れた。『紅い』自分の唇に。
一歩ずつ歩き出す。涙は出ない。ふと、窓から空を見上げた。

────────────

思い出すのは、あの日の午後。あの空気。あの会話。

あの台詞。

『混ざったら、どんな色になると思う?』
                               Fin

748 :20万HIT競作・sense:04/05/12 20:49
ありがとうございました。
はじめてギコナビから書き込んで、不手際ありまくりで
本当にごめんなさい。

749 :名無し草:04/05/12 20:50
しかも今見たらあげまくり…!
本当に申し訳ありませんでした。

750 :名無し草:04/05/13 00:23
>sense
同性カプって自分では思い付かないのですが、悠×野って、
読むとなぜかしっくりきます。
絵板のイラストといい、これといい…
でもどうしてもアンハッピーエンドになっちゃうのが切ないです。

751 :名無し草:04/05/13 02:27
ム、ついに24時間切りましたね。ラストスパートあるのかな?

752 :名無し草:04/05/13 08:16
>sense
なぜ野梨子は悠理と別れようと思ったのでしょう。
一回の過ちではないみたいだし、ずっと罪の意識を感じてたのかな?
そこを書いてもらったらもう少しすんなり野梨子の気持ちに乗れたと
思います。でも野×悠のR面白かったです。乙です。

753 :20万hit競作・花の色は1:04/05/13 09:54
 やっぱりくるんじゃなかった、と可憐はため息をついた。同窓会なんて最初から来たくなかったのだ。
幹事の一人でさえなかったら迷わず欠席の返事を出していただろう。だが元生徒会ということで有閑倶楽部の面々が音頭とりをするとなれば、嫌でも自分も働かないわけにはいかない。

 高校を卒業してから十数年経った現在、それぞれが仕事を持ち多忙な毎日を送っていてもなんとか時間の都合をつけて年に数回は集まるのが恒例になっている。

 そんな折りに、「ヒマもないけど、刺激も足りない」とぼやくメンバーに悠理が同窓会を提案したのが約二ヶ月前。
見事な連係プレーで今日この日、留年した年と卒業した年の二学年合同の同窓会が実現したのである。

 有閑倶楽部の他のメンバー同様、可憐もパーティーは大好きだが、同窓会で会場にいい男がいることなんて最初から期待出来るはずもない。
また、概して結婚の早い両家の子女達の集まりだけあって、姓が変わっていないから、と無邪気に「黄桜様はおムコ様を迎えられましたの?」と聞かれる。
高校の頃の人生の目票が玉の輿であっただけに、聞かれる度に独身だという事実を認めるのは堪えた。



754 :20万hit競作・花の色は2:04/05/13 09:55
 会場を見渡すと、豪華なパーティー会場の赤絨毯の上には、色とりどりの装いに身を包んだ、かつての級友達が散らばっている。着飾っていても三十過ぎともなると大方の人には容貌の衰えがうかがえる。
磨き上げた自分の美貌に誇りとちょっと底意地の悪い優越感を抱いて可憐はいくらか機嫌を直した。

「有閑倶楽部の皆様は、昔と変わらずお若くて美男美女ぞろいですわね」
「皆様成功してらっしゃる有名な方ばかりですもの。同窓生であるのが誇らしいですわ」

 自分達の噂がふいに耳に飛び込んでくる。きっとこのあと、結婚もしない変わり者の独身同士がつるんでいる、とかなんとかと続くに違いない、と可憐はひがみっぽいことを考えた。
それともこの年になっても一向に減らない別の噂か。

 高校時代も今もメンバー同士の恋の噂は繰り返し囁かれている。カップリングについては特にいろいろ憶測され、噂の内容もバリエーションに富んでいる。
自分関連のものが少ないのが軽んじられているようで可憐にとっては不本意だったりもするが、現実には今も昔も倶楽部内カップルは存在しなかった。

 次々と相手を変える美童と秘密主義の清四郎に関しては朧げにしか把握していないものの、仲間の恋愛事情については精通している自分が言うのだから間違いない。

 大学卒業後、清四郎が遠くにある医大に学士入学したり、悠理が渡米したり、仕事が忙しい、などの理由で自由に行き来も出来ず、若干疎遠になっていた時期もあったが、この年になるまで腐れ縁が続いているのもそのおかげかもね、と可憐は思った。


755 :20万hit競作・花の色は3:04/05/13 09:59
 それにしても、と親友達に目を移す。
在学時代から有閑倶楽部の面々は周りの生徒達とは異質だったが、今では別の意味で浮いている。

 男友達と楽しげに話しているピンクの頭の魅録。
 長い金髪をなびかせて女性達に笑顔を振りまいている美童。
 どっかの映画の登場人物みたいに両脇に黒い線の入った黄色のライダー・スーツをかっこよく着こなしている
悠理は、今なお健在な女性ファンから貢ぎ物のお菓子を貰って御満悦だ。
 部屋の向こうには春らしい淡い色の着物を着て髪を結い上げた、今でも華奢で清楚な野梨子。
相変わらずすだれ頭をした清四郎は、十代の頃には三十代に見えたのに、三十代になった今では年相応どころか実年齢よりもずっと若い。

 昔飲んだドメイヌのお茶が未だに効いているわけでもないのになんでこいつらは老けないんだろう、と可憐は思った。
少しでも努力を怠ったら自分はたちまち色褪せてしまうとわかっているだけに、何もしていないだろうに変わらない親友達がうらやましかった。
さすがに永久にこのままだとは思わなかったが。

 そうこうしているうちに時間が来て、世を儚んでいる場合ではなくなった。場所を移動して食べ物のテーブルの前にいる悠理と魅録の所へ行く。


756 :20万hit競作・花の色は4:04/05/13 10:00
「うわあ、魅録、それどこにあったの?」
「そこの角、ってもう売り切れか。欲しいならやるよ」
「わーい、魅録ちゃん、愛してる〜」

 全くこいつらには進歩ってものが感じられない、と可憐は呆れた。
「ほら、待望の余興の時間。あんた、そんなにガツガツ食ってて大丈夫なんでしょうね」
と悠理に向かって言う。あっという間に皿を空にしたあと、
「んなもん、腹ごなしだよ」と、笑顔で悠理は答えた。

 今回の余興の内容はすべて悠理が決めた。筋書きはこうだ。最初にステージの両脇に置いてある花瓶の中から日本刀とフェンシングの剣を取り出し、悠理と美童が対決、悠理が美童を切り倒す。
次に殴り掛かる魅録をかわし、魅録を切り倒す。
最後に清四郎と対決し、清四郎を切り倒す、とすべてが悠理の独壇場だ。

 三十過ぎの大人がする余興として内容的にどうか、と可憐は思ったが、仲間達は悪乗りした。
魅録がご丁寧にも家紋まで入っている木刀と映画なみの効果音、そしてスモークを用意し、野梨子が花を生けて剣を隠し、清四郎は台詞なんて覚えられないという悠理のためにあんちょこを準備した。
一回もリハーサルをしていないのが不安はあるものの、本職アナウンサーの同級生に司会をまかせて、可憐は紙を持ってステージのそでに立っているだけでいい。


757 :20万hit競作・花の色は 5:04/05/13 10:01
 いざ始まり、花瓶から剣を抜くシーンは決まった。死ぬまでの悶絶が不自然に長いという欠点があったものの美童は金髪をなびかせて奮闘し、魅録は面白がっているのが一目瞭然ではあったが、白熱した対決を好演した。
ところが最後に切り捨てられるはずの清四郎が余裕の笑みで白刃取りをしたのである。

どよめきにまぎれながら、
「すじ書きがちがうぞ!」と悠理が小声で文句を言う。
渾身の力を込めて刀を引き抜こうとする悠理に清四郎は意地の悪い笑みを浮かべて小声で答える。
「それより、台詞はどうしたんです?まさか何年もアメリカに住んでいて読めないってことはないですよね?」
「うるさい!エーゴでなんか書くな!」
叫ぶなり、悠理は刀を捨ててひらりとばく転をした。
「読めなくても、会話は出来るんだい!!」
叫びながら素早く飛び蹴りを繰り出す。体制を立て直す間のなかった清四郎は左肩に直撃を受けて後ろに吹き飛び、背中から落ちた。

 呆然とする周りをよそにガッツポーズとともに悠理が叫んだ。
「とうとう清四郎に勝ったぞ!!」
もちろん可憐が持っている紙にはこの台詞はない。
「おう、やったな、悠理!!」
魅録がハイタッチをして悠理とはしゃぐ。清四郎は憮然とした表情で立ち上がり、服の埃を払っている。

 プロとしての意地を見せ、ここで司会がうまくまとめ、割れんばかりの拍手が起こった。




758 :20万hit競作・花の色は 6:04/05/13 10:02
 会場を抜け出して美童と一緒にホテルの金庫に預けていた会計の集計をしながら、ぼんやり余興の後のやり取りを思い返していた。
(悠理にしてやられるとは思いませんでしたね。腕を上げましたね)
穏やかに笑う清四郎は前とはなんだか勝手が違う。

「はい、おしまい。」
店で毎日帳簿付けをしているだけに、こういった作業はお手のものだ。
元経理はなぜか動かず頬杖をつきながらじっと可憐を見ている。
「ねえ、余興の前さあ、ずいぶん憂鬱そうだったじゃない。何悩んでたの?」
「笑わない?」
頷く美童に仕方なしに話す。
「あたしもこのまま誰にも見向きもされずにおばあちゃんになってしまうのかなあ、って思って。」
 美童はさらっと和歌を諳んじてみせた。
「古典で赤点とっていた人間にしては上出来だわ」
「日本文学専攻なの忘れたの?可憐が小野小町の心境になるのはまだ早いんじゃない?こんなに綺麗じゃない」
気がつくと美童の手は可憐の髪に添えられていた。
「お世辞はよしてよ」
「お世辞じゃないよ。なんなら、僕、ジュエリーアキの専属になってもいいけど」
「冗談、うちがそんなに払えるわけないでしょ」
なんという職業かは知らないが、美童はいろんなブランドの展示即売会で裕福な女性に甘い言葉で商品を買わせる生業をしていて芸能人並みに稼いでいる。
「可憐もすっかりリアリストだね」
謎のセリフを残して美童は会計を済ませに行った。



759 :20万hit競作・花の色は 7:04/05/13 10:03
 会場に戻った可憐を待ち受けていたのは、名前は忘れたが野梨子のファンクラブの元会長だった。
憧れの白鹿さんと話をしたいが、おっかない元生徒会長がずっと隣にいるのでなんとかして欲しい、と頼まれ、可憐はしばし考えた。
野梨子の崇拝者に恩を売ってもなんの得にもならないが、どちらにせよ恩師への花束贈呈が始まる時間が近い。結局、こう答えた。
「なんとかしてみるわ」

「清四郎は結婚なさればよろしいのよ」という野梨子の澄んだ声が耳に入る。
「清四郎が美童や魅録のようでしたら、私もこんなことは言いませんけど、清四郎は本質的に寂しがりやですもの」
「自覚はないですけどね」
「私が電話すると、今度は何ですか、などと感じの悪いことを言いますのに、自分は夜中に大した用もないのにしょっちゅう電話してくるじゃあありませんか」
「あの時間に普通に起きているのが、野梨子ぐらいだからですよ」
しれっとして答えた後、一瞬、真顔で清四郎が聞く。
「ひょっとして迷惑に思っているのですか」
「拗ねて見せないで下さいな。そういう訳ではありませんけど、遅くに帰ってきた時に私と電話で話すよりも奥様が迎えて下さる方がずっとよろしいでしょうに」
「そういう野梨子はお見合いの話とかないんですか?」
「この頃やっとおばさま連も諦めたみたいですわ。この分だと白鹿家も私の代で終わりですわね」
と野梨子は悪戯っぽく笑った。

 最後の恋人と別れてから元の男嫌いに戻ってしまい、結婚する気などみじんもない野梨子は無敵だ。
野梨子が一人暮らしをする、と言った時も、マンションを買った時も反対して、嫁にでも行ってくれた方がよっぽど安心だ、と説教していたのは清四郎の方だったのに、今ではすっかり形成逆転している。


760 :20万hit競作・花の色は 8:04/05/13 10:04
「可憐、どうです、玉の輿の相手でも見つかりましたか?」
分が悪い話を終わらせるたいのか、可憐が近付くなり、清四郎が問いかけてきた。

「よしてよ、こんな処にいる訳ないでしょ。私の運命の人は永久に来ないみたい」
玉の輿の夢はとうの昔に見限っている。本心では自分だけを愛してくれる理想の男性が迎えに来てくれる、
という夢はまだ諦めきれていなかったが。

 可憐を慰めるつもりか、やけに優しい声で野梨子が応じた。
「まだ平均結婚年令を少々超えたぐらいですし、可憐は可憐に相応しい方が現われるまで気長に待てばよろしいのよ。」
「おや、僕に対して言っていることとずいぶん違うじゃないですか」
「私は人を見てアドバイスをしてますの」野梨子が澄ました顔で答える。
永遠に続きそうな掛け合いを制して可憐は野梨子に仕事を思い出させる。

「ったくもう、何年やってれば気が済むの。野梨子が人生に必要だと思うんなら、いい加減はっきりあの子に言えばいいじゃない。じゃないとあの子鈍いんだから気付かないわよ」
清四郎は曖昧な微笑を浮かべた。
「僕の人生には親友達全員が必要なんですよ。欲張りなものでね。でも、まあ、可憐の言うことも考えてみる価値があるかもしれませんね。」
言い終わるなり、清四郎は幼馴染の手を握りしめている不届きものを追い払いに去って行った。



761 :20万hit競作・花の色は 9:04/05/13 10:05
 二十代の頃の清四郎は誰に何を言われても頑として野梨子に友情以上の感情を持っていることを認めず、距離を置こうと努力していたように見えていたが、言うことが微妙に変わっている。
何を今さら、という気がしないでもないが。

 結局のところ何も変わっていないように見えて、ぼんやりしている間に変わっているものもあるということだろうか。
もしかしたら、あっちの二人も……

 これはぜひとも美童にも意見を聞いてみなきゃ、と可憐は思った。振り向こう、とした瞬間、
「お待たせ」と甘い囁き声が耳に届いた。後ろから腰に手がまわされる。

 そうして、可憐は優しい腕のぬくもりを感じながら、近い将来に思いを馳せた。

おわり


762 :20万hit競作・花の色は :04/05/13 10:08
ありがとうございました。

「色模様」の作者様、和歌が被ってしまい、すみません。


763 :名無し草:04/05/13 10:26
>花の色は

派手なシーンとかカップリングとかなくても、面白いお話って読めるんですね。
すごくよかったです。なんかしみじみした感じで。

もちろんカップリングのお話がつまらないとか言うのではないです。
お待ちしています。

764 :名無し草:04/05/13 10:49
>花の色は
清四郎の「僕の人生には親友達全員必要なんですよ」という言葉にジンときました。
作家様は、清四郎が強がってるセリフとして書かれたのだとは思いますが・・・。
30代になっても老けない有閑倶楽部。さすが! あーウラヤマシイ(本音)

765 :名無し草:04/05/13 11:02
>762
「色模様」の作者です。
いえ、むしろ、同じ和歌でこうきたのかと面白かったです。
競作ならではの、被り&楽しさですねw

766 :名無し草:04/05/13 11:03
うわっ、上げてしまいました。申し訳ありません。

767 :名無し草:04/05/13 11:41
>花の色は
それらしくてすごくよかったです。
野梨子に魅力を感じました。

768 :名無し草:04/05/13 11:48
>花の色は
丁寧な描写に、自分も同窓会に参加しているような気分になりました。
余興のシーンが特に素晴らしく、御大の絵でありありと目に浮かびます。
嫁にでも行ってくれた方がよっぽど安心だ、な清四郎に笑いましたが、
大切な親友ゆえに膠着してしまう関係というのは、とてもありそう。
騙される方に違いないと思っていた美童が、騙す?方に回っていようとは
驚きですw これが「歳月」ということなのかもしれませんね。

769 :名無し草:04/05/13 12:14
今465KBだから、あと2作位は余裕で大丈夫だと思います。
ラストスパート待ってますよー

770 :名無し草:04/05/13 13:49
競作をうpさせていただきます。
7レスお借りします。暗い話です。
暗いのと気持ち悪いのが苦手な方は、お手数ですが。スルーを御願い致します。


771 :20万hit競作・ 血 1:04/05/13 13:50
清四郎が、消えた。
ある日突然、煙のように。
あれから七年、俺は今もあいつが帰ってくるのを、待ち続けている――。


「いらっしゃい、魅録」
矢張り今日も、野梨子は紫陽花に水をやっていた。
清四郎が行方不明になる前の年、二人で植えたという紫陽花の手入れを、野梨子は一日たりとも欠かさなかった。

「どうぞ」
今日は六月ならではの鬱陶しい蒸し暑い日で、振舞ってくれた麦茶が美味かった。
「悪りぃな、サンキュ」
野梨子も襷掛けを解いて、俺の隣に腰を掛ける。
「綺麗だな」
「――?」
「紫陽花」
俺は、庭を見渡した。
元は一株だけだった紫陽花は、清四郎が失踪してから毎年少しづつ増えていき
今では庭の大半を占めていた。
一面の青い紫陽花――梅雨時の湿った風に吹かれ、細波みたいに揺り動く。
波打ち際にいるような錯覚を覚えて、俺は僅かに目眩がした。
「清四郎は、青い色が好きでしたから」
野梨子はゆっくりと紫陽花の群れを見渡し、目の前の紫陽花に視線を落とす。
ここにある紫陽花は皆青いのに、その一株だけは、ピンク色だった。
その一株は二人で植えた紫陽花らしく、野梨子はその紫陽花を特に慈しんでいた。


772 :20万hit競作・ 血 2:04/05/13 13:52
清四郎の失踪は、本当に不思議な出来事だった。
何の変哲も無い夏のある日、忽然と自室から消えたのだ。
エアコンは点けたまま、パソコンは電源が入った状態でブラウザを幾つも開かれたまま止まっていて
コンポからはクラシックが流れ続けたままで、コーヒーも飲み掛けのまま放置されていた。
携帯電話も財布も触った形跡が無く、清四郎がいつも携帯しているバックの中にそのまま収められていた。
後で家人が確認をしたところ、靴も全て揃っていて、無くなった形跡は見られなかった。

その日はおじさんは仕事、おばさんと和子さんは所用で、皆出払っていた。
最初の異変に気が付いたのは、午後四時に家に来た菊正宗家の家政婦だった。
いつものように勝手口から入り、夕飯の準備をしようと流しに立った時
二階から微かに音楽が聞こえてきた。
清四郎か和子さんが居ると思ったらしく、声を掛けたが返事が無かった。
もしかしたら寝ているのかもしれない――それならわざわざ起こす事も無いと
家政婦は部屋の中を確認する事まではせずに、夕飯の支度に取り掛かったそうだ。
そして午後七時――駅で偶然会ったといって、和子さんとおばさんが一緒に帰宅。
和子さんは部屋着に着替え、夕食の旨を告げる為に清四郎の部屋をノックした。
部屋の中から音楽が流れているのに、返事は無い。
不思議に思いドアを開けたが、既に清四郎の姿はそこには無かった。
それでも、特に誰も心配はしなかったという。
可愛らしい幼女ならまだしも、高校三年にもなる男が一人、夕方家に居なかったところで
何かあったと早合点する方が確かに変だ。
どうせ仲間内の誰かの家にでも行っているのだろうと、二人は普通に夕食を取った。


773 :20万hit競作・ 血 3:04/05/13 13:53
午後十一時――おじさんが、病院から帰宅。
清四郎の話が出て、さすがに何の連絡も無いのを変に思い
和子さんが俺達全員にそれぞれ連絡を取り、誰も清四郎の居場所を知らない事が発覚する。
それでも事を大げさにするのは憚られたらしく、夏休みという事もあって三日間は待った。
その間俺達は、清四郎の行きそうな場所を探してみたり、友人に電話をしてみたりした。
俺は族仲間に頼んで捜索して貰い、悠理も財閥の力をフルに使って秘密裏に探させていた。
だが、清四郎は見つからなかった――。

四日目の朝、おじさんは俺の親父に依頼して、警察が本格的に捜査に踏み切った。
空白の時間は、四時間――。
失踪した日の朝、最後に家を出たのはおばさんで、出た時刻は午前十時。
その時、清四郎は居間で新聞を読んでいて、今日は何処にも出掛けずに家に居るというような事を、
おばさんに言っている。
おばさんは、その日届く宅急便の荷物を受け取って欲しいと清四郎に頼み、家を出た。
宅急便の業者は午後二時に菊正宗家を訪れているが、何度チャイムを鳴らしても
誰も出て来ないので、そのまま玄関先で帰っている。
この事から、清四郎は午後二時には既に家に居なかったと考えていいだろう。
午前十時から午後二時――この四時間の間に清四郎の身に、何かがあったのだ。


774 :20万hit競作・ 血 4:04/05/13 13:54
家出、誘拐、何か事件に巻き込まれた・・・・・・果ては自殺の線まで警察は考え出した。
だが清四郎の性格や、居なくなった時の状況から考えて、どれもこれも全くと言っていい程
可能性は無かった。
家出、自殺――これは殆どゼロに近い確率だ。
第一理由が無いし、性格的にも暗く思い詰めたり、自虐的な行為をするとは思えない。
それに携帯や財布まで置いていく間抜けな家出など、清四郎には考えられない。
誘拐、事件――悠理の家には及ばないが、世間の基準に照らし合わせると
清四郎の家も十分財産のある家だろう。考えられない事は無い。
だが、わざわざ武道に秀でた体力のある男を誘拐するだろうか? 俺ならしない。
同じ金持ちを誘拐するのなら、いかにも弱そうな隣家の野梨子を狙う。
それに、部屋も荒らされた形跡も無い。事件性も、極めて薄い。

そして皆は、何よりも野梨子の事を心配した。
正式な形こそ無かったが、清四郎と野梨子は相思相愛なのだと、誰もが認識していた。
だが清四郎が居なくなっても、野梨子は一向に悲しむ素振りを見せなかった。
「清四郎は、何時もわたくしと一緒に居てくれますの」
そう言って嬉しそうに、二人で植えた紫陽花を毎日のように可愛がった。
清四郎が居なくなった事に拠る、一時的なショックで精神が錯乱しているのだと医者は言った。
「可哀相に。紫陽花を清四郎だと思ってるのね」
可憐は涙を浮かべて野梨子を哀れんだ。

捜索も空しく清四郎は見つからず、七年の月日が流れた――。


775 :20万hit競作・ 血 5:04/05/13 13:56
「旅行は如何でした?」
俺が一気に飲み干した麦茶の二杯目を、野梨子は持ってきてくれた。
「どうもこうも、あいつ食ってばっかり」
俺が呆れた仕草で両手を広げると、野梨子は再び庭に降り立ち、可笑しそうに笑った。
「悠理らしいですわ」
ひと月前――俺と悠理は婚約した。
本当は高校を卒業してからすぐでも良かったのだが、清四郎の事が気懸かりだったのと
残された野梨子に対しても気兼ねをしてしまっていたのとで、延ばし延ばしになっていた。
清四郎失踪から七年経って、やっと二人とも意を固めて婚約したが
矢っ張り大々的に婚約祝いをする気分までにはなれず、ささやかに二人きりで国内旅行を楽しんだ。
「俺達が泊まった旅館でも、たくさん紫陽花が咲いてたよ」
青い紫陽花やピンクの紫陽花――この庭では見ない、白い紫陽花なんかもあった。
「今まで知らなかったけど、紫陽花って土壌の性質によって、色が変わるんだってな」
旅館の主人は相当花が好きらしく、紫陽花について色々教えてくれた。
「随分、詳しくなりましたのね」
野梨子はふふ、とか細く微笑んで、ピンク色の紫陽花を撫でた。

パツ、パツ――とそこかしこから、音が弾ける。
くぐもった雷鳴が遠くの空で鳴り、少しづつ近づいてくる。
雨が、降ってきた。


776 :20万hit競作・ 血 6:04/05/13 13:57
「清四郎は、その下に埋まってるんだな」
土が鉄分を吸収すると、青い紫陽花がピンク色になる――旅館の主人は、そう言っていた。
二人が植えたという紫陽花の花は、最初の年は青い紫陽花だった――。
だが清四郎が失踪した次の年――その紫陽花の色は青からピンクに変わっていた。

野梨子は着物のままピンクの紫陽花の側で濡れた地に足を着いて座り、紫陽花を雨から庇うように抱きかかえていた。
「誰にも、渡したくはなかった」
「野梨子――清四郎が好きだったのは、お前だけだったんだ」
今回の旅行中に、俺は悠理から意外な事実を聞いた。
清四郎が失踪する前の月、一旦は破談になった悠理と清四郎の結婚話が、水面下で進められていたらしい。
もちろんそれは本人同士の希望などではなく、いつまで経っても男っ気が無い悠理に業を煮やした
万作おじさんと百合子さんが、脅しの意味も込めて冗談半分で進めていた事だった。
だが前回の事もあり清四郎はそれを深刻に受け止めたらしく、剣菱家に出向き
剣菱夫妻と悠理の前で、自分は野梨子の事が好きだからと、きっぱり断ったという。
その毅然とした態度に深く感動した悠理は、野梨子にこっそり教えてやろうと
買い物を口実に呼び出し、話そうとした。
ところが野梨子は、『結婚話が強引に進んでいる』という
下りまで聞いた途端、耐え切れなくなったのか、最後まで話を聞かないまま悠理の元から走り去ったという。

それが、清四郎失踪の前日の出来事だった。


777 :20万hit競作・ 血 7:04/05/13 13:58
雨が、激しくなった――。

「もう、何処にも行かせない」
野梨子はずぶ濡れのまま、目を閉じて愛おしそうにピンク色の紫陽花に頬を近づけた。

「ずうっと、いっしょよ――」
紫陽花と一つになるように倒れこみ、野梨子は地に横たわった。

うなだれた紫陽花
まばらに広がった髪
海の色にも似た着物
はだけた素足
――雨は容赦なく、振り注ぐ。


「清四郎は、お前だけを愛してたんだ」
裏口の木戸を開け、俺は傘も差さずに出て行った。


色が無い雨は、いつまでも降り続けていた――。


778 :名無し草:04/05/13 13:59
以上です。
楽しい企画に参加させていただき、ありがとうございました。


779 :名無し草:04/05/13 14:07
>770 暗いのと気持ち悪いの
>771 清四郎が、消えた + 野梨子 + 紫陽花

最初の数行で……やっちまったか、野梨子、という感想が出てくる
お約束の展開でしたが、しっかり読んでしまいました。
白鹿さんの雨の庭に咲き誇る紫陽花の色が目に浮かびます。
作者さん自ら暗くて気持ち悪いとおっしゃっていますが、寧ろ綺麗な色の
印象が強いですね。

野梨子がどうやってあの清四郎を殺したのか(そして埋めたのか)
あるいはあの清四郎がどうやって野梨子に殺されたのか(そして埋められたのか)
ちょっと想像がつかなくて困ってます…。

780 :名無し草:04/05/13 14:41
>血
好きかどうかは別として、たまにこういう作品もあるとアクセントとしていいでつねw
紫陽花の色が土の成分によって変わることを初めて知りました。
勉強になりました。
「血」というタイトルですが、内容と比べてちょっと違和感あります。

>779
>やっちまったか、野梨子
噴射。笑。

781 :名無し草:04/05/13 14:55
>血
有閑キャラの中でも、清四郎と野梨子は恋の狂気に取付かれられそう。
779さんのレスを見て、清四郎は野梨子に殺されてあげたのか?
などとりとめもなく考えてしまいました。
しかし最後の場面、野梨子は意識を手放し、魅録は清四郎の敵を討ったようにも取れますね。

782 :名無し草:04/05/13 16:03
多分、あと1作ウプがあると、容量的にその次の作品のウプが
ギリギリになると思うんだけど、どうしよう?
ラストスパートを期待して、早めに新スレを立てておく?

783 :名無し草:04/05/13 17:31
すごい。
2ヶ月も経たないうちに新スレなんて。

784 :名無し草:04/05/13 17:46
>782
次のがウプされたらすぐに新スレを立てて、こっちの残りを
感想や雑談に使えばいいと思う。
二作目からは新スレにウプしてもらうようにして。
まゆこスレにテンプレがあるから、スレ立てはすぐにできるでしょ。
次のがウプされた時に居合わせた人が立てるってことで。

785 :名無し草:04/05/13 17:51
あと24kb余裕あるから、原稿用紙33枚分は書ける。
だから、あと1話と雑談分は十分持つよ

786 :名無し草:04/05/13 18:12
20万HITおめでとうございます。
競作で野梨子視点の話をうpします。
ですが彼女がアンハッピーな話なので苦手な方はスルーお願いします。

787 :20万HIT競作・ダンデライオン(1):04/05/13 18:13

ガラス棚の上には、淡い色調のカットソーが重ねられていた。
その中から、ピンクのボートネックを取り野梨子は身体にあてる。
隣の清四郎は、先ほどから戸惑った顔のままだが、気づかない振りをして、
スカートが並んだラックへ移動した。
その側には、フローリングの床に、ベージュの布製の頭をしたマネキンが
ポーズをつけて立っている。
身に着けている服は、紺色の地に白の小花模様の半そでのワンピースだ。

数日前、幼馴染が買い物につきあってほしいと頼んできた時、
元々夏服を買う予定だったからと、野梨子は快諾した。
先日彼が悠理の服を台無しにしたのを、目の前で見ている。
白地のプリントTシャツに、赤紫の染みが散っていた。
剣菱邸で皆で酒盛りをしている途中、ワインをかけてしまったのだ。
もっとも振り向きざまに、近寄ってきた彼女に接触したという
タイミングの悪い、事故のようなものだったが。
被害を受けた悠理はまるで気にしていないのに、律儀なところのある
幼馴染はきちんと始末をつけないと気がすまないのだろう。
しかし彼女の好みそうな服を扱う店はよく知らなかった。
そして、野梨子はあえて調べるほど親切にはなれない。

788 :20万HIT競作・ダンデライオン(2):04/05/13 18:14

ごく近く彼の気配を感じ、スカートに目を向けたまま野梨子は口を開く。
「別に似たような服でなくていいと思いますわ。
清四郎が悠理に似合うと思うのをあげたらいいんじゃありません?」
「それはそうですが……」
少しは一緒に考えてくれないんですか?と非難の表情を見せる。
「わたくし悠理の服はわかりませんもの」
彼は、こんなことならば他の友人に頼むべきだったと思っているだろう。
可憐や美童ならば、からかいながらも親身になってくれる。
憮然とした顔の清四郎の元へ、店員がやってきた。
少し離れた場所で、ふたりのやりとりに耳をすませる。
店員が彼の前に服を数枚並べている。
清四郎はかすかに眉根を寄せていた。
頭の中で悠理に目の前の服を一枚ずつ当てはめているようだ。
彼は彼女にどんな服を選ぶのだろう?
興味を覚えないわけがなかった。
今日一緒に来たのもそのためなのだから。
店員のすすめる服は、なかなか彼の悠理のイメージに合わないようだった。
だんだんと、店の奥へと移動していく。
ふと、今まで店員の差し出す服を眺めるだけだった彼の手がすっと伸びた。
野梨子は目を細める。
彼の背中に隠れて、うすい黄色がちらりと見えた。

789 :20万HIT競作・ダンデライオン(3):04/05/13 18:14

店員に見送られ、店を出た。
どんよりとした曇り空からは今にも雨が降りそうだ。
隣の清四郎が左腕に、ロゴの入った白い紙袋を下げている。
その中に何が入っているかは知っている。
淡いレモンイエローのノースリーブ。
四角い襟ぐりに同じ色のレースがついているかわいらしい服だ。
店員が丁寧にたたみラッピングするのを野梨子は見つめていた。
彼はどんな風に、あの少女めいた服を渡すのか。
悠理は、どんな表情を浮かべ受け取るのだろう?
頬に冷たいものが当たった。
乾いたアスファルトが、みるみるうちに黒く濡れていく。
「いそぎましょう」
小走りで駅に向かった。
足の遅い野梨子は、彼の背中を追いかける形になる。
彼は白い紙袋を、雨からかばうように抱えていた。

790 :20万HIT競作・ダンデライオン(4):04/05/13 18:15

風はなく、日ざしは穏やかだった。
辺りに植えられた木々は、空へ空へと枝を伸ばし、葉はつやつやと光っている。
昼休み、中庭に面した回廊の柱に寄りかかり、野梨子はぼんやりとしていた。
空を仰ぐと、透けるようなセルリアンブルーに、すじ雲がところどころただよっている。
春の空は、どの季節よりも優しい色をしている。
見つめた後、目をとじた。
まぶたを通してあたたかさが伝わってくる。
「野梨子」
影がさし、悠理の声が降ってきた。
彼女は野梨子を覗き込み、手には一輪の花を握っている。
「これ、やるよ」
たんぽぽ、だった。
「あっちに咲いてたんだ。前に好きだって言ってたよな」
彼女は指差す。
パンジーの植えられた花壇の下、赤い煉瓦と芝生の間から
ギザギザの葉をした草が無理やりに生えていた。
庭師が入り、手入れの行き届いた中庭では珍しい。
「ありがとう」
太陽の光をわけてもらったような色あいに、自然と顔がほころぶ。
細かい花びらがびっしりとつまっているさまは、花火のようで、
目にすると、ぱっと心に火がともったような気がする。
そのあたたかなイメージは広がって、目の前の悠理と重なった。

791 :20万HIT競作・ダンデライオン(5):04/05/13 18:16

きっと同じイメージを、清四郎も抱いている。
脳裏に、いつも眩しげに彼女を見つめる視線、
そしてレモンイエローの服がよぎる。
そういえば、彼は悠理にあの服を渡しただろうか。
悠理の趣味のデザインとは思えなかったが、
彼女は一度くらい袖を通しただろうか。
疑問を口にすると、途端、悠理の頬が真っ赤に染まった。
「なんで野梨子が知ってるんだよ!」
「一緒に買いにいきましたから。
……いえ、でもあれは清四郎がひとりで選んだんですのよ」
文句を言われてはかなわないので、野梨子は言葉をつけたす。
「……あんなの着れるかぁ」
あたいに似合うわけないし、大体アイツが選んだ服を
なんであたいが着なきゃなんないんだよ。
アイツあんな服買ってきて、からかってんのかよ。
悠理はぶつぶつとつぶやいている。
「野梨子。みんなには内緒だぞ。
無理やり着せられたらたまんないからな」
悠理は野梨子の肩をつかんで念押しすると、まだ赤い顔のまま
走り去っていった。

792 :20万HIT競作・ダンデライオン(6):04/05/13 18:16

いつのまにか、べっとりとした白い汁がついている。
野梨子は手のひらに目を落とした。
ちぎられた茎の先はひしゃげていて、ねばつく液はそこからにじみ出ている。
ぴんと張りつめていた花びらは、なんだか少ししおれているようだった。
先ほどまで、いきいきと咲いていたのに。
野梨子は花を手のひらで包み込むようにしたが、
弧を描いた茎が、うなだれるように見えただけだった。

花壇には、瑠璃色のパンジーが行儀よく咲いていた。
その前に座り込み、野梨子は煉瓦に張りつくように生えた草を見つめる。
茎はまだ二本残っていて、ひとつはまだつぼみだった。
もうひとつには、半分散りかけた綿毛がついている。
その周りをぐるりと囲んで、やや乾いた感じのする緑の葉っぱが、
放射線状に広がっている。
生徒会室の戸棚の中には、ガラスの一輪挿しがあった。
透明で、ふちに紺のラインが入ったシンプルなもので、
素朴な野の花に似合うと思っていたのだが。
野梨子は、葉の上に途中から無残に折れてしまったたんぽぽを置いた。
元通りになるわけではないが、黄色い花は、少し息を吹き返したように見えた。
周りの黄緑色の芝生が、日の光を浴びつづけているせいか、
白っぽくなっている。
数日たてば、たんぽぽは、かさかさに干からびてしまうだろう。
それでも、明るい日差しの中でたんぽぽは微笑んでいるようだった。
野梨子はしばらく花を見つめていたが、やがて背を向けその場を離れた。

793 :20万HIT競作・ダンデライオン(7):04/05/13 18:17

夕暮れ時、とうとう文字が読みづらくなり、野梨子は本をとじた。
向かい側の席で、魅録が頬杖をつき、まぶたを閉じている。
十分ほど前に可憐が出て行き、生徒会室はふたりきりになっていた。
彼の耳元から黒のコードが伸び、かすかに音がもれている。
邪魔をしたいわけではなかったが、
「魅録」
名前を呼ばれ、彼は薄目をあけてイヤホンを外した。
野梨子は真っ直ぐに彼を見据える。
「魅録、お話がありますの」

清四郎が悠理へ服をプレゼントしたこと。 
それは、きれいなレモンイエローのかわいらしい服だったこと。 
そして最近、悠理を特別な目で見ているように感じること。

野梨子が口をつぐむと、しばらく沈黙が続いていた。
「野梨子は」
彼はようやく口火を切った。
「……清四郎のことが好きなのか?」
「そう…かもしれませんわね」
野梨子は曖昧に答える。

794 :20万HIT競作・ダンデライオン(8):04/05/13 18:17

魅録に指摘された通り、清四郎のことは好きだった。
幼い頃から、彼の望むような女性になりたいと願ってきた。
その願いのためか、それともずっと近くにいたためか、
彼のいない人生など考えられない、と思ったことさえある。
骨の髄まで彼の影響を受けてきた、と言えるだろう。
彼が自分のことを幼馴染以上に見ることはない、そう悟った今も、
清四郎の影は野梨子から消えることはない。

野梨子はうすく笑った。
「あのふたりがつきあうようになったら嫌なんですもの」
魅録もそうじゃありません?――含んだ視線を送ると、彼は目を逸らした。
彼が清四郎と同じ目で悠理を見ていることに、野梨子は気づいていた。
「嫉妬するくらい好きなら、アイツに言ったらどうだ?」
魅録が抑えた声で言う。
(……嫉妬?)
ああ、そういう気持ちもあるかもしれない。
心の中でつぶやく。
でも、どちらに嫉妬しているというのだろう?

795 :20万HIT競作・ダンデライオン(9):04/05/13 18:18

幼馴染が悠理を想う気持ちが真剣なものであることも、
どんな風に彼女に惹かれているかも野梨子にはわかっていた。
けれど。
(……悠理まであなたのものにしないで)
考えるたびに、胸がきしむ。
彼の想いがかなえば、
本人が望まずとも、知らぬうちに彼女を歪めてしまうだろう。
正反対の彼女を愛すると同時に、彼は必ず反発もおぼえる。
きっと少しずつ彼女を変えていってしまう。


窓の外には月が出ていた。
半月よりも少しふくらみを帯びた姿が白い光を放っている。
窓辺に近寄ると、校舎は濃紺の闇に沈んでいる。
ガラスに魅録がうっすらと映っていた。
「わたくしには、悠理は魅録の側にいる時が、一番楽しそうに見えますわ」
野梨子の言葉に、彼の表情が揺らいだ。
本当は、彼女に誰かと恋に落ちて欲しいわけではなかった。
だが、変わらないでいることが不可能だともわかっている。

796 :20万HIT競作・ダンデライオン(10):04/05/13 18:19

野梨子は、悠理の輝かんばかりの笑顔を思い浮かべた。
ただ、その姿を見るのが好きだった。
いつも、こんこんとエネルギーが湧き出ているような彼女を、
目にするだけで、心があたたかくなった。
そう、自ら光を生み出す彼女に憧れていた。

どうか彼女は、彼女らしく伸びやかなままでいてほしい。
祈らずにいられない。
かなわないのであれば、
せめて、彼だけには――
清四郎だけには彼女を変えられたくない。

野梨子はきゅっと唇を引き結び、振り向いた。
魅録を見つめ、彼が口を開くのを待つ。
窓からしっとりとした夜気が忍び寄ってくる。
背中越しに月の光が強さを増すのを感じる。
冷ややかな光は野梨子に悲しいほどに馴染み、深く身体に染みとおっていく。

 <終>

797 :名無し草:04/05/13 18:50
>ダンデイライオン
清四郎と悠理に対する野梨子の微妙な感情がいい!

そろそろ次スレ立てかな。
800ゲッターさんがちょうどいいんじゃない?

798 :名無し草:04/05/13 18:53
>ダンデライオン
野梨子の心情をとても丁寧に描いてあって、
じっくり味わいながら読ませてもらいました。
清四郎に愛情を持ちながらも、相手を変えて
しまうという彼の性癖を冷静に見つめている姿が、
好ましくも物悲しく感じられてなりません。
うまく言えませんが、心にじんわり染みてくる
お話だったと思います。

>797
競作最終日だし、ウプしたい作家さんがいて
待たせてしまったら悪いから、立ててみます。

799 :名無し草:04/05/13 19:04
新スレ立てました。
今後の作品ウプは新スレ、今までにウプされた作品への
感想や雑談は旧スレでドゾー。

◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう21◇◆◇◆
http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/

800 :名無し草:04/05/13 19:16
>799
スレたて乙でした。
新スレの9ですが、ごめんなさい!感想あっちに書いちゃいました。
まだこっちが残ってるのにごめんなさい。

801 :名無し草:04/05/13 19:29
>800
目安として書いただけだから、お気になさらず。

802 :名無し草:04/05/13 19:40
>800
いや、保守しないと落ちちゃうから、いいんじゃない。

803 :名無し草:04/05/13 19:44
>802
難民は即死判定ないから大丈夫だと思うよ。
でも向こうがテンプレだけでレスが全然ないと寂しいから、
ちょうど良かったんじゃない?

さてさて、まだ書いてる作家さんは居るのかな。
リロード厨になってしまいそうだw

804 :名無し草:04/05/13 21:38
>ダンデライオン

そっかそっか、野梨ちゃんは清四郎ちゃんが好きなのね〜、って
読んでたら少しばかり意外な展開になり、やられたと思いました。
文章にも無駄がなく、野梨子の複雑な心情も、すっと心になじみました。
余韻の残るラストもよかったです。

805 :名無し草:04/05/13 22:47
「薔薇色の憂鬱」を書いたものです。
遅ればせながら、>728・6行目の「雅臣」は「柾臣」の間違いでした。
訂正させていただきます。
730様、ご指摘ありがとうございました。

また「ああ薔薇色の人生」の作者様もお気遣いレスありがとうございました!


806 :名無し草:04/05/13 23:07
>ダンデライオン
複雑な野梨子の心境は奇妙にも思えますし、頷けるような気もします。
悠理への憧れと清四郎への思慕と二人から望まれない歯がゆさとが
入り混じって、少し意地悪い心持ちになっているのかな。
何にせよとても繊細なタッチのお話でした。
次回作楽しみにしてます。


807 :名無し草:04/05/14 00:19
競作一週間これでおしまいかな?
今回ほんと豊作で(豊作さん主役はなかったが)、作者様方お疲れ様でした!&ありがとうございます!

808 :名無し草:04/05/14 00:21
楽しかったお祭りが終わってしまいましたね…。
連夜の怒濤のUpにそわそわしっぱなしだったので、反動がつらそうです(苦笑)。

お題「色」にふさわしい、色とりどりの素晴らしい作品を読ませていただきました。
作者さま方、お疲れさまです。ありがとうございました。


ただひとつ気になるのは、絵版です。これから何作品か見せていただけるのかな?

809 :名無し草:04/05/14 00:42
終わってしまいましたね・・・(脱力)
正直ここまで盛り上がるとは思っていなかったのですが
毎日、複数の作品が読めて夢のようでした。
作者様方、お疲れ様でした。ありがとうございました。

また連載が再開されるのも楽しみです。

>絵板
私も気になってます。今のところ1点だけですよね。

810 :名無し草:04/05/14 01:38
>808-809
もう寝ちゃったかな・・・
嵐さんのところに直接ウプされてるよ。新スレの43参照。

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